アパート経営を始めるためには、さまざまなリスクを理解してからスタートすることが大切です。
不動産投資に失敗する理由は、考えられるリスクの種類を勉強せず、対策もしていない場合がほとんどだからです。
この記事では、アパート経営での失敗によくある理由を紹介し、リスクの種類とその対策方法を紹介していきます。
アパート経営で成功している人のリスク対策に対する考え方と特徴もお伝えするので、ぜひ参考にしてください。
目次
アパート経営に失敗する理由
不動産のアパート経営に失敗する理由を4つ紹介します。
- サブリース
- ローン返済
- 利回りシミュレーション
- 入居者のクレーム
それぞれを具体的に解説していきます。
理由①:サブリース
サブリースとは、不動産会社に手数料を支払う代わりに、空室の場合でも一定額の家賃を保証してもらう契約です。
通常のアパート経営では、空室期間はすべて損失になりますが、サブリース契約を結んでいれば、空室期間にも家賃が保証されるというメリットがあります。
サブリース契約の注意点は主に3つあります。
- 手数料が高い
- 家賃満額の保証ではない
- 家賃の減額を依頼される
サブリースによっては、10パーセント以上の手数料が一般的な相場となっているため非常に高いです。
サブリース手数料が10パーセントの場合、毎月の家賃収入が仮に50万円だとしても、サブリース手数料が引かれ45万円となります。
空室時に困らないための対策は必要ですが、10パーセント以上の手数料ではリスク対策ではなく経費の無駄遣いだと考えられます。
空室になるリスクとサブリース手数料、家賃保証金額を確認して、利益が出る予測になるのであれば契約することをおすすめします。
サブリース契約年数が長くなってくると、管理する不動産会社から「入居者が決まらないので家賃を減額して欲しい」と一方的に依頼されることも多くあります。
「家賃の減額に応じない場合に契約を解除できる」という契約内容も含まれていることがあるため、必ず確認してください。
不動産会社の言いなりにならず、自分で考えて決めることが大切です。
理由②:ローン返済
ローンの返済資金が足りなくなってしまうという失敗例があります。
アパートは高額物件なので、購入時に金融機関からローンを組むことが一般的です。
自己資金がない場合は、購入資金を全額融資(フルローン:頭金ゼロ円での借り入れ)でアパートを購入することもあります。
借入金額が増えると、もちろん毎月の返済金額が増えます。
ローン返済額が、毎月の家賃収入では足りない場合は、サラリーマンとしての給与収入からローン返済分を用意しなければなりません。
満室時のの利回り計算だけでローン返済金額を計算するのではなく、一定の空室がある期間も計算に入れておくことで、余裕を持たせた返済計画にすることが大切です。
万が一、ローン返済が滞ってしまった場合、アパート経営を諦めて物件を売却しなければならない状況になってしまいます。
理由③:利回りシミュレーション
アパート経営での利回り計算を見誤り失敗してしまうパターンです。
利回りシミュレーションとは、アパート経営を始めるときに、物件を購入して運用するとどのくらいの利益が見込めるのかをシミュレーションすることです。
不動産会社が、経営者に対して紹介する利回り計算には、アパート経営で予測できるリスクを組み込んでいないことがあります。
物件の利益を水増しして見せるために、事実とかけ離れた利回りシミュレーションの提示を繰り返している業者も多いことがわかっています。
そんな悪徳業者に騙されないためには、「表面利回り」と「実質利回り」の違いを理解することが大切です。
「表面利回り」とは、アパート経営に対して必要な経費やリスクを含まず、常に満室時の家賃収入から算出した利回り計算です。
ひと目で物件価格と家賃収入を把握することができるメリットはありますが、必要な経費を含まないので、最終的に家賃収入から手元に残る金額がわからないというデメリットがあります。
対して、「実質利回り」とは、家賃収入から税金や経費、手数料を差し引いて算出した利回りシミュレーションです。
実際のアパート経営を想定すると、「実質利回り」を知ることからがスタートラインだと考えてください。
「表面利回り」は理想的な数字だけの幻想だと理解して、必ず「実質利回り」を出してもらいましょう。
さらに正確な利回りシミュレーションを算出するためには、空室や修繕で考えられる費用とリスクを入れていくつものパターンを見比べることをおすすめします。
理由④:入居者のクレーム
入居者のクレームにより、アパート経営に失敗するパターンです。
アパートに入居者の住人や近隣の住民にクレーマーがいると、アパート経営の大きなリスクの原因になります。
なぜなら悪質なクレーマーは、最終的にオーナーに対して家賃の値引きや金品を要求することもあるからです。
一般的に、設備故障や劣化によるクレームには、管理会社と契約しておくことで対策が可能です。
しかし、入居者間の騒音トラブルや嫌がらせなどは、オーナーを巻き込むクレームになりかねません。
執拗な嫌がらせやクレームが原因による退去が原因で、アパート経営が失敗してしまう経営者も多いのです。
アパート経営は入居者がつくことで成り立つビジネスですが、その入居者がリスクの原因になることもあるということを知っておきましょう。
アパート経営で想定できるリスク
続いて、アパート経営で想定できるリスクが6つあります。
- 空室
- 家賃滞納
- 地震・火災
- 建物の修繕
- 金利上昇
- 売却時
いずれも、アパート経営を始める前に必ず知っておくべきリスクです。
購入するアパートの種類や地域によって、リスクの大きさは異なります。
自分が購入したいアパートをイメージしながら、想定できるリスクを確認していきましょう。
リスク①:空室
アパート経営において、もっとも大きなリスクは空室リスクです。
アパート経営は、入居者から家賃収入を得ることで利益を出すビジネスモデルです。
空室期間が増えていくと、空いている期間の収入がゼロになるだけでなく、維持費と税金が発生するため、運用資金が減っていきます。
アパートの築年数や老朽化によって、家賃を徐々に安く設定していかないと、入居者がつきにくくなるというリスクも考えられます。
空室リスクは、地域の人口や周辺の状況によっても常に変化します。
空室が埋まらないというリスクは、アパート経営者にとっては切っても切れないリスクだと理解しておきましょう。
リスク②:家賃滞納
空室リスクが最大のリスクだと紹介しましたが、入居者が家賃を滞納している場合も空室期間と同じく収入がゼロになってしまいます。
家賃を滞納している入居者に対しては、法的な手段を使った請求が可能です。
しかし、入居者が生活に困窮している場合も多いため、家賃全額を回収することが困難なことも多いです。
対策として、家賃滞納している入居者をいち早く強制退去させ、すぐに新たな入居者を募集することでリスクを少なくする方法があります。
その他、家賃を保証してくれる会社(保証会社)を利用することもおすすめします。
家賃保証会社を通して賃貸契約をすれば、入居者の家賃滞納時にも保証会社が保証してくれます。
しかし、毎月の保証料を支払うのは一般的に入居者なので、保証料が原因で入居が決まりにくくなる場合もあります。
家賃保証会社との契約は必須にせず、家賃滞納リスクがあると予想できる入居者のみ利用することをおすすめします。
リスクとリターンを計算しながら、所有するアパートに最適な方法を選択していきましょう。
オーナーとしては、普段から入居者とコミュニケーションを取ることで家賃滞納を防ぐ方法もおすすめです。
リスク③:地震・火災
地震・火災被害もアパート経営におけるリスクです。
地震や火災によってアパートに損害が発生した場合、基本的に所有者が損害を負担しなければなりません。
購入したばかりのアパートだったとしても、地震や火災が原因で消失してしまうリスクがあります。
地震大国の日本では、いつどこで地震の被害に合うか予測できません。
事前にどれだけ対策をしても防ぐことが難しいリスクです。
それでも、立地や地理的な要因によって天災を予測し回避することは可能です。
物件のある地域によってリスクが異なるため、事前に知っておくことがリスクを防ぐことにつながります。
リスク④:建物の修繕
建物の修繕も、アパート経営におけるリスクです。
所有するアパートが損傷した場合、オーナーが修繕工事費用を負担します。
アパートは、築年数が古くなってくると屋根や外壁が壊れやすくなります。
例えば、アパートの屋根に穴が開き雨漏りが発生すれば、オーナーだけでなく入居者にとっても大きな損害とリスクになってしまいます。
雨漏りが原因で入居者が生活できなくなった場合も、オーナーが一時的な住宅資金を負担するといった予想外の出費が増える可能性があります。
このように緊急を要する損害ではなくても、給湯器やエアコンなどの設備故障も修繕や交換が必要になるタイミングがくることを忘れてはなりません。
リスク⑤:金利上昇
金利上昇にもアパート経営のリスクです。
金利上昇とは、金融機関から借りているローンの金利が上がることです。
金利が上がると、ローンの残債に応じて返済額が増えていくというリスクがあります。
固定金利でローンを組むことで、金利上昇の影響を受けない方法もありますが、一般的ではありません。
なぜなら、固定金利にすると変動金利よりも金利が高くなると同時に、繰上げ返済や借り換えを希望したときに違約金が発生する契約内容になっていることが多いからです。
そのリスクを理解した上で、変動する金利上昇リスク対策として固定金利を選ぶことはできます。
ローンの契約内容は、金融機関や借入金額によって内容がさまざまなので、自分のリスク許容範囲を計画した上で選択しましょう。
リスク⑥:売却時
物件購入後、経営をやめてアパートの売却を考えたときにも、リスクが潜んでいます。
アパートは価格が高額であり、年数が経つごとに資産価値が下がっていきます。
「老朽化も進んで空室もあるからそろそろ売ろうか」と思っても、すぐには買い手が見つからないことが多いです。
もし、売却理由がローン返済だったり早急に現金が必要だったりする場合は、深刻なリスクになるはずです。
すぐに売却するためには、売却価格を相場より大きく安くするしか方法がないため、損失が大きくなってしまいます。
「資金繰りに困ったら売れば良い」という考えでアパート経営はおすすめしません。
アパートの資産価値の低下や売却時のリスクまでを理解してから購入を決めましょう。
売却をゴールにアパート経営を始めるのではなく、家賃収入で安定したキャッシュフローを維持するために経営する意識が大切です。
ちなみに、地方ではなくアパート需要が減りにくい首都圏で物件を探している場合は、売却時のリスクは比較的小さいと考えられます。
売却リスクではなく、その他のリスクに重点をおいて対策すべきです。
アパート経営のリスクを回避するための対策
ここからは、アパート経営のリスク対策を5つ紹介していきます。
- 新築より中古アパート
- 空室対策
- 保険に加入
- 計画的な修繕
- 利益物件を購入
ここまで紹介してきたリスクを回避するための対策も含まれています。
対策①:「新築」よりは「中古」アパートを選ぶ
新築アパートより中古アパートを経営することで、リスク対策が可能です。
なぜ新築アパートより中古アパートがリスクが小さいかというと、相場よりも安い価格で購入しやすいからです。
新築アパートは、立地によって大体の相場価格が決まっているため、安くは購入できません。
比べて、中古アパートは不動産会社ではなく個人が売主の場合も多いです。
売主によってさまざまな事情を抱えていることが多く、安い価格で購入できる可能性があります。
売主の事情をよく聞き込みをして、設定価格よりも安くなる手段がないかを見極める力を鍛えましょう。
もし、不動産投資の初心者という方は、新築アパートでローンの借入額を高額にするよりも、中古アパートでローン返済に余裕を持たせながら安定した経営を続ける方が、想定外のリスクへの対策となるでしょう。
対策②:不動産会社と関係を構築する
空室対策に最適な方法は、地域の不動産会社と信頼関係を築くことです。
なぜなら、入居者を探してくれるのは不動産会社であり、物件周辺の情報に詳しいのも不動産担当者であることが多いからです。
管理を任せている会社以外にも、複数の不動産会社とコミュニケーションを取っておくことで、困ったときに優先して入居者を探してくれます。
実は、この基本的な人間関係を構築できるオーナーは少ないです。
不動産業界は非常に閉鎖的な業界なので、不動産会社と付き合いがなければ良い情報が入ってこないということも覚えておきましょう。
対策③:保険に加入する
アパート経営では、火災保険(地震保険)に加入してリスク対策をすることが必須です。
地震や火災のリスクに対しては、事前に対策できる部分と費用に限界があります。
保険料は、最長10年契約(地震保険付き)で30万円から50万円が費用の相場です。
どれだけ経費を節約したくても、リスク対策である保険を節約してはなりません。
地震対策として、耐震強度を上げる工事をしたり、火災対策に高額の費用をかけることに比べて、保険への加入費用は安いです。
対策④:計画的に修繕する
アパートを計画的に修繕することは、リスク対策になります。
定期的な修繕には工事費用がかかり経費が増えるため、できるだけ避けたいと思っているオーナーもいます。
しかし、計画的に修繕し破損を未然に防ぐことは、長い目でみるとリスク対策になります。
計画的なチェックを怠り急な修繕が必要になると、対応業者へ支払う費用は増えてしまいます。
そして、定期的な修繕により入居者の安心感も高まるため、退去を防ぐ空室対策にも効果があります。
アパートのすべての設備を最新の状態に保つことはできませんが、給湯器などの設備や消防設備の点検などさまざまな修繕工事がある中で、最適な計画を立てることもアパートオーナーの仕事です。
対策⑤:収益物件を購入する
最後に、リスク対策として収益物件を購入する意味について解説します。
アパート経営をする理由は、ほとんどの場合家賃収入から安定した利益を出すためです。
ですが、価値が無く利益が出ないアパートを購入し、入居者がつかず赤字が続いてしまうと、そもそものアパート経営が成り立ちません。
リスク対策以前の問題が発生してしまうということです。
つまり、収益物件を見極めて購入することが、アパート経営における最大のリスク対策といえるのです。
では、収益物件とはどのような物件なのでしょうか?
- 実質利回りが高い
- 空室リスクが少ない
- 修繕費用がかからない
このような条件が考えられます。
収益物件は、購入希望のライバルも多いため、簡単には購入できません。
事前に購入したい利益物件のポイントをまとめておき、少ないチャンスを逃さないようにしてください。
収益物件とは?利回りの計算方法に注意!種類とメリット・デメリット
アパート経営に成功できる人の特徴
最後に、アパート経営に成功する人の共通の特徴を紹介します。
アパート経営で確実に利益を出している人には、考え方に共通点があります。
特徴を2つにわけて紹介していきます。
- リスク対策を自分自身で理解している
- コントロールできないリスクがあることを理解している
特徴①:リスク対策を自分自身で理解している
アパートを経営に成功する人は、リスクを自分自身で理解し事前にリスク対策を準備しているという特徴があります。
アパート経営のリスク対策や細かな利益計算を自分自身で行わず、他人任せにする人は成功しません。
物件購入や入居付けを仲介してくれる不動産会社や管理会社は、プロの目線から物件のリスクと対策を考えてくれます。
しかし、不動産会社はビジネスとして事業を行っています。
オーナー自身が理解せず他人任せにしていることが見透かされると、簡単にカモにされてしまいます。
どれだけ本業や別の事業が忙しくても、自分自身で理解し責任を持って経営していくことが、アパート経営のリスク対策です。
特徴②:コントロールできないリスクがあることを理解している
アパートを経営に成功する人は、コントロールができないリスクがあることを理解しています。
自分自身で理解しリスク対策をすべきとお伝えしましたが、どれだけ事前に対策をしてもコントロールができないリスクがあります。
2020年3月現在世界が陥っている「コロナショック」のような経済的な不況や、天災などが代表的な例です。
アパート経営のように大きな資金が動く事業においては、自分だけではコントロールができないリスクがあることを事前に理解し、リスクの許容範囲を超えたらすぐに撤退する決断と勇気も必要です。
自分の許容できるリスクを理解していない場合「もう少し頑張ればなんとか立て直せるかもしれない」と意地になり、借金がさらに膨らんでしまうことも考えられます。
安定した家賃収入で黒字経営を続けることができていれば、急なリスクで赤字になったとしても立て直す力が残っていることが多く、金融機関が融資を優遇してくれる可能性も高くなることも知っておきましょう。
まとめ
アパート経営で考えられるリスクの種類と対策方法をお伝えしてきました。
アパート経営にはリスクも多いですが、これほどまでに安定した不労所得が手に入る投資は他にありません。
自分自身が、どのくらいのリスクまでなら対応できるかを考えながら収益物件探しを続けていただきたいです。
なお、アパート経営のような不動産投資は、会社員の方が融資を引きやすく有利です。
そんなサラリーマンが不動産投資を駆使して独立できるほどまで成功したエピソードをこちらで紹介しています。
不動産投資に成功したいと思っている方は、どのようにすれば失敗しないのか、うまくいく人はどういう風に行動しているのか参考になるはずです。