被災地支援の報道やバラエティ番組の企画などで、「クラウドファンディング」という言葉を聞いたことがある方は大勢いらっしゃるでしょう。
しかし、自分が使うことをイメージした経験がある人は、ほとんどいないのではないでしょうか?
クラウドファンディングは、お金を集めてビジネスをしたい人や利回りの高い投資をしたい人にぜひ使っていただきたいサービスです。
お金を必要としている人と投資をしたい人を結びつけるサービスであり、寄付だけが目的ではないのです。
この記事では、クラウドファンディングとは何か、どのような種類があるのかについて解説していきます。
出資者・資金調達者にとってクラウドファンディングを使うメリット・デメリットについても紹介しました。
この記事でクラウドファンディングについて理解してもらい、興味を持ってもらえれば幸いです。
目次
クラウドファンディングとは
クラウドファンディングとは、インターネットを介して資金を「調達したい人(資金調達者)」と「出資したい人(出資者)」を結びつけるサービスです。
「資金調達者」は、営利事業に使うための資金や、ボランティアなど非営利事業のための資金などをつのることができます。
「出資者」は、営利事業への投資として利用したり、無償の寄付として利用したりできます。
資金調達の目的での利用者が増えているのは、カジュアルな目的でもアピールのやり方次第では資金を調達できるからです。
例えば、「世界一周旅行がしたい!」といった内容でも、クラウドファンディングならお金を集められる可能性があります。
本人の楽しみのためだけで資金をつのることは無謀ですが、「ボランティアを目的に貧困地域を回るための旅行」や「世界の現実を報道するための旅行」といった社会的に意義のある場合、クラウドファンディングを通じて支援してくれる人を見つけられるかもしれません。
資金調達といえば、従来は銀行からの融資でした。
銀行の融資には厳しい審査があるため時間がかかり、かつ審査に落ちるケースもある問題があります。
クラウドファンディングでは銀行ではなく一般人からの出資を受け付けることで、これらの課題が解決されているのです。
一方で、お金を支払う出資者側の人気も高まってきており、投資家がクラウドファンディングを利用するケースも増えています。
出資したらリターンを得られる「投資型」のサービスもあるため、新規事業への投資に使っている人が増えているのです。
また、リターンを気にせず社会貢献目的の寄付をしたい人も「非投資型」のクラウドファンディングを利用するケースが増えています。
クラウドファンディングの種類と仕組み
一口に「クラウドファンディング」と言っても、さまざまな種類があります。
大きく6種類に分けることができるので、それぞれについて詳しく解説していきましょう。
6種類のクラウドファンディングについて、資金調達者、出資者それぞれのメリット・デメリットを紹介しました。
ご自身の目的に照らし合わせることで、どのクラウドファンディングが自分に合っているか判断していただけると思います。
- 寄付型
- 購入型
- 融資型(ソーシャルレンディング)
- 不動産投資型
- ファンド投資型
- 株式投資型
種類①:寄付型
寄付型のクラウドファンディングは、被災地支援やボランティアを目的に寄付金をつのるものです。
寄付型は社会貢献の側面が強く、原則としてリターンはないため非投資型のサービスです。
寄付型のクラウドファンディングが使われるのは、例えば地震や台風の被害を受けた地域の復興のための資金を募集する場合です。
このような事情があるケースでは、リターンの有無に関係なく資金をつのって問題ありません。
種類②:購入型
購入型クラウドファンディングは、事業の資金調達を目的に資金をつのり、リターンを提供するサービスです。
寄付型よりは投資の性質がありますが、出資の目的はリターンではなく支援なので、出資額に対してささやかなリターンでも資金調達ができる可能性があります。
その意味で非投資型のクラウドファンディングと言え、寄付型を事業用に使えるように変更したようなイメージです。
購入型のクラウドファンディングが使われた有名な例といえば、集客に苦しんでいる動物園のリニューアルです。
動物の住環境の改善や展示環境の改善に対し、熱意ある飼育員の姿に共感し、クラウドファンディングで出資した方もいらっしゃるのではないでしょうか?
このケースでは出資者にお礼のメッセージを贈ったり、氏名を園内に掲示したりして、金銭的には測れないリターンの提供を行いました。
種類③:融資型(ソーシャルレンディング)
融資型クラウドファンディング(通称:ソーシャルレンディング)は、お金を借りたい企業と投資をしたい個人投資家を結びつけるサービスです。
企業はある事業を成功させるために必要な資金を調達するために使います。
投資型なので、出資する人は金銭的なリターンを得ることができます。
資金を募集するときに金利と期間が決まっているので、満期を迎えると出資額は返還されます。
融資型クラウドファンディングは、多くの事業で使われています。
投資型クラウドファンディングの中ではローリスクな方なので、事業が安定した収益を出せるかなどが厳しく審査されています。
貸し倒れのリスクも比較的低いので、投資家にも人気のあるサービスです。
種類④:不動産投資型
不動産投資型クラウドファンディングは、小口で不動産投資ができるサービスです。
出資者は1万円といった少額を出資し、調達者は大勢の出資者からお金を集めることで数億円の規模で不動産投資を行います。
不動産投資は、マンションやアパートを購入して家賃を収入として得るようなイメージです。
不動産投資型クラウドファンディングは、目的を不動産投資に特化した融資型クラウドファンディングと置き換えて理解しても問題ありません。
投資型クラウドファンディングの中では、ローリスクな投資ができます。
種類⑤:ファンド投資型
ファンド投資型クラウドファンディングは、融資型や不動産投資型に比べてハイリスク・ハイリターンな投資ができるサービスです。
プロジェクトの立ち上げに際して使われることが多く、ビジネスが上手く回って利益が出るようになると、配当として利益の一部を投資家に分配する仕組みです。
ファンド投資型クラウドファンディングはベンチャー企業への投資に似ているので、企業が成長して大化けすれば大きな利益を得ることができます。
一方で、事業に失敗してしまうリスクも高く、出資した金額の返還は諦めなければならない場合もあります。
種類⑥:株式投資型
株式投資型クラウドファンディングは、未公開株式の株主をつのり、そのお金を企業が事業資金とするものです。
クラウドファンディングの形式ですが、実際は未公開株式の売買です。
未公開株式は誰もがアクセスできる市場に流通していないため、従来はその企業の役員がすべてを保有するのが一般的でした。
しかし、クラウドファンディングならインターネット上で株主を募集できるので、不特定多数から出資を受けることができるのです。
出資者(投資家)のメリット
続いて、出資者にとってのクラウドファンディングのメリット・デメリットを解説していきます。
まずは、メリットとして次の3点を紹介しましょう。
- 高利回りな投資ができる
- 投資を通じて社会貢献ができる
- 手間がかからない
メリット①:高利回りな投資ができる
出資者にとって最も大きなクラウドファンディングのメリットは、利回りが高い投資ができることです。
例えば、人気のある融資型クラウドファンディングなら、5パーセントから10パーセントの利回りで投資ができます。
100万円を投資すると、1年で105万円から110万円に増やせるのです。
他の投資方法の平均的な利回りと比較すると、投資型クラウドファンディングの利回りが高いことがわかるでしょう。
- 株式投資:3%~5%
- 不動産投資:5%前後
- 投資信託:1%~3%
「融資型」「不動産投資型」「ファンド型」「株式投資型」の4つのクラウドファンディングは投資型で、株式投資などと比べて高い利回りを期待することができます。
最近は株式などで運用していた投資家にも人気が出てきており、一部の資産を融資型クラウドファンディングで運用する人などが増えてきています。
メリット②:投資を通じて社会貢献ができる
非投資型のクラウドファンディングには、投資を通じて社会貢献ができるメリットがあります。
寄付型なら無償で被災地支援やボランティア事業に協力することができます。
寄付金控除の対象にもなるので、寄付と同時に節税もできます。
また、購入型クラウドファンディングも多くは社会貢献が目的の事業です。
先ほどお伝えした動物園のリニューアルもそうですが、営利目的よりも地域社会の役に立つ事業の資金調達でよく使われているため、共感できる事業に出資する喜びを得られます。
メリット③:手間がかからない
投資型でも非投資型でも、出資者に大きな手間がかからないことも、クラウドファンディングのメリットです。
従来であれば、有名でない投資先や寄付先は自力で探すことができず、専門家を仲介して紹介してもらうなどの手間がかかっていました。
ですが、クラウドファンディングを利用すれば、サイトにログインして検索するだけで無数の案件に出会うことができます。
クラウドファンディングを使うことで、従来には出会いにくかった案件も見つけることができます。
手間をかけずに多くの投資や寄付の選択肢を見つけることができるメリットがあるのです。
出資者(投資家)のデメリット
出資者にとってのメリットを解説してきましたが、クラウドファンディングにはデメリットも存在します。
出資者にとってのデメリットである次の3点を解説していきますね。
- 途中で解約できない
- 予定通りの収入が得られないリスクがある
- 悪意ある調達者に騙される危険がある
デメリット①:途中で解約できない
クラウドファンディングの場合、プロジェクトが進んでいる最中に解約して現金を引き出すことはできません。
寄付型や購入型はもちろん、投資型のサービスでも基本的には解約できません。
これは、事業の進行中に現金の払い出しに対応してしまうと、予定通りにプロジェクトを進めることができなくなり、失敗につながってしまうからです。
資金調達者がプロジェクトを成功させられるよう、期間中の払い出しは原則としてできません。
途中で解約することはできないので、余剰資金で投資を行うよう徹底しましょう。
デメリット②:予定通りの収入が得られないリスクがある
投資型のクラウドファンディングでは投資額に応じたリターンが期待できますが、リターンは保証されているものではありません。
事業が予定通りに進まなければ、投資家に支払われる利息は予定より少なくなってしまうこともあるのです。
また、事業が失敗すれば投資した元本も返還されないリスクがあります。
クラウドファンディングはハイリスク・ハイリターンな投資方法なので、期待利回りは高く魅力的ですが、そのぶんリスクも大きいことを認識しておきましょう。
デメリット③:悪意ある調達者に騙される危険がある
クラウドファンディングはまだ歴史の浅いサービスなので、ユーザーを騙そうと悪意のある資金調達者もいます。
それらしい事業計画などを掲載するものの、実は最初から資金を持ち逃げすることが目的だったというケースもあり、悪徳業者に騙される危険があるのです。
このような調達者を弾くには、クラウドファンディング業者選びが重要です。
厳しく審査を行う業者とそうでない業者とで、プロジェクトの成功率が大きく異なるからです。
貸し倒れの件数が少ない業者を選ぶことで、悪質な調達者に出会うリスクを下げることができます。
資金調達者のメリット
これまでは、出資者にとってのクラウドファンディングのメリット・デメリットをお伝えしました。
ここからは、クラウドファンディングで資金調達をする人にとってのメリット・デメリットを解説していきます。
まずはメリットを3つ紹介します。
- 銀行の融資以外で資金調達できる
- 現金以外でリターンを設定できる
- 宣伝効果が高い
メリット①:銀行の融資以外で資金調達できる
資金調達をする人は、会社経営者の場合はまず銀行に融資を依頼すると思います。
ですが、起業したばかりで実績が無い場合などは、融資を断られやすいです。
クラウドファンディングには、そのような人でも資金を調達できるというメリットがあります。
また、起業とまではいかないプロジェクトで銀行に融資を依頼できない人も、クラウドファンディングなら資金を集めることができます。
個人事業主が大きなイベントや企画を主催する場合など、資金を集めたいけど銀行に頼みに行ける業態でないといったケースでも使いやすいです。
メリット②:現金以外でリターンを設定できる
資金調達者がクラウドファンディングを使うメリットとして大きいのが、現金以外のリターンを設定できることです。
購入型クラウドファンディングは非投資型なので、出資者が喜ぶリターンを設定できれば、必ずしもお金である必要はありません。
先ほどお伝えした動物園のクラウドファンディングのように、出資者が調達者のファンである場合、リターンは物や名誉の方が喜ばれることがあるのです。
出資者に対してお金で返せない人でも、アイディア次第では資金調達できる点が画期的です。
投資型のクラウドファンディングでも、場合によっては現金以外のリターンを設定することは可能です。
例えば、映画の製作費をファンド型クラウドファンディングで募集する場合、エンドクレジットに出資者の名前を載せることがリターンになり得ます。
メリット③:宣伝効果が高い
クラウドファンディングを使うことで、知名度を獲得できるメリットがあります。
ユーザーが多いクラウドファンディングサービスを使えば、知名度の無いプロジェクトでも人目に触れることになり、宣伝にもつながるのです。
最近ではSNSでの集客がメジャーになってきていますが、そもそもSNSで大勢のフォロワーを獲得するまでが大変です。
しかし、人気のあるクラウドファンディングサービスを使えば、それだけで多くの人に見てもらうことができるのです。
結果として、資金を集めるだけでなく、事業について知ってくれる人が増えると考えられます。
資金調達者のデメリット
続いて、クラウドファンディングを使う資金調達者にとってのデメリットを紹介していきます。
次の3点について解説しましょう。
- 目標額が集まらない可能性がある
- 頓挫すると社会的信用を失う
- 事務コストが増える
デメリット①:目標額が集まらない可能性がある
クラウドファンディングをやっても、必ず目標額が集まるとは限りません。
目標額が高すぎる場合や、プロジェクトに出資するほどの魅力が乏しい場合、目標達成は困難になります。
期日になっても目標額が集まらない場合、その時点で集まった金額を得てプロジェクトを進めるか、不成立としてプロジェクトをキャンセルするかの2択です。
これはクラウドファンディングを始めるときに決めておく項目ですので、後ほど決済方法として解説します。
デメリット②:頓挫すると社会的信用を失う
特に、投資型のクラウドファンディングの場合、事業が頓挫すると社会的な信用を失うデメリットがあります。
出資者が「この人は事業に失敗したから、今後も投資はしない」と思ってしまう可能性があるのです。
資金を集めたいからといってリスクを説明しなかったり、過剰な利回りを設定したりすると、期待どおりの運用ができなかった出資者から文句が出ることが予想できます。
資金調達の際は見栄を張らず、誠実に情報を公開しましょう。
デメリット③:事務コストが増える
クラウドファンディングを始めると、出資者の名簿の管理やリターンの送付などで事務が発生します。
当たり前のことではありますが、意外と事務コストを考えずにクラウドファンディングを始めてしまう人が多いので、覚えておいてください。
特に現物のリターンを送付する場合、作るのにも材料費や人件費がかかります。さらに送料もかかるので、費用を想定しておかなければなりません。
クラウドファンディングの決済方法
クラウドファンディングは期日を決めて資金を調達するサービスです。
しかし、必ず目標の金額が集まるとは限りません。
期日までに目標額が集まらなかった場合、決済方法によって扱いが異なります。
調達者にとってはプロジェクトをやるかやらないかの分かれ目になりますし、出資者にとっては支払った金額がどうなるかが異なります。
クラウドファンディングを始める場合は、決済方法を理解した上で実施してください。
All or Nothing方式
All or Nothing方式の場合、期間内に目標金額を達成していれば、終了日までに集まった資金を獲得できます。
もし、目標金額に到達しなかった場合、出資の申し込みはすべてキャンセルとなり、資金は出資者に返されます。
つまり、資金調達者はお金を得られないので、プロジェクトを始めることができません。
All or Nothing方式は、「最低○○円集まればできる」といったプロジェクトの場合に採用する方式です。
プロジェクトに必要な最低の資金を目標金額にすると良いでしょう。
All in方式
All in方式の場合、目標金額を達成した場合も達成しなかった場合も、終了日までに集まった資金を獲得できます。
また、目標額が集まらなかった場合でも、調達者は出資者にリターンを還元する必要があります。
All in方式が向いているのは、目標額に満たなかったとしてもプロジェクトを実行でき、かつリターンを届けられる場合です。
仮に資金提供者が1人しかおらず、少額の出資であっても、リターンを還元しなければなりません。
まとめ
クラウドファンディングについて、6つの種類と出資者・資金調達者にとってのメリットやデメリットを解説してきました。
クラウドファンディングといえば、最近の地震や台風のときに話題になったように、被災地支援で使われる寄付型が最も有名だと思います。
しかし、営利目的・投資目的でも使えるサービスなのです。
資金調達をしたい方は、銀行の融資以外にも選択肢があることを理解してもらいたいです。
投資家の方は、高利回りな案件があるかもしれないため、投資型のクラウドファンディングを始めてみてはいかがでしょうか?
なお、クラウドファンディングのメリット・デメリットは、それぞれこちらで詳しく解説しています。
【メリット】
【デメリット】