コロナショックが世界中の経済にさまざまな影響を与えている中、市場が拡大している数少ない分野があります。
それが「購入型クラウドファンディング」です。
では、なぜ購入型クラウドファンディング市場がコロナショック下でも拡大しているのでしょうか?
その背景を探ってみました。
筆者プロフィール
筆者は、第二種金融商品取引業事業者に勤めています。
インターネット上で投資家から資金を集めるビジネスを手掛けており、購入型クラウドファンディングと似た性質の事業を展開しています。
同業者から見た、購入型クラウドファンディングの現状を分析してみました。
2020年5月~6月の購入型クラウドファンディング市場が大幅増進
2020年5月から6月にかけて、購入型クラウドファンディングの市場が大きく拡大しています。
まず、どれぐらい伸びているのかを確認してみましょう。
購入型クラウドファンディングとは
購入型クラウドファンディングは、インターネットを通じてプロジェクトを展開したい個人や法人が資金を募るクラウドファンディングです。
そして、集まった資金をもとにお金を募集した事業者はプロジェクトを運用します。
購入型クラウドファンディングにおいて、金銭的なリターンが得られることは少ないです。
お金を出資した投資家は、プロジェクトの運用結果に応じて商品やサービスなどのリターンを得ることができます。
CAMPFIRE(キャンプファイヤー)は前年比590%の単月40億円を突破
画像引用元:CAMPFIRE
国内の大手購入型クラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」は、2020年5月に前年比同月590%、単月で40億円という大きな募集実績を残しました。
CAMPFIREの累計の募集実績が約250億円(2020年6月時点)であるため、単月で累計募集金額の1/6を集めたことになります。
READYFOR (レディーフォー)は浦和レッズ支援案件で2日で5,000万円を集める
CAMPFIREと並ぶ大手クラウドファンディングサイト「READYFOR(レディーフォー)」では、2020年6月に募集したJリーグのプロサッカーチーム「浦和レッズ」の案件では2日間で5千万円を集めました。
人気の高いプロサッカーチームの募集案件ということもありますが、短期間でこれほどの金額を集める案件は、そうは多くありません。
この大手2社の動きから、購入型クラウドファンディングに資金が集まっていることがわかってきます。
クラウドファンディング市場拡大の背景
では、なぜコロナショックかで購入型クラウドファンディング市場が大きく拡大したのでしょうか?
考えられる背景についてお伝えしていきましょう。
コロナショックで被害を受けた事業者支援プロジェクトを多数募集
CAMPFIREがこれほどの数字を伸ばした背景には、「コロナショックで売上の大きな損失が起きた事業者への支援プロジェクトが多数募集されているから」と、 同社のプレスリリースに記載されています。
コロナショックによる緊急事態宣言により、個人の外出が抑制され飲食業や観光業は大きな痛手を被りました。
そういった事業者を支援するために組成された案件が多数あり、賛同する人も多かったことから多数の資金を集めることに成功したと言えます。
東京都が手数料の半額をサポートする施策を実施
もう一つの理由として、東京都がクラウドファンディングで資金を募集する事業者の手数料の半額をサポートする「クラウドファンディングを活用した資金調達支援」を実施したことが挙げられます。
一般的に、クラウドファンディングで資金を募集する場合集まった金額の10%から20%ほどがクラウドファンディング事業者の収入となります。
そこで東京都では資金募集が必要な事業者の収入が減らないように、クラウドファンディング事業者に支払う手数料の半額を負担するという施策を打ち出したのです。
手数料負担が減ったことにより、資金を必要とする事業者が積極的にクラウドファンディング資金募集を行ったことから、募集金額の増加につながったと考えられます。
ソーシャルレンディングでもコロナショック支援が可能
購入型クラウドファンディングでは、コロナショックで打撃を受けた事業者の支援が可能です。
一方、支援対象が飲食店や観光業が主であるため、出資をしても金銭的なリターンを得ることは難しいです。
リターンのメインは、飲食料や宿泊費の割引です。
しかし、融資型クラウドファンディング、つまりソーシャルレンディングであれば、コロナショックで支援を打撃を受けた事業者への支援をしながら、金銭的なリターンを得ることも可能です。
ソーシャルレンディングとは
ソーシャルレンディングとは、お金を貸したい個人と、お金を必要とする事業者をつなげる投資方法です。
ソーシャルレンディング会社が個人から少しずつお金を集め、その集まったお金を事業者を資金を必要とする事業者に融資します。
融資時に貸付金利を設定するので、その貸付金利の一部が投資家の収入となるのです。
クラウドバンクがコロナショックで被害を受けた事業者の支援ファンドを表明
日本クラウド証券株式会社が運営するソーシャルレンディングサイトクラウドバンクでは、コロナショックで売り上げが低下した事業者の支援ファンドを組成することを発表しています。
クラウドバンクの案件の平均的な利回りは、年利6パーセント程度です。
しかし、コロナショック支援案件では、貸付金利の利回りを大幅に下げています。
クラウドバンクの仲介手数料収入を減らすことで、低金利で資金調達できるようにしているのです。
クラウドバンクに投資した投資家は、年利2~3パーセント程度の金利収入を得ることが可能です。
クラウドクレジットは途上国への支援的な投資が可能
コロナショックの影響は、日本国内だけではありません。
むしろ、日本よりも海外の方がその被害は深刻だと言えます。
海外案件を専門に取り扱うソーシャルレンディングサイト「クラウドクレジット(CrowdCredit)」では、コロナショックで経済的な打撃を受けた途上国への金銭的な支援及び投資が可能となっています。
途上国では、「マイクロファイナンス」という金融機関が小口事業者の資金調達手段として利用されています。
投資家は、クラウドクレジットを通して日本国内から海外のマイクロファイナンス機関へ投資することが可能です。
投資すれば、年利にして5パーセントから10パーセントの収入を得ることができます。
社会貢献をしながら高い利回りを得ることができるのが、クラウドクレジットのマイクロファイナンス案件の魅力と言えるでしょう。
まとめ
コロナショックの影響は、新型コロナウイルスの流行が収束してないだけに、未知数とも言えます。
一方で、クラウドファンディングはコロナショックで被害を受けた事業者の救済策となり、売上が低下した事業者を支援したい人の受け皿となったことで、大きく市場が拡大しているのです。
クラウドファンディング市場が拡大し知名度が上がっていけば、利用者が増え、クラウドファンディング市場の大きな発展が見込めるようになりそうです。
投資をしたい人、社会貢献をしたい人は是非購入型クラウドファンディングやソーシャルレンディングに注目してみてはいかがでしょうか?