ソーシャルレンディングは、投資手法としてのみならず「資金調達」の手段として近年注目されるようになっています。
また、海外では法人のみならず、個人間での資金調達手段としても頻繁に利用されています。
ソーシャルレンディングで個人が資金調達することができるのでしょうか?
目次
ソーシャルレンディングでお金を借りることができるのは「法人」のみ
結論からお伝えすると、2020年3月現在の日本国内のソーシャルレンディング会社は、融資先を法人に限定している会社ばかりです。
そのため、個人でのソーシャルレンディングによる資金調達は不可能です。
そこで、法人としてソーシャルレンディングから資金調達を行いたい方のために、うまくソーシャルレンディングを利用するためのポイントをお伝えします。
融資先の規定
ソーシャルレンディング会社では、ホームページに融資先に関する規定を掲載しているところがあります。
例えば、「オーナーズブック(OwnersBook) 」の運営会である株式会社ロードスターキャピタルは、融資を受けたい企業向けのホームページを用意しています。
その中では、「個人や個人事業主でも融資は可能か?」という質問に対して、「法人様に限り融資させていただいております」と回答しています。
「SBIソーシャルレンディング」や「レンデックス(LENDEX)」といったソーシャルレンディングサイトも、融資を受けたい事業者専用の問い合わせ窓口を用意していますが、個人を融資対象とする旨の記載はありません。
個人への融資がなくなった理由
では、なぜソーシャルレンディングの個人融資はなくなってしまったのでしょうか?
それは、個人向け融資で貸し倒れが頻発したからです。
かつては、日本のソーシャルレンディング会社でも、海外のように個人間向けの融資が頻繁に行われていました。
先ほどお伝えした「SBIソーシャルレンディング」では、今でも募集ファンドの一覧の中に個人向けファンドの実績が残っています。
例えば、「SBIソーシャルレンディング」の場合、「法人向け」では累計1,300億円以上の募集がありながら、貸し倒れによる損失額はわずか1億8,000万円ほどです。
つまり、貸し倒れ率は、0.2パーセント未満です。
しかし、個人間向け融資では貸し倒れ率が15パーセント近くであり、非常に高い確率で投資家の損失が生まれていたのです。
そのため、「こんなに貸し倒れが頻発するのは仕組みに問題がある」という個人投資家からの苦情が相次ぎ、また投資家の投資意欲が損なわれたことによって個人向け融資は行われなくなりました。
また、「AQUSH」という個人向けソーシャルレンディング専門のサイトも存在しましたが、そちらも貸し倒れが頻繁に発生したことにより、2020年現在サービスの運営を停止しています。
その結果、日本において個人の資金調達手段としてソーシャルレンディングが利用されなくなったのです。
その代わり、日本では個人でも即日の審査で100万円以上の融資を受けることが可能であるカードローンが、資金調達の手段として定着しています。
ソーシャルレンディングに頼らずとも、カードローンによって資金を調達できることから、ソーシャルレンディングは個人の資金調達の手段として定着しなかったとも考えられます。
ソーシャルレンディングで法人がお金を借りるために必要なこと
現在の日本では、法人であればソーシャルレンディングで融資を申し込めます。
しかし、どんな法人でも融資が受けられるわけではないこともまた事実です。
貸し倒れが頻発すれば、ソーシャルレンディング会社も投資家から信用を失うことになり募集に悪影響が出ます。
では、法人がソーシャルレンディング会社から融資を受けるためには、どのような準備をすれば良いのでしょうか?
必要事項①:資産価値の高い担保を用意する
ソーシャルレンディングにおいて、投資家がもっとも重視するポイントは「資産の保全性」、つまり「貸し倒れが起きても損失を負わないこと」です。
そこで、貸し倒れ時の返済に使われる担保力が必要とされます。
貸し倒れの場合に資産価値が高く価格が下落しにくい担保があれば、貸し倒れの際は担保を処分することによって投資家には資金が返済されます。
そのため、ソーシャルレンディング会社もまた、融資を希望する者が不動産などの資産価値の高い担保を用意できるかどうかを見定めるのです。
特に、安定した需要があって価格が落ちにくい都内のマンションなどが担保に設定されていれば、ソーシャルレンディング会社は融資してくれるでしょう。
必要事項②:財務状況を明かす
次に必要なものが、財務状況の公開です。
財務状況を開示し、ソーシャルレンディング会社に「当社は簡単には倒産しません」と明らかにすることが重要です。
数年前のソーシャルレンディング業界では、倒産寸前の会社への融資など、資金の回収が難しい会社への融資案件が濫発しました。
その結果、資金の回収が不可能になり、投資家は莫大な額の損失を出したことがありました。
それだけに、ソーシャルレンディング会社は今では融資先の会社の財務状況をシビアにチェックします。
「しっかりとした返済能力があること」「倒産するおそれのない会社であること」を証明すれば、ソーシャルレンディングを通して融資を受けやすいでしょう。
必要事項③:社名を開示する
財務状況を明らかにすることと同じくらい重要なことが、投資家に社名を開示することです。
ソーシャルレンディング会社に「案件に社名を掲載しても良い」と伝えることです。
2019年3月までのソーシャルレンディング業界は、融資先の匿名化が義務付けられていました。
しかし、その結果、返済される可能性の低い会社への融資案件が多発して投資家が損失を被ったのです。
そのため、2020年現在のソーシャルレンディング投資家は、融資先の会社に関する情報の有無をチェックするようになっています。
投資家から信頼される案件でなければ資金が集まりにくく、またソーシャルレンディング会社も審査を通してくれないことがあります。
匿名でも融資が受けられないわけではありませんが、ハードルが高くなります。
その上、投資家がなかなか資金を入れてくれません。
必要事項④:代表者連帯保証をつける
担保と同じく、貸し倒れ時に投資家の損失を防ぐものが「保証」です。
そこで、担保がない場合は、可能であれば代表者連帯保証をつけましょう。
保証が設定された案件であれば、投資家は損失を出しくくなり、ソーシャルレンディング会社も審査を通しやすくなります。
代表者連帯保証が設定された案件、保証会社の保証がついた案件であれば、貸し倒れが発生しても資金の大半を回収できます。
そのため、投資家は安心して投資できるようになり、資金が集まりやすくなります。
必要事項⑤:成功する可能性の高い事業計画を提出する
会社の情報だけではなく、集めた資金の用途や運営する事業の内容も明らかにしましょう。
融資先の会社の事業が成功する可能性が高ければ、資金の返済の可能性が高いとソーシャルレンディング会社に判断され、審査が通りやすくなります。
投資家の立場としても、資金を「どのような事業で」「どのような用途で使うか」がわかれば、情報から投資先としての是非を判断しやすくなるのです。
例えば、太陽光発電など国の買い取りが保証されている事業であれば、収益性が確保されているため成功する可能性が高いと判断してもらいやすいです。
そのため、ソーシャルレンディングで資金募集すれば、資金が集まりやすいでしょう。
そのように、成功する可能性が高い事業の資金調達であれば、ソーシャルレンディング会社の審査は通りやすいです。
法人がソーシャルレンディングでお金を借りるメリット
ソーシャルレンディングで資金を調達する際の金利は、決して低いものではありません。
銀行などの提携先の金融機関からお金を借りれば、1パーセント台の金利でお金を借りられることもあるでしょう。
会社や担保により異なりますが、ソーシャルレンディングの場合は低くても5パーセント、高い場合では10パーセントほどです。
しかし、単純に金利の差だけではない数々のメリットが、ソーシャルレンディングにはあります。
なぜ、いまソーシャルレンディングが企業の資金調達の手段として需要が高まっているのか、その理由を解説してきましょう。
メリット①:繰り上げ返済が次の融資に響かない
ソーシャルレンディング会社は、繰り上げ返済を行っても変わらず融資を行ってくれます。
そのため、必要なときに必要なだけの資金調達ができます。
金融機関から融資を受ける際は、確かに金利が低いです。
しかし、金融機関から事業資金を借りた場合、短期での繰り上げ返済を行うと違約金が発生したり、繰り上げ返済自体が敬遠され、次回以降の融資が受けられなくなったりすることがあるのです。
繰り上げ返済をすると、銀行が予定していた金利収入が減ってしまうためです。
銀行が安い金利でお金を貸してくれるのは、長期の返済を前提として金利収入を予定しているからです。
そのため、繰り上げ返済を行うと銀行の収入が減り、次回以降は融資してくれないという可能性もあります。
例えば、1,000万円を金利1.5パーセントで借りることができたとしても、必ず6年間で返さなければならない場合、支払い金利総額は90万円です。
一方、ソーシャルレンディング会社から金利6パーセントでお金を借りたとしましょう。
金利はソーシャルレンディングの方が高いため、同じ6年で返済するとなると金利総額は360万円になります。
しかし、1年で返すことができれば、支払い金利総額は60万円に抑えられます。
繰り上げ返済ができれば、最終的な支払い金利を抑えられます。
長期間の資金調達であれば金融機関から借りた方が良いですが、短期で返せる見込みがあればソーシャルレンディングの方が金銭的なメリットがあるのです。
メリット②:審査期間が短い
ソーシャルレンディングでは、最短1営業日から3営業日で融資審査の結果が出ます。
融資に際して担保価値を重視しており、その価値を判断するための資料が添付されていれば審査時間を大幅に短縮できるのです。
そのため、リファイナンスや不動産取得のつなぎ資金の調達などに、ソーシャルレンディングは大変便利なのです。
状況にもよりますが、銀行などの金融機関に融資の審査を申し込む場合は、結果が出るまでに2週間以上かかることがよくあります。
短期的な資金が必要な場合は、2週間も待てない会社が多いのではないでしょうか?
そんなときこそ、ソーシャルレンディングの出番なのです。
メリット③:メザニンローンの資金調達先として利用できる
ソーシャルレンディング会社は、メザニンローンの調達先として大変便利です。
ローンには、一般的に「シニアローン」と「メザニンローン」の2種類があります。
- シニアローン:一般的な銀行融資(金利が低い)
- メザニンローン:自己資金とシニアローンだけでは足りない金額を対象とした融資
自己資金とシニアローンだけでは、わずかに資金が不足するということがあります。
そこで、不足資金を補うためのメザニンローンを利用するためにソーシャルレンディング会社が使えるのです。
先ほどお伝えしたように、ソーシャルレンディングは融資の審査機関が短いことが特徴です。
そのため、一時的な資金不足を補いたいというときに大変役立つのです。
メリット④:お金を借りていることが外部に漏れにくい
ソーシャルレンディングでは、匿名のままお金を借りることが可能です。
もちろん、先ほどお伝えしたように、社名を出した方が投資家からの信用は得やすくはなります。
それでも、資産価値の高い担保を設定していれば、投資家は保全性を評価して多額のお金を投資してくれることもあるのです。
また、社名が公開されるのはソーシャルレンディングサイトの会員のみです。
誰しもが簡単にアクセスできる情報ではありません。
仮に社名を公開しても、情報の公開先は限られているのです。
そのため、ソーシャルレンディングを使ってお金を調達していることが、外部にはわかりにくいのです。
「取引先との関係で自社が資金を調達している事実が表に出て欲しくない」と考える会社もあるでしょう。
そういった会社にとって、ソーシャルレンディング会社は匿名のままお金を借りることができるため、とても便利な資金調達方法なのです。
まとめ
2020年3月現在、コロナウイルスが全世界に波及したため、経済的な不況がどの程度深刻なものになるのか、予測が未だに立っていません。
2008年のリーマンショック時には、数々の金融機関が貸し渋りを行った結果、会社の倒産が多発しました。
日本の麻生太郎財務大臣もそのことに触れ、「コロナショックでは、銀行が貸し渋りをしないように監視をしっかりと行う」旨の発言をしています。
しかし、それでも中小企業では資金の調達に困ることがあるでしょう。
ソーシャルレンディングであれば短期間で審査を行うので、早期に融資が受けられます。
また、1~2ヶ月の早期償還を行っても、特にペナルティは設定されません。
「一時的に資金が足りないけれど、少し経てば資金を返済できる見込みがある」また「換金性の高い担保があるけれど、金融機関からの資金調達には時間が足りない」といった会社は、ソーシャルレンディングでの資金調達を検討してみてはいかがでしょうか?
資金調達に関するご相談は下の問い合わせフォームから受け付けています。
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