ソーシャルレンディングは、「第二種金融商品取引業」に則って行われる投資手法です。
そして、第二種金融商品取引業にはインターネット上で投資が完結するといった特徴があります。
そのため、投資家が手軽に投資できる手法として近年人気を呼んでいます。
一方で、運用側としてはインターネット上で投資用資金の移動を全て完結させるシステムの開発が必要です。
ソーシャルレンディングサービスの運営を始めたいときに、どのような機能を持ったシステムが必要になるのかについてまとめてみました。
目次
ソーシャルレンディングのシステムに必要な基本機能
ソーシャルレンディングサイトを運営するにあたり、システム的にどのような機能が必要なのかについてお伝えしましょう。
投資側に必要な機能
主に、会員登録・投資案件に関する情報・投資のためのマイページの機能などが必要です。
【会員登録】
- 基本情報の登録
- 同意および確認事項について
- 適合性の確認
- 投資家として申請
- 本人確認
- 承認機能
【投資案件に関する情報】
- 募集する案件の表示
- 案件の詳細
- 検索
- 投資の実行
【マイページ】
- 口座情報
- 払戻しの依頼
- 運用予定表
- 投資の履歴
- 異動の明細
- 会員情報の修正
- 年間における取引報告書のダウンロード
- メッセージの送信・管理
借り手側に必要な機能
ソーシャルレンディングを通して資金の融資を受ける法人に必要な機能です。
借手会員登録とマイページ機能が必要となります。
【借手会員登録】
- 基本情報の登録
- 同意および確認事項について
- 適合性の確認
- 投資家として申請
- 本人確認
- 承認機能
【マイページ】
- 口座情報
- 払戻しの依頼
- 運用予定表
- 投資の履歴
- 異動の明細
- 会員情報の修正
- 年間における取引報告書のダウンロード
- メッセージの送信・管理
管理者に必要な機能
投資家・法人を管理する自社の管理機能です。
投資・借手会員の管理や案件の登録機能が必要です。
【投資会員の管理】
- 会員情報の編集
- 本人確認の承認機能
- 会員情報の変更・承認機能
【投資案件の登録】
- 投資条件の登録
- 当初条件の設定
- 借入れの目的
- ご参考
- 借手からの資料の提出
- リスクについての説明
- 投資の履歴
【借手会員の管理】
- 会員情報の編集
- 返済情報の一覧
- メッセージの送信・管理
ソーシャルレンディングのシステム開発は難しい
ソーシャルレンディングサイトを運営するにあたって求められるシステム開発は、決して簡単なものではありません。
金融関係のシステムでは、特に高度なセキュリティが求められるからです。
高いセキュリティが必要
ソーシャルレンディングサイトにおいて、ログインに必要な個人情報が外部に漏洩することがあってはいけません。
IDとパスワードがわかってしまえば、各投資家の個人ページにログインして口座から出金することが可能になってしまいます。
投資家である本人と名前が一致して、はじめて銀行口座に出金が可能になるシステムを構築する必要があります。
ハッカーに狙われやすい
ソーシャルレンディング関係のサイトで高度なセキュリティが必要な理由は、金融関係の会社はハッカーに狙われやすいからです。
ハッカーにサイトをハッキングされて投資家の情報が筒抜けになってしまった場合、ハッカーが盗み出したIDとパスワードを悪用してサイトにログインし、投資家の資金を勝手に引出してしまうおそれがあります。
また、資金が引き出されないにせよ、個人情報を盗み取って他の投資向けサイトに転売されるなどの被害も考えられます。
金融系のサイトの情報は、ハッカーにとって非常に換金の可能性が高いお宝情報です。
それだけに、システムを構築するときは簡単に個人が特定されないようにする仕組みが必要です。
トラブルが起きた企業の実例
ソーシャルレンディング関係のサイトでは、今までにハッキングにあった事例はありません。
しかし、近年にハッカーに狙われた金融系のサイトの実例を見てみましょう。
まず、仮想通貨の取引サイト「コインチェック」があります。
仮想通貨は、2017年の後半に投資が急速に加熱しました。
ビットコインの価格が年初からみて数十倍に上昇したことにより、多くの投資家が仮想通貨を売買できるサイトにこぞって登録しました。
その中で、仮想通貨を取り扱っていたコインチェックがハッキングされ、600億円もの被害が発生したとニュースで取り上げられました。
投資家に賠償は行われましたが、運営側が失った信用は計り知れないものがありました。
資金を投資家に返金できれば良いというわけではなく、信用を失うこと自体がのちのちの営業に大きな影を落とします。
また、同じく仮想通貨取引サイトの「ビットポイントジャパン」でも30億円の資金流出が発生しています。
日本だけではなく、海外でも仮想通貨のサイトがハッキングされたという話はよく耳にします。
取り扱う金額が多ければ多くなるほど、ハッカーに狙われる可能性が高くなると言えるでしょう。
ソーシャルレンディングのシステム開発会社を選ぶ際のポイント
決してリスクが低いとは言えないソーシャルレンディングなど金融関連のシステム開発。
自社でソーシャルレンディング投資のサービスを安全に運用していくには、どのようなシステムの開発会社に依頼するべきでしょうか?
システムの開発に必要なスキルや実績のポイントについてまとめました。
ポイント①:金融関連のシステム開発実績がある
まず重要なのは、依頼先の会社に金融関連のシステムの開発に関する実績があるかどうかです。
セキュリティが特に重要だと熟知しているリーダーがいれば、人員の手配やシステムの設計がスムーズに進みます。
しかし、開発実績がない会社の場合、随時発注元がチェックを入れなければなりません。
受注側がチェックを怠った場合、不十分な機能のサイトになるおそれがあります。
そういった事態を防ぐため、過去に金融関連のシステムの開発で実績がある会社を選びましょう。
ポイント②:運用・保守の実績がある
次に重要なのは、金融関連で運用や保守の実績があるかどうかです。
金融関連のシステムは、一度作ったらそこで終わりではありません。
自社でサービスを長期間提供していくには、5年・10年と運用できるシステムでなければならないのです。
また、サービスを長く提供していくには、システムのアップデートやセキュリティのチェックなどが必要です。
随時問題点を洗い出して顧客の要望を吸い上げる会社、そして顧客の要望を機能面のアップデートに反映させることのできる会社が理想です。
サイトを引渡してそこで終わりでは、サイトのセキュリティ性の向上や新規サービスの導入などの芽を断ち切ってしまいます。
非常に不安定な状態で、しかもサービスを長期間ほったらかしにすることは無謀です。
また、開発した会社とは別の企業にサービスの運用や保守を依頼する場合、システムをイチから解析・設計し直す必要があり、結局は莫大なコストがかかります。
コストパフォーマンスの意味でも、運用や保守の実績が豊富な会社を選ぶようにしましょう。
ポイント③:金融に関する法律を理解している
金融関連のシステムを開発するためには、単純にシステムを構築できるだけではなく、金融関連の法律を理解していることが重要です。
システムの開発会社に、法律関係のスペシャリストはなかなかいるものではありません。
基本的には、監督要員として弁護士や税理士などをプロジェクトのメンバーに入れることになります。
そういった人間とのやり取りに長けた担当者がいれば、法令関連のチェックもスムーズに進められるでしょう。
ポイント④:納期管理ができる
金融関連のシステムの運用においては、非常にシビアな納期の管理が求められます。
特に、セキュリティになんらかの問題が生じた場合、即座に対応できなければサイトの信用が著しく毀損します。
結果的には利用者が大きく減ってしまうおそれがあるのです。
また、営利目的のサイトの運営で機能を実装する場合、スケジュールの管理に厳密なものが求められます。
納期をきちんと管理できる会社に依頼しましょう。
金融関連に限定しませんが、納期を管理できない会社にシステムの構築を依頼しても、思ったようにサービスの運用ができずに自社の利益を大きく失う可能性があります。
ポイント⑤:要件定義を行う担当者も必要
金融関連のシステムの開発において実績のない会社の場合、金融関連のシステムをイチから委託すると必要な要件を定義できず、システムの構築が進まないことがあります。
その場合は、自社で要件の定義を細かく行い、発注側が詳細な設計書などを用意する必要が生じます。
開発が長期化する恐れがあるので、要件定義ができる開発会社の人間がいるかどうかをチェックしましょう。
迅速なトラブル対応とシステムのアップロードが必須
トラブルに対応する能力が高い企業を選ぶことも、ソーシャルレンディングサイトのシステム開発に必須です。
トラブル対応は企業の生命線
金融関連のシステムの問題は、同時に資金をめぐってのトラブルに直結します。
損失が発生すれば、投資家から猛烈なクレームが入ります。
トラブルへの対応をスムーズにこなせるかどうかで、それまで集めた顧客が1日にしていなくなってしまうこともあるのです。
逆に、スムーズに対応できるのであれば信用を失うこともなく、むしろ「トラブルにしっかりと対応した」などの高い評価を得て投資家の支持を得るケースもあります。
トラブルへの対応は企業が存続するための生命線だと思っておきましょう。
安定したシステム運用ができる企業との契約すべき
繰返しになりますが、システムを安定して運用できる企業と契約するべきです。
多少は運用上のコストが高くても、またトラブルに繰返して対応するよりも、問題を発生させない開発会社のほうが最終的にはコストが抑えられます。
顧客の意見を取り入れたシステム改善ができるパートナーと提携する
金融関連のシステムは随時アップデートが求められます。
競合他社で新しいサービスが導入された場合、対抗するためには自社も新たにサービスを追加しなくてはなりません。
クライアントの意見を柔軟に取り入れる姿勢を持つ開発会社、できることはできる、できないことはできないときっぱりと断言するような開発会社と提携しましょう。
できれば、長期間にわたって同じ担当者がつく開発会社が理想です。
同じ担当者がつけば、自社のシステムをよく理解していますからソーシャルレンディング業界に対する理解も深くなります。
「こういった機能が必要ですね」などと提案を持ちかけてくれることもあるでしょう。
まとめ
ソーシャルレンディングのサイトの構築は、金融関連だけに高度なセキュリティが求められます。
サイトの開発を依頼するときは、次の2つが大切です。
- 金融関連のシステムを開発した経験がある会社
- 金融に関する法律を理解している担当者がいる会社
また、システムを構築した後の運用まで考え、運用や保守の実績が豊富な会社を選びましょう。
そういった会社を選べば、サイトの運営が安定してソーシャルレンディング投資家の信頼を得ることができるようになるでしょう。