目次
日本国内におけるソーシャルレンディングの現状と課題
日本国内のソーシャルレンディング市場の規模は、2018年度で約1,800億円に達しました。
2019年度は2,000億円前後になるとの予測が立てられています。
年々、市場規模は拡大しているものの、欧米のソーシャルレンディング市場に比べて小規模です。
そこで、今後日本のソーシャルレンディング市場が拡大するには何が必要か、今後はどうあるべきかを考えてみました。
現状①:融資先の情報が開示されているわけではない
2019年3月から金融庁の指導により、融資先の匿名化が解除されました。
その結果、融資先の企業名などの情報公開が可能になりました。
しかし、全てのソーシャルレンディング会社において融資先の名前が開示されているわけではありません。
また、公開されている情報の量にもばらつきがあります。
法律である程度の情報開示が義務付けられれば、投資家に投資先の検討に必要な情報が開示され、投資家も自己判断の上投資できるようになるでしょう。
現状②:融資先が不動産業界に偏っている
2019年現在のソーシャルレンディングの案件を見る限りでは、人気があるのは不動産関係の案件です。
理由は、融資の際に不動産担保が設定されるからです。
担保が設定されていること自体は、評価されるポイントです。
ただし、不動産市場が下落すれば、一気に貸し倒れや担保の評価割れが起こる可能性があります。
現状③:個人間融資が進まない
欧米でソーシャルレンディング市場が発展しているのは、個人間融資が人気だからです。
資金を必要とする個人と、資金を貸して不労所得を増やしたい個人、両者を結びつけることで大きなソーシャルレンディング市場が生まれています。
しかし、日本では個人間融資を行っていたソーシャルレンディング会社はなくなるか、もしくは取り扱いを中止しており、2019年現在では個人間融資に関係する案件は存在しません。
現状④:安定した案件の供給が行われていない
ソーシャルレンディング各社が提供する案件を見ると、2019年現在は募集を開始すると同時に上限に到達してしまう勢いです。
ソーシャルレンディング会社の中には抽選制度を導入するなど、投資家の投資意欲に対して案件の供給が追いついていない状況です。
不動産業界以外の安定した案件が提供されるようになれば、投資家にとって資金の投下先がより多く生じ、ソーシャルレンディング業界が今まで以上に拡大するでしょう。
現状⑤:単純に知名度が低い
「ソーシャルレンディング」という投資名の定着度も、まだまだ低いと言えます。
ソーシャルレンディングと聞いてピンと来る人はおそらく、100人のうち10人ほどいれば良い方ではないでしょうか?
一方で、「クラウドファンディング」は一般のニュースでも報道されることが多く、知名度は定着していると言えます。
ソーシャルレンディングの今後・未来:2020年
2019年は、金融庁によって匿名化が解除され、ソーシャルレンディング各社が融資先の情報公開を行うようになりました。
その流れを受け、2020年にはどのような変化が生じるのでしょうか。
予想①:融資先の詳細な情報を行う会社が増加する
今のソーシャルレンディング案件において投資家が注目するのは、「リスク対策」です。
返済の遅延や貸し倒れが発生したときに、どのようなプロセスで資金を回収するのか、リスク対策に焦点を当てた投資案件が登場すると予想します。
すでに、SAMURAIでは保証会社による保証付きの案件が登場して人気を得ています。
保証会社を利用したソーシャルレンディング案件が増加しそうです。
予想②:ファン活動に近いソーシャルレンディング案件が登場する
ファン活動に近い案件の登場も、2019年の流れを受けての予想です。
LENDEXでは、格闘技イベントRIZINの運営資金ファンドの募集が行われ、なんと20秒で5,000万円を集めました。
- 【速報】LENDEX(レンデックス)が初の不動産以外の「RIZIN案件」「匿名化解除」発表
格闘技のイベントだけではなく、例えばアイドルやスポーツ選手の活動資金の募集など、ファン活動に近い案件が増える可能性があります。
今後は、従来の購入型クラウドファンディングに近い性質を持つソーシャルレンディング案件が登場する可能性が高いでしょう。
応援を目的とした投資であれば、たとえ思ったようなリターンが得られなくても、投資家はある程度納得できると考えられます。
予想③:人間融資の仲介を行うソーシャルレンディング会社が登場する
先にお伝えしたように、現在の日本では個人間融資の市場はほぼ存在しません。
ソーシャルレンディングに代わり、カードローンが個人の資金調達の手段として大きな支持を集めています。
例えば、SAMURAIがグループ内に債務回収会社を抱えているように、債務の回収ノウハウのある会社と提携し、個人相手であっても資金を回収する業務をこなせるソーシャルレンディング会社が存在するようになれば、個人間融資が再び脚光を浴びる日が来るかもしれません。
ソーシャルレンディングの今後・未来:5年後
2019年の5年後のソーシャルレンディング業界は、果たしてどのように発展してるでしょうか?
クラウドアンサー編集部が独自に予測してみました。
5年後の予想①:大手資本の参入
SBIソーシャルレンディングのように、大手金融グループがソーシャルレンディング業界に参入することが予想されます。
主な融資先が東証一部上場企業になるなど、大手金融グループならではの融資活動が目立つようになるでしょう。
一案件で10億円単位の大型案件を用意できれば、ソーシャルレンディング投資家の受け皿にもなり、より一層の市場拡大が望めます。
5年後の予想②:大手企業への融資案件の登場
例えばFunds(ファンズ)のように、一定の規模を持つ大手企業に向けた融資案件が増加する可能性があります。
直接的に担保を設定するのではなく、融資先企業の知名度や資本力などを保証の代わりにします。
5年後の予想③:AIによる投資対象の妥当性を判断
ソーシャルレンディング案件の融資先の選定では、ソーシャルレンディング各社が独自の基準を用いて妥当性の審査を行っています。
プロセスはブラックボックス化されていますが、審査する人間の個人的な意志が介在することもあります。
一方で、近年の投資の現場ではAI(人工知能)による投資判断が用いられていることから、ソーシャルレンディング業界でもAIが導入され、融資先が選定されるようになるかもしれません。
また、融資先の情報から融資金利が妥当なのか、返済能力はどうなのか、融資先企業の実績を見ながらAIが適正な金利と返済期間を設定するといった動きが出てくるかもしれません。
そのように査定を透明化かつ自動化できれば、ソーシャルレンディング案件が増加する可能性は高いでしょう。
5年後の予想④:ロボアドバイザーとのコラボ
最近では、人気の投資手法の一つであるロボアドバイザー。
主に株式や債券、為替などを投資対象とし、人工知能が自動的にポートフォリオを構築します。
近頃はロボアドバイザーの投資対象に仮想通貨が登場するなど、多種多様に投資対象を組み込むようになりました。
ロボアドバイザーが投資対象としてソーシャルレンディングを組み込むようになれば、ロボアドバイザーを通じてソーシャルレンディングに投資する投資家も一気に増えるでしょう。
ソーシャルレンディングの今後・未来:10年後
では、ソーシャルレンディング業界は10年後にはどうなっているのでしょうか?
日本でソーシャルレンディングが登場してからまだ10年程しか経っていませんが、次の10年後にはどのようになるのか。
10年後の未来を予想することは容易でありませんが、クラウドアンサー編集部の独自の見解をお伝えできればと思います。
10年後の予想①:ATMのように手軽な資金調達が可能になる
ソーシャルレンディングへの投資と融資が半自動化されている未来が予想されます。
投資家は、投資の条件をあらかじめ決めた上で、ソーシャルレンディング会社の口座に入金します。
資金を調達したい個人は、ソーシャルレンディング会社の端末やアプリなどに個人情報や担保、経歴などを証明する書類を提出します。
提出後に人工知能が書類を審査して、個人の属性に応じて一定額の資金が融資されるというプロセスです。
投資家は、融資が決まった後に投資資金がどのような個人案件に融資されるかをチェックできます。
人工知能を用いて、投資家の資金と個人の融資需要を結びつけます。
つまり、半自動的に融資と投資が可能になるのです。
10年後の予想②:社債のように資金が募集される
現在も、大手企業は社債を発行し、個人から資金調達を行っています。
社債だけではなく、ソーシャルレンディングでの資金調達も増加するでしょう。
社債はローリスク・ローリターンですが、ソーシャルレンディングはミドルリスク・ミドルリターンです。
個人投資家が欲しいリターンに応じて、投資手法を使い分けられるようになるのです。
個人や企業の身近な資金調達手段になるために必要なこと
ソーシャルレンディングが日本においてより身近な資金調達の手法に、そして、個人の投資先になるには、どういったポイントを押さえなくてはならないのでしょうか?
クラウドアンサー編集部が独自にソーシャルレンディング業界に提言します!
必要なこと①:審査のシステム化
資金調達は、とにかく時間が勝負であることが多いです。
不動産担保ローンなどに比べてソーシャルレンディングは審査に要する時間は短いです。
それでも、カードローンでの資金調達よりも融資までの時間がかかります。
カードローンの需要を超えるためには、ソーシャルレンディングが、
- さまざまな場所
- 短い時間
で融資が受けられるようになるシステム作りが必要でしょう。
そのためには、先ほどの予想の中にも登場したAI(人工知能)による審査のシステム化が重要だと考えられます。
「個人が必要なときに短時間で資金を調達でき、かつ投資家側は資産運用が手軽にできるようになる」
このような未来が実現すれば、ソーシャルレンディングは一気に普及することでしょう。
必要なこと②:融資先の透明化と信用の獲得
2018年に発生したソーシャルレンディング各社の行政処分で、ソーシャルレンディングは信用を損なった側面があります。
一方で、2019年は情報開示が進んだことによって信用は回復したものの、成長が鈍化してしまった感は否めません。
その意味では、融資先がどのような会社や個人であるのか、そして資金の用途の詳細を投資家に説明し、融資時に回収するスキームを提示することが必要です。
カードローン会社との提携や資金回収会社との提携など、他業種との連携が必須になるでしょう。
まとめ
クラウドアンサー編集部が独自に予想する「ソーシャルレンディング業界の今後・未来」についてお伝えしました。
今回挙げたものは、あくまでも5年後、10年後の希望的な観測を含めたものであり、実現する可能性は誰にとっても未知数であることはご承知おきください。
アメリカのソーシャルレンディング市場はすでに数兆円を超える規模だと言われており、日本のソーシャルレンディング市場はまだまだ小規模だと言えます。
ソーシャルレンディングがより身近な個人の資金調達先になれば、日本では起業家が増え、個人が手軽に資産運用できる環境が整います。
老後に必要な「2,000万円」にも備えやすくなるのではないでしょうか。
そのためには、まずは融資先の透明性、安全性、そして、資金の回収方法などを各ソーシャルレンディング会社が真剣に考える必要があると考えられます。
クラウドアンサー編集部では、ソーシャルレンディングの変遷について独自の見解で分析しています。
他の記事もオリジナルの目線で分析しているので、ぜひチェックしてください。
【2020年の予想】
【2017年~2018年の分析】
【2013~2016年の分析】
【黎明期】