資金を調達する手段にはさまざまな種類があります。
銀行から融資を受ける際には、担保が必要となることが多いです。
所有する不動産を担保として金融機関から融資を受けることができるローンのことを「不動産担保ローン」と呼びます。
資金調達の手段の一つとして不動産担保ローンの利用を検討するために、特徴について解説していきましょう。
目次
不動産担保ローンのメリット
まずは、不動産担保ローンのメリットについてお伝えしていきます。
メリット①:事業用資金に使える
金融機関から融資を受ける場合、住宅ローンのように資金の用途が制限されているローンがあります。
その場合契約した用途以外に使っていると、契約違反として一括返済を求められたり、より高い金利のローンへの借り換えを求められることがあります。
しかし、不動産担保ローンは一般的に用途制限がありません。
不動産自体の資産価値から算出された金額に基づき融資を受けた資金は、債務者が自由に使うことができます。
カードローンなどは事業の運転資金に使えないことが多いですが、不動産担保ローンの場合は用途の審査はなく、担保不動産の審査が重要とされます。
そのため、個人や法人が事業用の運転資金として使用することができるのです。
メリット②:長期間の返済期間を設定できる
不動産担保ローンは、長期の返済期間を設定することができます。
カードローンや消費者金融ローンの場合、金利が高い上に返済期間が数年ほどと短いものが多いです。
大金を借り入れれば借りれるほど返済に苦しむことになり、会社のキャシュフロー改善など、根本的な経営問題の解決にはつながらないことがあります。
しかし、不動産担保ローンの場合であれば5年から30年といったように、長期の返済期間を設定することができます。
そのため、毎月の返済負担が少なく返済リスクを低減することができます。
資金を調達して会社の資金繰りを改善させる効果が見込めることも不動産担保ローンのメリットです。
メリット③:金利が比較的低い
カードローンの場合、少ない金額であれば金利は3パーセントほどで借りられることもあります。
ただ、金額が多ければ多くなるほど返済金利が高くなり、10パーセント以上という非常に高金利になってしまうことがあります。
一方、不動産担保ローンの場合は担保が必須である代わりに、担保の資産価値が認められれば金利が低くて済みます。
担保がしっかりしたものであれば、金融機関にとっても回収リスクが低いからです。
そのため、大金を借りたとしても金利3パーセントから8パーセントといった低めに設定されています。
長期間の返済が可能で、金利も低いという2つのメリットがあるため、会社や事業の運転資金調達に向いているのです。
メリット④:おまとめローンとして使っても良い
不動産担保ローンは、その用途が比較的自由です。
そのため、不動産担保ローンを借りて他のローンまとめて返済することができます。
例えば、事業用ローンを金利5パーセント、返済期間3年で500万円の融資を受けていたとしましょう。
別の用途でカードローンを金利6パーセント、返済期間2年で500万円を借りていたとします。
そうすると、毎月15万円+22万円=37万円ほどの返済が発生します。
事業資金の資金繰りに使うにしても、返済負担が大変大きいです。
しかし、返済期間15年金利3パーセントで1,000万円の不動産担保ローンを借りることができたとするとどうなるでしょうか?
その場合、毎月の返済金額は7万円弱に抑えることができるようになります。
つまり、毎月の返済額を37万円から7万円にまで大幅に減らすことができるのです。
さらに、金利自体を下げることができるため、事業用資金に調達先としてのメリットは大変大きいです。
借りられる金額が大きいほど、返済期間を長く設定できるメリットが生きてくるのです。
不動産担保ローンのデメリット
もちろん、不動産担保ローンはメリットだけではありません。
不動産担保ローンを借りる際の注意点や、リスクについても知っておきましょう。
デメリット①:融資までの時間がかかる
審査を申し込んでから、融資が下りるまでに時間がかかります。
カードローンは最短で1日で融資が受けられることがあります。
金額そのものはあまり大きくないですが、「どうしても今日お金が必要だ」というときに、すぐにお金を調達できるのは心強いものです。
しかし、不動産担保ローンの場合は金融機関が長期間の返済を設定する代わりに、担保となる不動産の価値が適切かどうか十分に審査をしてからでないと融資を受けられません。
審査に1週間ほどかかることもありますし、借りる金額が大きかったり、担保不動産の規模が大きければ、審査に1ヶ月近くかかることもあります。
急場しのぎの資金調達手段として、不動産担保ローンは適していません。
デメリット②:手数料が高い
不動産担保ローンで融資を受ける場合は、数々の事務手数料が発生します。
主なものには次のような手数料があります。
- 事務手数料
- 不動産鑑定費用
- 印紙代
- 抵当権、根抵当権の登記費用
融資に伴う事務手数料として、例えば「住信SBI銀行」の場合は次のようになっています。
【事務取扱手数料】
お借入れ時に以下の事務取扱手数料がかかります。
・保証委託事務手数料:お借入金額の1.296%(消費税込)
・融資事務取扱手数料:お借入金額の0.864%(消費税込)
※消費税額は、ご融資実行日時点の適用税率に基づき算出されます。【印紙税】
印紙税相当分の印紙を金銭消費貸借契約書(不動産担保ローン)に貼付します。
借入金額100万円超500万円以下 :2,000円
借入金額500万円超1,000万円以下:10,000円
借入金額1,000万円超5,000万円以下 :20,000円
借入金額5,000万円超1億円以下 :60,000円
さらに、不動産担保ローンならではの手数料として、まず不動産の価格を算出するための「不動産鑑定費用」がかかります。
場合によっては不動産鑑定士に依頼しなければならないため、不動産鑑定士の報酬などが必要になってくるのです。
さらに、不動産を担保にするために、債権者である不動産担保ローン事業者が抵当権と根抵当権の設定を記します。
その登記費用も債務者の負担になります。
決して金額は小さくはないので、1,000万円の資金を調達しようとしても、数十万円前後の費用がかかってしまうことを覚えておきましょう。
デメリット③:返済不能になった場合不動産が処分される
不動産を担保に設定しているため、もし借りたお金を返済できければ、所有している不動産を失うことになります。
抵当権が設定されているため、債務返済の代わりに不動産を処分する権利を債権者(ローンの貸し手)が有します。
会社の社屋や自宅を失うリスクがあるということを、しっかりと把握しておきましょう。
不動産担保ローンを借りられる代表的な金融機関
これまで、不動産担保ローンのメリット・デメリットについてお伝えしてきました。
続いて、不動産担保ローンを借りることができる主な金融機関を3つ紹介しましょう。
住信SBIネット銀行
出典:住信SBIネット銀行
実質年率 | 2.950%~8.900% |
金利体系 | 変動金利 |
借入可能額 | 300万円~1億円 |
借入期間 | 1年~25年 |
審査回答期間 | 1日程度 |
特徴 | 他のローンのおまとめも可能 |
アサックス
出典:アサックス
実質年率 | 2.600%~15.000% |
金利体系 | 固定金利 |
借入可能額 | 300万円~10億円 |
借入期間 | 3ヶ月 ~ 30年 |
審査回答期間 | 最短即日 |
特徴 | 東証一部上場企業 |
楽天銀行
出典:楽天銀行
実質年率 | 2.850%~9.450% |
金利体系 | 固定金利 |
借入可能額 | 100万円~9,990万円 |
借入期間 | 1年~25年 |
審査回答期間 | 最短1日 |
特徴 | ネット銀行ならではの低金利 |
ソーシャルレンディングも選択肢の一つ
不動産担保ローンは資金調達手段として便利ですが、融資にかかる時間が長いため計画的に利用しなければなりません。
そこで、すぐに資金が必要になったときに利用できるもう一つの手段として「ソーシャルレンディング」を検討してみましょう。
ソーシャルレンディングとは
ソーシャルレンディングとは、クラウドファウンディングのシステムを利用した資金調達手段です。
別名「貸付型クラウドファンディング」とも呼ばれます。
借り手側であるあなたは、まずソーシャルレンディング会社に担保や保証、事業内容を説明し、資金を貸してくれないかと依頼します。
すると、ソーシャルレンディング会社はその担保や保証、事業内容を吟味します。
担保がある場合、その担保の資産価値の一定の割合まで資金を貸し出してくれます。
そして、資金はネットを通じて個人投資家から集めます。
その集まった金額を、あなたに対して一定の金利を上乗せして融資をしてくれます。
金利を支払う必要はありますが、担保の価値や事業内容、会社の信用性を審査し、多額の金額を集めることが可能です。
また、担保なしで融資を受けられるケースもあります。
ソーシャルレンディングで資金調達するメリット
では、不動産担保ローンではなく「ソーシャルレンディング」を利用して資金を集める場合、どようなメリットがあるのでしょうか?
大きく、次の3点があげられます。
メリット①:短期間での資金を調達をしやすい
ソーシャルレンディングの審査にかかる時間は、2日から1週間ほどです。
不動産鑑定書などがあれば、もっと早く審査が終わることもあります。
不動産担保ローンよりも、圧倒的に素早く資金調達することが可能です。
メリット②:多額の資金調達が可能である
資産価値の高い不動産を所有していれば、その評価額の評価額の8割ほどの資金をソーシャルレンディングを通じて調達することが可能です。
ソーシャルレンディング会社は、LTV(Loan to Value)を80パーセント前後に設定していることが多いです。
つまり、1億円ほどの価値がある不動産を所有していれば、8,000万円ほどソーシャルレンディング会社を通じて複数の投資家から調達可能です。
メリット③:資金調達していることが銀行や他の事業者に分かりにくい
ソーシャルレンディングは貸金業法に則って運用されています。
そのため、どのような事業者に融資しているか、情報を開示するかはソーシャルレンディング事業者の裁量に委ねられています。
したがって、募集案件には融資先の名前は記載されないことが多いくあります。
匿名で資金を調達できるので、資金繰りが苦しいことなどが銀行や仕事で付き合いのある会社に発覚しにくいメリットがあります。
ただ、近頃は匿名化を解除することが可能になりました。
投資家視点からすれば融資先の名前が明らかにされている案件の人気があり、資金が集まりやすいです。
こんな場合におすすめの資金調達方法
では、一体どんな場合にソーシャルレンディングを利用するのが良いのでしょうか?
特におすすめなのは、次の3つのケースです。
ケース①:大規模な不動産を購入したい
ソーシャルレンディングが資金調達の手段として最も多く使われるのは、不動産購入費用です。
古いビルやマンションなどを購入し、リフォームなどで加工して高く売却して利益を得るといった場合の資金調達によく利用されます。
購入する不動産を担保にできるので、審査が通りやすいからです。
ケース②:短期間で利益が出る見込みのある事業を進めるための資金が必要
短期的に収益が見込める事業の運転資金としても、資金調達としてもソーシャルレンディングはおすすめです。
たとえ10パーセントというやや高めの金利で融資を受けたとしても、新規事業で高い利益がすぐに見込めるのであれば、ソーシャルレンディングで資金を調達しても、素早く返済することで利益を獲得できるからです。
ケース③:転売できる投資商品を購入したい
投資商品の中には、短期間の転売で利益を出せるものがあります。
「資金さえあれば、収益性の高い商品が購入できるのに目先の資金がない。」といった場合の資金調達の手段としても、ソーシャルレンディングがおすすめです。
ソーシャルレンディングで融資を受けるには、必ずしも担保が必要なわけではありません。
短期間での返済が見込まれる案件は、投資家からの人気も高いです。
高金利で融資を受けても、短期間であれば金利支出を抑えられます。
ソーシャルレンディングでの資金調達については、こちらで詳しく解説しています。
一度目を通しておくことをおすすめします。
まとめ
不動産担保ローンは、不動産を所有してれば多額の融資を受けられます。
そして、低金利・長期返済という住宅ローンと同じメリットがあります。
ただし、その代わり融資までに時間がかかり、またどんな不動産でも必ず担保にできるわけではないというデメリットがあります。
「不動産はあるけれど、融資を待つ時間も猶予がない。」「それほどの価値ではないが、とりあえず不動産を持っているので資金調達をしたい。」という場合には、ソーシャルレンディングの利用も合わせて検討してみましょう。
多様な事業資金の調達手段を知っておけば、経営リスクを減らしていくことができますよ。
また、資金調達に関するご相談は下の問い合わせフォームから受け付けています。
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