多くの人が加入している生命保険でも、資産運用することができます。
最近は、老後の資産形成に危機感からか資産運用に関心を持つ人が増え、保険での運用にも注目が集まっています。
しかし、保険での資産運用は万人にぴったりとは言えません。
向いている人と、向いていない人がいます。
この記事では、保険で資産運用ができる仕組みやメリット・デメリット、具体的な保険商品について解説していきます。
向いている人・向いていない人の特徴もお伝えするので、ご自身が保険で運用するべきかどうかを考える参考にしてください。
保険での運用が向いていない人のために、他の資産運用の方法も解説します。
目次
保険で資産運用できる理由と仕組み
保険は、保険の対象となっている人が病気になったり、自己にあったりしたときに、お金を支払ってくれるものです。
保険に加入するには定期的に保険料を支払うことになりますが、万が一のときの医療費など莫大な金額を保険でまかなうことができるため、多くの方は死亡保険や医療保険などに加入していることでしょう。
保険には、万が一のときの保証だけでなく、「満期金」と「解約返戻金」を受け取れることがあります。
満期金とは、保険の契約が終了するまで無事故に過ごせた人がもらえるお金です。
解約返戻金とは、保険の契約の途中で解約したときに、商品ごとに決められた条件を満たしていれば、返金してもらえるお金のことです。
保険商品によっては、支払った保険料の合計よりも満期金や解約返戻金の方が高額になるケースがあります。
つまり、保険を通してお金を増やすことができるのです。
これが、保険で資産運用ができる仕組みです。
保険で資産運用するメリット
先ほどお伝えした仕組みで、保険により資産運用することができます。
資産運用できる商品は保険以外にもありますが、ここでは保険ならではのメリットを3つお伝えしましょう。
メリット①:病気や死亡で保険金を受け取れる
保険は資産運用の前に病気や死亡を補償する商品なので、万が一のときに保険金を受け取れるメリットがあります。
仕組みの項目でも解説したように、保険の対象となっている人が病気や事故に遭った場合、保険の契約で定められたお金を受け取れるため、治療費に充てることができます。
死亡保険の対象となっている人が死亡した場合、遺族は一時金や年金をもらうことができます。
保険で運用する最も大きなメリットは、資産運用と病気や死亡の補償を一つの商品でカバーできることです。
別々に商品を探すのは面倒だと感じる人は、保険で運用することを考えてみてはいかがでしょうか?
メリット②:資産運用のプロに任せられる
資産運用もできる保険に加入すると、資産運用の部分は運用会社に在籍するプロが行ってくれます。
保険に加入している人が運用に手間をかけなくて良いため、これも保険で運用するメリットです。
これから資産運用をしてみたいと考えている初心者の方は、どんな商品に投資すれば良いのか悩んでしまうことでしょう。
保険ならプロに任せられるので、投資で失敗しにくいです。
メリット③:所得控除で節税ができる
資産運用ができる保険商品に加入する場合も、生命保険の保険料は所得控除の対象となるケースが多く、節税に役立てられるメリットがあります。
一般的な貯金や投資への拠出では節税できないため、保険ならではのメリットだと言えます。
生命保険料の控除を受けて節税するためには、確定申告が必要です。
会社に勤めているサラリーマンの場合は、年末調整のときに会社に生命保険料控除証明書を提出しましょう。
個人事業主の方など自分で確定申告をする方は、証明書の内容を確定申告の書類に転記して申告します。
保険で資産運用するデメリット
保険で資産運用するメリットを紹介してきましたが、もちろんデメリットもあります。
保険での資産運用を始める前に、次3つのデメリットも理解するようにしてください。
デメリット①:保険料が高い傾向がある
資産運用ができるのは「満期金」や「解約返戻金」を積み立てる貯蓄性の保険ですが、これらの商品は保険料が高い傾向にあります。
「積立」と「補償」を両立するため、契約した人が支払う保険料は高くなってしまうのです。
ちなみに、貯蓄性でない保険には「掛け捨て」というタイプがあります。
掛け捨ては保険料が安いです。
掛け捨ての場合、事故があった場合は補償されますが、無事故で満期を迎えても満期金は支払われません。
貯蓄性が無いので「掛け捨て」という名前ですが、保険で資産運用をしない人にとっては掛け捨てで十分というケースもあります。
また、資産運用の部分を資産運用会社のプロに任せるため、手数料を支払うことになります。
手数料は保険料に含まれるため、保険料が高くなりがちなのです。
デメリット②:途中で解約すると元本割れする可能性がある
コツコツと積み立てていく貯蓄性の保険でも、途中で解約すると「支払った保険料の合計>解約返戻金」となってしまうことがあります。
つまり、「元を取れない」という元本割れの状態になるデメリットがあるのです。
特に、加入した直後に解約すると元本割れを起こす可能性が高いです。
死亡するまでずっと補償される保険や、20年など長期間にわたって補償される保険に入る場合、数年で解約すると元本割れしやすいのです。
長期の貯蓄性保険に入るときは、途中で解約すると損をするかもしれないため、よく考えて商品を選ぶ必要があります。
デメリット③:期待した満期金が手に入らない可能性がある
一般的に、保険商品は加入するときに「保険料は〇〇〇円」「満期金は〇〇〇円」としっかり決められています。
しかし、「運用成績によって満期金は変動」という契約の商品も存在します。
後者の商品を契約した場合、いざ満期を迎えたときに「当初に聞いていた金額より満期金が少ない」という事態が起こり得ます。
満期金が変動するのは、保険の運用成績と満期金の金額を連動させているからです。
このような商品は保険料が若干安いという特徴がありますが、満期金が期待したほど得られないというリスクもあるため、注意が必要です。
保険での資産運用が向いている人
保険で運用するメリットとデメリットがわかったところで、具体的にどんな人に保険での資産運用が向いていて、どんな人に向いていないのかお伝えしましょう。
まずは、向いている人の特徴を3つ解説します。
ご自身に当てはまるかどうか考えながら読み進めてください。
向いている人①:家族を養う立場の人
保険での資産運用は、家族を養う立場の人に向いています。
いわゆる「一家の大黒柱」で、その人が事故や病気、死亡で働けなくなった場合、家族が生活できなくなってしまうと考えられる人です。
保険に加入しておくことで、一家の大黒柱に万が一のことがあったら保険金が支払われるため、家族は金銭的な援助を受けることができます。
家族を養う立場の人は、資産運用より保険のメリットを採用して加入するのがおすすめです。
向いている人②:生命保険に加入していない人
まだ一つも生命保険に加入していない人は、加入しておくことをおすすめします。
貯蓄型でも掛け捨てでも自分に合っている方に入れば良いのですが、同時に資産運用にも関心があるなら「貯蓄型」の生命保険に入って資産運用も始めてみてはいかがでしょうか?
生命保険に加入すると、メリットの項目で解説したように、病気や死亡の補償だけでなく節税することができます。
まだ一つも生命保険に加入していない人は、検討してみてください。
向いている人③:資産運用の知識がない人
資産運用の知識がなく、投資商品選びが難しく感じられる人も、保険で資産運用を始めてみてはいかがでしょうか?
手数料はかかりますが、投資を専門とする会社に資産運用を任せられるため、知識がない初心者の方でも資産運用を気軽に始められます。
保険での資産運用が向いていない人
一方で、保険での資産運用が向いていない人もいます。
向いていない人の特徴を解説するので、当てはまる人はこの後お伝えする他の資産運用の方法も参考にしてください。
向いていない人①:家族がいない独身の人
家族がいなくて独身の人は、自分が死亡したタイミングで保険金が下りても使い道がありません。
また、病気や事故で働けなくなったときに大金の保険金をもらっても、使い道に困るでしょう。
働けなくなったときに毎月一定額を受け取れる保険を就業不能保険と呼びますが、大金をつぎ込んで運用する性質の商品ではありません。
保険で資産運用するのが向いている人は、基本的には保険の方に重点を置いており、「ついでに資産運用ができれば良いな」といったニーズの人です。
養う人がいない独身の方などは、保険金を受け取る人が自分しかいません。
保険の比重が小さく資産運用メインになることが多いため、保険での資産運用はあまり向かないでしょう。
向いていない人②:すでに掛け捨ての保険に加入している人
すでに掛け捨ての保険に加入している人にとって、貯蓄性保険に乗り換えてまで保険で資産運用するメリットは大きくありません。
貯蓄性よりも保険料が安く、また掛け捨ての保険料でも所得控除はできるため、資産運用は別の商品で行えば問題ありません。
向いていない人③:資産運用の知識がある人
資産運用の知識があって自力で投資商品を選べる人も、あえて保険で資産運用をするメリットは小さいです。
保険で運用するとプロに任せるための手数料がかかるだけでなく、窓口となる保険会社への手数料も保険料に織り込まれていることが多いです。
しかも、貯蓄性保険は人気なので、保険会社や代理店の取り分となる手数料が多めに設定されています。
自力で投資できる人が、わざわざ高い手数料を支払って保険で資産運用をするのは無駄が多いと考えられます。
資産運用できる保険の種類
保険で資産運用するのが向いている人と向いていない人について解説してきました。
この項目では、保険での運用が向いている人のために、具体的にどのような商品があるのか解説していきたいと思います。
向いていない人のためには、他の資産運用の方法をお伝えします。
資産運用ができる保険で代表的なのは、次の4種類です。
- 終身保険
- 養老保険
- 学資保険
- 個人年金保険
種類①:終身保険
終身保険は、保険の対象の人(被保険者)が死亡するまで補償される商品です。
基本的な補償内容は、「死亡時に保険金を受け取れること」と「途中で解約したときに解約返戻金をもらえること」です。
終身保険は、基本的に被保険者が死亡したタイミングで運用資産が戻ってくるものです。
家族に財産を残すために保険料を積み立てたい人に向いています。
種類②:養老保険
養老保険は、保険の期間中に死亡した場合でも、死亡せず生存して満期を迎えた場合でも、保険金をもらえる商品です。
基本的には、死亡保険金よりも生存した場合の満期金の方が高額です。
また、途中で解約して解約返戻金をもらうこともできます。
死亡でも生存でもお金をもらえるため、養老保険は人気の高い商品です。
しかし、死亡でも生存でも保険会社がお金を支払うことが決まっているため、契約者が支払う保険料も高額です。
「保険は万が一のときに備えるものだから、死亡保険のみで良く、養老保険は過保護すぎる」という考え方もできます。
種類③:学資保険
学資保険とは、子供の学費など教育資金を積み立てるための保険です。
死亡や事故に備える性質の保険ではなく、用途を教育に絞った貯蓄ができる保険だと理解してください。
生命保険料控除は、学資保険でも使うことができます。
ただし、最近は資産運用としてのメリットが薄くなってきています。
子供が生まれてから18年ほど保険料を払い込みますが、「総支払保険料」と「教育資金」として戻ってくるお金を比べると、後者の方が少ない商品が多いのです。
運用環境が悪く、「学資保険ではなく普通に貯金をしていた方が良かった」と思える状況です。
生命保険料控除をどうしても使いたい家庭なら学資保険を検討しても良いですが、資産運用では利益を得られない商品だと言えるでしょう。
種類④:個人年金保険
個人年金保険は、個人で用意する年金のことだと考えてください。
現役世代の間に保険料を支払って資金を積み立て、65歳など決まった年齢になったときから定期的にお金が支払われる保険です。
いつまでお金をもらえるかは、「〇〇年」と期間が決まっている商品と、死亡するまでずっと受け取れる商品の2種類があります。
将来いくらの年金をもらえるかは、契約時に決まっている商品(定額年金)と、年金を受け取る時点の保険会社の運用成績に応じて決まる商品(変額年金)とがあります。
前者の方が保険料が高いですが、退職後に安定した収入を得ることを念頭に置くなら、定額年金がおすすめです。
保険以外におすすめの資産運用方法
資産運用ができる保険商品について解説してきましたが、保険で運用するのが向いていない人もいます。
また、貯蓄性保険の年間の利回りは0.5パーセントから1パーセントなので、もっと高い利回りを狙いたい人は保険以外の方法で資産運用をした方が良いでしょう。
保険以外で資産運用する場合におすすめできる商品を4つ紹介していきます。
資産運用方法①:国債
国債とは、国にお金を貸す資産運用方法です。
満期が来たら貸したお金は戻ってきますし、満期が来るまでは利息を受け取ることができます。
国債の利回りは1パーセント弱なので、貯蓄性保険よりも高い利回りを狙えます。
しかも、国にお金を貸す投資なので、財政破綻などのイレギュラーが起こらない限り、予定通りの利息をもらって満期には元本が返還されます。
国債がおすすめなのは、元本割れのリスクが低い商品で運用したい人です。
資産運用方法②:投資信託
投資信託は、大勢の投資家のお金を運用会社が集め、運用会社に在籍するプロがまとめて運用する商品です。
プロに任せられる点は保険での運用と同様なので、投資の初心者におすすめの方法です。
投資信託もプロに任せる分の手数料はかかりますが、保険よりも手数料が安く設定されています。
最近では、売買手数料無料の商品も多いです。
保険よりもコストを節約できるため、どの投資信託で運用するか自力で決められる人は、保険よりも投資信託の方がおすすめです。
資産運用方法③:ロボアドバイザー
ロボアドバイザーは、毎月決まった金額を自動で多様な商品に投資してくれるサービスです。
簡単なアンケートを通じて投資家のリスク許容度を診断し、ロボアドバイザー側で投資家に合った商品を選んで投資してくれます。
投資商品選びもロボアドバイザーに任せられるため、保険と同様に投資の知識がなくても始められる資産運用です。
すでに掛け捨ての保険に加入しており、別の方法で資産運用をしたい人におすすめです。
資産運用方法④:ソーシャルレンディング
ソーシャルレンディングとは、「お金を借りたい企業(借り手)」と「お金を貸したい人(投資家)」をインターネット上で結びつけるサービスです。クラウドファンディングの一種であり、「貸付型クラウドファンディング」とも呼ばれます。
ソーシャルレンディングは利回りが高く、5パーセント程度から10パーセント程度の利回りを狙うことができます。
保険での運用だと0.5パーセントから1パーセント程度なので、10倍近い利回りです。
利回りが高ければ、少ない資金でも大きな利益を得られる投資がしたいならソーシャルレンディングがおすすめです。
ただし、サイト(業者)によって成功率が大きく異なるという特徴があります。
あるサイトが扱う投資案件はほとんど成功しているのに、他のサイトでは失敗案件が多く、投資家にお金が返って来ないといったトラブルがたくさんあるといった違いがあるのです。
ソーシャルレンディングを始める際には、業者のホームページで過去の成功率を見たり、口コミを調べたりして良い業者を見つけましょう。
こちらでは、ソーシャルレンディングの歴史を踏まえながら、おすすめの業者を紹介しています。
まとめ
保険で資産運用する方法について解説してきました。
保険で運用する最も大きなメリットは、補償と運用を同時に行えることです。
「補償をメインにして、ついでに資産運用もできたら良いな」というニーズの方にとっては向いている商品です。
一方で、保険での運用が向いていない人もいます。
補償は少なくて良い人や、すでに掛け捨ての保険に加入している人などは、あえて保険で運用する必要はないでしょう。
資産運用をメインにしたいなら、さきほど解説したように「国債」「投資信託」「ロボアドバイザー」「ソーシャルレンディング」がおすすめです。
ご自身に合った資産運用を見つけるきっかけにしてみてください。