債券投資と聞いて、商品の種類や具体的なやり方をイメージできる方は多くないのではないでしょうか?
投資初心者であれば、さらにわからないと思います。
しかし、債券投資はあらゆる投資手法のなかで最もリスクの低い投資で、投資初心者にこそおすすめです。
本記事では、債券投資がどのような投資で、どんなメリットやリスクがあるのか、また債券の種類とおすすめ商品についても解説します。
筆者プロフィール
筆者はライターをしながら、インデックス投資と債券投資を中心に資産運用しています。
FP2級の資格を持ち、投資・資産運用についての書籍を年間100冊以上読んでいます。
前職は大手生命保険会社の営業職に2年3ヶ月間勤め、主に保険と資産運用に関するコンサルタント業務に取り組んでいました。
以上の経歴から得た知識・経験を活かし、長期でリスクを抑えた堅実な運用を得意としています。
債券投資とは?
まずは、債券投資を説明する上で大切な、債券とは何かについて解説しましょう。
債券とは、国や企業が投資家からお金を借りるときに発行する借用証書のことです。
さらに簡単にいうと、債券は国や企業の借金の証書です。
債券を持っていれば、国か企業にお金を貸したことを証明できるため、債券は貸した金額分の価値があることになります。
国や企業が発行した債券を購入することが債券投資です。
債券投資には大きく分けて、次の2つの特徴があります。
債券投資の特徴
- 元本保証されている
- 利子を受け取れる
借金したら、利子をつけて借りたお金を返済しなければなりません。
債券も同じ借金です。
そのため、投資家が債券を購入した分のお金は利子をつけて返済してくれるのです。
債券の種類
債券には、さまざまな種類や分類があります。
ここでは、そのなかで代表的な次の6つを紹介します。
債券の種類
- 国債
- 地方債
- 特別債
- 社債
- 金融債
- 外国債
種類①:国債
国債とは、国が発行する債券のことです。
国債は債券投資の主流と言える商品で、なかには個人投資家向けの「個人向け国債」という商品があります。
国債は国の借金なので、国の財政が破綻しない限り投資した全額を返済してくれます。
そのため、国債は債券のなかでも最もリスクの低い債券と言えるでしょう。
種類②:地方債
地方債は、地方自治体が発行する債券です。
信用度は、国債に劣ります。
理由はシンプルで、国家財政よりも地方財政の方が破綻しやすいからです。
今では、すべての地方自治体が債券を発行できるようになっています。
ただし、頻繁に発行されるものではなく、取引できる機会は多くありません。
種類③:特別債
特別債とは、政府の関係機関が発行する債券のことです。
別名で、政府関係機関債とも言われます。
政府関係機関債のなかで、政府が保証している債券を政府保証債と呼びます。
政府の保証付きなので、以下で説明する社債や金融債に比べて信用力は高いです。
種類④:社債
社債は、企業が発行する債券です。
発行する企業によって、信用力が異なることが特徴です。
債券を買った会社が倒産してしまうと、投資したお金は返済されません。
そのため、経営的に厳しい会社の社債は信用が低いことになります。
ただし、信用が低いぶん利率は高く設定されるため、大きな利益を得られる可能性があります。
種類⑤:金融債
金融債とは、法律で発行が許された特定の金融機関が発行する債券です。
メガバンクや農林中央金庫、商工組合中央金庫などが発行できます。
通常の社債よりも信用力が高いと見なされています。
ただし、現在はあまり流通されていません。
個人投資家が、金融債に投資する機会は多くないでしょう。
種類⑥:外国債
外国債とは、海外の国や企業が発行する債券のことです。
国家間に、信用力の差があることが特徴です。
例えば、アメリカは国力があり安定しているため、信用力があります。
一方、トルコやブラジルなどの政治や通貨が不安定な国は、信用力が低くリスクが高いと言えます。
信用力が低い国は、多くの利子をもらえる可能性がありますが、投資先は慎重に選ぶべきでしょう。
債券投資のメリット
債券投資のメリットは、次の3つです。
1つずつ解説していきましょう。
青債券投資のメリット
- 収益が安定している
- 安全性が高い
- 流動性が高い
メリット①:収益が安定している
債券投資では、半年や1年ごとに利子を受け取ることができます。
利率や利子を受け取るタイミングはあらかじめ決められているため、収益について不安に思うことはありません。
2020年現在の銀行預金の利率は0.001パーセントほどで、債券は低くても0.05おパーセントです。
利率は銀行預金よりも高く、一定以上の収益が見込めます。
メリット②:安全性が高い
債券投資は、安全性が高いです。
なぜなら、債券は借金で元本保証があるからです。
国債は、国家財政が破綻したり天変地異が起きたりしない限り、必ず元本の返済があります。
会社の業績によって損をする可能性がある株よりも、保全性は高いと言えるでしょう。
安定的な投資活動をしたい方におすすめの投資方法です。
メリット③:流動性が高い
債券は、売ってお金にすることもできます。
債券には、投資額が返済されるまでの期間が設けられており、満期日まで待たなければならないと思っている方もいるでしょう。
でも、その必要はありません。
債券を買った直後にまとまったお金が必要になったなら、債券を売ってお金に変えられます。
ただし、債券価格は日々変わっているため、購入時よりも高い金額で売れるとは限りません。
債券投資のリスク
債券投資にも、リスクはつきものです。
リスクは、次の4つです。
それぞれどのようなリスクなのかについて解説していきます。
債券投資のリスク
- 信用リスク
- 価格変動リスク
- 為替リスク
- カントリーリスク
リスク①:信用リスク
信用リスクとは、購入した債券の発行元が破綻してしまうリスクのことです。
債券は借金なので、元本保証はされています。
ただし、その保証は借りる側に返済能力がないと成り立ちません。
破綻してしまうと、投資額は返ってきません。
破綻するリスクは国よりも会社の方が高いため、信用リスクは会社の方が高いことになります。
リスク②:価格変動リスク
債券を途中で売却するときに、債券の価格が下がっていて損する可能性があります。
そのことを価格変動リスクと呼びます。
では、債券の価格はどのように決まっているのでしょうか?
債券の価格は、需要と供給で決まっています。
つまり、債券を買いたい人が増えれば需要が高まって値段が上がり、手放す人が増えれば供給が増えて価格が下がります。
債券を売るなら必要なときを除いて、需要と供給の移り変わりに注意しましょう。
リスク③:為替リスク
為替リスクとは、外貨を円に替える際に損をしてしまう可能性のことです。
債券には、円建てと外貨建ての2種類があります。
外貨建て債券を購入した場合は、為替に注意しましょう。
外貨建て債券の利子や返済金は、外貨で受け取ります。
利益を得ていても、為替しだいで損をしてしまう可能性があります。
外貨建て債券に投資するなら、為替についての学習も必要になるでしょう。
リスク④:カントリーリスク
カントリーリスクは、債券の発行元である国の政治や経済状況によって、債券価格が変動してしまうリスクのことです。
信用力や政治・経済状況は、国ごと異なります。
トルコやブラジル、インドなどの新興国はカントリーリスクが高く、アメリカやイギリス、日本などの先進国はカントリーリスクが低い傾向にあります。
金利と債券価格の関係
債券の価格と金利(利子)の関係についてまとめましょう。
債券価格と金利には深い関係があります。
その関係とは、債券価格が上がれば金利が下がり、債券価格が下がると金利が上がるという関係です。
例えば、債券価格が100万円で1年後の金利が3パーセントの債券を購入したとしましょう。
1年間その債券を持っていれば、3万円の利子を受け取れる計算です。
この債券価格が、需要と供給によって98万円に下落したとします。
それでも、1年後に受け取れる3万円は最初から決められているので変わりません。
利率は次の式で求められ、約3.06%となります。
- 利率=3万円 ÷ 98万円 × 100% = 3.06%
つまり、最初の3パーセントから金利が上がったことになります。
金利は、このように日々変動しているのです。
債券投資のおすすめ商品
債券投資をするのにおすすめの商品を紹介します。
ここでは投資する上で重要な、「保全性」と「収益性」という2軸からおすすめ商品を見ていきましょう。
債券投資を始める際の一つの参考にしていただければ幸いです。
【保全性重視】個人向け国債
個人向け国債の特徴をまとめると次のようになります。
個人向け国債の特徴
- 国が発行しているのでため元本割れしない
- 1万円から始められる
- 半年ごとに利子を受け取れる
- 0.05%(年利)の最低金利保証がある
保全性重視なら個人向け国債がおすすめです。
個人向け国債は国が発行しているため、元本割れリスクがほぼありません。
元本割れするのは、日本の財政・経済が危機に直面したときですが、そうなれば国家全体が危うい状況です。
そのため、最も安全な資産と言えるでしょう。
個人向け国債は個人投資家のための債券で、次の3種類あります。
個人向け国債の種類
- 固定金利型3年満期
- 固定金利型5年満期
- 変動金利型10年満期
固定金利型は、購入してから満期まで金利が変わりません。
つまり、将来的にもらえる利益があらかじめ把握できます。
そのため、安定的な投資をしたい方におすすめです。
変動金利型は、金利が上がれば利益が増えます。
より利益を得たい方向けの商品です。
【保全性と収益性のバランス重視】国内社債
国内社債は安全性を維持しながら、収益性も期待できます。
個人向け国債の利率が0.05パーセントなのに対し、社債であれば0.1パーセントから1.0パーセントほどの利率を受け取れるでしょう。
しかし、国債よりも信用リスクが高くなっています。
会社には、業績悪化による債務不履行や倒産というリスクがつきものです。
社債を購入する際は、その会社の業績状況を確認しましょう。
【収益性重視】外国債
外国債は、利率1.0パーセント以上のものが多く、利益を期待できるのは間違いありません。
しかし、外国の情報は集めにくく、情勢を読みにくいという難点があります。
情勢の安定しない国の債券を購入して、その国が破綻し1円も戻らないこともあります。
さらに、為替リスクもあります。
外国債は、債券投資や投資自体に慣れてから始めても遅くはありません。
債券投資の始め方
債券投資の始め方を見ていきましょう。
ステップは次の4つです。
青債券投資を始める4ステップ
- 口座を開設する
- 商品を選ぶ
- 必要金額を入金する
- 投資商品を購入する
ステップ①:口座を開設する
まずは、証券会社に口座を開設しましょう。
好きな証券会社で申し込んで問題ありません。
ただ、手数料が安く手続きが簡単なネット証券は人気です。
口座開設の案内にしたがって、すぐに口座開設できます。
マイナンバーカードや本人確認書類が必要なので、手元に準備しておくとスムーズに開設できます。
ステップ②:商品を選ぶ
今の自分の投資レベルや、経済状況に適した商品を選びましょう。
債券は損するリスクを抑えながら、投資を実践できます。
先ほど紹介した、おすすめ商品を参考にしてみてください。
ステップ③:必要金額を入金する
商品を選んだら、入金しましょう。
ネット証券なら、スマホ操作だけで入金できます。
入金に手数料のかからない証券会社も増えていますが、手数料の有無や金額には注意しましょう。
ステップ④:投資商品を購入する
あとは、商品を購入するだけです。
ネット証券なら購入したい商品名があるページに行き、買い付け注文をしましょう。
ただし、債券には募集期間という購入できる期間があらかじめ決まられています。
買いたい商品が、募集期間にあるかどうかを確認しましょう。
補足:債券投資は投資信託でもできる
債券投資は、投資信託でも行えます。
投資信託とは、さまざまな投資家から集めたお金をプロが運用してくれる金融商品です。
例えば、投資家A、B、Cが、プロにお金を預けたら、そのプロが株や債券、不動産などに投資して運用してくれます。
株の投資信託ならさまざまな会社の株式に投資でき、債券なら国債や地方債、社債などのさまざまな債券に投資できます。
投資信託で債券投資をするメリットは次の2点です。
債券投資を投資信託で行うメリット
- 幅広い債券に投資できる
- より大きなリターンを期待できる
投資信託は、世界中の債券に投資できます。
またプロが投資した債券によっては、高いリターンが期待できる可能性もあります。
債券投資よりも積極的な投資方法
債券投資は、利益を出すというよりも損しないことを重視した投資手法といえます。
そのため、利益に物足りなさを感じる方もいるでしょう。
そこで筆者がおすすめしたい投資手法が、次の2つです。
おすすめの投資方法
- ソーシャルレンディング
- 不動産投資型クラウドファンディング
ご存知の方は少ないかもしれませんが、わかりやすい投資方法ですよ。
投資方法①:ソーシャルレンディング
ソーシャルレンディングとは、資金を集めたい会社と投資先を探している投資家をインターネット上で募集するマッチングサービスです。
ソーシャルレンディング事業者がさまざまな投資家から集めた資金を使って、会社に融資します。
融資という形でお金を貸しているため、投資家は利子として分配金がもらえます。
債券に似た仕組みですが、債券よりも積極的な投資と言えます。
その理由は、次の2点です。
債券投資より積極的な投資方法といえる理由
- 融資できる会社の選択肢が多いから
- 利率が高いから
社債の場合、募集期間が限られています。
また、そもそも社債を発行する会社も多くありません。
しかし、ソーシャルレンディングはマッチングサービスなので投資先に困ることはありません。
そして、債券の利率は高くても1パーセントなのに対し、ソーシャルレンディングは5パーセントから10パーセントの利率を期待できます。
また、株式のように日々値動きするような投資方法ではないため、投資すればほったらかしでも問題ありません。
ただし、融資金が回収不能になるリスクがあります。
余剰金を使って、積極的に利益を得たい方におすすめです。
投資方法②:不動産投資型クラウドファンディング
不動産型クラウドファンディングとは、不動産会社が不動産の購入や運用を目的に投資家から資金を集め、その運用成績によって投資家に分配金を支払う仕組みのことです。
不動産投資型クラウドファンディングは1万円から始められ、元本割れしにくい仕組みです。
また、平均的な利率が3パーセントほどなので、債券よりも高い利益を期待できます。
その点、債券投資よりも積極的な投資方法だと言えるでしょう。
また、個人の不動産投資のように物件を持って管理する必要がありません。
それでいて、投資する不動産についての細かな情報も受け取れます。
不動産投資を含めた投資全般に興味があり、小さいリスクで投資の幅を広げたい方におすすめです。
まとめ
債券投資について概要やメリット、リスク、おすすめ商品などを紹介してきました。
債券投資は、あらゆる投資方法の中で最も保全性の高い投資方法であることをご理解いただけたと思います。
その理解のもと、ご自身の投資活動に債券投資を検討してみてください。
ただ、債券投資は保全性が高い反面、収益性が弱い傾向にあります。
その弱点を補うためにも、先ほど紹介した「ソーシャルレンディング」や「不動産投資型クラウドファンディング」にも目を向けてみてはいかがでしょうか?