コロナ禍において注目されているクラウドファンディング。
投資ができるもの、好きな商品などを購入できるものなど、クラウドファンディングにはさまざまな種類があります。
その中の一つとして、近年注目されているのが寄付型クラウドファンディングです。
ここでは、寄付型クラウドファンディングとはどういった特徴を持つクラウドファンディングなのか、また利用する際のメリットや注意点をお伝えしていきます。
筆者プロフィール
筆者は、第二種金融商品取引業事業登録事業者に勤務しています。
インターネット上で資金を集める事業に従事しており、インターネット上でお金を集める際のマーケティングに関わっています。
寄付型クラウドファンディングも、インターネット上でお金を集めるクラウドファンディングの一種です。
そこ運営だけではなく利用者の視点にも立ち、メリットとデメリット両方を分析してみましょう。
目次
寄付型クラウドファンディングとは
まずは、寄付型クラウドファンディングの概要を確認しましょう。
概要
寄付型クラウドファンディングとは、インターネットを通じてお金を集め、自治体やNPO法人などの非営利団体に寄付を行うものです。
例えば、自治体が災害支援金を集めるために寄付型クラウドファンディングを利用したり、NPO法人が恵まれない子供のための施設を設立するために募集を行うことがあります。
一般的に、利益を目的する企業ではなく、公共の福祉に使うめの資金を募集する利用されています。
リターン
クラウドファンディングと言うと、「お金」や「モノ」などのリターンを期待する人も多いのではないでしょうか?
しかし、一般的には寄付型クラウドファンディングにリターンは設けられていません。
利益を追求する企業であれば、集めたお金で事業を行い、投資や出資をしてくれた人たちにリターンを提供することが可能です。
しかし、寄付型クラウドファンディングでは、利益を追求する目的でお金を集めるわけではありません。
寄付によって例えば地域の復興などを行っても、必ずしもモノや金銭という成果が生まれるわけではないのです。
お金を寄付する人にとっては、自分がお金を出した事業が無事に実行され、公共の福祉に関する事業が達成されることこそが、最も大きなリターンになるでしょう。
もちろん、感謝の気持ちを伝えるために、寄付を受けた団体が手紙や写真を支援者に送ったり、また寄付を受けた事業の成果を掲載するサイトを制作することもあります。
そういった感謝の気持ちこそが、寄付型クラウドファンディングの最も大きなリターンなのです。
やり方
寄付型クラウドファンディングを個人が利用する手順をお伝えしましょう。
まず、寄付型クラウドファンディングサイトにアクセスします。
そして、利用者登録する必要があります。
投資ではないため、会員登録はメールアドレスや名前など最小限の情報で十分です。
会員登録後は、寄付を受け付けているプロジェクトを確認します。
中には自治体やNPOなどが、「こういった理由でお金を必要としており、集めたお金はこういった事業に使う予定です」といった、プロジェクトの詳細が記載されています。
共感できるプロジェクトがあれば、いくらお金を寄付するかを決定します。
支払いは銀行振り込みやクレジットカード、モバイルマネーなど、いろいろな決済方法が使えます。
寄付の際は、ほとんどのサイトでは手数料を取っていません。
ただし、寄付型クラウドファンディングで集めたお金の何パーセントかは、寄付型クラウドファンディングサイトの利益として徴収されます。
そのため、寄付したお金の全額が資金を募集している団体に渡されるわけではありません。
寄付型クラウドファンディングの仕組み・流れ
続いて、寄付型クラウドファンディングの仕組みや流れを詳しくお伝えしていきましょう。
支援を募る団体がプロジェクトを作成する
資金を募集したい団体は、寄付型クラウドファンディングサイトに利用登録をします。
そして、「私達はこういった理由でお金を必要とするので、プロジェクトを作成したい」と寄付型クラウドファンディングサイトに対してアプローチします。
そのプロジェクトの内容や資金の用途、また団体としての正当性を証明する書類などを提出します。
寄付クラウドファンディングサイトがプロジェクト申請後に書類をチェックし、問題がないと判断されれば、サイトにプロジェクトが掲載されます。
支援を行いたい個人や団体が寄付を行う
寄付を行いたい個人は、サイトにアクセスしプロジェクトの内容をチェックします。
そのプロジェクトの内容に共感しお金を寄付したいと思ったら、プロジェクトに参加するボタンをクリックしましょう。
そうすれば寄付の金額を自分で決めることができるので、クレジットカードやウェブマネー、銀行振り込みなどでお金を寄付することができます。
寄付を受けた団体は活動報告と謝礼を行う
寄付を受けた団体は、お金を受け取ったそれで終わりというわけではありません。
寄付型クラウドファンディングはリターンがない代わりに、寄付を行っている人達に、きちんとプロジェクトが遂行されたことを伝える必要があります。
そのため、寄付を受けた団体は必ず活動報告を行います。
集めたお金をこういった用途に使った、そしてこのような結果になったという結果報告、さらにお金を寄付してくれた人たちのお礼のメッセージなどを送ります。
寄付したお金の用途を気にしない人もいるかも知れませんが、寄付を受けた団体は活動報告と謝礼の表明は必要です。
代表的な寄付型クラウドファディングサイト
日本には寄付型クラウドファンディングサイトが複数あります。
その中でも、代表的なものをピックアップして紹介しましょう。
ReadyForCharity
出典:ReadyForCharity
日本の大手クラウドファンディングサイト「READYFOR(レディーフォー)」の寄付型クラウドファディング専門サイトが「ReadyForCharity」です。
非常に豊富なプロジェクト数を誇っており、自治体やNPOへの支援プロジェクトだけではなく、「訴訟資金のための寄付プロジェクト」や「清掃活動プロジェクト」など、多種多様なプロジェクトがあります。
始めて寄付型クラウドファディングに挑戦する方は、まずReadyForCharityに登録してみると良いでしょう。
A-Port
出典:A-Port
A-Portは、朝日新聞が運営している寄付型クラウドファンディングサイトです。
新聞社が運営しているだけあって、プロジェクトを掲載する際に文章構成など添削を受けられることが特徴です。
知名度も高く運営元の信頼性も高いため、多くの人に利用されている寄付型クラウドファンディングサイトです。
GoodMorning
出典:GoodMorning
GoodMorningは、購入型クラウドファンディングで知られる「CAMPFIRE」の子会社である株式会社GoodMorningが運営する寄付型クラウドファンディングサイトです。
クラウドファンディングサイト運営には定評のあるCAMPFIREの子会社だけに、そのノウハウを存分に盛り込んだサイトとなっています。
節税可能な自治体プロジェクトも、豊富に用意されています。
なお、CAMPFIREにも自治体への寄付プロジェクトがあるため、そちらも確認してみると良いでしょう。
寄付型クラウドファンディングを利用するメリット
基本的に、寄付型クラウドファンディングは金銭的なリターンを得ることはできません。
では、個人が利用するうえでどういったメリットがあるのでしょうか?
メリット
- 支援の気持ちを届けられる
- 節税ができるプロジェクトがある
- 謝礼が得られるプロジェクトがある
メリット①:支援の気持ちを届けられる
寄付型クラウドファンディングは、金銭的や物質的なリターンを期待するものではありません。
それだけに、純粋にプロジェクトへの寄付を通じて多くの人々を助けてあげたい、支援してあげたいという気持ちを届けることが最大の目的だと言えます。
「困っている人たちを助けたい」「自分の故郷を応援したい」という気持ちを、寄付型クラウドファンディングを通じて物質的な支援に変えられるのです。
そして、リターンを求めないにしても、自分が助けてあげた人たちから感謝の気持ちをもらえることは嬉しいものです。
お礼のメッセージを直接被支援者からもらえることも醍醐味と言えます。
自治体に寄付をしてもお金がどのような用途に使われるのかわからないし、本当にそのお金が役に立っているのかわからないから寄付をしなかったという人でも、寄付型クラウドファンディングであればお金の用途や支援を受けた人の生の声も聞くことができます。
そのため、自分の支援が役立ったという実感を得られるのです。
メリット②:節税ができるプロジェクトがある
寄付型クラウドファンディングでお金を寄付した対象がNPOや自治体、学校法人などの場合、寄付したお金が所得から控除され節税効果ある場合があります。
そのため、寄付と同時に節税のメリットを享受するために寄付型クラウドファンディングを利用する人もいます。
節税できる寄付対象は、主に次のようになっています。
国・地方公共団体に対する寄附金
公益社団法人、公益財団法人その他公益を目的とする事業を行う法人又は団体に対する寄附金から、以下の要件を満たすもの。
- 広く一般に募集されること
- 教育又は科学の振興、文化の向上などに貢献するもの
特定公益増進法人への寄付
- 独立行政法人
- 地方独立行政法人
- 公益社団法人及び公益財団法人
- 学校法人
- 社会福祉法人
- 更生保護法人
- 認定NPO法人
また、節税できる金額は、次のように決められています。
- 寄附金控除額=(次のいずれか低い金額)-2,000円
- その年に支出した特定寄附金の額の合計額
- その年の総所得金額等の40%相当額
「総所得金額等」とは、純損失、雑損失、その他各種損失の繰越控除後の総所得金額、特別控除前の分離課税の長(短)期譲渡所得の金額、株式等に係る譲渡所得等の金額、上場株式等に係る配当所得の金額、先物取引に係る雑所得等の金額、山林所得金額及び退職所得金額の合計額をいいます。
例えば、総所得金額が500万円の方の場合、最大200万円まで寄付金控除の対象となります。
所得500万円の場合所得税率は20%ですが、200万円寄付した場合、200万円が控除されるため所得は300万円となり、所得税率を10%に下げることができます。
事業などをしていて所得が多くなりそうであり、普通に納税するより社会福祉などの事業を支援する方にお金を使いたい場合は、寄付型クラウドファンディングを通して支援を行い節税に取り組んでも良いでしょう。
メリット③:一部謝礼が得られるプロジェクトがある
寄付型クラウドファンディングはリターンを期待するものでありませんが、それでも一部のプロジェクトでは、謝礼が得られるプロジェクトなどもあります。
例えば、地域産業活性化プロジェクトに支援すれば、お礼の気持ちとして名産品などをもらえるケースがあります。
リターンがもらえそうなプロジェクトに絞って、寄付先を探してみるのも良いかもしれません。
寄付型クラウドファンディングを利用するときの注意点
最後に、寄付型クラウドファンディングを利用する際にどういった点に注意した方が良いのか、ポイントをお伝えしましょう。
黄いタイトル
- 金銭的なリターンは得られない
- すべてのプロジェクトで節税できるわけではない
- 問題のある組織が資金を募集している可能性がある
注意点①:金銭的なリターンは得られない
何度もお伝えしたように、寄付型クラウドファンディングでは金銭的なリターンは得られません。
あくまで寄付であり、投資ではないからです。
金銭的なリターンを期待するのであれば、「不動産投資型クラウドファンディング」や「融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)」を利用した方が良いでしょう。
商品やサービスなどのリターンを求める時は、購入型クラウドファンディングを利用するべきです。
寄付の代価がもたらされるのかは、支援を受けた団体の都合次第だと思っておきましょう。
注意点②:すべてのプロジェクトで節税できるわけではない
寄付型クラウドファンディングは、すべてのプロジェクトが節税の対象になるわけではありません。
先ほど、寄付として認められる対象は自治体やNPOに限られることをお伝えしました。
営利活動を行う会社や地方の商工会などの団体に寄付を行っても、必ずしも寄付として認められるとは限らないのです。
基本的に、営利団体に対してお金を出しても寄付とは認められないと思っておいた方が良いでしょう。
ただ、2019年の京都アニメーション放火事件のように、営利団体への寄付でも特例的に寄付として認められることがあります。
注意点③:問題のある組織が資金を募集している可能性がある
寄付型クラウドファンディングサイトでプロジェクトを立て、資金を募集する団体による不正行為に注意しましょう。
近年、寄付型クラウドファンディングの利用者が増えています。
それにより、運営サイトによる募集団体の審査も厳しくなっているため、問題のある団体が自分たちの営利目的のために資金を募集するという事態は見られなくなってきました。
それでも、過去に自社の利益のために虚偽の内容を掲載して資金を募集している団体があったことは事実です。
問題である団体への寄付を防ぐため、サイトに掲載されている情報をよく確認し、自分でもWebなどで寄付を募る団体の情報を確認しておいた方が良いでしょう。
まとめ
寄付型クラウドファンディングは、金銭的・物質的なリターンを得ることは期待できません。
そのため、資産形成のために利用できるポイントは節税できる可能性がある点のみです。
また、節税効果もあくまでも所得を下げて税率を下げる効果であり、キャッシュフローが増えるわけではありません。
寄付型クラウドファンディングを利用する際には、自分が本当に支援してあげたい団体や自治体に寄付し、精神的な満足感を得るつもりで利用した方が良いでしょう。
もちろん名産品など、物質的なリターンを得ることもできるプロジェクトもあるため、すべてのプロジェクトにおいてリターンがないわけではありません。
金銭的なリターンを得たい場合は、「不動産投資型クラウドファンディング」や「融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)」の利用を検討してみてください。