ソーシャルレンディング投資には、決して小さいとは言えないリスクがあります。
特に、2020年3月時点では新型コロナウイルスの影響が全世界の経済市況に影響を与え、今後どうなっていくのか、まだまだ先行きは不透明です。
着実に利益を積み重ねていくにはリスクをしっかりと鑑みて、その対策を行っていきたいところ。
そこで、クラウドアンサー編集部ではソーシャルレンディングに1,000万円以上を投資しながら、これまでに損失を出したことがない投資家小心タロウ氏にインタビューを実施しました。
小心タロウ氏はどうやってソーシャルレンディング投資で損失を防いでいるのか、その対策を知れば今後のソーシャルレンディング投資の参考になるかもしれません!
小心タロウ氏とは?
出典:「小心タロウ|ソーシャルレンディングと不動産クラファンで投資中」
小心タロウ氏は投資ブログ「小心タロウ|ソーシャルレンディングと不動産クラファンで投資中」を運営されている個人投資家です。
また、Twitter(@viviri_man)でも活動中で、アカウント名に現在投資中の金額を記載しています。
投資対象はソーシャルレンディングと不動産投資型クラウドファンディングが中心。
2020年3月時点では約1,000万円を投資しています。
では、なぜ小心タロウ氏はソーシャルレンディング投資を行っているのか、その投資方針などについて迫ってみました。
ソーシャルレンディング投資はいつから始められたのですか?
2018年6月からです。
銀行預金ではお金が増えないと考えるようになり、そこでさまざまな投資手法を模索していました。
その過程で以前から存在だけは知っていたソーシャルレンディングを詳しく調べてみたところ「これは投資というより貸金だな」と気付き、手堅いものだと思いました。
貸金業には昔から絶えない需要がありますよね。
ソーシャルレンディングも結局は貸金と同じわけですから、既存の貸金業と同様に手堅い需要が見込めると思い、投資を決意しました。
また、不動産投資型クラウドファンディングは、ソーシャルレンディングを紹介するサイトなどで似たタイプの投資商品として紹介されることが多く、その流れで投資を始めました。
ソーシャルレンディング以前は他の投資をしたことはありますでしょうか?
ありません。
銀行預金、それも普通預金に預けっぱなしで投資をしようという発想はありませんでした。
ソーシャルレンディングや不動産投資型クラウドファンディングの投資先を決める際の方針はありますか?
ソーシャルレンディングは、元本の回収が見込める保全性の高い案件を選んでいます。
儲けよりも、何かあった際に「元本回収ができる案件」「回収してくれる会社」という点にとにかくこだわっています。
そのため、「案件を選ぶ際は貸しても大丈夫な融資先なのか?」「貸し倒れや借り手の倒産時に担保を売却して元本を回収できるのか?」などを重視しています。
基本的に、借り手は必ず返済不能になるという前提で案件を選んでいます。
大変慎重で常に最悪のケースを想定されているのですね。
運営開始直後のボーナス案件などは別として、私は想定利回りが7%を超える案件には投資しません。
自分で以前調べたのですが、
出典:「小心タロウ|ソーシャルレンディングと不動産クラファンで投資中」
ソーシャルレンディングは案件の利回りが7%を超えると、リスクが一気に上がります。
ですので、7%を超えた時点で投資は避けるようにしています。
元々銀行の金利が低すぎるという理由でソーシャルレンディング投資を始めたので、利回りは5%もあれば十分と思っています。
不動産投資型クラウドファンディングはどのように投資先を決めていますか?
正直なところ、不動産は素人です。
しかし、素人発想ですが「優先出資額以上の価格で売却できれば元本を回収できる」と思っているので、投資対象物件について公開されている情報から不動産情報サイトなどを参考に市場価格を調査しています。
そして、優先出資分を確実に上回る価格で取り引きされそうだと自分なりに確信が持てれば、投資対象にしています。
もちろん、不動産情報サイトの情報が常に正しいとは言えませんし、相場も変化します。
それでも、素人は素人なりにできる限りで調査しています。
注目しているソーシャルレンディング会社と理由を教えてください。
J.LENDINGですね。
運営会社の主力事業である不動産業が堅調ですので、ソーシャルレンディング事業で無理な案件を組成する必要がありません。
今後も安全性を重視した案件の組成を期待しています。
また、FUELがソーシャルレンディングプラットフォームの提供を始めました。
CRE Funding以外にどこまで提携先を増やせるのか、注目というか期待しています。
ソーシャルレンディング会社を選ぶ際も最初にリスクを見ているのですね。
そうですね。
リターンは利回りで3%を超えていればOKだと私は思っています。
そのラインを超えていれば、利回りで案件を選ぶことはしません。
繰り返しになりますが、融資先が返済できなくなった時に元本を回収できるかどうかを重視しているので、リターンよりもリスクに重点を置いて投資先を選ぶようにしています。
小心タロウ氏の投資実績と方針に迫る
何よりも元本の回収ができるかどうかを重視してソーシャルレンディングの投資対象を判断している小心タロウ氏。
そこで、実際の運用歴とリスク分散の対策について迫ってみました。
ソーシャルレンディング投資で損失が発生してしまったことはありますか?
今まで累計で約4,000万円投資してきましたが、損失はゼロです。
私がソーシャルレンディング投資を始めたのが2018年6月ですが、その直後にグリーンインフラレンディングの問題が起こりました。
その後、maneoマーケットのプラットフォームを使っていた会社を中心に返済の遅延や貸し倒れが連続して発生しました。
その現象を見ていましたので、自分はまず損失を出さないよう心がけました。
ソーシャルレンディング投資を始めたのがちょうどリスクを強く意識せざるを得ない時期にあたったことは、ある意味、運が良かったと思っています。
リスクの分散のためにどんなことを行っていますか?
単純に投資先の会社を増やすだけでは、リスクの分散にならないと考えています。
極論ですが、リスクのあるソーシャルレンディング10社に分散して投資するくらいなら、堅実なソーシャルレンディング1社に集中した方が良いですよね。
実際2018年には、数多くの会社に分散していた投資家が大きな損失を被り、手堅い数社に絞っていた投資家は損失を免れました。
むやみに分散すれば良いというものではないことを、あの時に強く感じました。
分散する際は、狙って分散するよりも「これならば大丈夫そうだ」という手堅い案件に絞った結果、自然と投資先の会社が分散されるのが理想です。
どのソーシャルレンディング会社でも「手堅い案件」と「そうは感じられない案件」があります。
その中で、手堅い案件だけを狙って投資していると、投資案件数が不足してしまいます。
そこで、安全性の高い会社を新しく探すのだけど、そこでも月に1件くらいしか投資できないのでまた新しい投資先を探すを繰り返していたら、投資先が自然と11社まで増えました。
これが20社くらいまでに増えれば投資先選びがもっと楽になるので、安心して投資できるソーシャルレンディング会社や不動産投資型クラウドファンディング会社にもっと参入して欲しいですね。
ソーシャルレンディングや不動産投資型クラウドファンディングへの投資額は今後も増やしていく予定でしょうか?
予定して「いくらまで増やそう」というものではなく、現実に合わせていくものだと思います。
良いソーシャルレンディング会社と良い案件が増えれば、投資額も増えていくでしょう。
今はまだ多少資金を追加できる余裕があるので、リスクが低いソーシャルレンディング会社と手堅い案件が増えれば、投資額は増やしていきます。
小心タロウ氏が考える「ソーシャルレンディング業界の発展に必要なもの」
小心タロウ氏は、非常に堅実な投資方針を徹底しており、リスクの小さなソーシャルレンディングサイトの増加を待望しています。
ソーシャルレンディング業界の市場規模は、2019年で約1,000億円と言われています。
そんなソーシャルレンディング業界が投資家にとってもっとリスクの低いものになるために、どういったことを望むのかについて聞いてみました。
ソーシャルレンディングがもっと市場規模を拡大するためには何が必要だとお考えですか?
まず、ブロガーの立場でソーシャルレンディングの市場拡大に貢献できることは、事実を正確に伝えることだと考えています。
ソーシャルレンディングの市場規模を10兆円といったレベルにまで拡大するためには、株やFXの拡大期と同じように、投資にそこまで興味のない人たちを取り込む必要があります。
しかし、日本人は投資に対してネガティブな印象を持つ人が多いです。
それでも、老後の生活資金の問題で、最近は資産運用や投資に興味を持つ人も増えています。
そんな人たちがソーシャルレンディングのことを知り、実際に投資している人のブログを読む。
そこで、私たちが「ここは良い」と褒めちぎるだけの意見ばかりを載せていては、投資にネガティブな印象を持つ人は「提灯記事ばかりだから疑わしい」と、かえってソーシャルレンディングを怪しいものだと思ってしまうでしょう。
ですから、私たちソーシャルレンディングのブロガーはソーシャルレンディング会社に忖度せず、読者におもねらず、良いことも悪いことも含めてありのままの事実を正確に伝えるべきだと思います。
私はソーシャルレンディング投資を始めた2018年6月から、毎月どの会社の案件にいくら投資したのか、ブログですべて公開しています。
そして、各業者別にトータルでいくら投資して、いくら利益が出たのかも、すべて数字を公開しています。
出典:「小心タロウ|ソーシャルレンディングと不動産クラファンで投資中」
損失も含めた投資の実態を、ソーシャルレンディングのブロガーがリアルに公開し、読者に「ソーシャルレンディングはこんな感じで儲かったり損をしたりするんだ」と理解してもらう。
そして、リスク・リターン両方とも正しく知った上で、ソーシャルレンディングを始めてもらえるようにしていきたいですね。
こういった地道な活動がソーシャルレンディング市場を拡大させるには不可欠ではないでしょうか。
情報の開示などソーシャルレンディング会社側に望むものはありますか?
情報の公開は進んでいますが、その基準がまだ不明確なので、ソーシャルレンディング業界で統一して欲しいと思います。
融資先のモニタリングとは、実際に何をすることなのか、資産の保全の定義は何なのか、貸し倒れが起きた時の回収のスキームはどの会社も同じなのか、その基準は統一されていません。
各社が独自の基準で情報の公開を行っても、共通の基準がなければ投資家はその情報をもとに正しい投資判断をすることはできません。
まずは、情報公開の基準の整備が必要ではないでしょうか?
これは私たち投資家サイドではできないことなので、金融庁などが働きかける前に業界で統一した基準を設けてもらえればと思います。
ソーシャルレンディング会社の業界としての動きなどに期待したいですね。
ただし、情報の公開が常に投資家にメリットになるとも思っていません。
情報の公開を強いられると、借り手は「ソーシャルレンディングは使いづらい」という印象を持つかもしれません。
そうなれば案件の募集数が減り、投資家は結果的に不利益を被ってしまう。
そのため、投資家側もソーシャルレンディング案件の情報の公開はプラスの面だけではなく、マイナスの面もあることを理解するべきでしょう。
そして、公開してもらった以上はきちんと情報を読み込み、リスクが低い案件を見抜く眼が私たちにも求められると思います。
2019年3月の匿名化解除の前後でソーシャルレンディング業界は変わったと感じますか?
ソーシャルレンディング会社の内部のことまではわかりませんが、投資家の意識は2018年の一連の騒動を境に変わったと思います。
かつて、投資家は利回り中心で投資先を選ぶ傾向にありましたが、案件の安全性で選ぶようになったのが一番の変化ですね。
「maneoファミリーだから」「有名ブロガーが評価しているから」といった理由ではなく、投資先が安全かを自分で正しく判断しようとするようになったと思います。
ただ、2019年以降からソーシャルレンディング投資を始めた人とそれ以前から行っていた人とでは、リスクに対する意識に差があるのではないかと最近は感じています。
2018年以前から投資している人は自身が損失を被ったり、他の投資家が喪失を被るのを見聞きしたり、ソーシャルレンディングのリスクをリアルに体験しています。
一方で、最近始めた人は知識としてリスクを知っていても実際に体験していないため、もう少しリスクに目を向けるべきではないかと思います。
小心タロウ氏が今後ソーシャルレンディング業界に望むもの
ソーシャルレンディング業界が情報公開の基準を設けて欲しいと語る小心タロウ氏。
今後、業界がさらなる発展を遂げるためのヒントや、投資家として着実に利益を出していくためのヒントがそこに隠されているかもしれません。
こんな会社やこんな案件があったら投資したいと思うものはありますか?
利回りは2%だけど返済を100%保証してくれる案件。もちろん冗談です。
これからソーシャルレンディング投資を始めようという人にアドバイスがあればお願いします。
アドバイスと言うよりも自戒を込めてですが、「自分がやっているのは投資ではなく金貸し」という意識を強く持つべきだと思います。
貸金業登録が必要なことからわかるように、ソーシャルレンディングの本質は「貸金」です。
私たちはお金を貸す立場であり、ソーシャルレンディング会社を通じて借り手に自分のお金を貸すわけです。
その際、他人の評価をもとに融資先を選ぶことが本当に正しいのか、じっくりと考えた方が良いと思います。
「フィンテック」や「スタートアップ」といった響きの良い単語にまどわされがちですが、ソーシャルレンディングは「貸金」であることを意識し、貸したお金を回収するには何を重視すべきなのか、各人でよく考えていく必要があると思います。
ソーシャルレンディングは待つだけでお金が増えるという声があります。
確かに、待っていてお金が返ってくれば、結果的にお金は増えます。
でも実際にお金を貸したならば、待っている間は「本当に戻ってくるのか?」と、すごく心配になりますよね?
ネットで投資する際は、リアルに「お金を貸している」という実感が薄れがちです。
しかし、ソーシャルレンディングで10万円を投資するのは、自分の財布から10万円を出して手渡して貸すことと同じです。
それをイメージしてみれば、投資先や案件を選ぶ際にもっと慎重に検討するようになるのではないでしょうか。
パソコンやスマホの画面を介すると、どうしてもお金を貸すという感覚や警戒心が薄れ慎重さを欠いた投資判断をしてしまいがちです。
それこそがソーシャルレンディングの怖いところです。
ですので、「自分たちが行っているのは、貸金という泥臭い商売なんだ」「小さくないリスクがあるんだ」という意識を常に持つべきでしょう。
自分のお金を守るために。
まとめ
ソーシャルレンディングに1,000万円以上の投資を行いながら、一度も損失を出したことがない小心タロウ氏。
その背景にはソーシャルレンディングが「貸金」である意識を常に強く持ち、リスクを最大限に見積もって投資先を決めるという投資方針を徹底されていました。
リターンを狙うよりも、まずはリスク対策を行うことで、ソーシャルレンディングや不動産投資型クラウドファンディングでもきっちりと利益を確保できているのです。
混迷する市況の中、どのソーシャルレンディング案件に投資して良いかがわからないという方は、小心タロウ氏のブログを参考にしてみてはいかがでしょうか?
「小心タロウ氏のブログ「小心タロウ|ソーシャルレンディングと不動産クラファンで投資中」では、現在投資中の案件や金額についても詳細に公開されています。
ソーシャルレンディング投資初心者の方も投資歴がある方にも参考になる内容ですよ。