投資をする際に必ずついてまわるもの、それは「リスク」です。
リスクというと、「怖いもの」というイメージを持っている方が多いかもしれません。
しかし、闇雲にリスクを恐れていては投資することはできません。
この記事では、リスクとは何か、どのように対処をすれば良いのかについて紹介します。
投資における「リスク」とは?
そもそも、投資における「リスク」とはどのようなものを指しているのでしょうか。
まずは、投資におけるリスクの意味から解説していきますね。
どれくらいの「変動幅」を取るかという意味
投資におけるリスクは、「変動幅の度合い」であると理解すると良いでしょう。
変動幅を示す指標として代表的なものが「標準偏差」と言われる指標です。
標準偏差とは、測定期間中の価格のばらつきを示す指標です。
標準偏差が大きければ大きいほど変動幅が大きく、標準偏差が小さいほど値動きが小さいと言うことになります。
標準偏差は振り子の振れ幅のようなものだと考えてください。
振り子は一方に触れることがないように、投資性商品も一方的に上がり続けたり、下がり続けることはありません。
標準偏差が大きいと言うことは「振れ幅が大きい=価格も大きく動く」ということになります。
つまり、標準偏差が大きいということはリスクが高いということになりますが、その分、リターンも大きいため、「悪い商品」といいうわけではありません。
投資におけるリスクは必ずしも危険なだけではなく、「変動幅」であることを意識しておきましょう。
リスクは必ずしも悪いものではない
「リスク=危険」と理解されている方は多いのではないでしょうか?
しかし、投資の世界ではリスクは必ずしも悪いものではありません。
なぜなら、投資をする際にリスクを取らなければリターンを得ることはできないからです。
投資をする際にはリスクを過度に恐れるのではなく、適切にリスクを取りに行く必要があります。
リスクとリターンは比例関係にある
投資の世界ではリスクとリターンは比例関係にあると言うことができます。
つまり、リスクが高い商品はリターンも高いということです。
そのため、自分が投資をしようとする商品にどのようなリスクがあり、どれくらいの損失が発生する可能性があるかを理解しておく必要があります。
投資に元本保証はない
投資性商品には元本保証はあり得ません。
もし元本保証で高いリターンを約束している商品があるとしたら、それは詐欺商品であることを疑った方が良いでしょう。
リスクを取ってリターンを狙うのが「投資」です。
元本保証ということは高いリターンを得ることができないということです。
投資・投機・ギャンブルは異なる
投資はよく「投機」や「ギャンブル」と混同されがちです。
しかし、投資と両者は本質的に異なります。
では、どのように違うのかしっかり理解しておきましょう。
投資とは
投資とは、財産を増やすために資本を提供することを指しています。
また、「投資」という言葉は基本的に長期的に財産を提供する意味を含んでいます。
伝統的な投資性資産である株や債券は、基本的に長期保有して値上がりや配当を狙うことが目的となる財産。
そのため、投資は経済や企業の成長を前提として社会全体で利益を享受することをイメージさせることばです。
投機とは
投機は「投資」とよく似たことばですが、その意味はまったく異なります。
投資は長期的に社会全体で利益を享受することを連想させることばです。
一方、投機は短期的な相場の変動を利用して利益を得ることを指しています。
一日の間に株を売買して、日中の値幅で利益を稼ぐ、いわゆるデイトレーダーが行っているような取引は正に投機的な取引にあたります。
投機は投資と異なり、社会全体の成長を享受しているわけではありませんので、誰かが得をすればその分誰かが損をするという構造になります。
同じ株式に投資をする投資家であっても、企業の成長に賭けて長年保有する「投資」とデイトレーダーが短期的な相場変動を利用して得る「投機」は本質的に異なる行為として理解しておいた方が良いでしょう。
ギャンブルとは
ギャンブルは基本的に胴元と呼ばれる主催者がおり、偶発性のあるものに対してお金をかける行為を指します。
ギャンブルの最大の特徴は、胴元が利益を得ることが前提となっていることです。
例えば、宝くじの還元金額は購入金額の4割ほどと言われています。
どんなギャンブルでも、基本的に胴元が損をするようには設計されていません。
投資は社会全体で利益を得ることを前提としていますが、ギャンブルは胴元が利益を得る事が前提となっているため、儲けられる可能性が低いのです。
投資のリスクの種類
投資にはさまざまな種類のリスクがあります。
では、どのようなリスクが存在するのでしょうか?
具体的に、主なリスクについて解説していきますね。
種類①:価格変動リスク
価格変動リスクは、株などの有価証券の値段が変動するリスクのことを指します。
価格変動リスクは投資をするうえで常に気を付けておくべきメジャーなリスクです。
種類②:為替変動リスク
為替変動リスクとは、円と外国為替の変動により資産価値が変動することを指します。
外国通貨建ての資産に投資をした場合、円高になると投資をした資産が相対的に値下がりすることになります。
種類③:金利変動リスク
金利変動リスクとは、主に債券投資で用いられることばです。
発行している債券は金利が上昇すると値下がりする傾向があります。
そのため、債券を保有している人にとって金利変動は持っている債券が値下がりする可能性があるリスクとなるのです。
種類④:流動性リスク
流動性リスクとはその資産の換金性のことを指しています。
流動性が低い資産とは、換金することができなかったり換金することでペナルティが発生する商品です。
投資する対象を選ぶ際にはついつい利回りの高さに目が行きがちですが、換金性が高いかどうかは、その商品への投資を検討するうえで重要な要素の一つです。
種類⑤:信用リスク
信用リスクとは、債券などの有価証券を発行している国や会社が財政難や経営不振を理由に元本や利息を支払えなくなる状態になることを指します。
債券などの投資性商品は信用リスクが高い(元本や利息を支払えなくなる可能性が高い)国や企業は利息も高くなる傾向があります。
つまり、信用リスクをどれくらいとって運用するかによってリターンも異なるということです。
種類⑥:市場リスク
市場リスクは、マーケットの動向などにより値段が変動するあらゆるリスクのことを指します。
市場リスクを抑えるためにはさまざまな資産に投資して、どのような経済状況になっても一方向に動きすぎないように工夫する必要があります。
種類⑦:カントリーリスク
カントリーリスクは、投資対象の国や地域が政治や経済等の混乱によって生じるリスクです。
代表的なものは国債です。
経済が安定している先進国に比べ、新興国は財政面や政治面でも不安が残ります。
国の財務状況が悪化し、債務不履行(借りたお金が返せない)状態に陥ると、最悪の場合には投資した元本が返って来ない可能性もあります。
種類⑧:地政学リスク
地政学リスクとは、国や地域が戦争や内乱などの緊張状態に陥った場合に生じるリスクを指します。
地政学リスクは地理的に緊張感状態に陥りやすい地域に投資をすることで高まりますが、日本などの安全な国に投資をする場合でも無関係ではありません。
緊張状態に陥った国によっては石油の供給が滞り価格が高騰すること等により世界経済が停滞してしまうリスクもあるのです。
投資のリスクに対する対処方法
投資をするうえで、リスクを完全に避けることはできません。
適切なリスクをとって上手く付き合うことが大切です。
では、リスクに対してはどのように対処していくのが良いのでしょうか?
ここでは、対応方法について解説していきます。
対処方法①:投資対象を分散する
リスクに対する対応方法は、投資対象を分散することです。
投資の世界の格言で「卵を一つのカゴに盛るな」というものがあります。
卵を一つのカゴに持ってしまうと、万が一そのカゴを落とした場合に全ての卵を失うことになりますよね。
しかし、複数のカゴに分けて持っておけば、卵を全て失うことがなくなります。
投資のプロでも、予期せぬ事態が発生し、持っている商品が急落するということはよくあることです。
例えば、ある企業の株価が確実に上昇すると予想し、財産の大部分をその企業の株式に投資したとします。
その後、思いもよらぬ不祥事で、その企業の株価が暴落、最悪の場合倒産してしまうケースも考えられますね。
投資のプロでさえ、このような事態を完全に予想することは不可能です。
そのため、急落した場合のダメージを抑えるためには、一つの資産に投資をするのではなく、さまざまな資産に分散して投資をすることが重要なのです。
対処方法②:投資タイミングを分散する
投資資産の分散とともに重要なのが「時間の分散」です。
時間の分散とは、購入するタイミングを分ける手法です。
資産の分散は有効な方法ですが、リーマンショックのように世界経済全体が暴落するような事態に陥った場合には対応することができません。
しかし、購入タイミングを分けて購入することで、高値掴みを避けて投資をすることができるようになるのです。
時間分散の方法として最も一般的なのが、毎月一定額を積み立てる「積立投資」です。
例えば、毎月1万円を購入すると契約しておけば、自動的に時間を分散して投資をし続けることができるのです。
対処方法③:安全性の高い資産中心に運用する
リスクの大きさは、投資資産によって大きく異なります。
リスクを取らなければ大きな利益を得ることはできませんが、リスクを抑えて安全に運用をしたい方は、安全な資産を中心に運用すると良いでしょう。
投資をするからといって、必ずしも高いリスクを取らなければならないわけではありません。
ご自身にあったリスクを取ることが大切なのです。
リスクの少ない投資方法
これまでは、投資のリスクについてさまざまな側面からお伝えしてきました。
中には、できればリスクをあまり取らずに投資を始めたいと思っている方もいることでしょう。
そこで、大きなリスクを取らないで運用するにはどのような投資方法があるのか具体的にお伝えしていきますね。
分散投資ができる方法
まずはリスク対応の王道である、分散投資ができる運用商品を紹介します。
投資方法①:バランス型投資信託
投資信託は、小口で世界に分散投資をすることが可能な投資商品です。
中でも「バランス型」と呼ばれる投資信託が初心者にはおすすめです。
投資信託は、ファンドマネジャーと呼ばれる投資のプロがそれぞれの投資信託毎に事前に決められたルールに沿って運用をしています。
例えば、アメリカの株式のみに投資を行う投資信託だけを購入すると、運用はアメリカの株式のみに偏ってしまいますね。
そのため、分散投資をするためには複数の投資信託を購入する必要があります。
一方、バランス型の投資信託は、一つのファンドで世界中の株や債券、不動産などさまざまな資産に投資をしています。
そのため、バランス型の投資信託を購入すれば、一つの商品で世界中のさまざまな商品に分散投資をすることができるということです。
忙しくてファンドで選びが難しい会社員の方や、どんなファンドを選べば良いか悩む方は、バランス型の投資信託を選ぶと良いでしょう。
投資方法②:ロボアドバイザー
ロボアドバイザーはAI(人工知能)の力を活用して、投資の手助けをしてくれるサービスです。
ロボアドバイザーには、助言のみを行う「助言型」と、運用中の資産組み換えも
行ってくれる「投資一任型」があります。
「助言型」は「どれくらいの期間運用できるか」「どれくらいのリスクなら許容できるか」など、簡単な質問に答えるとご自身にとっておすすめの投資信託を紹介してくれるサービスです。
助言型のロボアドバイザーが行うのはあくまで「助言」ですので、最終的には購入する投資信託は自分で決める必要があります。
一方、「投資一任型」は、運用期間中に値上がりしたものを売却し値下がりしたものを購入することで、一定の配分を保つ「リバランス」が可能です。
そのため、忙しくて値段を逐一チェックできないサラリーマンでも運用しやすいという特徴があります。
投資一任型のロボアドバイザーは投資初心者や忙しくて日々の価格変動をチェックすることができない方にはおすすめの商品です。
時間分散ができる方法
既にご説明したように、リスクを抑えるためには購入タイミングを分けて投資を行うことも必要です。
そこで、時間を分散して投資ができる運用方法を紹介していきますね。
投資方法①:iDeCo
iDeCoとは「確定拠出年金制度」の愛称です。
毎月一定額を積み立てることで将来、年金や一時金として受け取ることができる制度です。
iDeCoの最大のメリットは、税制優遇です。
iDeCoに拠出した掛け金は全額所得控除の対象となり、運用益も非課税となるため、節税に役立つのです。
ただし、iDeCoにはデメリットもあります。
最大のデメリットは、原則として60歳までお金を引き出すことができないことです。
そのため、iDeCoで積み立てを実施する場合は、余裕資金で行う必要があります。
iDeCoの拠出金は、株や債券に投資できる投資信託に拠出することができるので、世界中のさまざな資産に分散投資をすることが可能です。
また、毎月一定額を積み立てることで、自動的に「時間」も分散して投資をすることにもなります。
コツコツと老後資金を貯めていこうと考えている方は税制面でのメリットが大きいiDeCoでの運用を検討してみると良いでしょう。
投資方法②:つみたてNISA
つみたてNISAは、年間40万円まで最大20年間非課税で投資ができる制度です。
毎月一定額を積み立てる投資方法となりますので、これからお金を貯めていきたいと考えている若年層におすすめです。
毎月1,000円ずつ投資をするなど、少額での投資も可能となりますので、投資初心者でも利用しやすいでしょう。
また、つみたてNISAの投資対象は手数料が安く、長期・分散・つみたて投資に向いている投資信託のみが認められています。
その投資信託の選定は金融庁が行っています。
つみたてNISAの対象になっているということは、金融庁が長期・分散・つみたて投資をするにあたって良い投資信託であるというお墨付きを与えたということです。
iDeCoとは異なり、解約制限はありません。
そのため、教育資金や住宅購入資金など目的が決まっている運用にも使える制度です。
安全性の高い方法
分散投資を心がけていても、相場が変動し続ける限り一定のリスクを負う必要があります。
リターンは低くても、安全に運用するという選択肢もあるでしょう。
ここでは、大きなリスクを取らずに運用できる投資方法について紹介していきますね。
投資方法①:格付けの高い債券
伝統的な投資資産である株、債券、不動産の中で、債券は最も安全性が高い資産とされています。
債券は格付けがされており、格付けが高い債券ほど利回りが低い代わりに安全度が高くなります。
そのため、リスクを抑えて運用する場合は安全度の高い債券を投資をすると良いでしょう。
安全度の高い債券で代表的なものは先進国の国債です。
国債は国が発行している債券であるため、日本やアメリカなどの先進国が債務不履行に陥ることはめったになく、安全度が高い商品と言えます。
ただし、外国の債券は為替変動によるリスクもあるため注意が必要です。
また、日本は超低金利状態が長く続いているためなかなか高い利回りは見込めません。
格付けの高い債券は安定的な運用はできるものの、高いリターンは得られないと思っておいた方が良いでしょう。
投資方法②:ソーシャルレンディング
ソーシャルレンディングとは、貸し手と借り手をインターネット上で直接つなぐ、金融のマッチングサービスです。
かつては銀行が仲介役として貸し手と借り手をつないできましたが、インターネットの発達により直接貸し手が貸したい人にお金を貸し、利息を受け取ることができる時代になっています。
ソーシャルレンディングのメリットは、仲介する銀行のコストがかからないぶん安全性が高く、比較的高い利回りを得ることができるところです。
また、運用期間が決まっており、株のように日々の値段変動がないためで、数年後に使うことが決まっている教育資金や住宅購入費用として貯めているお金を運用する場合にも適しています。
ソーシャルレンディングは利回りが5パーセントを超えるものも多くありますので、個人向け国債などと比べるとリスクも高くなりますが、かなり高いリターンを得ることが可能です。
比較的小口の投資も可能ですので投資をしたことがない方にもおすすめできる投資商品です。
まだ新しい投資商品なので、聞いたことがないという方もいるかもしれませんね。
こちらで詳しく解説しているので、一度チェックしておいた方が良いかもしれません。
まとめ
投資する際に負うことになるリスク、そして対応方法について解説しました。
投資を行うにあたっては、完全にリスクを排除することはできません。
また、リスクをとることは悪いことではありません。
リスクをとることで初めてリターンを得ることができるからです。
大切なことは、リスクとしっかり向き合い上手に付き合っていくこと。
投資行う際に発生するリスクを正しく理解して運用を行うようにしましょう!