「老後を迎えるまでに2,000万円を貯めていないとヤバイ」と聞いて、焦っている方も多いのではないでしょうか?
この話は金額だけが独り歩きしているのですが、老後のためにお金を貯めなければならないことは本当です。
この記事では、まずご自身が老後のために貯めなければならない資金の計算方法を解説します。
いくら必要なのかわかったら、次はどのような貯め方があるのかについて解説していきます。
お金の貯め方は、仕事や節約だけではなく投資という増やし方もあります。
この記事を資産形成のために、投資を始めるきっかけにしてみてください。
目次
筆者プロフィール
ファイナンシャルプランナー(FP)の資格を持つ、金融機関出身のライターです。
読者の方々の老後の豊かな暮らしや早期リタイアをサポートするため、金融や投資の記事を多く執筆しています。
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しかし、お客さまの多くが銀行の窓口の言いなりになって、メリットのない商品を契約してしまっています。
そんな状況を改善するため、Webライターとして大勢のためになるマネー情報を発信しています。
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老後に資金はいくら必要?目安は?
「老後2,000万円問題」を知っていますか?
2019年6月に金融庁が発表したレポートで、「夫婦2人でゆとりある老後の暮らしを営むには、退職時に平均2,000万円の資産が必要」と発覚した問題です。
多くの人が「2,000万円も自分で準備しろと言うのか!」と憤り、大炎上するに至りました。
実は、年金だけでは最低限の生活しか営めないため、年金の他に使えるお金を準備しておいた方が良いということはずっと前からわかっていました。
しかし、「2,000万円」という大きな金額がショックとなり話題を集めたのです。
いずれにせよ、老後のお金は年金だけに頼るのではなく、仕事をしている現役世代のうちから貯金して準備をしておいた方が良いでしょう。
とはいえ、老後に必要なお金は「平均2,000万円」と言われているとおり、2,000万円より多く必要な人もいれば少なくて済む人もいます。
「計算するのが面倒くさい」と思う方は2,000万円の資産を目標にしていただければと思いますが、できれば具体的にいくら必要なのか計算しましょう。
次の項目では、一緒に計算できるように解説していきます。
老後資金の見積もり方
老後の資金を見積もるには、退職後の収入と支出を計算すれば良いのです。
差額が必要資金となるため、現役時代に貯めておく金額の目安にしましょう。
それでは、具体的に収入と支出の計算していきましょう。
収入を計算する
まずは老後の収入を計算しましょう。収入になるのは次の6種類です。
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これらの収入を合計したものが、退職後に入ってくる収入の合計です。
計算しにくいのは、公的年金・私的年金ではないでしょうか?
退職後にもらえる公的・私的年金の合計は、1ヶ月あたりもらえる金額に寿命までの月数をかけることで計算できます。
例えば、夫婦2人の公的年金の収入は平均月22万円ほどだと言われています。
これに寿命までの月数をかければ、退職後にもらえる公的年金の合計がわかります。
2019年7月の厚生労働省の発表によれば、日本人の平均寿命は男性が81.25歳、女性が87.32歳なので、少なめに見積もって男性は80歳まで、女性は85歳まで生きると仮定すると良いでしょう。
65歳で退職する場合、男性は15年、女性は20年ほど老後を過ごすことになります。
15年は180ヶ月、20年は240ヶ月であるため、簡単に計算するため長い方を採用し、夫婦2人とも老後は240ヶ月生活することと仮定しましょう。
したがって、公的年金の収入が毎月22万円である場合、22万円×240ヶ月=5,280万円の公的年金をもらえることになります。
これに退職金、私的年金、再雇用の収入などを加えたものが、老後の収入となります。
支出を計算する
収入を計算できたら、次は支出を計算します。
例えば、次のような支出が考えられるでしょう。
人によっては他にも種類があり、また金額も異なるため、ご自身の老後をイメージしてください。
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現役時代にかかっていたスーツ代などは節約できる反面、旅行などの趣味にお金がかかるかもしれません。
老後の生活をイメージし、何に使うお金がどれくらい必要なのか考えましょう。
これらの支出を合計したものが、老後に出ていく支出の合計となります。
差額が退職時に必要な資金
ここまでで、老後の収入と支出の合計を計算することができました。
支出の方が大きい場合、支出から収入を引いた金額が、退職時に貯めておきたい資金です。
金融庁のレポートではこの金額が平均2,000万円になっているのですが、ご自身の場合はいくらだったでしょうか?
収入の方が大きい場合は、老後に使いきれないお金があるということです。
だからといって散財することはおすすめできませんが、老後の生活費や趣味に使うお金に余裕を持たせたり、余ったお金は相続として子孫に受け継いだりすることを考えましょう。
とはいえ、収入より支出の方が大きくなってしまった方が大半だと思います。
それなら、足りないお金は自分で貯めなければなりません。
どうやったら老後に必要なお金を貯められるのかについては、次の項目で解説していきましょう。
老後資金の貯め方
老後資金を計算したら、意外とお金が足りないことが分かった方も多いでしょう。
ですが、現役時代のうちに気づければ、貯める手段はたくさんあるため安心してください。
老後資金の貯め方として、次の4つの方法を紹介していきます。
老後資金の貯める方法
- 現役のうちに貯金しておく
- 長く働く
- 節約する
- 投資する
現役のうちに貯めておく
サラリーマンなど本業の仕事での給料があるうちに、老後資金を貯めることが基本戦略です。
貯金を増やすには、まとまった金額の給料から決まった金額を確実に積立するのが最も効果があるからです。
老後に必要な資金とは退職するまでに貯めるべきお金なので、毎月の貯金額の目標を決めるときに参考にしましょう。
ただし、給料がギリギリで貯金する余裕のない方は、他の方法も並行していくことになります。
長く働く
現役時代の給料だけで老後資金が貯められない場合、次の選択肢は定年延長や再雇用で給料をもらい続けることです。
しかも、給料だけで生活できる場合、年金の受給を先延ばしにすることができます。
すると、1ヶ月あたりにもらえる年金額を増やしてもらえるため、再雇用を退職した後の生活がラクになるメリットがあります。
ただし、健康上の理由などから誰もが定年延長できるわけではありません。
そうでなくても、一刻も早く仕事とおさらばしたい人も多いでしょう。
そうなると、これから説明する節約や投資で資産形成していくことになります。
「資産形成」といった用語がわからない方は、こちらで確認しておいてください。
節約する
老後の資産形成をしたいのに給料から貯金ができない人は、節約できる支出がないか調べましょう。
節約してお金を余らせることができれば、それを貯金することができます。
具体的に何を見直せば良いのかは後ほど解説しますが、意外と節約できるポイントは多いのです。
すでに節約も頑張っておりこれ以上節約できないという人は、投資でお金を増やせないか考えましょう。
節約を頑張っている方は銀行にお金を貯める預金が大好きな方が多いのですが、意外と投資に無関心な方が傾向があるのです。
実はそれはとてももったいないことですよ。
投資する
投資とは、企業などにお金を出資し、企業がそのお金を元手に事業を営むことです。
事業で生まれた利益の一部を投資家に還元することで、投資家は儲けを得ることができます。
つまり、投資とは投資家と企業のどちらにとっても美味しいWin-Winの関係にあるものです。
ギャンブルとは違って無駄な消費には該当しません。
投資商品にもさまざまな種類があるため、老後の資産形成に向いた商品を後ほど解説していきます。
老後資金を貯める節約のポイント
老後資金を貯めるための節約とは、1円、2円といった少額を貯めるより、数千円から数万円を一気に貯めるための節約です。
ある程度まとまった金額を貯金に回し、老後の資産形成をしていきましょう。
まとまった金額を貯めるには、通信費、保険、住宅の見直しをしましょう。
それぞれ詳しく解説していきます。
通信費の見直し
1人のスマホの使用料が1万円を超えている場合は、支払いすぎの可能性があります。
オプションを外してもっと安いプランに変更したり、家族割などを利用したりすれば、数千円は節約することができます。
キャリアにこだわらない場合、格安スマホにすれば月額2,000円から3,000円で利用できます。
保険の見直し
複数の生命保険・医療保険に加入している人は、内容が重複していることがあります。
重複しているものは解約して、保険料を節約しましょう。
また、30代のときに加入した保険を40代、50代になっても継続している人は、補償内容が自分のライフスタイルに合っているか見直した方が良いかもしれません。
例えば、がんの治療費が補償されない医療保険に加入していたため、がんにかかったときに保険から1円もお金が出なかったというケースがあります。
せっかく保険料を支払うのですから、自分のライフスタイルや年齢に合った商品を選びましょう。
保険の見直しなんて難しくてできないと思う方は、身近な保険代理店などに相談しましょう。
FPなどの専門家がライフプランをヒアリングし、保険商品の見直しを手伝ってくれます。
住宅の見直し
賃貸住宅に住んでいる方は、家賃が高くないか見直しましょう。
部屋の広さや立地条件を少し下げても良い場合、引っ越して家賃を節約するということも手です。
毎月数万円を節約し、貯金に回すことができます。
ただし、引っ越しの費用が高くなったり、礼金の支払いによって支出が増えたりすることもあります。
転勤のときに引っ越ししやすいときに次の家を慎重に選ぶなど、タイミングを選んで引っ越しをしましょう。
老後資金を作る投資方法
ここからは、投資について解説していきます。
節約や貯金が好きな方でも、投資はまだやっていない方が多いものです。
投資でもお金を増やすことができるため、老後の資産形成に投資も役立てましょう。
老後の資金を作るための投資で、おすすめなのは次の5つです。
どんな商品なのか詳しく見ていきますね。
老後資金を作る投資方法
- 投資信託
- ETF
- 不動産
- 国債
- ソーシャルレディング
投資信託
投資信託は、投資家のお金を投資会社が預かって運用する商品です。
投資会社に在籍するプロが運用してくれるため、投資の知識がない初心者でも始めやすいメリットがあります。
利回りは1パーセントから3パーセントほどです。
ただし、運用には手数料がかかる点がデメリットと言えます。
信託報酬などの手数料を比較し、できるだけコストがかからない商品を選びましょう。
なお、投資信託には「インデックス型」と「アクティブ型」の2種類があります。
インデックス型はローリスク・ローリターン、アクティブ型はハイリスク・ハイリターンという傾向があるため、基本的にはインデックス型から選ぶと良いでしょう。
ETF(上場投資信託)
ETFは上場投資信託という商品で、投資信託の一種です。
プロに運用を任せられる点は投資信託と同じで、基本設計はインデックス型の投資信託と同じ低リスクの分散投資です。
投資信託と異なるのが、売買の方法です。
投資信託は銀行や証券会社のホームページから売買の申し込みしますが、ETFは証券会社を通じて証券取引所に注文を出して売買します。
ETFは取引所に上場している商品なので、株式と同じように取引されているのです。
注文方法は投資信託と比べると難しいかもしれませんが、手数料が安く抑えられる傾向にあります。
そのため利回りが高く、2パーセントから5パーセントが目安です。
投資信託の手数料が気になる方は、ETFを活用すると良いでしょう。
不動産投資
不動産投資は、マンションの一室やアパートを所有して貸し出し、入居者から家賃をもらう投資方法です。
家賃が不労所得になるため、退職してからも年金以外の収入が入ってくるメリットがあります。
目安の利回りは5パーセントほどです。
ただし、不動産投資には数千万円単位のお金がかかります。
ほとんどの不動産投資家はローンを組んで投資していますが、投資信託やETFと違って気軽に売買できない点がデメリットだと言えるでしょう。
国債
国債とは、国が資金調達のために発行する債券です。
投資家は国債を買うことで国にお金を貸し出し、見返りとして利息を受け取ります。
また、国債は満期が決まっているため、満期が来たら元本が返還されます。
国債のメリットは、非常に低リスクであることです。
日本のような先進国の国債であれば、国が財政破綻して投資した元本がなくなるリスクは非常に低いです。
ただし、国債は非常に低リスクであるため、リターンも小さいです。
マイナス金利で運用環境が良くないこともあり、利回りは1パーセント弱となっています。
ソーシャルレディング
ソーシャルレンディングは、資金調達したい企業と投資したい投資家をインターネット上で結びつけるサービスです。
企業は事業プランを公開して資金を集め、投資家に利益の一部を利息として支払い、満期が来たら投資元本を返還します。
ソーシャルレンディングは、利回りが非常に高いことがメリットです。
5パーセントから10パーセントもの利回りが狙えるため、少額で大きな利益を追求したい人に向いています。
ただし、利回りが高い反面、リスクも高いデメリットがあります。
資金調達した企業が確実に事業に成功するとは限らず、事業に失敗したら投資した元本が返って来ないことがあります。
なお、ソーシャルレンディングについてはこちらで詳しく解説されています。
あまり知識がないという方は、こちらを確認しておくことをおすすめします。
老後資金を作る投資の注意点
投資商品を解説してきましたが、投資をする前に注意点があります。
というのも、老後資金は失ったら取り戻すチャンスがないため、慎重に運用しなければならないからです。
やり直しができる現役世代のお金とは違うのです。
老後資金を作る投資の注意点は、次の3つです。
詳しく解説していきましょう。
老後資金を作る投資の注意点
- 余剰資金のみを運用する
- 低リスクで守りの運用をする
- 手数料はできる限り節約する
注意点①:余剰資金のみを運用する
投資で運用に失敗すると、お金が減ってしまいます。
そのため、投資に使うお金は余剰資金に留めておきましょう。
例えば、現役のサラリーマンの場合、貯金は基本的には銀行に預金しておき、一部で投資をするのです。
老後のために確実に貯めたいお金は預金、最悪無くなっても大丈夫なお金で投資をしましょう。
注意点②:低リスクで守りの運用をする
老後の資産形成に投資の力を借りる場合、リスクを取ってガンガン増やすタイプの投資ではなく、リスクを低く抑えて減らさないように運用するタイプの投資をすると良いでしょう。
投資のリスクとリターンは比例するので、ハイリスク・ハイリターンな投資ではなく、ローリスク・ローリターンな投資を基本とします。
そのため、インデックス型の投資信託やETFといったリスクが低めの商品で大部分を運用するのがおすすめです。
リターンに物足りなさがある場合は、一部の資金でソーシャルレンディングやアクティブ型の投資信託に投資し、利回りを高めると良いでしょう。
注意点③:手数料はできる限り節約する
投資商品を売買するには手数料がかかりますが、手数料を節約すればするほど資産形成が楽になります。
商品を購入する前に手数料を調べ、似たような商品なら手数料が低い方を選ぶなどの工夫をしましょう。
例えば、投資信託なら信託報酬という手数料があります。
これは商品を保有している間はずっと支払い続けるものです。
しかも、投資信託の運用がうまくいかずマイナスの成果になっているときも支払います。
そのため、あまり大きいと投資の収益を圧迫します。
まとめ
老後の資金の貯め方について解説してきました。
流れとしては、老後に必要なお金を計算してから、どうやって貯めれば良いか考えると良いでしょう。
ほとんどの人が仕事や節約を頑張っているのですが、投資をしている人は非常に少ないです。
投資はお金を増やすための手段でもあるので、有効に使って老後の資金を貯めましょう。