企業にとって、事業拡大やキャッシュフローの安定化などを図るために資金調達は非常に重要なものです。
しかし、多くの資金調達手段があるため、どの方法を利用して良いのか判断が難しいもの。
そこで、今回は主な資金調達方法について紹介し、メリット・デメリットを解説します。
目次
資金の調達手段は主に3つ
企業の資金調達方法は、大きく次の3つに分けることができます。
- アセットファイナンス
- デットファイナンス
- エクイティファイナンス
それぞれで特徴が異なりますので、使い分けできるように違いを理解しておきましょう。
1. アセットファイナンス
アセットファイナンスとは、バランスシートの資産の信用力を裏付けとして資金調達する方法のことです。
不動産や債権など、企業の資産から生み出される将来の利益を担保として、融資を受けます。
土地・建物を担保とした「不動産担保融資」や、無形資産である売掛債権を売却して資金調達をする「ファクタリング」、不良在庫の売却やリースへの切り替えなどもあります。
アセットファイナンスは、低コストで資金調達ができ、資産をオフバランス化できることが特徴です。
2. デットファイナンス
デットファイナンスとは、銀行や日本政策金融公庫からの融資、ビジネスローンや私募債など、借り入れや債権発行などの負債によって資金を調達する方法のことです。
バランスシートの負債として資金調達するため、増資のエクイティファイナンスとは真逆の調達方法になります。
デットファイナンスには返済義務があり、支払利息も発生します。
3. エクイティファイナンス
エクイティファイナンスとは、純資産(資本)を増加させる資金調達方法のことです。
株式を発行し、投資家から資金を調達します。
自己資本を増やす資金調達方法で、財務体質を強固にする効果が期待できます。
基本的に返済義務がありませんし、自己資本比率が高まり、銀行からの評価も上がる可能性があります。
個人投資家からの出資だけでなく、ベンチャーキャピタルからの出資によって多額の資金を調達することが可能です。
アセットファイナンスのメリット
続いて、アセットファイナンス、デットファイナンス、エクイティファイナンス、それぞれの資金調達方法の主なメリット・デメリットについて確認していきましょう。
メリット・デメリットの両方を知っておくことで、有効活用やリスク管理もしやすくなります。
アセットファイナンスの主なメリット・デメリットは次のとおりです。
メリット①:低コストで資金調達
アセットファイナンスは、保有資産の信用力を裏付けとして資金調達をする方法であり、資金調達のコストを低く抑えることが可能です。
メリット②:自社資産をオフバランス化できる
ファクタリングなど資産の売却をして資金を調達するため、貸借対照表から資産を切り離すことができます。
自己資本比率が高まるなど、自社の財務内容を改善できるのもアセットファイナンスのメリットです。
メリット③:流動性の低い資産を流動性の高い現金に置き換える
アセットファイナンスでは、不動産や債権など、比較的流動性の低い保有資産を流動性の高い現金に置き換えることができます。
資産を流動化することで、有効活用できるようになります。
メリット④:リスク回避
保有資産には、さまざまなリスクがあります。たとえば、売掛債権であれば貸し倒れリスクがありますし、不動産であれば資産価値の低下リスクなどがあります。
資産を保有したままだと、このようなリスクがいつ表面化するかわかりません。
資産を売却するなどして資金調達するアセットファイナンスであれば、リスクを移転することが可能です。
アセットファイナンスのデメリット
続いて、アセットファイナンスのデメリットについてお伝えしましょう。
デメリット①:信用力のある資産がないと利用できない
アセットファイナンスで資金調達をするには、信用力がある資産を保有していないといけません。
そのため、将来キャッシュを生み出せる資産を保有していない場合は、アセットファイナンスを利用できません。
デットファイナンスのメリット
負債として資金調達をおこなうデットファイナンスのメリット・デメリットについても確認していきましょう。
メリット①:資金調達先が豊富
デットファイナンスのメリットの1つが、資金調達先が豊富であることです。銀行や日本政策金融公庫、ノンバンク、自治体、家族・知人など、他にもさまざまな資金調達先があります。
そのため、状況に合わせて調達先を選ぶことが可能です。
メリット②:支払利息は損金算入
デットファイナンスは借り入れのため、支払利息が発生します。
しかし、支払った利息は税務上損金として扱われるため、節税につながります。
メリット③:銀行からの信用を高められる
デットファイナンスで銀行から資金調達をし、しっかりと完済をすれば取引実績をつくることができます。
取引実績ができることで銀行からの信用を高めることが可能です。信用度が高くなれば、その後の融資が受けやすくなります。
デットファイナンスのデメリット
続いて、出っとファイナンスのデメリットについてお伝えしていきましょう。
デメリット①:支払利息が発生する
銀行や日本政策金融公庫からの借り入れをするデットファイナンスは、支払利息が発生することがデメリットです。
元金+利息により、毎月の返済負担が大きくなり資金繰りが圧迫される可能性があります。
デメリット②:自己資本比率が低下
デットファイナンスは、借り入れなど負債が増えるため自己資本比率が低下してしまいます。
財務状態が悪化し、これから先、安定したキャッシュフローの確保が難しくなる可能性があります。
また、自己資本比率が低下すると銀行からの評価が下がり、融資を受けられなくなる場合もあります。
エクイティファイナンスのメリット
エクイティファイナンスの主なメリット・デメリットは次のとおりです。
メリット①:返済義務がない
エクイティファイナンスのメリットの1つが、返済義務がないことです。株式を発行し、投資をしてもらうため、融資のように返済する必要がありません。
そのため、返済負担によって資金繰りが圧迫されることを防げます。財務体質を強固にすることが可能です。
メリット②:銀行からの評価が上がる
エクイティファイナンスは負債が増えることもなく、投資家から集めた資金は自己資本に計上されます。
その結果、自己資本比率が向上するため、銀行からの評価が上がる可能性があります。銀行からの評価が上がれば融資も受けやすくなります。
エクイティファイナンスのデメリット
最後に、エクイティファイナンスのデメリットを確認しましょう。
デメリット①:経営権を握られる可能性
エクイティファイナンスは株式を発行して投資を募るため出資者が増えます。
そして、出資者が増えて多くの人に議決権を渡すことで、希望通りの経営が難しくなる可能性があります。
場合によっては経営権を握られる可能性があるので、そのことを理解したうえで資金調達をする必要があります。
アセットファイナンスの資金調達方法
アセットファイナンス、デットファイナンス、エクイティファイナンスそれぞれの資金調達手段を具体的に見ていくと、さまざまな方法があります。
まずは、アセットファイナンスの資金調達手段について紹介しましょう。
①ファクタリング
ファクタリングとは、売掛債権を業者に売却をして資金調達する方法です。
売却した売掛金から手数料を差し引いた金額を得ることができます。
調査対象は取引先となるため、自社に信用力がなくても利用できます。
最短即日で債権を買い取る業者もあるため、急いで資金調達した場合でも使える方法です。
また、売掛債権を売却することで、貸し倒れリスクも回避することができます。
ただし、あくまでも売掛金の範囲内でしか資金調達ができないため、債権がない場合は利用できませんし、売掛金の金額が小さければ多額の資金調達はできません。
②手形割引
手形割引とは、取引先から受け取った手形を銀行に売却して資金を調達する方法です。
ただし、銀行に売却をした手形が不渡りになった場合は、買い戻さなければなりません。
ファクタリングのように、売却後の売掛債権に対して何の義務もないのとは違うことを理解しておきましょう。
手形を持っている場合は、スピーディーな資金調達が可能です。
③ソーシャルレンディング
ソーシャルレンディングとは、お金を必要とする人と融資を行って金利収入を得たい人を結びつけるクラウドファンディング型のサービスのことです。
融資型クラウドファンディングとも呼ばれます。
金融機関に頼らず、個人投資家から資金を調達することができる点が大きなメリットであり、また融資までの審査も短いので急場の資金調達に役立ちます。
ただし、投資家に対して金利を支払わなくてはいけなません。
金利の相場も低くて5パーセント、高い場合は15パーセントになる場合もあります。
コスト面で言ってしまえば決して低くはありません。
不動産物件の調達先としてソーシャルレンディングを利用し、早めの転売でできるだけ金利の支払いを少なくすると行った用途向きと言えます。
長期融資を受けて、事業用の資金を調達する手段としてはあまり向いていないかもしれません。
デットファイナンスの資金調達手段
続いて、デットファイナンスの具体的な資金調達手段を紹介しましょう。
①銀行融資
銀行から事業融資を受ける資金調達方法です。
銀行から直接融資を受けるプロパー融資と、間に信用保証協会が入る保証付制度融資があります。
ノンバンク系よりも金利が低く、銀行ごとで特徴が異なります。
ただし、決算内容や財務状況によって評価が決まり、信用力がある企業でないと融資を受けることはできません。
そのため、スタートアップや業績が良くない企業は利用することが難しい可能性があります。
②日本政策金融公庫
政府系金融機関である日本政策金融公庫から資金調達する方法です。
国民生活事業や中小企業事業などがあり、低金利の融資を受けることができます。
制度融資によっては、担保・保証人不要で資金調達できるものがあります。
融資までには時間がかかりますが、好条件で融資を受けられることがメリットです。
③補助金・助成金
自治体が実施している補助金や助成金で資金調達する方法です。
各自治体で内容は異なりますが、返済義務がないものや低金利で利用できるものも多く、わずかな負担で調達が可能です。
ただし、補助金や助成金を受けるには各自治体が設けた要件を満たさねばなりません。
まずは、該当する自治体で補助金・助成金を実施しているかどうか確認をする必要があります。
④私募債
私募債とは、自社の社債を発行して投資家から資金調達をする方法付です。
そのため、企業の収益性や将来性などが高ければ資金が集まりやすく、担保や保証人も不要です。
ただし、株式発行とは異なり、借り入れ扱いとなるため返済義務もありますし、金利の支払いも必要になります。
投資家からすれば金利が高いほど魅力を感じるものです。
⑤ビジネスローン
ビジネスローンとは、法人向け融資のことで銀行や消費者金融が提供しています。
通常の銀行融資とは異なり、審査のハードルがそれほど高くはありません。
そのため、取引実績の少ない企業や決算内容・財務状況がそれほど良くない企業でも、融資を受けられる可能性はあります。
また、担保や保証人を用意する必要がないため、すぐに借り入れを検討できます。
金融機関によっては即日融資にも対応しているため、緊急の資金調達も可能です。
ただし、銀行のプロパー融資や保証付制度融資に比べると、金利はかなり高くなるため注意が必要です。
エクイティファイナンスの資金調達方法
最後に、エクイティファイナンスの具体的な資金調達手段を紹介しましょう。
①個人投資家・エンジェル投資家
自社の株式を発行して、投資家から資金を調達する方法です。
エクイティファイナンスであり、支払利息や返済義務がなく財務を強固にすることができます。
個人投資家やエンジェル投資家の中にも、まとまったお金を出資する人はたくさんいます。
また、元起業家でエンジェル投資家になっている人も多いため、さまざまなアドバイスを受けることがメリットです。
②ベンチャーキャピタル(VC)
ベンチャーキャピタルから出資を受け資金調達する方法もあります。
個人投資家やエンジェル投資家からの投資同様に返済義務がないため、返済で資金繰りが圧迫されることもありません。
ベンチャーキャピタルからもアドバイスやサポートを受けることができます。
③クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、専用のインターネットサイトを利用して商品やサービスに共感した人たちから資金調達をする方法です。
少額から出資ができるため、たくさんの人から資金調達が可能です。
返済義務はありませんが、資金を集めるのに時間がかかります。
まとめ
主な資金調達方法について、「アセットファイナンス」「デットファイナンス」「エクイティファイナンス」に分けて解説しました。
資金調達には非常に多くの方法があり、それぞれで特徴が異なります。
できるだけ多くの種類を把握し、都度最適な方法で調達するようにしましょう。
金融機関に頼らない資金調達方法を確保しておくと、いざというときでも便利です。
なお、資金調達に関するご相談は下の問い合わせフォームから受け付けています。
必要事項にご記入してお送り頂ければ幸いです。