2020年9月、好調な市況推移を続けていた東京都内の不動産に新型コロナウイルスが影響を与えていたことがわかりました。
不動産市況の変化は、ソーシャルレンディングや不動産投資型クラウドファンディングの市況にも影響を与えるのでしょうか?
この記事では、不動産市況の変化がそれぞれに与える影響について考察します。
目次
筆者プロフィール
筆者は、第二種金融商品取引業事業者に従事し、個人的に不動産投資を行っています。
インターネット上で資金を集める事業および不動産市況の変化を敏感に感じ取ることができる立場の人として、周辺から集めた情報などをもとにして状況を説明していきます。
都心のオフィス空室率が6年ぶりに3%台を超える
不動産仲介業大手の三鬼商事株式会社から、2020年8月の日本国内の各エリアにおけるオフィスの空室率そして家賃の坪単価データが発表されました。
出典:東京オフィスマーケットデータ(三鬼商事株式会社)
同社の発表したデータによると、2020年8月の東京都心5区(千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区)のオフィス空室率は3.07%であり、30ヶ月ぶりに3%を突破しました。
また、家賃坪単価は23,014円と80ヶ月ぶりに前月を下回りました。
要因はコロナ禍によるオフィスの撤退
三鬼商事株式会社のデータを見ると、東京都心5区の空室率の上昇は2020年5月から顕著になっています。
その理由として、新型コロナウイルスの流行により東京都心から撤退する企業が増加したことが挙げられています。
テレワークが推進される中、東京都心に大規模なオフィスを構える必要がなくなった企業が撤退し、その結果として空室率が上昇していると三鬼商事株式会社では見解を示しています。
家賃も下落傾向にある
空室状況だけではなく、賃料に対しても下落という形で新型コロナウイルスの影響が現れました。
2020年7月まで80ヶ月連続で家賃は上昇傾向にありましたが、2020年8月には2014年初頭以来振りの下落を示しています。
三鬼商事株式会社では、家賃が下落した理由もビルを所有する会社が空室発生後に新規入居者を募集するために家賃価格を下げて募集を行った結果との見解を示しています。
ソーシャルレンディング・不動産投資型クラウドファンディング投資に与える影響は?
ここ数年ずっと好調な推移が続いていた都心のオフィス空室率そして賃料が下落に転じたことは、不動産投資型クラウドファンディングやソーシャルレンディングへの影響を与えるでしょうか?
独自に分析・考察してみましょう。
2020年9月時点では大きな影響はない
2020年9月時点では、ソーシャルレンディング、不動産投資型クラウドファンディングともに募集金額が集まらない、投資家への返済が滞ったなどの影響は見られません。
不動産市況の変化が、即座にソーシャルレンディングや不動産投資型クラウドファンディングに影響してはいないと考えられます。
家賃収入の低下は利回りの低下につながる可能性がある
2020年9月時点で影響が見られないからと、今後のソーシャルレンディング・不動産投資型クラウドファンディングへの影響が発生しないと考えるのは早計です。
家賃相場収入が下がっていけば、不動産を扱うソーシャルレンディング案件・不動産投資型クラウドファンディングの配当は家賃収入を原資として配当するだけに、利回りが下落することは容易に想像できるでしょう。
特に、空室が増えその状態が長期間続けば、投資家への配当原資が絶たれてしまうために、配当利回りは大幅に低下する可能性もあるでしょう。
案件組成が難しくなることもあり得る
利回りの低下は、今後の案件募集数においても影響が出る可能性があります。
ソーシャルレンディングの運営会社、不動産投資型クラウドファンディングの運営会社でともに自社サービスの信頼性を高めるために、投資家に対して不利益が発生するリスクの高い案件の提供は避ける傾向にあります。
もちろん、投資家もリスクの高そうな案件にはなかなか投資しないでしょう。
つまり、十分な家賃収入が見込めるような良質な不動産物件を探す必要性が今まで以上に出てきます。
そのような優良不動産物件探しには時間がかかるため、今後案件組成が難しくなることも考えられます。
売却時の価格下落は起こり得る
不動産投資型クラウドファンディングでは、案件の運用終了後に物件を売却することで最終的な投資元本の返済を行っています。
家賃収入が下がれば、物件の売却価格が下がる可能性があります。
家賃収入が年間1,000万円のオフィスビル、家賃収入が500万円のオフィスビル。
この2件のどちらが高く売れるかと言うと、それはやはり家賃収入の高い方1,000万円の方の物件です。
そのため、物件の売却価格に影響が出て投資家への元本返済が目減りすることも考えなくてはいけないでしょう。
投資する際のリスク対策
2020年9月時点では大きな問題は発生していませんが、これから先ソーシャルレンディングや不動産投資型クラウドファンディングに投資する際には、より慎重な姿勢で投資先を選ぶ必要が出てきます。
では、どういったポイントを見ておけば良いでしょうか?
物件の住所を確認し需要を見定める
まず必ず確認しておきたいのは、運用物件の立地です。
不動産投資型クラウドファンディングサイトでは、必ず運用物件の住所は公開されています。
ソーシャルレンディング案件でも、最近では運用物件の詳細な情報を公開しているサイトが増えています。
物件の立地を確認し、市場競争力を持つ築浅のビルであるかどうか、また物件の建つエリア内のオフィス需要や家賃相場がどの程度かといった情報は、自分で確認するようにした方が良いでしょう。
長期案件に投資する際はより慎重に検討する
投資案件を選ぶときに、2年や3年など長期にわたって運用される案件に関しては、特に慎重になるべきです。
3ヶ月や6ヶ月の短期運用案件なら、その期間中に大きな不動産価格の下落が起こる可能性はさほど高くないと考えられます。
しかし、2年から3年後の不動産市況は誰にも読めるものではありません。
去年の今頃に、新型コロナウイルスの流行により世界中の経済状況が悪化することを予測していた人は誰もいないでしょう。
長期案件に投資するときは、リターンを重視するよりも不動産投資型クラウドファンディング運営サイトの劣後出資分が多いなどローリスク・ローリターン案件を選んだ方が良いかもしれません。
まとめ
ここ数年好調な市況が続いていた東京都心のオフィス市場にも、ついに新型コロナウイルスの影響が出てきました。
新型コロナウイルスの流行により、これまで人口増加が続いていた東京からも、今後は人口が流出することになるかもしれません。
ただし、日本の人口の数が大きく減っているわけではないため、東京都内の不動産の需要が減れば逆に郊外の不動産需要が増加することも考えられます。
これから先は東京都心の不動産だけではなく、そこからやや離れた郊外エリアの不動産市況が活性化するかもしれません。
不動産投資型クラウドファンディング、不動産を扱うソーシャルレンディング案件を選ぶときには、先の需要を見据えて投資先を選びましょう。