手元に100万円の余裕資金があり、これを運用したいと思った場合、どのような資産運用法があるでしょうか?
本記事では、100万円の資産運用法を9つ紹介するとともに、100万円を資産運用するメリット・デメリットや100万円を2倍にするためのコツなどお伝えしていきます。
目次
100万円で資産運用を始めることはできる?
これから資産運用を始めようと思っている人の中には、資産運用には相当なまとまった資産が必要だと考えている方もいらっしゃるかもしれませんね。
最近は個人で資産運用を始められる方法が充実しており、100万円の資金を用意することができればさまざまな方法で資産運用を始められると考えて問題ありません。
運用する目的
確かに、資産運用を始めるだけであればさまざまな方法があります。
しかし、それが資産運用を始める目的に合っているのかどうかはよく調べる必要があります。
資産運用を始める目的としては次のようなことが考えられます。
- 老後を安心して暮らすために60歳までに2,000万円貯める
- 日本円だけでなく他国の通貨や不動産に投資してリスクを分散しておく
- 10年後に資産運用だけで生活できるようになる
例えば、30歳で資産運用を始めて60歳までに2,000万円貯める場合、毎月の貯金する場合は次のように計算できます。
- 2,000万円÷(30年×12ヶ月)=約5.6万円/月
つまり、毎月5.6万円ずつ貯金していけば達成できると考えることができます。
あるいは、仮に資産運用により資産が毎年5パーセントずつ平均して増えていくことを想定するのであれば、もう少し投資額を抑えることが可能でしょう。
- 1年間の貯蓄額:5.6万円×12ヶ月=約67万円
- 1年目:67万円×1.05=約70万円
- 2年目:(70万円+67万円)×1.05=約144万円
- 3年目:144万円+67万円×1.05=約222万円
- 4年目以降、くり返す
一方、10年後に資産運用だけで生活できるようになるにはどれほどの元手が必要でしょうか?
仮に、年間400万円ほどの生活費で足りると仮定しましょう。
その場合、毎年資産運用により平均5%ほどの利益が得られると想定すると、
- 8,000万円×5%=400万円
と計算され、400万円の元手が必要になることがわかります。
100万円を10年間で8,000万円にするとなると、相当ハイリスク・ハイリターンな投資を選ばなければなりません。
運用前に決めておくべきこと
運用を始める前に決めておくべきことは、先ほどお伝えしたように「資産運用の目的を定めたうえで、その目的に沿った運用法を決めておくこと」だと言えます。
例えば、「100万円を元手に始め、10年後に資産運用だけで生活できるようになる」ことを目的に定める場合、資産の25倍まで投資できるFXの証拠金取引を選択することも視野に入れることになるでしょう。
元手が100万円であっても、FXであれば最大2,500万円まで投資できることを考えると、達成することが決して難しい目標ではないと感じられるのではないでしょうか?
ただし、FXの証拠金取引や、最大約3.3倍まで取引できる株式投資の信用取引などは非常にハイリスクです。
相場が予想と逆に動いた場合、元手の資金を失うだけでなく多額の借金を背負ってしまう危険性があります。
そのため、これから初めて資産運用を始める初心者には、基本的に証拠金取引や信用取引はおすすめできません。
このように、「借金を背負う可能性のある証拠金取引や信用取引には手を出さない」といったことを決めておくと良いでしょう。
そううすれば、仮に大損したとしても損失額は最大で投資した100万円だけに留まります(実際にはすべて失うことはほとんどありません)。
100万円で資産運用するメリット
資産運用は、10万円からでも1,000万円貯めてからでも始めることができます。
では、「100万円で資産運用すること」のメリットにはどのようなことがあるのでしょうか?
メリット①:さまざまな選択肢がある
100万円の元手があれば、株式投資やFX、投資信託などさまざまな選択肢から資産運用法を選ぶことができます。
また、例えば株式投資を始めるにしても、10万円だと購入できる銘柄の数は限られますが、100万円あれば多くの銘柄が選択肢に入ります。
場合によっては、複数の資産運用法や銘柄を組み合わせられるのもメリットだといえるでしょう。
メリット②:複利運用で大きな利益を得られる
資産運用は、毎年「複利」で増やしていくことが可能です。
複利とは、資産が積みあがっていくことを指します。
例えば、100万円を1年間の運用で10パーセント利益を出すと、次の年は110万円を元手に資産運用を始めることができます。
そして、また次の年も同じく10パーセントの利益を出すと、2年目の終わりには121万円になっているのです。
こうして資産運用を進めていくと、同じ成績でも10年後には259万円にまで増えていることになります。
一方で、単利の場合は毎年元手の100万円を10パーセントで運用するため、利益は常に10万円です。
なお、さらに20年経った場合を考えると、複利運用の場合は元手100万円でも30年後には1,744万円になります。
単利と複利の差はグラフで比較すると良くわかるでしょう。
毎年10パーセントの利益を出し続けることは簡単なことではありませんが、100万円の元手でも福利の力を利用するとこれほど大きな利益を出すことが可能なのです。
メリット③:比較的短期間で用意できる額である
先ほどお伝えしたように、資産運用は複利で増やしていくことができるため、できるだけ早く始める方がお得です。
毎月貯金する場合、1年・2年で100万円を達成するにはそれぞれ次の金額が必要です。
- 1年で100万円貯める場合:8.3万円
- 3年で100万円貯める場合:2.8万円
100万円は、仕事をしながら貯金することでも比較的短期間に貯められる金額です。
100万円で資産運用するデメリット
一方で、100万円で資産運用するデメリットとしては、大きく稼ぐには時間がかかるということが挙げられます。
先ほどお伝えしたように、100万円を毎年10パーセントの成績で運用し続けていれば30年後には1,744万円という大きなお金にすることが可能です。
しかし、1年目の利益は10万円にしかなりません。
仮に、1,000万円で資産運用を始めていれば、1年目でも100万円もの利益を得られると感じると、その差は大きいと言えるでしょう。
そこでおすすめなのが、まずは100万円で資産運用を始めつつ、同じペースで貯金を進め、元手を増やしていくという方法です。
例えば、毎月8.3万円の貯金をできるのであれば、1年間で100万円貯まった時点で資産運用を始め、引き続き貯金も継続するのです。
こうすれば、資産運用で始めた100万円を複利で増やしつつ、さらに資産運用の元手を大きくしていくことができるからです。
100万円で始められる資産運用と特徴
ここからは、100万円で始められる資産運用方法について具体的に特徴やメリット・デメリットなどお伝えしていきます。
今回紹介する方法は次の6種類です。
- 定期預金
- 国債
- 投資信託
- J-REIT(不動産投資信託)
- 株式投資
- FX
- 不動産投資
- ソーシャルレンディング
方法①:定期預金
一昔前、定期預金はバブルの頃は一時期年利4パーセント以上といった時代もあり、お金を預けるだけでお金が増えていました。
ところが、超低金利の続く昨今、ほとんど利息は得られなくなっています。
例えば、みずほ銀行の定期預金は金利が0.002%となっています(出典:みずほ銀行 円預金金利)。
100万円預けていた場合、1年間で20パーセントの税金が引かれて16円の利息です。
「お金を増やしていく」という視点で考えると、ほとんど効果はないと考えて良いでしょう。
一方、大きなメリットとして「元本が減ることがない」ということが挙げられます。
定期預金はリスクなしで資産を貯めておきたいという方におすすめの方法です。
方法②:国債
国債とは、国が発行する債券を購入して利息を得る方法です。
国の債権ですから、日本が財政破綻などしない限りは安全だと言えます。
なお、国債には「個人向け国債」と「新窓販国債」があり、このうち「個人向け国債」は、発行後1年経過すると中途換金が可能で、元本も保証されています。
一方、利息は2020年5月の段階で、0.05パーセントほどと低いです(出典:財務省 現在募集中の個人向け国債・新窓販国債)。
100万円預けていた場合、利益は税引き後で400円ほどです。
定期預金よりは利率が良いとはいえ、「お金を増やす」という目的で資産運用を始めたいという方には向いていないと言えるでしょう。
方法③:投資信託
投資信託は、株式や債券などに投資するファンドに投資するスタイルの金融商品です。
プロの手によって分散投資して資産運用されるため、比較的リスクを抑えることが可能です。
投資信託にも、積極的に利益を追求するファンド、やできるだけ安全に運用するファンドなどさまざまあり、どの銘柄に投資するかによりリスクとリターンの期待値が異なります。
平均的な投資信託の年間の利回りは、おおよそ3パーセントから7パーセントほどと考えると良いでしょう。
定期預金や国債と比べると高い利回りを期待できますが、数ある資産運用法の中では「ミドルリスク・ミドルリターン」の金融商品に分類できます。
つみたてNISA
つみたてNISAとは毎月一定額を積み立てて投資信託やETF(上場投資信託)を購入するもので、購入した銘柄はその分配金や譲渡益に関して20年間非課税になります。
ただし、投資信託は国内におよそ6,000種類ありますが、つみたてNISAで購入できるのはこのうち「長期」「積立」「分散」投資に向いている投資信託・ETF(上場投資信託)に限定されており、その数は150種類ほどとなっています。
毎月積み立てていくため、短期間で大きく増減したものについては影響を受けにくくなっており、よりリスクを抑えて資産運用を始められると言えるでしょう。
なお、毎年積み立てられる額の上限は40万円(毎月約3.3万円まで)となっています。
方法④:J-REIT(不動産投資信託)
J-REITは投資信託の一種ですが、運用先がオフィスビルやホテルなど不動産に限られていることが特徴です。
投資信託と同様に分散投資を基本とし、証券取引所で取引できるため十分な流動性があります。
REITの平均利回りは4パーセントほどとされており、投資信託と比べると「投資信託の方が利回りの高い銘柄もあるが利回りの低い銘柄もあるのに対し、REITは比較的安定しやすい」といった特徴があると言えます。
その他、投資信託とREITにはいくつかの違いがあるものの、基本的な仕組みは同じであり、「投資先が株や債券をメインとしているのが投資信託、不動産を運用しているのがREIT」だと考えると良いでしょう。
方法⑤:株式投資
株式投資は企業が発行する株式を購入することで、売買差益を得たり、企業の発行する株主優待や配当金を受け取ったりするというものです。
株式には「未上場株式」と「上場株式」がありますが、基本的には東京証券取引所などに上場されている上場株式を取引します。
また、東京証券取引所内に、上場審査の厳しい東証1部と、1部より緩い2部、ベンチャー企業などをメインとするマザーズがあります。
基本的には、1部より2部、2部よりマザーズの方がハイリスク・ハイリターンの銘柄が多くなっています。
株式投資の平均的な利回りは5パーセントから6パーセントほどですが、さまざまな銘柄があることから、2パーセントから3パーセントほどの利回りで手堅く運用することもできますし、リスクを取って20パーセント以上の利回りを目指すといったことも不可能ではありません。
方法⑥:FX
FXとは外国為替取引のことで、例えば日本円で米ドルを購入し、一定期間毎にまた日本円を買い戻すことで、その差額を利益とするといった資産運用方法です。
また、高金利の通貨を低金利で購入し日をまたいで所有し続けると、その金利差分を利益とすることのできるスワップポイントもあります。
FXは証拠金取引により最大25倍まで投資できることもあり、ハイリスク・ハイリターンの投資に分類されます。
また、株式投資の場合、取引所の開く平日9時から15時(11時30分から12時30分は休み)しか取引できませんが、FXの場合は24時間取引可能です。
このため、日中仕事をしているサラリーマンでも始めやすい投資だと言えるでしょう。
方法⑦:不動産投資
不動産投資は不動産の現物を購入して入居者から家賃を受け取るタイプの資産運用法です。
不動産を購入するには多額の資金が必要になりますが、購入対象の不動産を担保に金融機関から融資を受けることが可能であるため、100万円からでも始めることは可能です。
その場合、家賃収入から毎月発生するローン返済額や管理費用、修繕費用など各種経費を差し引いた額が利益として手元に残ります。
他の投資と比べると「事業」として運営していく必要がある点が異なると言えます。
平均的な利回りは3パーセントから4パーセントほどとそう高くはありません。
ただし、減価償却費を活かして損益通算することにより、サラリーマンの給与収入から税金の還付を受けることを目指せたり、団体信用生命保険があることから仮に自分が亡くなった後は借金の亡くなった物件を家族に遺せるため、生命保険代わりとできたりと言ったことも可能です。
方法⑧:ソーシャルレンディング
ソーシャルレンディングとは、お金を必要としている人に、お金を運用したい人がオンライン上でお金を貸すことで、その利息を得るという資産運用方法です。
ソーシャルレンディング事業を行う企業が個人から小口で現金を集め、お金を必要としている人に融資するといった形が取られます。
例えば、金利15パーセントで融資した場合、そのうち5パーセントをソーシャルレンディング事業を行う企業が手数料として受け取り、残り10パーセントを融資した個人が受け取るといった仕組みです。
ソーシャルレンディングの特徴の一つには、高い利回りが挙げられます。
ソーシャルレンディングの平均利回りは8パーセントほどとされており、今回紹介した資産運用方法の中で高い水準です。
ソーシャルレンディング会社によって融資審査が行われるため貸し倒れ率は1.4パーセントほどと低いとはいえ、融資した企業が倒産する可能性もある点に注意が必要です。
倒産した場合でも、企業の持つ資産等で一部補填されることが一般的ですが、元本を割る可能性があります。
そうならないよう、分散投資したり担保や保証のついた融資先を選んだりといった対策をすると良いでしょう。
なお、ソーシャルレンディングは登場してからまだあまり時間の経っていない新しい投資方法です。
初めて聞いたという方は、こちらに目を通しておいてください。
100万円の資産運用で失敗しないためのポイント
100万円の具体的な資産運用方法を紹介したところで、失敗しないためのポイントをお伝えしていきましょう。
次の3つには注意して運用することをおすすめします。
- 分散投資する
- 余裕資金で運用する
- 信用取引には手を出さない
ポイント①:分散投資する
資産を分散投資することで、たとえ一つの資産がダメになったとしても、他の資産で補填でき、リスクを抑えることにつながります。
「資産」の分散
資産の分散とは、例えば資産を「日本円」と「米ドル」や、「ソーシャルレンディング」と「不動産投資」など、異なる資産に分けて保有することです。
仮に、日本が不況になって日本円の価値が落ちたとしても、米ドルを持っており、アメリカが好景気であれば資産価値の下落を抑えることができます。
「地域」の分散
地域の分散とは、「海外」株式と「国内」株式を分けて保有したり、国内でも「東京都」と「地方」で分けて資産を保有したりすることが挙げられます。
海外株式と国内株式の違いについては、先述の日本円と米ドルの関係のように、一国の経済が悪くなっても他方の経済がよければ影響を少なくすることができます。
また、不動産投資においては、例えば東京都で大きな地震が起こり建物が倒壊すると大きな損害を被ってしまいますが、地方にも別の不動産を保有しているとその不動産から家賃収入を得続けることが可能です。
「時間」の分散
時間の分散とは、同じ資産でも資産を取得する時期を分けることが挙げられます。
資産の価値は絶えず変動しており、価値が上昇する前に購入すれば大きな利益を得られますが、下降前に購入すると大きな損失となってしまいます。
一方で、資産の価値変動を完全に予測することは不可能です。
そのため、資産運用を始めるにあたり、1回の取引ですべての資産を投資するのではなく、何回かに分けて投資することでリスクを抑えることが可能になります。
ポイント②:余裕資金で運用する
資産運用は、運用額を大きくするほどリターンも大きくなるため、手持ちの資金の大半を運用に回したいという方もいるかもしれませんね。
しかし、大きく失敗してしまわないためには、「余裕資金」で運用することを心がけましょう。
生活資金には手をつけないのはもちろんのこと、できれば貯蓄額の3割ほどを目安に資産運用に回すことをおすすめします。
ポイント③:信用取引には手を出さない
株式投資の信用取引や証拠金取引を利用することで、少ない資金で大きな額の運用をすることも可能です。
これらを利用すると、100万円の元手でも短期間で大きな額の利益を得ることができる可能性があります。
ただし、一方で多額の借金を背負ってしまう可能性もあります。
いずれの資産運用法においても相場を完全に予想することは不可能であるため、特に初心者の内はこうした取引に手を出さないことを最初に決めておくと良いでしょう。
100万円が2倍になるまでどのくらいの期間がかかる?
最後に「100万円で資産運用を始めて2倍になるまでどのくらいの期間がかかるのか?」をシミュレーションしてみまそしょう。
ここでは、複利運用することを前提に、年間の利回り4パーセントから8パーセントまでの5パターンでそれぞれ算出してみます。
計算すると、次のように算出されます。
- 年間利回り4%:18年(REITの平均利回り)
- 年間利回り5%:15年(株式投資の平均利回り)
- 年間利回り6%:12年
- 年間利回り7%:11年
- 年間利回り8%:10年(ソーシャルレンディングの平均利回り)
このように、複利効果により1パーセントの違いでも、大きく期間が異なることがわかります。
もちろん、実際にはマイナスになる可能性もあるため一概には言えませんが、今回お伝えしたことを参考に、それぞれの資産運用方法のリスクなどを把握したうえで、より利回りの高い資産運用法を選ぶと良いでしょう。
まとめ
100万円で資産運用する場合のメリット・デメリットや、具体的な資産運用法、100万円を資産運用して2倍にするまでの期間について解説しました。
100万円の元手があるとさまざまな資産運用法の中から選ぶことができます。
今回紹介した内容を参考に、より自分の目的に適した資産運用法を選べるようになると良いでしょう。