ソーシャルレンディングという投資は、数ある投資の中では「ミドルリスク・ミドルリターン」に分類され、投資の初心者でもとっつきやすい印象を受けるかもしれません。
しかし、油断は禁物です。
まだソーシャルレンディングに慣れていない初心者の方や、これからソーシャルレンディングを始める方は、今回ご紹介する攻略法を参考に、トータルでプラスになることを目指してみてください。
目次
ソーシャルレンディング初心者向け攻略法①:分散投資する
最近は少しずつ目立ちはじめていますが、ソーシャルレンディングはデフォルト(貸し倒れ)を起こす可能性のある投資です。
そのため、1つの案件にまとまった金額を突っ込んでしまうと、それがデフォルトした場合、その後の利息や貸付元本の全額または一部が戻ってこず、かなりの損失を被る可能性があります。
今後はデフォルト案件ももっと増えてくるでしょうし、長期的にソーシャルレンディングを行い続けるのであれば、デフォルト案件を引き当ててしまうこともあるかもしれません。
だからこそ、より多くの案件に少しずつ融資することで、総額で評価をしたときにプラスにする必要があるのです。
分散方法
「分散」の仕方は色々ありますが、筆者は
- 国内不動産
- 海外不動産
- 国内事業性資金
- 海外事業性資金
- 太陽光などのエネルギー
といった具合に、
- テーマやプロジェクト(不動産・事業・エネルギー)
- 地域や通貨(国内・海外)
といったように、多方面において分散することをおすすめします。
注意していきたいこととして、たとえ複数の案件に分散していたつもりでも、融資先がすべて不動産事業者だった場合、リーマンショックのような経済危機により不動産業界自体が不況に見舞われ、融資先のすべての案件がデフォルトになってしまうことも想定できます。
そうならないためにも、ただ複数の案件に投資をするのではなく、きちんと分散できているかを確認しながら投資しましょう。
慣れてくると、時間の分散も考えられるようになりますよ。
ソーシャルレンディング初心者向け攻略法②:融資審査は怠らない
ソーシャルレンディングに投資をする私たちは、銀行や消費者金融のような役割をすることになります。
教育ローンや住宅ローンを申し込んだとき、クレジットカードを作ろうとしたとき、必ず「審査」がありましたよね。
ソーシャルレンディングでは、私たちが融資をする側です。
そのため「お金を貸してほしい」と言っている企業や団体をしっかりと審査する必要があります。
(1)ソーシャルレンディング事業者を確認する
「審査といっても、どこを調べたら良いのかわからない」といった声が聞こえてきそうですね。
まずは、「どこで口座開設をするべきか」を検討してみましょう。
最も分かりやすい部分として「第二種金融商品取引業の登録時業者リスト(財務省関東財務局)」にそのソーシャルレンディング事業者の名前が載っているかを確認してみると良いでしょう。
名前が載っていない場合は、不動産特定共同事業者として運営しているなど特殊な運営方法であるか、違法な詐欺会社のどちらかでしょう。
また、筆者の場合、でき立てほやほやのソーシャルレンディング事業者で口座開設をすることはありません。
- 最低でも1年以上運営している
- 過去にどれくらいの金額を貸し出しているのか
- 過去にどれくらい返済されているのか
といった実績を確認します。
この金額が多ければ多いほど、実績があるんだなと安心できます。
設立したばかりのソーシャルレンディング事業者や、実績を公開していないソーシャルレンディング事業者のすべてが怪しいというわけではありません。
ただ、投資家の立場として実績は気にしておくべきでしょう。
他にも、成長性が高いと見込まれている未上場企業に対して資金が提供される「ベンチャーキャピタルからの資金調達」が行われているソーシャルレンディング事業者や「上場企業が運営しているソーシャルレンディング事業者」であれば、ある程度の社会的信用を得ているとみなすことができるでしょう。
ベンチャーキャピタルからの出資であれば「maneo(※)」や「Funds」が、上場企業の運営では「オーナーズブック」や「SBIソーシャルレンディング」が有名です。
※ maneoは2018年7月に行政処分を受けることになりました(maneoのプラットフォームを利用していたグリーンインフラレンディングがファンドの募集時に虚偽の説明により投資の勧誘を行い損害が出たため)。
ソーシャルレンディング事業者が顧客から預かった資金を分別管理せず破綻をしてしまっては、儲け云々どころの話ではありません。
口座開設するソーシャルレンディング事業者も複数に分散しておく方が良いでしょう。
(2)資金調達の目的を確認する
ソーシャルレンディング事業者を決めて口座を開設したら、次は「どの案件に投資をするか」を決めます。
借り手は何かしら目的があって資金を調達しようと考えているのは間違いないので、その目的をしっかりと確認しておくことが大切です。
借り手が嘘をついていた場合、私たちにはどうすることもできません。
「私たちが融資したお金をどのように使うと宣言しているのか」くらいは事前に確認し、分散投資に役立てるようにした方が良いでしょう。
(3)保証の内容を確認する
貸し倒れとなっては、大きな損失を被る可能性がありますので、担保などの保証について確認をしておきたいところです。
保証には主に次の3つがあります。
- 保証会社による保証
- 不動産担保
- 代表者保証
1.保証会社による保証
「保証会社による保証」は借り手がお金を返せなくなった場合、「信用保証会社」という全く別の組織が代わりにお金を返してくれる仕組みです。
その信用保証会社自体がうさんくさい会社だと無意味になってしまいますが、信用に値する信用保証会社であれば、最も安全といえるでしょう。
2.不動産担保
ソーシャルレンディングにおいてよく見かけるのが「不動産担保」です。
「借り手が所有する不動産への抵当権の設定」などと書かれていることが多いのですが、このとき次の2点は必ず確認しておきましょう!
- 担保カバー率
- 弁済の順位
担保カバー率
担保カバー率は次の計算式によって算出します。
- 担保の評価額÷融資の予定額×100
この計算式で求めた数値が100未満であれば、デフォルト時に全額回収できないことが明白なので、その案件はやめておきましょう!
必ず100以上であることを確認し、できるだけ大きい数字になるものに投資することを心がけると良いでしょう。
不動産の中でも、特に建物は価値が目減りすることが一般的です。
融資時には担保カバー率が100以上あったとしても、デフォルト時に担保の価値が目減りして不足額を回収できないケースもあります。
また、筆者は「弁済の順位が第1順位以外はお断り」というルールを設けています。
第2順位や第3順位の場合、担保相当額の回収が難しくなるからです。
(順位の説明は、「3.代表者担保」の下にあるリンクの先から詳しい記事へ飛ぶことができます。)
3.代表者担保
ほかにも、もし担保そのものに価値があるのか判断できないようであれば、その案件には手を出さないようにしましょう。
担保は価値があってこそ担保の役割を果たします。
特に「代表者保証」が担保になっている案件はおすすめしません。
「代表者保証」とは、借り手である企業や団体がお金を返せなくなった場合に、その代表者個人が自身の資産でお金を返すことを意味します。
筆者の個人的な見解ですが、企業として返済できないのに、代表者個人から資金を回収できるとは思えません。
今まで説明してきた担保や保証についてわからないことがある方は、こちらの記事でしっかりと確認をしておきましょう。
(4)利回りを確認する
初心者にありがちな行動として、利回りの高い案件に飛びつきやすい傾向が挙げられます。
必ずしもというわけではありませんが、利回りが高くなるのはそれだけ貸し倒れてしまう可能性が高いということです。
「絶対に融資した元本を返済してほしい」と思っているのであれば、高い利回りの案件は避けておくのが無難でしょう。
筆者の感覚では、手数料を差し引く前の利回りが9パーセントくらいから「ちょっと高めだな」と警戒しはじめます。
10パーセントを超えてくると、その案件の概要すら目を通さないことが多いです。
利回りが高いということは、それだけハイリスクになることを忘れてはいけません。
(5)運用期間を確認する
運用期間は、長くなればなるほど何が起こるかわからず、倒産の可能性や経済危機、天災などのリスクが高まります。
これらのことに不安を感じたり、資金にあまり余裕がない状態で投資をしているのであれば、3ヶ月ほどの短期投資案件の方がいいかもしれません。
しかし、すぐに運用が終わってしまうと再び案件を探さなければならず、手間も時間もかかってしまいます。
案件を探すことが苦にならないのであれば、短期でたくさん運用するのも良いですが、探すのが面倒だと感じるのであれば6ヶ月から12ヶ月ほどの中長期の方が向いている可能性もあります。
ソーシャルレンディングは原則、途中解約ができません。
そのため期間についてはご自身の考え方によって慎重に選び、場合によっては使い分けることをおすすめします。
(6)返済方法を確認する
融資先からの返済方法は、次の3種類が多くなっています。
- 元本一括返済
- 元利金等返済
- 満期一括返済
その中でも、特に「元本一括返済」が多いです。
この元本一括返済の場合、運用期間中ずっと満額を貸し付けている状態になります。
そのため、月受け取る利息が減らず投資パフォーマンスが高くなるのです。
その反面、もし貸し倒れてしまったら、残りの利息および貸付元本が全く戻ってこない可能性もあります。
利息とあわせて貸付元本も毎月少しずつ返済してほしいのであれば、「元利金等返済」の案件を探しましょう。
ただし、貸付元本が毎月少しずつ返済されることは、融資額が減ることを意味します。
そのため、投資パフォーマンスは下がります。
返済方法についても、あなたの価値観によってどれを選択するのか変わってくるでしょう。
ソーシャルレンディング初心者向け攻略法③:複利を活用する
融資審査を怠らずに融資を実施したら、「あとは利息の受け取りと貸付元本の返済を受け取れば良いだけ」と思ってしまうのが、ソーシャルレンディング初心者にとっての落とし穴かもしれません。
せっかく利息を受け取れたにも関わらず、その利息をそのままソーシャルレンディング事業者の口座に残しておくのは機会損失につながります。
たとえば、融資後に利息を1万円受け取り口座にそのまま残しておいた場合、いつまで経ってもその1万円は1万円のままです。
しかし、その1万円を再び融資にまわすことで、数百円レベルのオーダーかもしれませんが、再び利息を受け取ることができます。
このようにして、雪だるま式に資金を増やしていくことを「複利効果」といいます。
ソーシャルレンディングに限らず、投資では時間を味方につけた「複利」を有効活用することがとても重要です。
こちらの記事で詳しく解説していますので、初心者の方は後々「知っておけば良かった」と後悔しないためにも、チェックしておいた方が良いでしょう。
まとめ
ソーシャルレンディングにて投資を行うには、分散投資が必要不可欠です。
そして、最初にきちんと融資先の情報や担保についての調査を行うことで損失を被るリスクはグッと減らすことができます。
また、効率良く資産を増やしていくためにも複利効果を利用して再投資することを心がけましょう!
ソーシャルレンディング初心者の方は、こちらの記事で解説されている失敗事例を確認しておきましょう。
どのようなリスクがあるかは、投資を始める前に押さえておいた方が良いですよ。