ソーシャルレンディング は「Fintech」(フィンテック)のカテゴリーに分類され、近年急速に「ソーシャルレンディング」ということばは世間で普及しています。
ソーシャルレンディングは新しい投資手法として、国内はもとより海外では日本国内を上回る規模で市場が拡大しています。
ソーシャルレンディングは、従来型の金融機関のあり方を抜本的に変える取り組みやプラットフォームとして、国内より先行して海外で注目され、「個人間融資」のモデルとして立ち上がったサービスです。
リクス性の高い金融商品のため、利回りの高さや保全性の確保はあるものの、一方で市場の拡大に法整備が追いついておらず、怪しい業者が横行していたり、デメリットや課題となる点が多く存在しています。
事実、一部のソーシャルレンディング事業者ではその課題が表面化し、行政処分を勧告された事例もあるほどです。
そして、今回の記事でご紹介していくのが、その行政処分の対象となったエーアイトラスト社のソーシャルレンディングサービス「トラストレンディング」です。
しかも、エーアイトラスト社においては2度目の行政処分勧告になるのです。
では、なぜこのような事態に陥ったのかについて、ソーシャルレンディングの基本情報や商品特性を踏まえた上で、エーアイトラストやトラストレンディングの内容、どのような処分を受けたのか、市場はどのような反応を示したかなど、幅広くこの問題について触れていきます。
ソーシャルレンディング投資を行う際は、この怪しい業者に引っかかることなく、信頼のおける企業の案件に投資するようにしましょう。
目次
ソーシャルレンディングとは
トラストレンディング(エーアイトラスト社)が行政処分を受けるまでに至った概要をつかむために、まずはトラストレンディングのサービスのもととなるソーシャルレンディングについて解説していきます。
ソーシャルレンディングの概要
ソーシャルレンディングとは、お金を借りたい会社と運用したい投資家をインターネットを通じてマッチングさせる欧米発祥のサービスです。
インターネットを利用したプラットフォームを指しており、今ではソーシャルレンディングというフィンテック(FinTech)領域のサービスとのひとつとして分類されます。
国内外問わず着実に増加傾向にあるフィンテックは、今後のビジネスやアイデアの起案の流れを変えるひとつのツールになるでしょう。
サービス自体の歴史はまだ浅く、2002年の開始当時は個人間融資(P2P:Peer To Peer Lending)というサービスでイギリスにて誕生しています。
日本でソーシャルレンディングが開始されたのは、2008年「maneo社」の個人向け融資モデルが初です。
現在でも、maneo社は日本国内のソーシャルレンディング市場の1位、2位を争うシェアを誇ります。
2008年のmaneo社のサービスを皮切りに、日本でもソーシャルレンディング市場が活性化されていきます。
- 2009年:AQUSH
- 2011年:SBIソーシャルレンディング
- 2013年:クラウドバンク
- 2014年:ラッキーバンク
- 2015年:トラストレンディング
といったように、開始から数年の間に、劇的に事業者数が増加しています。
日本では、2019年現在20社ほどのソーシャルレンディング事業者が存在しており、日本と欧米市場では異なる特徴を持っています。
海外のソーシャルレンディング事業者は個人間融資を得意とするのに対し、日本の会社は不動産向け融資や法人向け融資が中心です。
ソーシャルレンディングはメディアや紙面で取り上げられる機会が増え、投資手法としての認知度も近年高まりつつあります。
その結果、日本市場でも、不動産向け融資などを中心とした案件内容から、欧米や中国と同様、さまざまな案件へと多様化する機運が見られます。
ソーシャルレンディングの問題・課題
今回解説していくトラストレンディングの問題にも関わる内容ですが、ソーシャルレンディング市場ではいまだ法整備が追い付いていないために、多くの課題があります。
ここでは、トラストレンディングの問題に絡めた課題を中心にお伝えしていきましょう。
問題・課題①:借り手の詳細な情報が定かではない
先述のように、ソーシャルレンディングの法整備は未だ進んでいません。
案件の概要欄には、簡単な説明や利回りや運用期間等の情報については記載があるものの、現在でも借り手の企業名をはじめとした、より詳細な情報を投資家サイドが知ることは困難となっています。
【2019年3月20日追記】金融庁により「匿名化解除」が発表されました。
トラストレンディングの問題についての詳細は後述しますが、
- 事業者が集めた資金使途の流れが不透明
- 信頼性について懐疑的
であるこがソーシャルレンディングの問題として挙げられます。
問題・課題②:ソーシャルレンディング事業者の体制が万全ではない
法整備が整っていないことからもおわかりの通り、ソーシャルレンディングはまだまだ発展途上のサービスです。
そして、事業者側の財務体質も万全なものではありません。
そのため、万が一倒産や不祥事などに巻き込まれてしまうと、元本割れや返済されないというリスクが伴います。
投資にはリスクが伴うことは覚悟されているとは思いますが、まだ確立した金融サービスではないため注意が必要です。
トラストレンディングとは
続いて解説していくのは、トラストレンディングおよびエーアイトラスト株式会社の概要になります。
トラストレンディングの概要
出典:トラストレンディング
トラストレンディングは、東京都港区にあるエーアイトラスト株式会社が2015年より運営を行なっているソーシャルレンディングサービスのことです。
トラストレンディングでは比較的利回りの高い案件を募集しており、主な商品ラインナップは不動産を担保とした商品が多く、広く個人投資家の人気を集めていました。
同社ホームページには、累計成約金額83億円を達成したとの記載があり、ソーシャルレンディング事業者の中では比較的実績のある事業者として位置づけられています。
トラストレンディングはなぜ2度の行政処分を受けたのか
みなさんも2度目の行政処分と聞いて驚かれたと思いますが、エーアイトラストでは2018年12月にもファンド取得勧誘に関して「投資家に虚偽の表示をした」として、証券取引等監視委員会より行政処分を勧告されています。
そして、今回2019年3月という比較的短期間で2度目の行政処分を受けました。
現在は、複数の弁護士事務所を介して損害賠償請求等の集団訴訟の手続きが進んでいます。
では、なぜこれほどまでの問題に発展してしまったのか、その真相に触れていきましょう。
行政処分に発展した経緯
これまでも、ソーシャルレンディング事業者は、
- ファンドの利払い延滞の多発
- 未熟な管理体制
- 虚偽表示
といったことによって行政処分を受けるケースが目立っていました。
また、これまで下された行政処分の中で最も重い勧告は「業務停止命令」とされていました。
しかし、今回のトラストレンディングの勧告は、その重度な処分を上回る「登録取り消し」という処分までもが下されています。
なぜここまでの重い処分が下ったのかというと、度重なる勧告ということもありますが、下記に列挙した案件において
- 虚偽の告知や説明
- 資金の私的流用
- 誤解を生じさせる表示
- 管理責任
- 事業実体の有無
があったとされているためです。
- 債権担保ローン付ローンファンド
- 動産担保付ローンファンド
- 高速道路事業を貸付対象事業とするファンド
- 公共事業に係るコンサルティング業務を貸付対象事業とするファンド
- 燃料卸売事業者ローンファンド
また、トラストレンディングにおける新規会員および新規ファンドの募集の停止、既存ファンドについても運用業務や資金回収の業務に注力すると明言してはいますが、具体的な対策などは触れられておらず、現在投資家からの集団訴訟の準備が進んでいる状況です。
まとめ
市場規模が急拡大するソーシャルレンディングの概要および問題・課題について、そしてトラストレンディングで訴訟や登録取り消しに至るほどの行政処分勧告に発展したのかについてお伝えしました。
現在、金融庁ではソーシャルレンディングにおける環境の整備のため、投資家保護や貸金業法上の内容を踏まえて、法整備や融資先の詳細な情報開示など、新たな検討や措置についての話し合いが進められています。
※2019年3月20日追記:上記のとおり匿名化解除は発表されました。
将来的には、このような問題が起こらぬよう法整備が整うものと思われます。
ただ、現時点では先述したようなソーシャルレンディングの課題や問題をクリアにするような施策はありません。
そのため、トラストレンディングのような結果的に怪しいサービスかどうかを見極める基準や、事業者側の情報をきちんと精査して、投資案件を絞ることが大切です。
まだソーシャルレンディング市場は新興的な商品群であるため、投資を行う際は「自己責任」や「投資する上でのリスク」をきちんと把握した上で投資をおこなうようにしましょう。