ソーシャルレンディングは、従来の金融サービスとは異なり、お金を借りたい企業とお金を増やしたい投資家とをインターネットを介してマッチングさせるサービスです。
その中のひとつの事業者であるのが、今回お伝えしいく「みんなのクレジット」です。
みんなのクレジットも他のソーシャルレンディング事業者と同様に、個人投資家から小口で集めた資金を大口化させ、資金を必要とする企業に融資する形で、わずか7ヶ月もの間に約15億円の累計成立金額を集めるなど、近年急成長遂げてきた会社です。
そんなソーシャルレンディング市場を代表するみんなのクレジットが、度重なる行政処分、ポンジ・スキームによる資金の悪用や私的流用を起こし、投資家による集団訴訟にまで発展したこと内容について解説していきます。
なぜソーシャルレンディング業界を代表する企業がこのような事案を引き起こしてしまったのか、ソーシャルレンディングの概要や会社情報にも触れながら紹介していきます。
目次
ソーシャルレンディングとは
みんなのクレジットもソーシャルレンディングのサービスの一種であるため、サービスのスキームや内容を把握していなければ、なぜ重大な事案へと発展したのか概要をつかみきることができません。
ソーシャルレンディングの概要
ソーシャルレンディングとは、「お金を運用したい個人投資家」から小口で資金を調達し、それを大口化させ、「資金を必要する企業」に融資する一連の流れをマッチングさせるサービスのことです。
みんなのクレジットはソーシャルレンディングの一種のサービスであり、「貸し付け型クラウドファンディング」とも呼ばれることがあるサービスです。
ソーシャルレンディングを事業としておこなう場合は、「金融商品取引法」「貸金業法」の2つにまたがって事業を運営していく必要があります。
これらの法律が複雑化しているため、これが発端となってソーシャルレンディングにおける問題が発生していることも挙げられますが、ソーシャルレンディングを通して閉鎖的な金融市場を打開する試みや手法が世間に認知されていることも事実です。
今後ソーシャルレンディングに関する法律整備が進めば、将来的により一層の成長を期待することができる市場となるでしょう。
金融商品取引法
資金を集めるためには、金融商品取引法に則ってお金を不特定多数から集めなければなりません。
そのためには「金融商品取引業者」としての登録を受けなければなりません。
貸金業法
金融商品取引業者に登録したからといって、お金を貸すことを事業として行うことはできません。
融資を事業として行っていくためには、「貸金業法」に則って融資をおこなう必要があります。
みんなのクレジットとは?サービスの概要
出典:みんなのクレジット
続いては、「みんなのクレジット」がどのようなサービスなのか、どのような企業が運営していたのかなど、概要をついてお伝えしていきましょう。
みんなのクレジットは、2019年現時点で、金融庁や東京都からの度重なる行政処分勧告や債権譲渡による強引な幕引きによって訴訟問題にまで発展しています。
しかし、それ以前はどのようなサービスを運営していたのかは気になる点でしょう。
ここでお伝えする内容はあくまで「行政処分前」の内容ですが、参考にしてみてください。
みんなのクレジットの概要
みんなのクレジットとは、「株式会社みんなのクレジット」がサービスの提供・運営を行うソーシャルレンディングという金融商品を扱う事業者のひとつです。
創業は2015年であり、ソーシャルレンディング黎明期より市場を開拓してきた事業者のひとつです。
現在は、みんなのクレジットの会社名は「株式会社スカイキャピタル」に変更されています。
事件前のみんなのクレジット
みんなのクレジットは2015年に会社を設立、2016年に「みんなのクレジット」のソーシャルレンディングサービスを開始して以降、
- 5ヶ月後には累計成立総額「10億円」
- 7ヶ月後には累計成立総額「15億円」
といったように、当時のソーシャルレンディングの市場規模を考慮すると急速なスピードでシェアを拡大していました。
みんなのクレジットが人気だった背景としては、
- 高利回りの設定(9パーセントから14パーセントほど)
- 多彩なキャッシュバックキャンペーン
を用いてサービスの拡大を図っていたことが挙げられます。
みんなのクレジットに対する集団訴訟問題
続いては、みんなのクレジットに対する集団訴訟について解説していきます。
なぜ集団訴訟というほどにまで大きな事案へと発展したのか、その経緯とソーシャルレンディング投資を行う上でのデメリットを、今回のみんなのクレジットの事案と合わせてお伝えしていきます。
問題の発端
ソーシャルレンディングサービスを行うみんなのクレジットは、サービスの開始当初より高額な配当や、さまざまなキャッシュバックキャンペーンなどを謳い、多くの投資家を募りました。
しかし、集団訴訟の起点となる問題は、サービス開始より1年ほどで表面化してきました。
金融庁や関東財務局、東京都などからみんなのクレジットに対して指摘があった点は次のとおりです。
- 金融商品取引契約の締結、または勧誘において重要な事項につき誤解を生じさせる表示
- 貸付先に対して誤解を招く表示
- 最大の融資先である親会社がファンドからの借り入れを返済することが困難であること
- 事前の説明とは異なる融資先への融資
- ファンドの償還資金を別のファンドの資金から充当させていること
- ファンドの出資金をみんなのクレジット代表者の私的な借入返済等に使用していること
その後の2017年3月には関東財務局、証券取引等委員会は行政処分を行うよう金融庁に勧告する方針となり、結果的に「1ヶ月の業務停止命令」が下されています。
また、金融庁の検査が進むにつれて、みんなのクレジットの返済遅延や自転車操業など、かなり杜撰な実態が判明しました。
これにより、
- 代表者である白石伸生代表の解任
- 自主的な金融商品取引の新規勧誘等の休止
- 東京都産業労働局より貸金業法に基づく行政処分
などと、ソーシャルレンディング事業者の中でも注目を浴びる存在から一転し、サービス開始からおよそ1年から2年足らずで2度の行政処分を受けた事業者となってしまったのです。
集団訴訟の原因
また、集団訴訟にまで発展する問題となった原因、みんなのクレジットによる「債権譲渡」です。
みんなのクレジットでは、東京都産業労働局から行政処分を受けた2017年7月あたりから、投資家に対する償還が滞っています。
これら未償還の合計金額は約31億円にものぼり、その31億円の未償還債務を、わずか「1億円」(最高価格として9,660万円を提示)にして債権譲渡をはかったとされています。
さらには、「未償還ファンドを含むすべてのファンドに按分した」として、未償還の投資資金は単純計算で3パーセントに減額され、みんなのクレジットの投資家への債務は消えることになったのです。
これによって、みんなのクレジットに投資をしていた個人投資家は大きな被害を被ることとなり、それが集団訴訟にまで発展したという流れです。
金融庁の調べによれば、資金の大半がみんなのクレジットの代表者が経営するグループ企業や私的口座へと流入しています。
ファンドのほとんどが実体がないなど、投資家にとっては極めて遺憾な形で運用されていたことが判明したのです。
みんなのクレジットの集団訴訟から見るソーシャルレンディングの注意点
最後にお伝えすることは、ソーシャルレンディングにおけるデメリットです。
みんなのクレジットの集団訴訟に関連する内容ですが、ソーシャルレンディング市場は未だはっきりとした法整備や内容が確立しておらず、多くの課題があります。
そのため、悪質な事業や今回のような行政処分や訴訟にまで発見するケースも多く見られます。
そのため、投資をおこなう際は、投資案件だけでなく、その中身、さらには事業者に対しても注意しながら投資をおこなうようにするべきでしょう。
注意点①:案件の詳細情報がわからない
先ほどお伝えしたように、ソーシャルレンディングにおいの法整備やルールは未だ進展していません。
そのため、各事業者の投資案件に対する概要欄を見ても、簡単な事業説明や利回り、運用期間などの情報については明記されているものの、借り手の企業名をはじめとした具体的な情報・詳細な情報を投資家サイドが知ることができません。
そのため、みんなのクレジットのように、投資家から集めた資金が「ポンジ・スキーム」のように使われていたり、募集当初とは違う形で融資に回されていたり、使途の流れが不透明であることには気をつける必要があります。
みんなのクレジットのような行政処分が頻繁して発生すれば、ソーシャルレンディング自体の信頼不安に直結しますし、事業への懐疑的な声が多くあがることも予想されます。
注意点②:事業者側の体制が万全ではない
日本国内のソーシャルレンディング市場はまだまだ黎明期のため、多くの課題が点在化しています。
先述したように、法整備等が適切になされていないこともひとつの要因として挙げられますが、ソーシャルレンディングサービスを運営する事業者側にも多くの問題が含まれています。
今回のみんなのクレジットの問題を例としてあげるのであれば、次のような点があるでしょう。
- 事業者側の財務体質の脆弱性(財務が盤石ではない)
- 貸し倒れリスク・返済延滞リスク・倒産リスクなどリスクが多い
- 問題が発生したときの対処方法
他にもさまざまな問題はありますが、今後ソーシャルレンディング市場のより一層の発展をうながすのであれば、これらの問題は解決せざるを得ません。
投資する側も、事業者の倒産や元本割れ、返済されないリスクなどを認識しておくことが大切です。
ソーシャルレンディングは、まだまだ従来の金融サービスのように確立したサービスではありません。
そのため、今回ご紹介したみんなのクレジットの事例を参考にしつつ、ソーシャルレンディング投資を行ううえで伴うリスクを鑑みて投資の意思決定をするようにしましょう。
まとめ
みんなのクレジットにおける集団訴訟について解説してきました。
ソーシャルレンディングは有望な市場であるとともに、課題や問題点も多く抱えている業界です。
みんなのクレジットと同様、「嘘の説明で投資を勧誘され、損失が出た」などとの理由から、投資家がソーシャルレンディング事業者に対して損害賠償を求める集団訴訟が発生していたり、金融庁による登録取り消しの行政処分が下る事業者があるなど、業界内で問題が点在化しています。
これらの問題に巻き込まれることのないように、投資を行う際はリスクを把握した上での投資を行うようにしてください。