昨今、「フィンテック」ということばに代表されるように、ソーシャルレンディング市場も急成長を遂げるサービスに成長しています。
その中のソーシャルレンディング事業者のひとつに「みんなのクレジット」がありります。
そんなソーシャルレンディング市場を代表する企業がこのたび、度重なる行政処分、ポンジ・スキーム、そして今回解説していく債権譲渡を行ったとして、2019年現在集団訴訟にまで発展しています。
今回は、なぜみんなのクレジットは集団訴訟にまで発展したのかについて、ソーシャルレンディングの概要とメリット、みんなのクレジットの会社情報などに触れながら解説していきます。
目次
ソーシャルレンディングとは
まずは、ソーシャルレンディングがどのようなサービスであるかについて確認しておきましょう。
ソーシャルレンディングの概要に加えてメリットもお伝えしていきます。
以降解説する「みんなのクレジット」の概要とあわわせてソーシャルレンディングの大枠をつかんでいきましょう。
ソーシャルレンディングの概要
ソーシャルレンディングは、資金を運用したい個人投資家から小口で資金を調達して、それを大口化させて融資を受けたい法人(企業)に貸し出すという流れが一般的です。
ソーシャルレンディング事業を行う上では、「金融商品取引法」・「貸金業法」という2つの法律のもと運営していく必要があります。
そして、それぞれの法律が異なる目的を有しているため、ソーシャルレンディングは多くの課題や問題を抱えているのです。
しかし、ソーシャルレンディングは閉鎖的な金融市場を打開する試みで、将来的には成長を期待することができる市場です。
ソーシャルレンディングのメリット
では、なぜ事件に発展するほどまでにソーシャルレンディングが人々を惹きつけるのでしょうか?
ソーシャルレンディングのメリットを3つ紹介する形で解説していきます。
新興市場でもあるソーシャルレンディングにはリスクがつきもの。
ただし、しっかりと見極めて投資をすることができれば、多くのリターンも得ることが可能です。
みんなのクレジットにも共通するメリットですので、あわせて覚えておきましょう。
メリット①:利回りが比較的高い
ソーシャルレンディングで投資を行うのはとても簡単で、比較的パフォーマンスが安定しています。
投資であるがゆえにリスクはつきものですが、ソーシャルレンディング最大の魅力は何と言っても利回りの高さです。
ソーシャルレンディングの利回りの下限は4パーセントから5パーセント、上限は13パーセントから14パーセントほどであると各情報誌などで想定されています。
クラウドポート社が2016年に挙げた平均リターン値は8パーセントほど、その他の情報誌などの平均的な利回りを見ても5パーセントから8パーセントほど。
国債や定期預金、株式など、その他の金融商品への投資と比較しても、比較的高水準であることがうかがえます。
いかにソーシャルレンディングの利回りが魅力的であるかがわかることでしょう。
メリット②:運用するうえでの手間が不要
ソーシャルレンディングは、株式投資やFX投資、不動産投資のように、あらかじめ覚えておく知識があるわけではありません。
そのため、初心者であっても手軽にソーシャルレンディング投資を始めることが可能です。
また、投資をおこなう上で最も手間のかかるポイントととして、購入後の価格が日々変動することが挙げられます。
しかし、ソーシャルレンディングは株式や外国為替とは異なり変動することがなく、運用期間が終了するまで待つのみです。
そのため、普段仕事をしていて投資ができない会社員の方や、まとまった時間を取ることができない忙しい人には向いた投資手法なのです。
メリット③:少額投資が可能
通常の投資の場合、最低でも数十万単位や数百万円単位の投資資金が必要となりますが、ソーシャルレンディングの場合は最低1万円ほどから投資をすることが可能です。
これほどまでに少額の投資であれば、多くの方が捻出できる金額でしょう。
仮に投資に失敗したとしてもリスクがさほど高いわけではなく、お試し感覚としてソーシャルレンディング投資を行うことができます。
そのため、何か投資を始めてみたいという投資初心者におすすめの投資手法と言えるでしょう。
みんなのクレジットのサービス概要
「みんなのクレジット」という名前は聞くものの、どんなサービスを扱いどのような会社が運営しているのかなどを知らない方も多いのではないでしょうか?
続いては、「みんなのクレジット」のサービス概要と、運営企業についてお伝えしていきます。
みんなのクレジットとは
みんなのクレジットとは、「株式会社みんなのクレジット」がサービスの提供・運営を行うソーシャルレンディングという金融商品を扱う事業者です。
創業は2015年のため、ソーシャルレンディング黎明期より市場を開拓してきた事業者のひとつなのです。
事件前の評価
2015年に会社が設立され、2016年に「みんなのクレジット」のソーシャルレンディングサービスを開始して以降、5ヶ月後には累計成立総額「10億円」、その2ヶ月後には「15億円」と、当時のソーシャルレンディングの市場規模を考慮すると、急速なスピードでシェアを拡大していました。
みんなのクレジットはソーシャルレンディング会社の中でも人気を博していました。
その背景としては、
- 高利回り(9パーセントから14パーセントほど)
- キャッシュバックキャンペーン
があったことが挙げられます。
みんなのクレジットによる債権譲渡
続いては、みんなのクレジットによる債権譲渡について解説していきましょう。
この問題は多くのメディアが取り上げていたため、目にする機会があった方も多くいたのではないでしょうか?
ソーシャルレンディングという新たな資金調達方法として閉鎖的な金融市場に一石を投じるサービスとして注目を浴びていてだけに、とても残念なニュースでした。
多くの投資家に資金が返済されることはなく、杜撰な幕引きだとして集団訴訟にまで発展しています。
では、このような問題に陥ってしまった経緯や事件のポイント、今後の対応についてなど、債権譲渡に関わる内容についてお伝えしていきましょう。
行政処分を受けるまで
ソーシャルレンディングサービスを行うみんなのクレジットは、当初より高額な配当(14.5パーセント)や、さまざまなキャッシュバックキャンペーンなどを謳い話題となっていました。
実際、投資家からも多くの資金を集めることに成功しており、サービス開始5ヶ月後に累計成立総額10億円、7ヶ月後に15億円といったように、急速な勢いで応募金額集めていました。
しかし、その後2017年3月には関東財務局より証券取引等委員会からの行政処分として、「1ヶ月の業務停止命令」が下されました。
処分理由は、次のようなみんなのクレジットのかなり杜撰な実態によります。
- 金融商品取引契約の締結、または勧誘において重要な事項につき誤解を生じさせる表示
- 貸付先に対して誤解を招く表示
- 事前の説明とは異なる融資先への融資
- ファンドの償還資金を、別のファンドの資金から充当させている
- ファンドの出資金を、みんなのクレジット代表者の私的な借入返済等に使用している
これにより、
- 代表者の解任
- 自主的な金融商品取引の休止
- 東京都産業労働局より貸金業法に基づく行政処分
など、サービス開始から2年足らずで2度の行政処分を受けるに至りました。
債権譲渡の問題点
東京都産業労働局から行政処分を受けたあたりから投資家に対する償還が滞っており、今でもこの状態は継続しています。
未償還の合計金額は約31億円にものぼり、その31億円の未償還債務をわずか「1億円」(最高価格として9,660万円を提示)にして債権譲渡をはかり、投資家に大きな被害を被るかたちへ帰結したというのが問題点です。
金融庁の調査によれば、資金の大半がみんなのクレジットの代表者が経営するグループ企業や私的口座へと流入しており、ファンドのほとんどが実体がないことが判明しました。
投資家にとっては、極めて遺憾な形で資金が利用されていたのです。
今後の対応
2019年現在、みんなのクレジットによって被害を被った人たちで構成される「みんなのクレジット被害者の会」は、みんなのクレジット(スカイキャピタルに社名変更)に対して訴訟に向けた手続きを開始しました。
今後訴訟がどのようになるかは、注目していきたいところです。
ソーシャルレンディングへの投資前に注意すべきこと
最後に、みんなのクレジットの債権譲渡の問題を踏まえて、ソーシャルレンディング投資を行ううえで注意すべきことについてお伝えしておきましょう。
みんなのクレジットも当初より人気を博していたものの、結果として債権譲渡という結果に至ってしまいました。
このように、ソーシャルレンディング投資はまだまだ未知数な部分が多く、さまざまな点に留意して投資を行うことが重要です。
注意点①:ソーシャルレンディングのデメリットを把握する
日本国内のソーシャルレンディング市場はまだ法整備がなされておらず、多くの課題や問題を抱えています。
デメリットの中でも代表的なリスクとしては次のものが挙げられます。
- 融資先の貸し倒れによっては元本の毀損が発生するリスク
- みんなのクレジットのような投資家への償還の延滞リスク
- 事業者側の倒産するリスク
- 満期を迎えるまで資金を引き出すことができない(流動性が低い)リスク
注意点②:ソーシャルレンディングの仕組みを把握する
ソーシャルレンディングは、個人投資家から少額の資金を募って大口化させ、資金を借りたい企業に融資する形でお金を運用するというフィンテック領域のサービスです。
フィンテックは、金融とIT技術を結びつけることで、さまざまな革新的なサービスを可能なものとするとして注目を浴びています。
しかし、まだこれらの技術は発展途上であることも事実です。
閉塞感のある金融市場を打開する策として、フィンテックは有効な技術やツールとなり得ます。
しかし、ソーシャルレンディングにおいても国内市場はまだ黎明期であり、法整備が遅れています。
みんなのクレジットによる債権譲渡の問題は、このソーシャルレンディングのデメリットを逆手に取った「悪質な事件」とも言い換えることができます。
2019年現在、金融庁はソーシャルレンディングにおける環境整備のため、投資家保護や貸金業法上の内容を踏またうえでの法整備や融資先の詳細な情報開示などを検討しています。
まとめ
みんなのクレジットの債権譲渡について解説しました。
ソーシャルレンディング事業者の中では、このような事件にまで実際発展しているケースも少なくはなく、複数の事業者が行政処分を勧告されているという背景があります。
その中でも、みんなのクレジットによる債権譲渡による問題は、多くのメディアでも取り上げられたニュースであるため、今後の債権者による集団訴訟がどのような決着になるかにも注視したいところです。
ソーシャルレンディングは利回りが高く少額から投資可能なため、多くの人が参入しやすい投資です。
その反面、投資家に対して好条件であるというメリットを謳い、悪質に資金を集め、みんなのクレジットのようなボンジ・スキームによって、虚偽記や実態のない企業への融資、私的流用など、さまざまなケースに発展する恐れがあります。
投資を行う際はしっかりと見極めた上での投資を行うようにしましょう。