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トラストレンディングを金融庁が行政処分
2019年3月8日(金)、トラストレンディングの行政処分について金融庁から発表がありました。
行政処分の内容は、トラストレンディングを運営している「エーアイトラスト株式会社」に対する次の2つです。
- 第二種金融商品取引業の免許取り消し
- 業務改善命令
エーアイトラスト社は、2018年12月にも行政処分を受けました。
そのときの内容は、
- 業務停止命令
- 業務改善命令
でした。
しかし、2回目となる行政処分では、「第二種金融商品取引業の免許取り消し」となり、ソーシャルレンディング業界で最も重い処分が下されたのです。
※トラストレンディングの詳しい行政処分内容については、こちらの記事をご確認ください。
「免許取り消し」という重い処分は、ここ数年のソーシャルレンディング業界におけるさまざまなトラブルや不祥事に対する金融庁の警告とも言えるのではないでしょうか。
それを裏付けるように、トラストレンディングの免許取り消し以降、金融庁の動きがあわただしくなっています。
トラストレンディングの免許取り消し以降の金融庁の動きを見ていきましょう。
トラストレンディングの免許取り消し以降の金融庁の動き
トラストレンディングの免許取り消しについて、金融庁から発表があったのは2019年3月8日(金)。
それ以降の金融庁の動きについてまとめていきましょう。
金融庁の動き①:2019年3月14日(金)
ラッキーバンクの運営会社「ラッキーバンク・インベストメント株式会社」の第二種金融商品取引業の免許取り消しを発表
出典:金融庁HP
金融庁の動き②:2019年3月18日(月)
ソーシャルレンディングを含む融資型(貸付型)クラウドファンディングの匿名化解除を発表
出典:金融庁HP
金融庁の動き③:2019年3月27日(水)
「ソーシャルレンディングへの投資にご注意ください」と注意喚起発表
出典:金融庁HP
2社目(ラッキーバンク)の免許取り消しに加え、「ソーシャルレンディングの匿名化解除」「ソーシャルレンディング投資に対する注意喚起」と、この2019年3月の1ヶ月間で大きな動きがありました。
匿名化解除や注意喚起により、ソーシャルレンディング業界はどう変わってきているのでしょうか?
詳しく解説していきましょう!
トラストレンディングの免許取り消し後金融庁が借り手企業の「匿名化解除」を発表
トラストレンディングの免許取り消し後、わずか10日後に金融庁より発表されたソーシャルレンディングの「匿名化解除」。
匿名化解除とは、今まで貸金業法上の義務とさされていた「資金の借り手企業の情報は原則匿名にすること」を解除する方針の発表です。
つまり、「今までは匿名じゃないと駄目だったけど、もう匿名にしなくて良いよ。資金の借り手企業の情報を開示しても良いからね。」という発表なのです。
資金の借り手企業の情報が匿名であることは、ソーシャルレンディングにおける大きなリスクでした。
しかし、相次ぐソーシャルレンディング事業者のトラブルにより、ついに金融庁がソーシャルレンディングのスキームを再確認。
「このスキームなら、実際投資家が借り手企業の貸付に対する判断をしているわけではないから、匿名にする必要ないよね。」という話になり、今回借り手企業の匿名化が解除されることになったのです。
あまりの悪質事業者の多さに、金融庁もついに動かざるを得なかったのでしょう。
匿名化解除の発表から2ヶ月が経った2019年5月現在、複数のソーシャルレンディング事業者で、借り手企業の情報開示対応が始まっています。
いち早く情報開示対応を示した「クラウドバンク」やFunds(ファンズ)に始まり、「SBIソーシャルレンディング」や「クラウドクレジット」といった大手事業者でも情報開示対応の発表がありました。
多くのトラブルに揺れる最大手のmaneo(マネオ)ではまだ情報開示対応について発表がありませんが、他の大手事業者が率先して対応を明示しているのですから、いずれは何らかの対応を見せると思います。
というか、対応を見せないと信頼回復は得られないでしょう。
maneoを含めて、各社の情報開示対応について今後も注視していかなければいけません。
金融庁が投資家へ注意喚起!その内容とは?
トラストレンディングが行政処分を受けてからわずか19日後、金融庁がソーシャルレンディング投資家への注意喚起を呼びかけました。
呼びかけのタイトルはずばり「ソーシャルレンディングへの投資にあたってご注意ください」というもの。
注意喚起のポイントは次の4点です。
- ソーシャルレンディングの仲介者は第二種金融商品取引業の登録が必要。登録を受けていない事業者の募集は詐欺的商法の可能性が高いので、一切関わらないように。
- たとえ第二種金融商品取引業の登録事業者でも、金融庁や財務局が事業者の信用力を保証するわけではない。投資する際はソーシャルレンディング事業者の情報や取引内容を確認のうえ、投資判断すること。
- 投資する際は、ソーシャルレンディング事業者の情報開示姿勢や貸し倒れ・遅延リスクなどを認識したうえで投資すること。
- 高い利回りをアピールしリスク情報がしっかり明示されていないソーシャルレンディング事業者は要注意。利回りばかり見るのは危険。
出典:「ソーシャルレンディングへの投資にあたってご注意ください」(金融庁)(2019年3月27日)
この注意喚起でもっとも気になるのは、「詐欺的商法の可能性」という一文です。
エーアイトラスト社は、いまも資金の不正流用などの疑惑を否定していますが、
2019年3月8日に、エーアイトラスト社の免許取り消し発表があり、2019年3月27日にこの注意喚起が出ています。
流れから見ても、トラストレンディングの募集はやはり詐欺案件だったのは間違いないでしょう。
ただ、詐欺とわかったところで、投資した資金が全額戻ってくるわけではありません。
「結局投資は自己責任」ということが、今回の金融庁の注意喚起でよくわかったのではないでしょうか。
金融庁の注意喚起は、ソーシャルレンディング業界に一石を投じることになりましたが、詐欺から身を守るには自らの投資判断が重要ということは変わりません。
ソーシャルレンディング事業者選びと案件選びは今まで以上に慎重に行い、さまざまなリスクを鑑みたうえで自己責任のもと、投資するしかないということです。
詐欺から身を守るためのリスク対策
トラストレンディング免許取り消し以降、匿名化解除、金融庁の注意喚起とソーシャルレンディング業界が揺れています。
業界が揺れる中、ソーシャルレンディング投資自体を見限った投資家もいますし、maneoファミリーへの投資をやめて、他の事業者へシフトしている投資家もいます。
数年前はmaneo(マネオ)がリーディングカンパニーとしてソーシャルレンディング業界をけん引していただけに、まさかこのような状況に陥るとは誰もわからなかったことでしょう。
しかし、投資というものは本来そういうものです。
現在評判の良い事業者であっても、投資のリターンが絶対保証されるわけではありません。
そもそも、ソーシャルレンディングは元本保証がない投資で、貸し倒れや遅延リスクはどんな事業者でも絶対にあるのです。
われわれ投資家にできることは、元本割れのリスクをゼロにすることではありません。
確実にできることは、事業者選びや案件選びを慎重にして元本割れリスクを低くし、元本割れが起きても大丈夫な運用をすることです。
元本割れが起きても大丈夫な運用とは、トータルリターンでプラスになる運用です。
- 複数の事業者、複数の案件に投資してリスクを分散すること
- 万一貸し倒れなどトラブルが起きても対処能力に定評がある、期待できるソーシャルレンディング事業者に投資すること
が大切なのではないでしょうか。
まとめ
トラストレンディングの免許取り消し以降の金融庁の動きをお伝えしてきました。
大切なポイントは次の4点です。
- トラストレンディングで業界初の免許取り消し以降、金融庁の動きがあわただしくなった
- ソーシャルレンディング業界にはびこる詐欺事業者や匿名化の問題が深刻で、金融庁もついに動かざるを得なかったということ
- ただ、いくら金融庁で匿名化解除の発表や投資注意喚起があっても、投資元本の保証があるわけではない。投資はあくまで自己責任
- ソーシャルレンディング業界が揺れる中、投資家にできることは「事業者選びや案件選びをより慎重にして元本割れリスクを低くし、1つの案件で元本割れが起きてもトータルでプラスになる運用をすること」しかない
繰り返しますが、金融庁がいくら注意喚起したり苦言を呈したりしたところで、投資はあくまで自己責任なのです。
トラストレンディングの免許取り消しから注意喚起までの流れを教訓に、今まで以上に慎重な投資を心がけるようにしましょう。