2018年、ソーシャルレンディング会社各社において、非常にさまざまな問題が発生しました。
特に、2018年12月に発覚したトラストレンディングの「融資先事業が存在しなかった」という問題は、最終的にトラストレンディングが第二種金融商品取引業免許を取り消されるという、問題に発展しています。
トラストレンディングが詐欺にあったという案件は、一体どんなものだったのでしょうか?
また、どれほどの規模で被害発生しているのでしょうか?
返済される見込みはあるのかなどの点について確認していきましょう。
目次
トラストレンディングの第二種金融商品取引業免許が取り消されるまでの経緯
出典:トラストレンディング
トラストレンディングは、2018年12月に行政処分を受け、再度2019年3月に行政処分を受け、第二種金融商品取引業免許を取り消されています。
2018年12月の行政勧告の内容は以下のようになっています。
出典:トラストレンディング
以下、引用。
(1)業務停止命令金融商品取引業のすべての業務(顧客取引の結了のための処理を除く。)を平成30年12月14日から同31年1月13日まで停止すること。
(2)業務改善命令
①ファンド募集にかかる事務プロセスを網羅的に検証したうえで、今般の法令違反が発生した原因及び業務運営態勢上の問題点を究明すること。また、今般の法令違反について、責任の所在を明確にするとともに、金融商品取引業務を適切に行うための経営管理態勢及び業務運営態勢を再構築すること。
②募集したファンド全件について、取得勧誘及び運用・管理の状況等(貸付先の資金管理の実態や資金の使途を含む)を精査したうえで、投資者保護に必要な対応を図ること。
③本件行政処分の内容及び改善対応策について、全ての顧客を対象に、適切な説明を実施し、説明結果を報告すること。
④顧客からの問い合わせ等に対して、誠実かつ適切に対応するとともに、投資者間の公平性に配慮しつつ、投資者保護に万全の措置を講ずること。
⑤上記①から④までの対応について、平成31年1月11日までに、進捗状況及び対応結果について報告すること。
引用終わり。
そして、2019年3月の行政処分は以下のようになっています。
出典:トラストレンディング
以下、引用。
当社は第二種金融商品取引業者の登録取消および業務改善命令の行政処分を受けました。
今後、当社はソーシャルレンディングサイト「TrustLending(トラストレンディング)」における新規会員および新規ファンドの募集は行わず、既存ファンドの運用業務や資金回収のための業務に注力することとなります。
各ファンドの運用状況、資金回収を目的とした訴訟や協議の進捗等につきましては、引き続きTrustLending(トラストレンディング)のホームページへの掲載や、対象となる出資者の皆様に対するメール配信等を通じてご報告致します。
2018年12月の段階では、一時的な業務停止とファンド募集内容の見直しに関する業務改善命令でした。
しかし、2019年3月では、ファンド募集で訴訟に発展する案件が発生していたことが発覚しています。
その結果、第二種金融商品取引業者としての登録取り消し、そして今後は投資家から集めた資金の回収のみを行うという発表となっています。
事実上トラストレンディングはソーシャルレンディング会社の業務を停止している状態になっています。
トラストレンディングの返済が行われていない案件
トラストレンディングでは、2019年5月現在、投資家に対し返済遅延に陥っている案件の一覧表を作成しています。
その中から、返済が停止している案件を確認していきましょう。
出典:トラストレンディング
高速道路工事ファンド
トラストレンディングで最も問題が大きな案件です。
2018年6月に山本幸雄という役員を招き入れたのですが、その山本幸雄が斡旋した案件が、実はまったく実態の存在していないファンドでした。
案件
- 105~111号
- 113~119号
- 122~124号
- 127号
- 128号
- 131~138号
- 120号
- 121号
- 125号
- 126号
- 129号
- 130号
状況
- 事業の実在性:何れの高速道路工事も行われていない。
- ファンド運用状況:当社の訴訟提起により貸付先は支払停止中
除染事業ファンド
こちらも同様の状態です。
公共性の強い除染工事を行うという内容をアピールしておきながら、工事は実際には行われていないというものでした。
貸付先からは分配金が支払われていない状態が続いています。
案件
- 139~146号
- 155~158号
事業の実在性
除染事業が行われていない。
ファンド運用状況
当社の訴訟提起により貸付先は支払停止中
公共事業コンサルファンド
こちらの案件も同様に事業が実在しておらず、トラストレンディングの訴訟を提起により貸付先から返済停止という状態が続いています。
今までご紹介してきた3案件(高速道路工事ファンド、除染事業ファンド、公共事業コンサルファンド)において、返済遅延分配金の支払いが行われている状態です。
ただ、クラウドリースといったマネオマーケット関係の案件とは異なり、融資先の事業それぞれの独立性は保たれており、他の融資案件については現在も資金の分配などは行われています。
事業の実在性
コンサルティング業務が行われていない。
ファンド運用状況
当社の訴訟提起により貸付先は支払停止中
トラストレンディングは山本幸雄元取締役を訴訟している
トラストレンディングでは、これらの虚偽の案件の募集の背景には、山本幸雄役員に問題があったとしています。
よって、トラストレンディングは山本幸雄氏を解雇しています。
また、虚偽の案件に対しては、提訴の形をとっています。
出典:トラストレンディング
2019年2月、3月、4月と上記3件に関しての提訴を発表しており、すでに第1回の裁判も行われている模様です。
被告側はその裁判を欠席しましたが、引き続きトラストレンディンでは訴訟の手続きを行っているとの意向を示しています。
全案件が返済遅延ではないが道路事業案件の資金回収見込みは薄い
一方、実態のない案件でもトラストレンディングからは以下のような報告も入っています。
以下、引用(出典:トラストレンディングからのメール)。
当社は、専門家の支援のもと、貸付先を被告とした民事訴訟提起と並行して資金の回収と返還のために取り得る対策を網羅的に検討して、その時々で最も有効と判断した対策を実施しております。
その一環として、本件ファンドの対象事業を仲介した元取締役の山本幸雄氏に対して、貸付先が当社に対する資金の返還を完遂できるよう、あらゆる手立てを講じるよう迫って参りました。
その一つの結果として、同氏より、貸付先の関係会社が所有する不動産(土地)を売却する際の売却益を、資金の返還にあてる計画がある旨の連絡を受けたため、当社としてはいち早く当該不動産に対する保全を講じるべく売却前に根抵当権の設定を申入れて実行した次第です。
なお、現在、貸付先と山本幸雄元取締役は、当該不動産の売却益にて資金の返還を実現するべく、より好条件での売却を目指して活動中です。
売却の見通し等に関する新たな情報が確認できしだい改めてご報告させて頂きます。
引用終わり。
公共事業コンサルファンドと除染事業ファンドは、山本幸雄氏の関係会社の不動産を売却させ、資金を変換する見込みが立っています。
しかし、道路事業案件は資金の用途も不明であり、返済の見込みは立っていません。
まとめ
トラストレンディングは、すでにソーシャルレンディング会社として機能はしていません。
残念ながら、この裁判の行方は部外者には想像できるところではありませんが、たとえ刑事裁判で勝訴したとしても、実態のない案件の場合、資金を回収できる見込みは低くなると言わざるを得ないでしょう。
一部資金の回収ができれば、まだ良好な結果に終わったという段階です。
トラストレンディングは、最低限の責任として資金の一部回収および、裁判の訴訟を続けることが重要でしょう。