近年のフィンテックの目覚ましい発展によって、日本でもクラウドファンディングのシステムを利用した投資が非常に活発になっています。
クラウドファンディングによって得られた収入に対して、税金はどの程度かかるのかについてまとめました。
クラウドファンディングを利用した際の収益に対する税金は、次の2つのケースがあります。
- 自分がクラウドファンディングの投資によって得た利益に対する税金
- 自分がクラウドファンディングでお金を集めたときに発生する税金
また、クラウドファンディングの種類は次の5種類に分けて解説します。
- 購入型
- 寄付型
- 不動産投資型
- 株式投資型
- 融資型
最初に表でまとめておきましょう。
クラウドファンディングの種類 |
お金を出した側 | お金を出してもらった側 |
---|---|---|
購入型 | 原則なし | 所得税 |
寄付型 | なし | 贈与税 |
不動産投資型 | 所得税・住民税 | 法人税 |
株式投資型 | 所得税・住民税(分離課税) | 法人税 |
融資型 | 所得税・住民税 | 法人税 |
クラウドファンディングに投資して利益が生まれた場合の税金
まずは、自分がクラウドファンディングに投資して利益を得た場合の税金について解説します。
1.購入型クラウドファンディングの場合
まずは、購入型クラウドファンディングの場合を解説します。
購入型クラウドファンディングは、主に商品開発やコンテンツ開発などを行いたいと考える事業者が利用します。
例えば、事業者は1万円を投資してくれた人に対して数千円の景品、3万円の方には1万円の景品、そして5万円、10万円と投資する金額に応じて特典を増やしていくことが一般的です。
購入型クラウドファンディングに投資をする人は、収益目的というよりは、そのコンテンツや商品、サービスなどを受け取ることを目的としている場合が多いです。
ただし、購入型クラウドファンディングで3万円の投資を行い、3万5,000円のように投資額よりも増えて戻ってくることはまずありません。
そもそも、リターンはお金ではなく物やサービス体験なので、換金できないものが多いのです。
そのため、購入型クラウドファンディングの場合は、税金のことを心配する必要はないでしょう。
ただし、購入型クラウドファンディングでも、投資したお金とリターンの割合があまりにも合わない場合は、税金が発生する可能性があります。
例えば、1万円の投資を行い、半年後に3万円ほどの価値がある商品が返ってくる場合は、税務署などの調査によって税金が課せられる可能性があります。
逆に、1万円の商品購入に対し、数百円程度のリターンしかない場合は、購入型クラウドファンディングで資金を集めている事業者が、追徴課税を受ける可能性があります。
2.寄付型クラウドファンディングの場合
寄付型クラウドファンディングの場合、利益を得ることは目的としておらず、リターンはお金を集めた事業者からのお礼などに限られます。
そのため、特に税金が発生することはありません。
自分が年末に確定申告をする際、寄付したお金は寄付金控除として、控除対象になります。
確定申告後に納めすぎた税金が戻ってくることがあるので、必ず確定申告を行いましょう。
3.不動産投資型クラウドファンディングの場合
個人が不動産投資型クラウドファンディングに投資した場合、その利益に対しては「所得税」や「住民税」が課税されます。
不動産投資型クラウドファンディングは、事業者が不動産を購入するための資金を投資家から集めるクラウドファンディングです。
事業者は集めた資金をもとに不動産を購入し、不動産の運営で生まれた利益や売却益を投資家に分配します。
不動産投資型クラウドファンディングの利益は「雑所得」に該当します。
5万円の利益が発生した場合、20.42パーセントの源泉徴収が行われるので、投資家には4万円ほど(39,790円)が振り込まれます。
所得税の税率は年間の所得によって異なりますから、確定申告を行えば20.42パーセント課税されていた源泉徴収税の一部が返ってくる可能性があります。
逆に、所得が多い人は追加で所得税や住民税を支払わなければなりません。
4.株式投資型クラウドファンディングの場合
株式投資型クラウドファンディングは、資金を必要とする事業者が自社の株を投資家に購入してもらうことで資金を調達する手法です。
投資家のリターンは、企業が上場した場合の株価の値上がりによる売却益です。
つまり、株式投資型クラウドファンディングはIPO(Initial Public Offering:株式公開)と同じような利益構造です。
株を購入しても、その企業が上場できなければ、株は紙くずになってしまうことがあり得ます。
利益が発生するのは、購入した株を売却したときです。
株の売買益は分離課税の対象なので、税率は最高でも20パーセントです。
購入や上場した時点では特に税金は発生せず、株の売却益が生まれてから税金が発生します。
5.融資型クラウドファンディングの場合
融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)は、最近利用者が増えている投資手法の一つです。
ソーシャルレンディングによって得られた利益も、不動産投資型クラウドファンディングと同じく「雑所得」に該当します。
そのため、投資家が得た利益には20.42パーセントの源泉徴収が行われます。
年末の確定申告によってお金が返ってくることもありますし、追加で税金を納めなければならないこともあります。
自分がクラウドファンディングで資金を募集するケース
続いて、個人がクラウドファンディングで資金を募集するケースにおける税金について確認しておきましょう。
1.購入型クラウドファンディングの場合
個人がクラウドファンディングのシステムを利用して資金を募集できるのは、購入型クラウドファンディングのケースがほとんどです。
「キャンプファイヤー」や「レディーゴー」といった個人でも利用できる購入型クラウドファンディングのサイトは、日本国内に存在します。
購入型クラウドファンディングによって集めた資金には、所得税が課税されます。
所得税は累進課税制度が導入されています。
例えば、クラウドファンディングで集めたお金と自分の給与所得を合わせた合算所得が660万円以上の場合は税率は23パーセント、900万円以上になると30パーセントになります。
もちろん、集めたお金そのものが所得になるわけではなく、サービスや商品開発に経費が発生した場合は、それらの経費を差し引いた額が最終的な所得額になります。
2.寄付型クラウドファンディングの場合
公共事業的な意味合いの強い施設を立ち上げるなど、利益の追求ではない目的を達成するために多くの人から寄付を募るのが寄付型クラウドファンディングです。
寄付型クラウドファンディングを個人が利用できるサイトは現状日本にはありませんが、インターネット上に自分でサイトを立ち上げて寄付を募ることは可能です。
この場合にかかる税金は「贈与税」です。
贈与税は、寄付金が年間110万円を超えた場合、累進課税によってどんどん税率が上がっていきます。
例えば、1,110万円の寄付を受ければ、控除額の110万円を差し引いた1,000万円に税率40パーセントが課税されます。
かなり高い税率なので、寄付型クラウドファンディングを利用する場合は、確定申告を忘れないように注意しましょう。
3~5.不動産投資、株式投資、融資型クラウドファンディングの場合
不動産投資型、株式投資型、融資型クラウドファンディングは、基本的に法人が利用します。
そのため、クラウドファンディングで集めた資金を運用し、発生した所得に対しては、法人税(法人税・法人住民税・法人事業税)が課税されます。
まとめ
個人がクラウドファンディング関係の投資を行った場合、基本的には「雑所得」扱いとなり、「所得税」及び「住民税」が課税されます。
所得税は収入が増えれば税率も上がっていくシステムになっているため、自分の給与所得や他の所得と合わせて収入が多くなり過ぎると、一気に税金が跳ね上がってしまう可能性があります。
可能であれば、所得額を調整して税率が上がりすぎないようにしましょう。
反対に、自分が購入型クラウドファンディングで資金を調達した場合は、「所得税」が課税されます。
また、集めたお金に対して投資家に対するリターンが小さい場合は、利益目的とみなされて税務署の調査などが入り、「贈与税」が課税される可能性があるので気をつけましょう。