目次
ソーシャルレンディングとは
ソーシャルレンディングとは、「お金を借りたい個人や法人」と、「お金を貸したい個人」とをつなぐマッチングサービスです。
ソーシャルレンディングサービスを行う事業社が借り手と貸し手の間に入ることで、お金の貸し借りを簡単にしたもの、端的に言えば「個人が気軽にできる金貸し業」です。
ソーシャルレンディングは、新しい時代の投資方法として注目されています。
ソーシャルレンディングの仕組み
ソーシャルレンディングとは、とてもシンプルな仕組みでできています。
通常、個人や法人にお金を貸すことで利益を得る場合、銀行や消費者金融のように貸金業の登録が必要となります。
そのため、金貸し(融資)という行為は一部の業者しかできないものでした。
しかし、貸金業登録をしたソーシャルレンディング事業者がお金の借り手と貸し手の間に立つことで、
- 借り手は低金利で資金を調達が可能に
- 貸し手は貸金業の登録がなくても資金を貸して利益を得ることが可能に
それぞれなったのです。
「金貸し業」の敷居を低くし、誰でも簡単に投資として金貸しをできるようにしたのがソーシャルレンディングなのです。
クラウドファンディングの一種
そもそも、ソーシャルレンディングとは、フィンテック(FinTech)という新しい「情報技術」と「金融サービス」の融合から誕生したクラウドファンディングの一種です。
クラウドファンディングとは、資金提供を求める成長企業と、資金提供者をインターネット経由で結びつけるサービスです。
資金提供の形はファンド組成や寄付などさまざまです。
その資金提供の形が「融資(貸付)」になるものをソーシャルレンディングと呼びます。
クラウドファンディングの種類
クラウドファンディングには、大きく分けて下の表のように4種類があります。
資金調達を必要とする企業や個人に対し、資金提供者がさまざまな形で支援するのがクラウドファンディングです。
その中でも、ソーシャルレンディングは資金調達を「融資」や「貸付」という行為に限定し、資金提供者が利益を得られる仕組みとして確立しているのです。
1.投資型 |
①株式を発行して資金調達する「株式型」 ②ファンドの組成によって資金調達をする「ファンド型」 |
2.寄付型 |
非営利法人などが、寄付により資金調達をする仕組み。 |
3.融資型 ソーシャルレンディング |
特定のプラットフォームを通じて貸し手と借り手をつなげ、複数の貸し手が集まり資金を融資する仕組み。「ソーシャルレンディング」や「貸付型クラウドファンディング」、「P2Pレンディング」、「マーケット・プレイス・レンディング」とも呼ばれる。 |
4.購入型 |
特定のプロジェクトを実施する企業や個人が、プロジェクトに関連するサービスや商品の提供を約束して資金提供者から購入代金を得て、資金調達をする仕組み。 |
ソーシャルレンディングで得られる利益と税金
ソーシャルレンディングでの利益には、次の2種類があります。
- 資金を融資することによって得られる「分配金」
- キャンペーンなどで生じる「一時金」
おもな収益源は、1.の「分配金」です。
分配金は、貸し付けた資金に対し、一定の間隔で受け取れるインカムゲイン(配当利益)です。
株式投資のように、為替市場による変動で得られるキャピタルゲイン(値上がり益)とは利益の種類が異なります。
そのため、投資で得た利益に対してかかる税金の取扱いも、株や投資信託とは異なる「総合課税」になっており、「投資する人によって税率が変わる」という点に注意が必要です。
利益と税金
ソーシャルレンディングによって得られた収益は、「分配金」と「一時金」によって勘定科目が異なります。
それぞれの勘定項目と、課税標準(課税対象)となる利益は次のように計算されます。
①分配金を得た場合:雑所得
雑所得=(他の種類の所得に該当しない収入)-(必要経費)
②一時金を得た場合:一時所得
一時所得=(一時的な収入の合計)-(特別控除50万円)
雑所得も一時所得も、「総合課税」によって税率は決定されます。
「総合課税」とは、給与所得や事業所得など、ほかの所得と合算して税率を計算する方式です。
つまり、合算した所得額によって税率が変わるのです(税率は5%~45%と幅が広い)。
税金の支払い自体は、源泉徴収によりソーシャルレンディング事業者が前払いすることになっています。
事業者が前払いしている税金は一律20.42%であり、これはあくまで仮の税率です。
実際の所得合計額が大きければ税率はより高くなり、所得金額が少なければ税率はより低くなります。
いずれにしても、税金の申告は必要です。
ソーシャルレンディングの歴史と成長性
ソーシャルレンディングは、なぜいま注目されているのでしょうか?
それは、ただ新しい金融サービスだからというだけではありません。
注目すべきは、その成長性なのです。
国内のソーシャルレンディング市場
国内のソーシャルレンディング市場の始まりは、事業者のパイオニアであるmaneoがサービスを開始した2008年ごろだと言われており、2019年で約11年です。
富士キメラ総研の調査(※)によれば、ソーシャルレンディングの国内市場規模は2018年時点で2012億円あり、2022年には9000億円もの規模に達する見込みです。
たった10年で2000億円もの市場規模に成長したソーシャルレンディングの勢いはまだまだ続くことが予想され、これからの成長性に期待が高まっています。
※出典:「次世代カード/スマートペイメント関連ビジネス市場調査要覧 2018」(株式会社富士キメラ総研)
海外のソーシャルレンディング市場
海外でもソーシャルレンディング市場は盛んで、特に「P2P(ピア・ツー・ピア)レンディング」と呼ばれる個人対個人の融資がメインに行われています。
日本におけるソーシャルレンディングは、新しい企業に対し個人が融資するという形が多くなっています。
一方、欧米や中国で広まるP2Pレンディングは「ピア(peer)=同等の者」ということばの意味が指すとおり、個人間融資をメインに成長してきました。
その勢いは日本より強く、アメリカの市場規模はすでに5兆円を超えると言われています。
国内も海外の動きに追随していくでしょうし、海外の動向はこれからも目が離せません。
ソーシャルレンディングのメリット
ソーシャルレンディングとは何かを踏まえたうえで、知っておきたいのがメリットとデメリットです。
投資であるからには、当然メリットもデメリットも付き物です。
ひとつひとつ解説していきましょう。
①ミドルリスクだが利回りが高い
最大のメリットは、ソーシャルレンディングはミドルリスクでありながら、平均8%ほど、最低5%から最高15%までの高い利回り水準(※1)を誇ることです。
正直なところ、利回りの高さやリターンを追求するのであれば、株式投資や仮想通貨(ビットコインなど)、FX投資などといった投資手法もあります。
しかし、これらはすべてキャピタルゲイン(値上がり益)によって大きなリターンを得る投資モデルのため、資産の価格変動が激しくハイリスクです。
反対に、ソーシャルレンディングはインカムゲイン(配当利益)投資と呼ばれます。
資産を保有することで利益を得るため比較的リスクが低く、相場に左右されずに不労所得のような利益を得ることができるのです。
インカムゲインの種類には、銀行の預金金利や不動産投資で得られる家賃収入といったものもあります。
ただ、今や銀行預金金利は平均0.001%、定期預金ですら0.1%に満たない状態です(※2)。
そして、不動産投資の利回り(※3)は都内の人気エリアでも約4.5%ほどです。
ソーシャルレンディングがいかに高水準の利回りを誇っているかがわかるでしょう。
ミドルリスクで手堅いインカムゲイン投資でありながら、利回りがほどよく高い。
つまり、とてもバランスの良い投資手法なのです。
※1:国内のソーシャルレンディング事業者の利回り表記をもとに記載
※2:日本銀行「預金種類別店頭表示金利の平均年利率等」を参照
※3不動産投資家調査(一般財団法人 日本不動産研究所)より、「賃貸住宅の期待利回り等について」を参照
② 投資に手間や時間がかからない
先ほど解説したように、ソーシャルレンディングはインカムゲイン投資なの大きな価格変動がありません。
毎日毎日相場を見て一喜一憂することはありませんし、緻密な戦略を立て市場の変動を予測して資金の売買タイミングを狙う手間もかかりません。
ソーシャルレンディング事業者と資金提供先を選びさえすれば、あとは分配金の支払いや貸し出した資金の返還を待つだけというとてもシンプルな仕組みです。
同じキャピタルゲイン投資である不動産投資の場合、ローンを組んだり、物件を見に行ったりする事前準備に加え、物件の維持管理という日常的な手間がかかります。
一方で、ソーシャルレンディングは事前準備も簡単で、投資後に発生する手間がほとんどありません。
投資に手間や時間がかからず精神的な負担もなく日常生活を煩わされることがない手軽さは、仕事や家事、育児と忙しい現代人にとって大きな魅力です。
③少額から投資でき、運用期間も短い
ソーシャルレンディングは、1万円ほどの少額から投資できるうえ、運用期間は数ヶ月から最長で3年ほどと、とても短い運用期間で高い利回りを得ることができます。
少額からできる投資には、この他にも積立型の投資信託などもありますが、先ほど解説した「キャピタルゲイン投資」です。
値上がり益を狙うために、運用期間を自分でコントロールするのが難しいのです。
10年、20年と長期で運用する場合は、リスクを下げてリターンを大きくできるでしょう。
しかし、初心者がいきなり10年以上の長期間の運用を行うのは大変ですし、資金の自由度は低くなってしまいます。
ソーシャルレンディングであれば、「できる限り少ない金額で、手早く資金を増やしたい」という投資家のわがままな希望を叶えることができるのです。
④複雑な知識や経験が不要で初心者でも可能
ソーシャルレンディングを始めるには、特別なスキルも予備知識も必要ありません。
そのため、初心者でも簡単に投資を始めることができます。
ソーシャルレンディングは運用後の手間がかからず、事前準備さえしてしまえば運用期間中は基本的にほったらかしでも収益が入ります。
投資経験がない人、市場の動向などを見るのが苦手な人でも気軽に始められるのです。
受け取ることのできる分配金の額は一定なので、経験者と初心者による運用リターンの差が出にくい投資法ともいえます。
ソーシャルレンディングのデメリット
ソーシャルレンディングのメリットとは何かをお伝えしました。
でも、魅力的なメリットが多いからこそ、デメリットも多くあるのです。
デメリットを完全になくすことはできませんが、あらかじめデメリットをしっかりと把握しておけば、できるだけリスクを抑えることは可能です。
①元本割れ(貸し倒れ)リスクがある
すべての投資には元本割れするリスクがあり、ソーシャルレンディングも例外ではありません。
ソーシャルレンディングの場合、資金提供を受けた借り手側の資金繰りが悪化して貸し倒れが生じるリスクがあります。
貸し倒れとは、その名のとおり、資金の借り手が返済不能状態になり、貸したお金が回収できずに投資元本を失ってしまうことです。
個人向けの融資をメインにしていた初期のソーシャルレンディング業界では、こうした貸し倒れが起こっていました。
ここ数年(2019年時点)では貸し倒れが発生したケースはなく、少しずつリスクは少なくなっています。
とはいえ、今後もリスクをゼロにすることはできません。
ソーシャルレンディングの案件によっては「担保」や「保証」が設定されており、万一の際でも貸した資金がきちんと戻ってくるような仕組みが用意されています。
「担保」とは、資金の借り手が返済不能状態になったときに、資金の代わりに提供されるもののことです。
代表的なものに不動産があります。
「保証」とは、借り手の返済義務を違う者が背負う義務のことです。
個人連帯保証や第三者保証などがあります。
元本割れリスクを防ぐためには、こうした「担保」や「保証」付き案件を選ぶことが大切です。
②事業者の倒産リスクがある
市場規模が拡大しているとはいえ、ソーシャルレンディングという投資手法自体まだ10年ほどの歴史しかなく、運営事業者自体も比較的規模が小さい新興企業が多い状況です。
銀行や証券会社のような安定した財政基盤をソーシャルレンディング事業者に求めることは難しく、事業者の倒産リスクがあります。
もし事業者が倒産すれば、貸している資金が戻ってこなくなる可能性は十分あり得るため、事業者選びはとても重要です。
③貸出期間中の資金引き出しができず返済遅延があり得る
ソーシャルレンディング投資は、比較的短期間の貸し出しですが、いったん資金を貸し出してしまえば途中で引き出すことはできません。
貸し出した資金が返ってくる日(償還日)は決まっていますが、予定の償還日より大幅に遅れることもあれば、早く返ってくることもあります。
そのため、一定期間は資金が拘束されることになります。
ソーシャルレンディングで資金を貸す場合は、余裕資金で少額ずつ始め、臨時出費には備えられるように手持ち資金をできるだけ残すようにしておくことが得策です。
④他の投資に比べて制面で不利なことが多い
ソーシャルレンディングの歴史はまだ浅く、税制面においてはほかの投資より不利な点が多い現状です。
株式投資や投資信託などの場合、特定口座を活用して確定申告の有無や課税方式を選択することができます。
一方、ソーシャルレンディングには特定口座のように便利な仕組みはありませんし、総合課税なので所得が多ければ税率がどんどん高くなってしまいます。
また、ソーシャルレンディングは投資で得た利益が非課税になる「NISA」といったの税優遇制度の対象外(株や投資信託はNISA対象)です。
成長性のある市場なので、今後体制が整い、税制面も変わることを期待したいものです。
⑤借り手(投資先)の匿名性によるトラブルが多い
ソーシャルレンディングは、「貸金業法」と「金融商品取引法」の2つの法律にまたがる投資手法です。
それゆえ、情報に透明性がないことが問題視されています。
具体的に説明すると、借り手(投資先)先保護の観点から、借り手企業の名前などの情報は伏せられるのです。
案件の情報には投資のテーマや運用期間などは記載されていますが、企業名は匿名のため、投資した資金が実際にどのように使われているのかはわかりません。
実際、この匿名性により投資家に対し「虚偽の説明」があったり、「不適切な資金の流れ」があったりして、複数のトラブルや行政処分が発生しました。
2018年7月には、最大手のmaneoがこの匿名性による不祥事を起こし、行政処分を受けたことは、業界でも大きなニュースになりました。
ただ、行政処分を受けたから悪質な業者とは言えませんし(大手銀行でも受けています)、逆に言えば、処分を受けたからこそ今後の経営に期待できるという面もあります。
また、2018年6月の内閣府の閣議決定(※)により、融資型クラウドファンディング(=ソーシャルレンディング)において借り手の匿名化は必然ではなく、投資家保護の観点を踏まえて新たな方針を検討する必要が示唆されました。
今後、匿名化は廃止になる可能性が大きく、そうなればソーシャルレンディングのトラブルも少なくなるかもしれません。
※出典:「規制改革実施計画」(内閣府)
【2019年3月19日更新】:匿名性の解除が発表されました。
事業者を組み合わせて分散投資
ソーシャルレンディングとは何かを理解したら、次に気になるのが運営事業者です。
日本国内のソーシャルレンディング事業者は、2019年1月時点で20社以上ありますが、パイオニアであり古参のmaneoですらまだ10年の運営歴です。
どの事業者もまだまだ若い成長企業といえます。
そのため、先ほど紹介した倒産リスクは気になるところです。
倒産リスクや貸し倒れリスクをゼロにすることはできませんが、複数の事業者や案件を組み合わせて分散投資すれば、リスクを低くすることは可能です。
分散投資は投資の基本ですので、1案件だけに大きな金額を投資するのではなく、できるだけ複数にばらけさせて投資するようにしましょう。
おすすめの事業社
数ある事業者の中で、初心者におすすめの事業者は、案件の取扱い規模が大きい事業者です。
- 最大手である「maneo」
- 上場企業の連帯保証が付いている「LCレンディング」
- maneoに次ぐ勢いを見せ証券会社が運営している「クラウドバンク」
- 大手SBIグループがバックボーンの「SBIソーシャルレンディング」
の4つがおすすめです。
この4社を軸に、少しずつほかの事業者も増やし、複数の事業者の案件を組み合わせて分散投資していくと良いでしょう。
まとめ
ソーシャルレンディングとは何かについて、仕組みや特徴を解説しました。
魅力的なメリットが多い反面、発展途上ゆえのデメリットもまだまだ多いことがおわかりいただけたことでしょう。
ただ、「ミドルリスクなのに高利回り」というソーシャルレンディングの特性は、投資のハードルを下げ、初心者でも時間をかけずにお金を増やせるという大きな可能性を秘めています。
発展途上ということは、今後良くなる可能性も大きいということです。
政府としても「貯蓄から投資へ」の流れをより促進させるべく、さまざまな対策を打ちたてていくことが予想されます。
ソーシャルレンディング業界が活性化すれば、体制整備はもっと強化され、より使い勝手の良い投資手法になるでしょう。
ソーシャルレンディング投資を始めたい方、気になっている方は、こうした可能性を踏まえてソーシャルレンディングについて考えてみてください。