ソーシャルレンディングの担保には、さまざまな種類があります。
担保と聞くと、種類や特有のルールなど概念が難しいイメージがあるかと思います。
しかし、担保の理解からソーシャルレンディングにおける担保の役割は、落とし込んで考えたい分野です。
設定された担保が有効であるか、「質」と「量」の両面での確認が必要です。
今回は、できるだけ平易な用語で担保について理解を深め、ソーシャルレンディングにおいて意識したいポイントを紹介します。
目次
ソーシャルレンディングの担保とは
ソーシャルレンディングの担保とは、貸し倒れ(デフォルト)におけるリスク軽減を図るためのものです。
借り手が当初想定の事業にて元本を返せない事態になったときに効果を発揮するもので、担保にて代替する形で返却原資を確保することができます。
ソーシャルレンディングでよく用いられる担保の種類と、設定方法について解説していきましょう。
担保の種類
ソーシャルレンディングで使われる担保の種類には、主に
- 不動産
- 有価証券
- 債権
- 物品
などがあります。
1.不動産
不動産はソーシャルレンディングにて担保利用される機会が一番多いものです。
借り手の事業を問わずに用意が可能です。
2.有価証券
有価証券は、借り手企業の株式を担保とするケースです。
3.債権
債権は、借り手企業が事業を行う中で、売掛債権を発生させたものを対象とする形です。
イメージとしては、例えば、借り手がお肉屋さんであればラーメン屋さんへお肉を納品するとします。
1ヵ月後に資金回収を行うとすると、この納品から資金回収前の資金をもらう権利が売掛債権です。
4.物品
物品は、工場における板金機械のような事業を行う上でかかせない物品を対象とすることが多いです。
担保の順位
担保は、複数の貸し手によって設定することができます。
貸し倒れ危機が起きた場合、回収優先順位を決めておきます。
これは、抵当権の順位と呼ばれます。
第1順位の貸し手が回収分をすべて行った後、第2順位が回収にかかります。
つまり、順位が下がるほど、担保から回収できる可能性が下がるのです。
しかし、第1順位の抵当権を担保として設定できているからといって、完全に安全であるとは言い切ることはできません。
担保執行時に、想定していたよりも担保価値が下がっていることがあります。
第1順位の抵当権ですべて行使を行ったとしても、元本割れとなるリスクはあるのです。
保証(人的担保)
ソーシャルレンディングにおいて、「保証」も貸し倒れ防止策として付与されるケースがあります。
保証には、
- 代表者の個人保証
- 関係会社の保証
の2つのケースがあります。
保証は、「人的担保」とも呼ばれます。
保証は、不動産担保のような物的担保と合わせて、担保の一種としてとらえられています。
2つ目の保証である関係会社とは、借り手の親会社のように、利害関係がある会社にて担当する事例が多いです。
ソーシャルレンディングの担保に関わる3つのリスク
ソーシャルレンディング投資をする際に、担保の記載があったとしても、担保自体の価値を判断する必要があります。
ソーシャルレンディングでは、特に複数の観点からリスク要因がないか確認する必要があります。
次の3点から、担保にかかわるリスクを確認しておくべきです。
- 担保の総量は十分にあるか
- 流動性が高いか
- 評価額における正当性があるか
1.該当する担保総量は十分にあるか
純粋に、担保量が貸付金額に対して足りているかはチェックしておくべきです。
例えば、総額3億円の貸付に対して、担保の総計が2億だったとしましょう。
その場合、残りの1億円は無担保融資と同様の扱いになります。
無担保融資の部分は、貸し倒れ時に担保以外で対策を講ずる必要が出てきます。
貸し倒れ危機の際に、差し押さえなど回収策を行うことはとても困難のため、注意が必要です。
借入比率(LTV)を確認
担保総量を図る指標として、借入比率(LTV: Loan to Value)を確認することが重要です。
借入比率(LTV)は、該当する担保評価額の何割が借入額かを表した指標です。
割合が低いほど、担保が多く回収余地を厚く確保していると言えます。
ソーシャルレンディングでは、他の融資(例えば、銀行融資)と比べて、リスク、リターンを高めに設定される傾向があります。
そのため、借入比率(LTV)もリスクに比例した分の許容は必要です。
目安として、有価証券の代用掛け目と比較してみます。
有価証券の代用掛け目とは、株式を担保として信用取引(お金を借りる取引と同義)を行う際にどれだけの担保価値を認めるかという割合のことです。
一般的に、代用掛け目は70から80%ほどのことが多いです。
担保を入れてお金を借りるという中で目安として考えられるでしょう。
2.流動性が高いか
ソーシャルレンディングの担保は、流動性も意識する必要があります。
流動性とは、換金のしやすさのことです。
担保は現金化の後、貸し手に戻されて初めて担保価値があると言えます。
例えば、不動産が担保の場合、即時売却が難しいため、流動性は低いです。
流動性の確認は、ソーシャルレンディングに限らず重要な項目です。
不動産担保の場合、同地域の競売物件事例を確認することも1つの手法です。
つまり、その地域の不動産の流動性が低くないかどうかを確認する視点を持った方が良いのです。
事例がない場合は、流動性リスクを含んでいるという認識も持った上での判断を下すことが必要となります。
緊急事態に流動性問題は発生する
ソーシャルレンディングにおける担保が必要となるケースは、貸し手側固有の問題以外でも発生する場合があります。
例えば、2008年に起きたリーマンショックのような世界的な緊急事態に巻き込まれて貸し倒れの危機となるパターンもあります。
このような場合には、2点問題があります。
1つ目は不動産の売却希望が多く売却先が決まらないという問題です。
売り手だけが多くなり、担保価値があっても価値通りの売却ができなくなるということです。
2つ目は、売却先を決定するには売却価格の下落を受け入れなければならないという問題です。
売り手が多い場合は、売却価格を下げて対応する必要が出てくるため、割引分が担保回収に影響が出てしまいます。
売却価格を下げないためには、担保物件が他社の担保物件と比べてどこにも負けない魅力があることが重要です。
すなわち、どのような環境下であっても割引くことなく売却できる担保である事が理想なのです。
または、割引を行っても耐えられるだけの担保価値総量があることが必要です。
3.評価額における正当性があるか
ソーシャルレンディングの担保として評価された価格によって売却できるかどうかも、リスク管理として大切な視点です。
特に、先ほどお伝えした流動性が枯渇してきたときなど特に顕著です。
借入比率(LTV)として担保を多めに確保している背景はこの評価額の減少に対応する側面が強いです。
しかし、想定以上の下落幅によって評価割れというリスクもあることは意識しておきたいポイントです。
相手企業の株式が担保の際に特に注意が必要
担保が借り手の株式として設定されている場合は、この評価額という観点で注意が必要です。
貸し倒れ危機に陥った状態で、株式を高い評価額にて売却できるかは疑問です。
別事業を行う親会社の保証が付いているといったように、リスク管理設定に工夫がなされていることもあります。
一概に判断はできませんが、株式は企業価値による変動が大きいということを頭に入れておくべきでしょう。
ソーシャルレンディングの担保の評価の正当性まで考えるべき
ソーシャルレンディングの担保を考える上で、「担保の評価自体が正しいかどうか」まで踏み込んで考えると、より高い精度で担保を評価することができます。
特に、ソーシャルレンディングでは、説明文の額面だけでリスクを判断する投資家と一歩差をつけられる部分がこの視点です。
確認ポイント①:評価額の正当性(どれほど正しい評価か)
正当性とは、例えば担保の評価額が「1億円」となっている場合、その額自体が本当に正しく見積もられているかどうか考えるということです。
不動産の場合、評価額は
- 固定資産税額
- 路線価
- 売買実績
など、さまざまな要素から算定されます。
高い値に設定されてしまっているのか、売却可能な堅い下限に設定するかどうかによって、担保評価額には大きな差が出ます。
もう1歩踏み込んでお伝えすると、担保の評価額が買い手が付く価格帯であるかどうかを確認するべきです。
例えば、該当地域において数億円の物件に成約事例や成約イメージ(大企業の設備需要など)がないような金額で担保が設定されている場合は、行使価格として意味があるのかどうかを考えるべきでしょう。
確認ポイント②:担保設定の主体(誰が査定したか)
ソーシャルレンディングの担保では、
- 第三者が査定を行う場合
- ソーシャルレンディング仲介業者が査定を行う場合
の2つのケースが多いです。
ここで、利害関係のない第三者が、すべて正しいと決めつけるものではありません。
手堅い評価額の選定を行うなど、中身をしっかりと精査することが重要です。
該当評価機関が他の案件にて貸し倒れ危機となった際の担保評価を行っていた場合、その事例は判断材料として確認しておきたいポイントです。
確認ポイント③:会社間の利害関係
ソーシャルレンディング仲介会社と借り手の間で利害関係がある場合、不利な案件になっていないか確認する必要があります。
例えば、ソーシャルレンディング仲介会社の関連会社が借り手というケースです。
この場合、貸し手保護の意味合いが強い担保設定になっていれば問題ありません。
しかし、ソーシャルレンディングにて資金調達を行うことを優先するあまり、甘い担保評価になる可能性も考慮しておきたい視点です。
担当者ベース借り手企業に寄り添っていないか確認すべき
ソーシャルレンディング仲介会社と、借り手の担当者レベルで結びつきが強すぎないかどうかは確認した方が良いでしょう。
案件交渉を行う上で、どうしても成約させたいとの思いから、担保評価を甘めにしてしまっては貸し手に余計なリスクを負わせることとなります。
ただ、担当者ベースの結びつき確認は非常に難しいことも事実です。
説明文が、あまりにも借り手または貸し手に偏っていないかをまずは確認します。
成約を焦る気持ちが全面に出ていないかという「違和感」を感じ取ることが必要であると、筆者の経験からは感じています。
まとめ
ソーシャルレンディングでは、担保そのものに有効性があるか確認する事ことが大切です。
確認する際に、担保設定がされた時点から執行されるまでの時間経過とともに、有効性が保たれるかをチェックします。
さらに、ソーシャルレンディング内にとどまらず、どこにモラルハザード(倫理の欠如)の危険があるかを一歩踏み込んで考えると、リスク過多にならない担保についての理解が深まりますよ。