昨今「ソーシャルレンディング」ということばが世間に浸透し出して間もないですが、世界では、日本国内を上回る規模で市場が拡大しています。
ソーシャルレンディングは、これまでの金融機関のあり方を抜本的に変える取り組み、プラットフォームとして国内より先行して海外で注目され、「個人間融資」のモデルとして立ち上がったサービスになります。
まだまだ日本では根付いていないサービスであるソーシャルレンディングですが、世界の市場規模やサービスが発展した理由、生まれた歴史を知ると、ソーシャルレンディング・日本市場の可能性を再発見することができます。
今回は、ソーシャルレンディングの市場規模や歴史、各国のソーシャルレンディングとの関わり方について解説していきます。
こちらを読んで頂ければ、日本国内のソーシャルレンディング市場がいかに発展途上で、なおかつ今後伸びる余地があるかわかってもらえることでしょう。
目次
ソーシャルレンディングの歴史
はじめに、ソーシャルレンディングについて詳しくしってもらうために、歴史と各国での事情から解説していきましょう。
こちらの内容だけでも、日本と世界のソーシャルレンディングに対する多様性や、サービスの幅をわかってもらえることと思います。
生まれた背景
ソーシャルレンディングは、欧米で先駆けて生まれたサービスです。
インターネットを利用したプラットフォームを指しており、今でこそ「ソーシャルレンディング」という名を得ていますが、当時は個人間融資(P2P:Peer To Peer Lending)のサービスで、イギリスの「VirginMoney」というサービスで2002年に誕生しました。
2005年には、イギリス「ZOPA」が世界で初めて「知らない個人間で融資を行うことができるサービス=ソーシャルレンディング」を始めました。
これを機に、2006年には米国「Prosper」、2007年には米国「LendingClib」が次々とソーシャルレンディング市場に参入してきました。
これがソーシャルレンディング市場の勃興期です。
日本でソーシャルレンディングが開始されたのは、2008年「maneo」が初めてです。
2008年にmaneoのサービスが開始されたことを皮切りに、日本でもソーシャルレンディング市場が活性化されていきました。
なお、現在でも日本国内のソーシャルレンディングによるシェア(応募額シェア)の50%を誇るのはmaneoです。
- 2009年「AQUSH」
- 2011年「SBIソーシャルレンディング 」
- 2013年「クラウドバンク」
- 2014年「ラッキーバンク」
- 2015年「トラストバンク」
今日に至るまでの数年で、上記のようにソーシャルレンディング事業者数は急激に増えました。
今後、日本国内外問わず、着実に増加傾向にあるサービス内容であり、今後のビジネスやアイデアの起案の流れを変える1つのツールになることは間違いありません。
全世界で拡大中
ここ数年で爆発的に流通量や取引量を拡大させ、知名度を一気に伸ばしたソーシャルレンディングですが、一口に「ソーシャルレンディング」と言っても、各国でサービスの内容や活用方法に大きくばらつきがあります。
事実、日本と世界各国を比較すると、ソーシャルレンディングの市場規模には格段の差があります。
今後の経済活動を円滑にするために活用されていくであろうソーシャルレンディングをより細かく知ってもらうため、さらに内容を細分化して解説していきます。
欧米
世界最王手のポジションを確立しているのは、やはり欧米です。
その中でも、イギリスでは「ZOPA」が業界の草分けとして、大きなポジションを誇っています。
また、米国「Lending Club」は、ニューヨーク証券取引所に上場を果たしています。
欧米のサービスの特徴は、
- 消費者向け無担保ローン
- 消費者ローン
- 個人向け無担保ローン
が主力の商品となっていることです。
アジア圏
アジア圏を牽引するソーシャルレンディング市場を持つのは、
- 中国
- ベトナム
- インドネシア
- シンガポール
です。
その中でも、中国が最も大きい市場規模を誇ります。
铜板街集団(Tongbanjie)も、消費者ローン系や企業融資中心を得意としており市場を牽引しています。
日本
日本では、2019年2月現在、23社のソーシャルレンディング事業者が存在しています。
日本の市場は特有で、海外の企業が得意とする消費者向けローンとは異なり、
- 法人向け融資
- 不動産向け融資
ソーシャルレンディング市場を牽引しています。
現在では、ソーシャルレンディングは経済誌やメディアで取り上げられることが増え、投資手法としての認知度が高まりつつあります。
その結果、不動産等を中心とした案件から、さまざまな種類の案件へと多様化する機運が見られます。
市場規模から見るソーシャルレンディングの動向
続いて解説していくのは、ソーシャルレンディングの市場規模です。
結果から先にお伝えすると、日本と世界での規模の差は歴然です。
それほど、世界ではソーシャルレンディングは馴染みのある投資手法と位置付けられているのです。
ソーシャルレンディングの市場規模の数値や現状を読み解くことで、日本国内の今後の可能性や、市場の動向について注視することができます。
世界各国の市場規模
欧米では、日本にソーシャルレンディングということばが根付くだいぶ前から、小口の融資を行えるサービスとして、ソーシャルレンディングが行われていました。
2005年段階で、総融資残高がすでに「1億1800万ドル」に達しており、以降、
- 2006年:2億6900万ドル
- 2007年:6億4700万ドル
- 2010年:58億ドル
と推移しています。
ソーシャルレンディングの市場規模が急速に拡大していることが、この総融資残高からおわかりいただけることでしょう。
また、「2015FC CrowdFunding Industry Report」の報告結果によると、次のような市場規模であることがわかります。
- 2012年:貸付型:11億9000万ドル、株式型:1億1800万ドル
- 2013年:貸付型:34億4000万ドル、株式型:3億9500万ドル
- 2014年:貸付型:110億8000万ドル、株式型:11億1000万ドル
- 2015年:市場規模:227億ドル(アメリカ)
- 2025年:市場規模:1500億ドル(アメリカのみ)※
※PwC(コンサルティング会社)の試算
世界のソーシャルレンディングの現状
イギリスの調査会社「Technavio」の「Global Peer-to-peer Lending Market 2016-2020」における調査発表によれば、今後のソーシャルレンディング市場は大幅な成長を遂げ、2016年から2020年にかけて、年間平均成長率(CAGR:Compound Average Growth Rate)で「53%以上」を達成する見通しと発表されています。
特に、この中より顕著に存在感を示しているのが、南北アメリカ大陸です。
このエリアにおいては、2020年までにソーシャルレンディング市場のシェアの45%以上を獲得すると予測されています。
今後のマーケットの中心となるのは、欧米、特にアメリカと言われており、先ほどお伝えした市場規模よりさらに拡大することでしょう。
日本の市場規模
では、日本のソーシャルレンディング市場規模はどれほどでしょうか?
今回は、下記2社から市場規模についてのデータを引用して紹介します。
少し古いデータとなっておりますが、世界市場との対比をするには有益なデータと言えますので、ぜひ参考にしてみてください。
- 2012年:71億円
- 2013年:124億円
- 2014年:216億円
- 2015年:363億円
- 2016年:477億円(見込み)
引用:矢野経済研究所「クラウドファンディングの市場規模による資料」
- 2014年:143億円
- 2015年:310億円
- 2016年:533億円
- 2017年:1316億円
引用:CRWDPORT「日本のソーシャルレンディング市場規模について」
日本のソーシャルレンディングの現状
日本では、ソーシャルレンディングのサービスが開始された当初、欧米を真似して個人間のお金の貸し借りを提供していました。
しかし、利用者の伸びが鈍化し、また延滞の発生等の理由が重なり、すでに撤退しています。
日本を海外と比較したときに、消費者金融や銀行カードローンのサービスがしっかりと整備されていたことと、ソーシャルレンディングが新規サービスであることもあり、多重債務者、信用力の低い利用者の利用に延滞が多発したことが要因だと言われています。
ソーシャルレンディング市場の将来性と可能性
最後に、欧米やアジアの市場と比較したときに、日本国内におけるソーシャルレンディング市場の可能性と将来性について解説していきます。
日本のソーシャルレンディング市場は、いまだ国民へ認知段階であり、サービス自体も黎明期や発展途上と言わざるを得ません。
しかし、だからと言ってソーシャルレンディングに対する可能性がないわけではありません。
これからのインターネット社会を共存していく上では、欠かせないサービスとなり得ます。
そこで、海外の事例にならって日本でのソーシャルレンディングの可能性について解説していきましょう。
世界の市場規模を見ると日本国内は伸びる余地がある
先ほどもお伝えしたように、日本国内と海外ではソーシャルレンディングの市場規模には大きな差があります。
しかも、その差も2倍などではなく、20倍以上です。
そのため、ソーシャルレンディング市場の成長余地はまだまだ伸びしろがあります。
現在の日本は、国際比較でGDP(ドル換算ベース)を見ても、米国、中国に次ぐ世界3位を維持していますが、ソーシャルレンディング市場だけにフォーカスしてみると、これだけ大きな差が生まれてしまっているのが現状なのです。
日本のソーシャルレンディング市場はまだ黎明期
日本のソーシャルレンディング市場は、主なサービスとして不動産融資を中心に扱う事業者ばかりでした。
しかし、現在は
- 再生エネルギー
- 企業に対する融資
- 海外案件
など、案件の種類やリターンの幅も拡大しつつあります。
ただ、他の投資市場と比べるとまだまだ小規模な市場です。
今後、事業者数が拡大し商品群が豊富になりニーズが高まっていくなど、ソーシャルレンディングに対する機運が高まることで、より市場規模は拡大していくことはほぼ間違いないでしょう。
日本市場の今後
日本国内では、ある一定のラインまでカードローンといったサービスが確立していたり、各投資も一定の市場規模を誇っていたり、また国民の投資に対する認識などを加味すると、個人間の融資という文化がなかなか根付きにくい風土を備えてしまっています。
その風土がソーシャルレンディングの市場規模や商品群にも顕著に表れていることは、この記事内で何度もお伝えしてきました。
しかし、今後世界各国でソーシャルレンディングサービスが広まることによって、ますます日本国内にも外資系企業やベンチャー企業が参入してくることは間違いありません。
結果として、日本国内のソーシャルレンディング市場は活性化され、金融・投資のツールとして確固たる地位を築くことと考えられます。
そのため、今後数年で見ても国内のソーシャルレンディング市場は明るいと予想されます。
まとめ
今回は、ソーシャルレンディングを歴史や市場規模、世界各国の中での日本の現状の位置付けといった部分から解説しました。
日本では、最近のキーワードとして「ソーシャルレンディング」が使われることが多いですが、世界では一種当たり前のサービスとして使われているという事実があります。
それは、世界と日本のソーシャルレンディング市場規模を比較したときに、雲泥の差があることからもおわかりいただけたでしょう。
しかし、今後ますます発展すると予測されるソーシャルレンディング市場からは目を離すことができません。
これまでは、限られた商品とリターンの中からしか選ぶことができませんでしたが、今後ソーシャルレンディング市場が活性化することで、新しい部分に活路を見出すことにつながります。