ソーシャルレンディングは、株式投資やFXに比べて新しい投資手法で、近年注目されています。
メリットが大きいため注目されし始めていますが、新しいがゆえに気をつけなければいけないリスクや危険性もはらんでいます。
そのリスクを回避するためには分散投資をすることが有効です。
今回は、ソーシャルレンディングの概要や仕組みといった基本的な部分から、メリット・デメリットを解説した上で、分散投資が必要な理由を解説します。
目次
ソーシャルレンディングとは
ソーシャルレンディングとは、資金を必要とする人に対して資金を貸したい投資家が、ソーシャルレンディングの運営会社(事業者)を通じて、お金を借りたい個人・法人へ貸し付けるサービスの総称です。
簡単に言うと、銀行が行っている預金を集めて資金の必要な企業や個人にお金を貸し付ける業務を、銀行を介さずに行うサービスです。
これが、新しい時代の投資方法として注目されています。
基本的なリターンとリスクのコンセプトは銀行が行う融資とほぼ同じにもかかわらず、なぜ需要があるのでしょうか?
それは、従来の銀行などの金融機関では、次の4つような理由からニーズを掴めていないことが挙げられます。
- 元本割れするリスクをとっても、預金よりも高い金利収入がある債権で運用したい
- 不動産担保がある場合でも、銀行の融資基準によって借り入れすることができない
- 銀行が預金を出すことが難しいリスクマネーを調達したい
- 銀行等の金融機関に任せておかず、投資を通じて直接的な社会貢献をしたい
これら4つのニーズを的確にとらえ、国内でもソーシャルレンディングでのローン成約残高は増加の一途です。
ソーシャルレンディングはクラウドファンディングの1つ
ソーシャルレンディングは、お金を借りたい人とお金を投資したい人を仲介するサービスです。
インターネットを利用して不特定多数の人からある目的のために資金を集めることを、広義では「クラウドファンディング」と呼びます。
そもそも、ソーシャルレンディングとはフィンテック(FinTech)という新しい情報技術と金融サービスの融合から誕生したクラウドファンディングのひとつの形態と呼ぶのが正確です。
それでは、クラウドファンディングにはどのような種類があるのかについて解説していきましょう。
クラウドファンディングの種類
クラウドファンディングは大きく分けて、次の5種類に分けられます。
- 寄付型
- 購入型
- ファンド型
- 融資型(ソ−シャルレンディング)
- 株式型
1.寄付型
寄付型クラウドファンディングは、名前のとおり資金を集めたいと思っている人に対して、インターネットを通して寄付の仲介をする仕組みです。
2.購入型
購入型クラウドファンディングは、あるプロジェクトに関して資金を集めたい人が、そのプロジェクトに関連する特典として資金支援(寄付)を行った人に対してお返しする仕組みです。
お披露目会などの招待券をお礼とする場合もあります。
3.ファンド型
ファンド型クラウドファンディングは、事業やプロジェクトに投資をして、その事業やプロジェクトが計画どおりに達成できた場合にリターンを得られる仕組みです。
計画の達成度合いに応じてリターンも変化します。
運営者は借り手の事業計画などを開示して投資家を募ります。
4.融資型(ソ−シャルレンディング)
融資型クラウドファンディングが「ソーシャルレンディング」です。
サービスの特徴として、ソーシャルレンディングの運営者が、借り手となる企業を審査して、融資の条件(金額、金利、期間、保証や担保の有無)を提示することがあります。
その提示した条件に対して投資家が資金を提供する仕組みです。
maneo(マネオ)やSBIソーシャルレンディングなど、既に多くの融資・返済実績を持つ会社があります。
5.株式型
株式型のクラウドファンディングは、法改正により2015年5月から開始されたサービスです。
1人当たり1社に対して50万円を上限に、インターネット上で未上場株式に投資できるようになりました。
ただし、流動性が極めて低い投資であり担保等の保全もないので、投資した会社の将来性にかける比較的リスクの大きい性質の投資です。
ソーシャルレンディングの利益と税金
株式や預金などの「分離課税」とは異なり、ソーシャルレンディングの収入(配当収入)は、通常個人の場合は「雑所得」として分類され、個人のその他の所得とともに「総合課税」の対象となります。
その結果、分離課税のように常に一定の税率でなく、個人のその他の所得多寡に伴いソーシャルレンディングの配当収入への税率が変動するリスクがあります。
詳しくはこちらで解説していますので確認するようにしてください。
国内のソーシャルレンディング市場
日本国内のソーシャルレンディングのはじまりは、maneo(マネオ)がサービスを始めた2008年ごろだと言われています。
毎年少しずつ市場規模も広がっていき、2013年ごろから本格的な市場の成長を見せています。
直近だと、2017年には1316億円、2018年には2012億円にまで到達しました。
この勢いは衰えておらず、2022年には9,000億円に達するとの見込みもあり、引き続き市場規模は拡大傾向にあります。
市場を伸ばした要因として、リーマンショック以降、銀行に代わって不動産業界に対して高金利ながら資金を柔軟に提供したことがあります。
そのため、活路を見出すことができたのです。
ソーシャルレンディングのメリット
ソーシャルレンディングの大きなメリットのひとつは、一度投資をした後はほったらかしにできることです。
そのため、日中あまり時間の取れない方にも向いた投資です。
また、毎月金利が入ってくるたえ、投資初心者の方にも向いています。
それ以外のメリットを2つ紹介しましょう。
メリット①:少額から投資を始められる
ソーシャルレンディング投資は、中には1万円から始められるものもあり、毎月のお小遣い程度の少額からスタートできます。
手数料も振込と払い戻し以外は無料なのでシンプルで分かりやすく、とにかく始めやすいことが特徴です。
メリット②:利回りが魅力的
最大のメリットは、リターンとなる利回りが平均8%とかなり高いことが挙げられます。
ソーシャルレンディングは
ハイリスクで高リターンを期待するFX投資などと比較すると、ソーシャルレンディングは利回りは低いものの、資産を保有してインカムゲイン(配当収入)を得ることを目的としているため、リスクを抑えつつ魅力的な利回りが期待できます。
とてもバランスの良い投資といえるはずです。
ソーシャルレンディングのデメリット
ソーシャルレンディングには魅力的なメリットがたくさんありますが、デメリットももちろんあります。
現状、デメリットを完全になくすことはできませんが、あらかじめしっかりと把握しておけば、できるだけリスクを抑えることは可能です。
5つのデメリットを紹介するので把握しておきましょう。
デメリット①:デフォルト(貸し倒れ)のリスクがある
デフォルトとは、投資したお金が返ってこない(貸し倒れ)リスクのことです。
しっかり把握しておかなければならないことは、ソーシャルレンディングの事業者はお金を借りたい人と賃したい人をつなぐマッチングサイトであるということです。
もちろん事業者側はお金を借りたい人の審査はするものの、実際のビジネスには不確実性が必ずあり、100%安心というものはありません。
いざというときに、ソーシャルレンディングの事業者が代わりに返済してくれるわけではないことを念頭に置いて投資をすることが大切です。
デメリット②:事業者リスクがある
事業者リスクとは、ソーシャルレンディングを運営する事業者そのものの運営がうまく行かない場合があるという危険性のことです。
実際、過去に「みんなのクレジット」という運営会社が高金利を謳い資金を集めたものの、貸付先などに返済を遅延したケースがあります。
そのため、投資家は安心して投資をするため、大手の上場企業が運営するソーシャルレンディング会社を利用するなど、事業者をしっかり調べることが大切です。
デメリット③:流動性リスクがある
ソーシャルレンディングの場合、株式売買とは異なり、一度投資をしたら途中で解約することはできません。
これを、投資の世界では「流動性リスク」と呼びます。
そのため、あくまで余剰金で投資をするなど、日常生活に支障がない範囲で投資をすることが大切です。
デメリット④:税制面で不利
いざ利益が出た場合、ソーシャルレンディングの分配金は原則として「雑所得」に分類されます。
雑所得は、
(他の種類の所得に該当しない収入)-(必要経費)
として課税所得が計算されるため、その他事業所得と相殺できないのは税制面でデメリットと言えるでしょう。
また、所得税として総合課税されるため、ソーシャルレンディングの分配金はあらかじめ税金が引かれています。
これはソーシャルレンディング業者が所得税を前払いしている状態で、「所得税20%+復興特別所得税0.42%」を分配金支払い時に源泉徴収される仕組みになっています。
デメリット⑤:開示情報が少ない
ソーシャルレンディングの大きな課題として、「投資先が匿名である」ということがあります。
投資先の事業者の名前・住所、すべてが不明なのです。
これは貸金業法によるもので、投資先の情報開示が原則できないことが理由です。
今後は何かしらの法整備が進むかもしれませんが、現状では投資先を判断することがとても難しい状況です。
確定申告が必要なケース
会社員の方は、年収が2,000万円以下の場合はソーシャルレンディングやその他を含めた雑所得が20万円以下であれば、確定申告は必要ありません。
とはいえ、確定申告をしたほうが良い場合もあります。
それは所得が195万円から330万円の場合です。
所得が195万円から330万円の場合、所得税が「10%」になるため、あらかじめ源泉徴収されていた「20%」は払い過ぎとなり、還付金として受け取ることができます。
また、会社員でも年収が2,000万円を超える場合は確定申告が必要ですので、最低限の知識を身につけておくようにしましょう。
ソーシャルレンディングは分散投資がおすすめ
ソーシャルレンディングを始めるばあは、メリット・デメリットをしっかりと知り、投資をするときは分散投資をしてリスクを抑えることが大切です。
分散する対象は次の3つがあります。
- 事業者
- 投資する商品
- 融資先
1.事業者
運営の事業者ごとにリスク許容度も異なるので、それに応じて事業者を分散することがひとつめのリスクヘッジになります。
年々、運営事業者も増えているので、新たな事業者を選び投資をする際は、試しに少額から始めてみて、実際に貸出や分配などの運営がしっかり行われているのか、投資をして確認することがおすすめです。
実際に投資をしてみることで、その事業者の運営がスムーズなのかどうか、じっくり確認していきましょう。
2.投資する商品
「投資する商品」(ファンド)も1つに絞るのではなく分散させることが重要です。
もちろん、より高い「利回り」を選ぶことでリターンも大きくなりますが、そのファンドだけに投資を集中させていると、その分リスクも大きくなります。
なぜなら、投資をするということは、必ず投資先の「デフォルトリスク」があるかです。
リスクマネジメントの観点からも、分散投資をすることで、万が一の事態に陥っても被害を最小限に抑えることができるのです。
3.融資先
そして、気をつけなければならないのが、「融資先」の分散です。
異なるファンドに分散しているつもりが、情報開示が少ないために「同じ会社に投資をしていた」というケースもあるので注意が必要なのです。
分散投資をすればするほど、今どこに投資をしているのか、投資家によっては把握していないケースもあります。
投資しているファンドとこれから投資をしようと検討しているファンドを常に整理して把握しておくことが大切です。
ソーシャルレンディングの場合、借り手企業の社名は公表されませんが、事業者によっては融資先が識別できるサービスもあるります。
投資をする際はしっかり調べた上で判断しましょう!
まとめ
ソーシャルレンディングの魅力は、ミドルリスクでありながら銀行と比べて利回りが高く、とても魅力的な投資先も多数存在することです。
メリット・デメリットを理解して分散投資をすることでリスクを抑え、ぜひ投資先のひとつにソーシャルレンディングをぜひ組み入れてみましょう。
ソーシャルレンディングのリスクについては、こちらで詳しく解説しています。
併せて読んでおくことをおすすめします。