2019年02月20日(水)の第二種金融商品取引業協会 研修・説明会の参加レポートです!
ソーシャルレンディング事業を運営するためには、「第二種金融商品取引業免許」を取得していなければなりません。
第二種金融商品取引業とは、2007年9月に定められた制度であり、集団投資スキームを実行するために必要な登録制度です。
現在の登録者数は約160社。
証券会社を運営する上で必要な「第一種金融商品取引業」と比べると、やや規制が緩やかであり、参入のしやすさもあってか年々登録する企業が増加しています。
業務可能な内容としては、次のようなものなどが代表的です。
- ファンドを組成して自社募集をすること
- 他の事業者が組成したみなし有価証券の販売
- 金融商品市場以外で売買されるデリバティブ取引の実行
ソーシャルレンディングに関しては、1.の内容が該当します。
「第一種金融商品取引業」と比較すると、資本金が5千万円でも参入可能で、団体や個人でも参入できるなどの規制緩和が行われているため、参入障壁が低く、金融商品の売買や取引を活性化させる働きがあります。
その反面、投資家保護を徹底せず、業界内でも問題視される会社も増えています。
そこで、「第二種金融商品取引業者」の業界団体である「第二種金融商品取引業協会」では、定期的に内部管理統括責任者や、業務を代行する人間を対象に研修会を実施しています。
研修会では、
- 業界が今直面している問題に対し、内部管理統括責任者がどのような対応をするべきか
- これから先の業界の見通しや、内部管理統括責任者が求められるスキル
などについてなどの講演が行われています。
この第二種金融商品取引業協会の研修会は、こちらのサイトにある日程で開催さています。
筆者は、「2019年02月20日(水)13:30-15:30」の会に参加してきました。
今回は、その研修・説明会の内容に触れながら、業界内でソーシャルレンディングがどのように見られているか、また、安全な企業を見抜くポイントについてお伝えしたいと思います。
目次
ソーシャルレンディング会社が「第二種金融商品取引業事業者」の行政処分を受けた中で圧倒的に多い
2019年02月20日(水)の第二種金融商品取引業協会 研修・説明会では、内部管理統括責任者に対する次の内容が話されました。
- 検査監督の基本方針
- コンプライアンスやリスクの管理基本方針
- 最近の行政処分事例
- 第二種金融商品取引業者に関わる金融庁のモニタリング
内部統括管理責任者に求められるスキルですが、基本方針として社内の他の事業部をどのように監視、管理していくか、どのように権利を分担し、不正が起きないように業務をこなしていくかが中心になっています。
ソーシャルレンディングとは直接関係のない話ですが、この話を聞くといま問題となっているソーシャルレンディング会社は、内部管理統括責任者の権限が非常に小さく、社内の暴走状態を止められなかったのではないかと推測されます。
実際に、この研修では不動産投資におけるスルガ銀行の融資問題が話題になったことがあります。
スルガ銀行は行員も多く組織が大きいため内部管理統括部門はあります。
しかし、実態は営業部の権限が大きく、会社に営業成績を追求されると内部管理統括部門が萎縮するしかなかったため、この融資問題が発生したという話もありました。
そのため、安全に投資できるソーシャルレンディング会社を見抜くためのポイントのひとつとして、
- 内部管理部門が部署として独立し、専任の担当者がいる
- 営業の力が強すぎる会社ではない
この2点をチェックする必要があるのではないかと感じます。
不祥事によって行政処分を受けた第二種金融商品取引業者ですが、事例として8社の名前が上がりました。
具体的な事例として、2017年から2018年に発覚した問題が取り上げられましたが、恐ろしいことに、なんと、そのうちの5社がソーシャルレンディング会社でした。
近年の行政処分事例のうち、半分以上がソーシャルレンディング関係の会社であり、ソーシャルレンディング会社の内部管理統括部門が機能していなかったといえる結果になっています。
行政処分を受けた会社の具体的な名前は、みなさんがご存知のソーシャルレンディング会社です。
①クラウドバンクを運営する日本クラウド証券
日本クラウド証券は、2017年に著しく事実に相違する表示の禁止行為で処分を受けました。
②みんなのクレジット
みんなのクレジットは、誤解表示の禁止行為で行政処分を受けています。
これは、貸し付け先が親会社に集中していたにもかかわらず、ファンドは複数の不動産事業会社に貸付を行っているかのような虚偽の表示を行ったことが原因です。
まだ担保による保全がなされていないのに、投資家に保全がされているかのような内容であったことも問題視されています。
③ラッキーバンクインベストメント
ラッキーバンクインベストメントも、誤解表示の禁止行為で行政処分を受けています。
ラッキーバンクインベストメントは、貸付先の審査があたかも慎重な手続きによって行われたかのような表現が誤解を招いたとしています。
また、ウェブサイト上の募集要項で不動産価格調査報告書を掲載していたものの、正式な不動産鑑定評価を行っていなかったという点も行政処分の対象となりました。
④maneoマーケット
maneoマーケットは、虚偽表示の禁止行為で行政処分の対象となっています。
内容はグリーンインフラレンディング社を営業者とするファンドに対し、GIL社が調達した資金を親会社の関係会社を経由し、GIL社の親会社に貸付を行っていました。
しかし、親会社は区分管理をすることなく、ほぼ全ての案件を一つの口座で管理しており、出資対象事業とは異なる事業への出資も行っていたことが、直接の行政処分の理由となっています。
⑤エーアイトラスト
トラストレンディングを運営するエーアイトラストです。
エーアイトラストも、虚偽表示の禁止行為で行政処分を受けています。
エーアイトラストは、あたかも官公庁が関与するかのように除染作業の支援を目的としたファンドを組成し、集めた資金を貸し付けるかのような表示をしたことが問題視されています。
表記と異なり、そのような事実はなかったとされています。
このように、ソーシャルレンディング会社は、「第二種金融商品取引業協会」の中でも、行政処分を受ける頻度が非常に高い事業者として認識されています。
maneoマーケットのスキームに関する概要のクローズアップ
さらに、2019年02月20日(水)の第二種金融商品取引業協会 研修・説明会の中では、特に問題の規模が大きかった事例として、
- maneoマーケットの融資スキーム
- グリーンインフラレンディングの資金の使途が不明だったこと
が大きく取り上げられました。
※ここでは、次のとおり表現します
- 「maneoマーケット」を「第二種事業者」
- 「グリーンインフラレンディング」を「営業者」
- グリーンインフラレンディングの親会社である「JCサービス」を「運営者」
今回の問題が大きく取り上げられた理由は、第二種事業者が営業者の監視を怠っただけではなく、事業を主体的に行う運営者までもが資金の流れを把握できなかったことだとされています。
第二種事業者は、ファンドを組成し多数の投資家からお金を集めて運用を行います。
そして、第二種事業者はファンド組成の主体者として、資金の用途や流れ、営業者の目的まで把握する義務があります。
maneoマーケットに職務を十分に果たすだけの力がなかったことが業界では問題視されています。
今後、同じような事態を招かないためには、営業者の監視に務めることはもちろん、第二種事業者が運営者の規模や事業内容をしっかりと確認しておかなければなりません。
また、同時に、第二種金融商品取引業者に対する金融庁からのモニタリングも大きく取り上げられています。
モニタリングに関しては、会社の理念や理想に沿ったものではなく、より実務に沿ったモニタリングと、運営方針を決定することが必要とされています。
平成30年事務年度に設けられた証券モニタリングの基本方針も、次のようになっています。
(平成29年事務年度の取り組みとして、第二種金融商品取引業者に対しては「多数の対象業者の中から取扱商品のリスク分析が、外部から寄せられた情報等の分析によって高リスクの業者を抽出し、必要に応じてオンサイトモニタリングを実施してきた。この結果、ウェブサイト上で虚偽の表示や誤解を生じ得るべき表示を行っていたなど、投資者の保護の上で問題のある事案が認められた」
ソーシャルレンディング問題に関しては、金融庁は多くの投資家からの問い合わせがあったことをきちんと把握しており、内部そして外部からの告発・通報によって数々の業者が行政処分に至ったとしているのです。
投資家が、大いに問題のあるソーシャルレンディング会社を金融庁に告発することは無意味ではありません。
問題がある場合、積極的に投資家として声を上げていくべきです。
そして、平成30事務年度は、平成31年3月30日末までとなっています。
金融庁としては、ソーシャルレンディング業者が今後、定めていくべき情報開示方針について通告し、適切な対応をこの期限までに促すとしています。
具体的には、次のような内容になっています。
「出資者の投資判断に重大な影響を及ぼすウェブサイトの表示や、ファンド運営の実態に関する情報の分析や検証を進め、当局に寄せられる相談や関係機関からの情報提供を参考に、リスクベースでのモニタリングを通じ、問題業者への厳正な対応を行っていく」
また、金融庁の監視委員会の協議では、平成30年12月7日に「貸付型ファンドの投資家への情報提供について」という議題を掲げています。
これは、貸付型ファンドの販売業者について、金商法(金融商品取引法)に抵触する多数の違反事例や、関係者に被害が及んでいる悪質な事例」として、しっかりと明記されています。
その背景には、次のものが挙げられています。
- 貸付型ファンドの販売業者の法令等遵守態勢の不十分
- 貸付型ファンドの投資家に対し、貸付先に関する情報が十分に提供されていないこと。および、当該情報は投資家が出資の可能性を判断する上で重要であるものの、貸金業登録に係る制度の運用側であることから、現状では貸し付け先の特定につながる情報の明示を控えた運用が行われている(借り手の匿名化、複数化が配慮の原因に挙げられる)
- 貸付型ファンドに関わる投資者保護の一層の徹底を図る観点から、投資家がより適切な投資判断を行うための情報提供や、説明内容の拡充など、適切な措置を講じる必要がある
このような方針を金融庁が定めている以上、情報開示に関しては、平成31年3月31日までに何らかの発表があることはほぼ間違いありません。
そして、発表を受けた各ソーシャルレンディング事業者が、どのような情報開示の方針を示すかで信用できる会社、信用できない会社が決まっていくと考えられそうです。
その他金融庁が問題視していたもの
ソーシャルレンディング関連以外でも、金融庁が行政処分を下した会社はあります。
例えば、代表的なものは、業務停止命令と業務改善命令を受けたスルガ銀行です。
また、「おひさまエネルギーファンド株式会社」「FIPパートナーズ」なども行政処分を受けています。
特に、株式会社FIPパートナーズは、第二種金融商品取引業資格を剥奪されています。
これらの問題が起こりやすい第二種金融商品取扱事業者のビジネスの共通点として、次の2項目が挙げられました。
- 利回りが高い
- 海外案件への投資を訴えていること
もちろん、投資家に対してできるだけ大きな利益を提供できれば、多くの投資家から資金を集められるようになります。
こういった投資を提供する事業者に、100%問題があるわけではありません。
しかし、少なからず因果関係があることも間違いありません。
ソーシャルレンディングでも、今回行政処分を受けた会社を振り返ってみましょう。
- maneoマーケットを通じてのグリーンインフラレンディング
- ラッキーバンク
- トラストレンディング
- みんなのクレジット
現に、どれも金利10%を超えるような高金利案件を売りにしていた業者です。
これからソーシャルレンディング投資を行っていく中で、高利回りの会社にあまりにも多くの資金を投下するのは危険であると言わざるを得ません。
ソーシャルレンディング会社の中でも、適正な貸付金利を発表し、自社が得ている利益をきちんと開示する会社を選ぶようにしましょう。
筆者が聞いた話ですと、maneoマーケットを利用しているソーシャルレンディング会社は、金利の2%分に相当する営業利益をmaneoに渡しているそうです。
つまり、利回り10%の案件の場合、投資家の利益分の10%に加え、maneoの利益はさらに2%上乗せされます。
貸付金利の最大の利率が15%ですので、ほぼすべての案件で実質的な貸付金利は15%だったのではないでしょうか?
これだけの高金利では、これまで貸し倒れが起きていなかったのが不思議なぐらいです。そのようなマージンがあることも把握しておきましょう。
まとめ
筆者が今回の2019年02月20日(水)の第二種金融商品取引業協会 研修・説明会研修を受け、危険なソーシャルレンディング会社を見抜くポイントだと感じたのは、次の4点です。
- 情報開示方針がしっかりしている
- 内部統括管理に関する部署が存在している
- 役員に営業関係の人間ばかりが集中していない
- 過剰な高金利を謳っていない
ソーシャルレンディングで投資する際は、この4点をチェックしましょう!
また、
- 官公庁の出身者を役員に据えている
これは意味がありません
仕事をもらう面では意味がありますが、毎月数十万円の報酬をもらい、名前だけ貸しているとみた方が良いです。
会社の内部に関わっている人間はまずいないでしょう。
気になった場合は問い合わせで、「○さんはどんな業務をされていますか?」などと聞いてみると良いでしょう。