近年急成長を遂げている金融サービスに「ソーシャルレンディング」というカテゴリーがあります。みなさんは、ソーシャルレンディングについてどれほどご存知でしょうか?
ソーシャルレンディングは、従来の金融機関のあり方を抜本的に変える取り組み・プラットフォームとして、日本国内より先行して欧米を中心に海外で注目され、「個人間融資」のモデルとして立ち上がったサービスです。
しかし、日本ではソーシャルレンディングというサービスはまだまだ黎明期のプラットホームであり、世間での認知度やサービス自体の使い方については、海外市場との事情や成長要因は異なります。
そこで、今回は、
「これからソーシャルレンディングについて深く知っていきたい!」
「ソーシャルレンディングの名前は知っているものの、未だによくわからない」
という方向けに、ソーシャルレンディングとは一体どのような投資手法はのか、どのようなメリットがあるのかといった基本的内容から、日本市場と海外市場の規模の差異、その差から考えるソーシャルレンディングの可能性について、ソーシャルレンディング全般について解説していきます。
目次
ソーシャルレンディングの基本知識
ソーシャルレンディングは、近年日本ではようやく浸透してきた金融サービスですが、まだまだ馴染みのあるサービスとして成長しているとは言えません。
そこで、はじめにソーシャルレンディングがどのようなサービスなのか、メリットはどのような点なのかといった基礎的な部分について解説していきます。
ソーシャルレンディングとは
ソーシャルレンディングとは、インターネット上で「お金を借りたい企業や個人」と、「お金を運用したいと考える企業や個人」を結びつける融資仲介サービスのことを指しています。
海外では、「社会的意義が大きい事業」への応援資金を募る目的で、2005年ごろからイギリスでサービスが開始されました。
その後、アメリカで発展・拡大を遂げたのです。
日本では、2008年に個人への貸し出しから始まり、現在では法人向け貸し出しへの拡大をしています。
資金の借り手としてのメリットには次のような点があります。
- 少ない金利でお金を借りることができる
- 今までは借りることのできなかった企業や個人でも、不特定多数の人から資金提供を受けることできる
対して、資金の貸し手(投資家)としては、次のようなメリットがあります。
- リスクに応じて出資した分の配当金を得ることができる
- 新たな投資対象に投資可能となる
ソーシャルレンディング事業を運営する会社は、インターネット上の各社のプラットホームで不特定多数の投資家から集めた資金を、借りたい企業や個人に貸し出して運用する仕組みを取っています。
最少投資額が1万円といった少額から始めることができたり、各社様々ですがリターンは年利換算でおおよそ3.00から10パーセントや、高いものでは15パーセントと他の投資と比べた際に高いことが特徴です。。
証券監督者国際機構(IOSCO:International Organization Of Securities Commissions)も、ソーシャルレンディングを「単に既存の金融サービスのテクノロジーの応用」という枠を超え、「デジタル時代の創造的破壊(Digital Disruption)をもたらすもの」として捉えられています。
サービスとしての課題はまだまだ多くあるものの、多くの人やモノに対して便益を与えるサービスとして認知されているのです。
将来性のある有望なサービスの1つ
従来の金融機関やそれに準ずる付帯サービスなどは、優良な担保資産や資産規模を持たない個人や中小企業に対して、リスクの高さや過去の経験則から、一般的には貸し出しを行わない背景がありました。
そのため、貸し借りに関係する両者に、それぞれ「投資機会を失う」といったデメリットが生じていました。
その隙間を埋めるべく誕生したサービスがソーシャルレンディングです。
今後、技術革新や法整備によって、今以上に安心かつ多種多様な融資の提供が始まると言われています。
メリット
ソーシャルレンディングは、次のようなメリットを持った投資です。
①他の商品と比べて利回りが高い
銀行や国債に投資しても、良いリターンは見込めません。
しかし、先述の通りソーシャルレンディングは平均値として8パーセント前後といった高いリターンが見込める投資です。
従来の金融機関とは異なり、裾野を広げ融資を行っているためこのような理想的なリターンが実現できるのです。
②初心者でも安心・安全
ソーシャルレンディングにおける過去3年の貸し倒れ率は「1.47%」と言われいます(2018年1月25日現在、クラウドポート調べによる)。
近年急成長しているサービスとは言え、かなりの保全性が確保できているということができます。
そのため、投資の初心者であっても安全に、そして安心して始めることができるのです。
③学習する手間を省ける
株式投資やFX(外国為替)、ビットコインとなると、明日からすぐに簡単に始められるといったことはまずありません。
学習する手間や、勝つための手法を地道に編み出したりと、かなりの時間を要します。
しかし、ソーシャルレンディングは元本の価格変動はなく、「投資を行ったら運用期間が終わるまで待つだけ」といった、いわゆる手間のかからない投資です。
日本市場におけるソーシャルレンディング
基礎的な部分はおわかりいただけたと思うので、続いてはソーシャルレンディングの日本市場と海外市場での違いや規模、活用方法について解説していきます。
まだ発展途上と位置付けられる日本のソーシャルレンディング市場をおわかりいただけるでしょう。
日本・海外における活用方法の違い
日本市場では、ソーシャルレンディングは「不特定多数の個人から法人に対する融資モデル」が一般的とされていますが、実は欧米や他国では異なる活用方法が取られています。
欧米では、個人間融資(P2P:Peer To Peer Lending)をメインとして成長を遂げています。
中国では、法人融資を対象に市場が拡大していると言われています。
各国の金融市場を背景に、同じソーシャルレンディングでも成長背景は異なるのです。
日本市場では、現在は特に不動産融資を中心としてソーシャルレンディング市場が拡大しています。
今後、海外のようにさまざまなニーズにこたえていくサービスが発展すれば、より広い市場へと広がっていくことなります。
日本ではまだまだ発展途上
「2015FC CrowdFunding Industry Report」の報告結果によると、世界のソーシャルレンディング市場規模は次のとおりです。
- 2012年:貸付型11億9000万ドル、株式型1億1800万ドル
- 2013年:貸付型34億4000万ドル、株式型3億9500万ドル
- 2014年:貸付型110億8000万ドル、株式型11億1000万ドル
- 2015年:市場規模227億ドル(アメリカのみ)
- 2025年:市場規模1500億ドル(アメリカのみ)※
※PwCによる
これに対して、日本のソーシャルレンディングの市場規模は次の通りになっています(矢野経済研究所:クラウドファンディングの市場規模による資料)
- 2012年:71億円
- 2013年:124億円
- 2014年:216億円
- 2015年:363億円
- 2016年:477億円(見込み)(※1)
- 2014年 143億円
- 2015年 310億円
- 2016年 533億円
- 2017年 1316億円
※1:CRWDPORT調査:日本のソーシャルレンディング市場規模について
海外・日本のソーシャルレンディング市場規模を比較するとおわかりのように、市場規模の差は歴然です。
日本のソーシャルレンディング市場は徐々に拡大しているものの、案件の内容が限定されているため、海外市場とこれほどの差が生まれてしまっているのです。
日本のソーシャルレンディング市場の可能性
最後に、ソーシャルレンディングの海外市場と国内市場を比較したときに、日本国内の市場にどれくらいの可能性があるのかについて解説していきます。
規模やサービス内容、競合他社など、全てで発展途上とされている日本のソーシャルレンディングは、まだまだ成長余地が多く含まれています。
海外市場と比べると日本には大きな成長余地がある
先述したように、海外と日本のソーシャルレンディングの市場規模は歴然としています。
日本市場では1,000億円をようやく超えた規模ですが、アメリカの市場規模は227億ドル(2.5兆円)とも、1,000億ドル(10兆円)とも言われており、日米間で単純比較しても20倍以上の差があると言えます。
ソーシャルレンディングでは、アメリカでは個人間融資中心として発展したサービスですが、日本ではあくまで不動産融資に限られたサービスとして成長しつつあります。
そのため、アメリカの市場規模を参考とすると、日本のソーシャルレンディング市場の伸びる余地はまだまだ充分にあると考えられます。
用途が広がることで世間に浸透する
現在、日本ではソーシャルレンディングは不動産融資に限定されているため、比較的に小さいマーケットで拡大しているという背景があります。
近年は、再生エネルギーや企業への融資、海外案件といったさまざまな案件に拡大しているという事実もあります。
ただ、欧米のように個人間融資を取り扱うといった業者はまだなく、世間での認知度からしても、まだまだ伸びしろは多く含まれています。
ソーシャルレンディング市場の循環が新たな可能性を生む
海外では、ソーシャルレンディングは社会的意義が大きい事業や個人への応援資金としての使われ方が定着しつつあるものの、日本ではまだまだ活用方法が不動産を中心として限定されているといった背景があります。
そのため、本来のソーシャルレンディングとしての目的を十分に達成していません。
ここ数年、メディアで取り扱われるようになってきており、それに伴って各社で取り扱う金額や事業者数は上昇傾向にあります。
そのため、今後より一層の競争が促されることは間違いないでしょう。
「社会的認知度」、「資金調達ニーズの汲み取り」、「投資環境の熟成」などさまざまな投資対象としての要因がそろうことで、ソーシャルレンディング市場はさらなる成長につながることでしょう。
まとめ
海外のソーシャルレンディング市場を比較対象として、日本国内のソーシャルレンディングの市場や活用方法、今後の可能性についてお伝えしてきました。
欧米と比較すると、まだまだマーケットやサービス自体が「黎明期」と位置づけられるため、成長市場と定義するのは時期尚早かもしれません。
しかし、低金利環境や、スタートアップ企業や中小企業の資金調達ニーズ、プラットホームやアルゴリズムなどの技術革新など、さまざまな要素を鑑みた結果、ソーシャルレンディング市場が拡大して余地は十分あると考えられます。
今後多くの場面で「ソーシャルレンディング」のことばを耳にすることがあると思いますが、今後ますます注目されるサービスのひとつであることは間違いないでしょう。
ソーシャルレンディングの日本市場規模については、こちらでも解説しています。
併せて読んでおかれると良いでしょう。