ソーシャルレンディングの選び方は、個別案件を検討するだけではありません。
さまざな対象を検討する必要があります。
今回は、ソーシャルレンディングの個別案件の選び方から、借り手、運営事業者に関することまで詳しく解説します。
さらに、投資全体まで視野を広げて、選び方についてお伝えしていきましょう。
目次
ソーシャルレンディングの選び方:個別投資案件
ソーシャルレンディングでの個別投資案件の選び方で重要なことは、利回りだけで判断を行わないことです。
なぜなら、利回りと同じくらい重要な判断材料がたくさんあるためです。
各案件を検討していくと、その案件固有のネガティブな要素というものが出てくることがあります。
このネガティブ要素を理解することが大切なのです。
そして、個別案件を通してプラス要素とバランスが取れるかを確認する必要があります。
それでは、個別投資案件の選び方を4つに分けて解説していきましょう。
選び方①:利回りを意識する
ソーシャルレンディングの案件を選ぶうえでは、利回りの確認は外せません。
ただ、利回りが高いということには理由があるということを念頭に入れておいてください。
まず、「貸し倒れ」(デフォルト)といった返済リスクが高いことが理由のひとつとしてあげられます。
もしくは、事業の業態が金融機関では融資が受けにくいという可能性も考えられます。
逆に、利回りが低い案件はリスクが少ないと言えるでしょうか?
確かに、貸し倒れのリスクは低いと言って良いかもしれません。
しかし、利回りが低いと言っても貸し倒れ時は元本を失います。
可能性は少なくとも最大損失を受け入れる覚悟が必要でしょう。
リスクとリターンをバランスよく取る意識が大切です。
ソーシャルレンディングでは、利回りが6パーセントから7パーセントあたりが程よいバランスだと言われています。
このバランスをひとつの基準として案件を精査すると良いでしょう。
利回りが高かったり低かったりする場合は、リスクを取り過ぎていないか確認することをおすすめします。
選び方②:担保設定を確認する
個別案件には、担保や保証が設定されているものも多くあります。
この担保や保証は、返済が難しくなった際の代替返済原資として用意されているものです。
ただし、担保や保証があるからといって、安心できる案件だと決めつけることは良くありません。
確かに、無担保の案件よりも返済までしっかり考えた案件である確率は高いかもしれません。
ただ、設定されている担保や保証の中身までしっかりと確認することが重要です。
貸し倒れ危機に陥った際、例えば、借り手と担保先の資本関係が近いと、担保先においても返済資金を用意できないという場合が想定されます。
こういった場合では、担保や保証が意味をなさなくなってしまいます。
選び方③:投資期間を確認する
貸し手が個別案件に投資をする際は、資金の投資期間も確認することが重要です。
ソーシャルレンディングで2年を超えるような長期投資は、その投資期間、資金が拘束されることを念頭に入れておく必要があるのです。
投資期間が長いということは、その分投資先の事業環境も変わるというリスクをはらんでいます。
逆に、3ヶ月といったような短期案件に投資する場合、他に投資する案件がなければ、投資全体の実質利回りが低くなる可能性が考えられます。
例えば、年間収益で考えてみましょう。
残りの9ヶ月間、再投資先を見つけることができなければ、年利は実質4分の1となります(3ヶ月÷12ヶ月=1/4)。
ソーシャルレンディングの案件を選ぶ際は、投資期間は6ヶ月から12ヶ月程度の案件がほどよいと言えます。
投資先の事業環境は12ヵ月以内であれば年間計画の範囲であり、急変するリスクは低いと考えられます。
また、投資する期間はさほど短くはないため、年利を考えた場合もそれなりのリターンを見込める期間だと考えて良いでしょう。
選び方④:返済方法を確認する
ソーシャルレンディングの個別案件を精査する際は、借り手からの返済方法も確認しておきたい点です。
万が一、借り手が資金を途中で返済できなくなってしまった場合、「元利均等返済」による返済方法が、投資家(貸し手)にとって損失額が一番小さくなる返済方法です。
しかし、元利均等返済にて途中で元本の一部を返済する形態が適さない案件もあります。例えば、不動産案件で借り入れした資金を元に不動産の建設を行い、
販売後に回収した資金にて返済を考えているとします。
この案件では借り手にとって、返却原資を確保できるのは販売後の最終段階です。
よって、途中で一部を返すという形は収益が出ていない段階であり、
現実味がない事となります。
個別案件ごとに、このような借り手として借り入れた資金を返せない事情があるかチェックするといいでしょう。
ソーシャルレンディングの選び方:運営事業者
ソーシャルレンディングで投資案件を検討する上では、運営事業者の選び方も
重要です。
意識したいポイントは複数ありますが、大事な点としては完璧を求めすぎないことだと言って良いでしょう。
なぜなら、どの観点から見た際も完璧であるという答えを出せることはないからです。
常にネガティブな要素を把握しておき、起こりうるリスクへの対策を取っておくことが重要となります。
それでは、事業者の選び方を3つに分けて解説しましょう。
選び方①:運営年数
ソーシャルレンディング事業者を選ぶときは、運営事業者としての営業歴を確認することが重要です。
営業歴が長いということは、問題があっても乗り越えてきたり、それだけ多くの実績があるからこそ事業として継続できているということです。
逆に、営業歴が短い事業者には注意が必要です。
どの会社も立ち上げというタイミングはあるため、もちろんすべての会社が良くないというわけではありません。
しかし、不透明なリスクを負う必要はないということです。
投資額を抑えることや運営事業者の関連会社を精査すること(親会社の資本が
安心できる規模かどうかなど)が対策として挙げられます。
営業歴が長くなるまで投資はせずに、ひとまず見守ってみることも良いでしょう。
選び方②:貸付額・分配額の総量
ソーシャルレンディング運営事業者の貸付成約実績の総量や分配額も確認しておきたい重要なポイントです。
確かに、総量が大きいことは重要ですが、それ以上に「増加推移」をしっかりと確認しておくべきでしょう。
昨今、ソーシャルレンディング投資は勢いがあるため、競合会社が多くなってきています。
競合他社が多く出てきた中でも、しっかりと投資家(貸し手)から支持されており、成約実績がきちんと伸びているかどうかを確認することが大切なのです。
また、投資家から支持されるということは、それだけ魅力ある案件を保有していることだと考えられます。
これは、運営事業者が借り手の審査をしっかり行っていることにつながります。投資家(貸し手)に対して運営事業者側が防ぐ事ができるリスクを残していないという事です。
選び方③:貸し倒れ・遅延など注意事項
ソーシャルレンディングの事業者を選ぶ際は、貸し倒れ(デフォルト)や遅延など、起こしたことのある問題の内容をしっかりと確認しておきましょう。
問題が発生した際に、投資家に寄り添ってきちんと資金回収を行っているか、改善策はどのように講じたかが重要なポイントです。
遅延が発生したときは、運営会社の対応姿勢がよく反映されます。
たとえ回収ができたとしても、その間、しっかりと報告がなされていたのか、原因の開示など貸し手が納得できる形であったのかについて確認しておくと良いでしょう。
また、さらに踏み込んで考える場合、同種の事例が再び起こる可能性がないかどうかも考えておくべきです。
運営事業者が取る再発防止策がこれまでのものと比べて明確に違いがない場合、投資を見送るという考え方もありです。
遅延という内容以上に、ソーシャルレンディング事業者が取った対応策を見て、次回もし問題が発生した場合を想定してみると良いでしょう。
ソーシャルレンディングの選び方:借り手の事業
ソーシャルレンディングの投資案件の選び方としては、借り手の事業内容について確認しておくことも重要です。
貸し倒れ(デフォルト)といったような大きな損失を回避するために大切となるポイントです。
借り手の事業内容の確認は、ソーシャルレンディング投資に慣れてきたときに見落としがちとなるポイントです。
選ぶ際には少し細かい所まで慎重になるくらいの姿勢が良いでしょう。
それでは、借り手の事業内容の確認のポイントを2つお伝えしていきましょう。
ポイント①:借り手の分散
ソーシャルレンディングにて案件を調べていると、似た募集要項を目にする機会も多いものです。
これはどういうことかというと、同じ借り手企業が別案件で資金を募集しているケースなのです。
投資家(貸し手)としては、1つの借り手に資金が集中しないように意識することが大切です。
なぜなら、1つの借り手に集中投資をしてしまうと、分散投資を行ったつもりが案件をまたいでデフォルトを受ける可能性があるためです。
同じような募集案件は、同じ企業の可能性があると疑いの目で見てみることが大切です。
ポイント②:借り手の業種を分ける
ソーシャルレンディングで投資する際は、借り手の業種をわけることも重要です。
例えば、不動産案件で順調に投資成果をあげられたとしましょう。
この経験があると、次回以降の投資も不動産案件に固めて資金投入したくなるでしょう。
これは、ソーシャルレンディング投資において、利益を出し始めることができた方が陥りやすい問題です。
もしも、不動産業界全体が大きな影響を受けるようなことがあった場合、投資全体で影響を受けることになってしまいます。
そのため、投資先の業種は分散することが重要なのです。
しかし、実際の投資現場ではどうしても業種の分散ができないという
ケースもあるでしょう。そのような場合は、投資以外で所持している資金全体を
通して考えてみることが大切です。つまり、資金全体の中で業種の偏りがある
投資金額を比較して、全体比率で少なければバランスがとれたと
言えるでしょう。
ソーシャルレンディングでは分散投資が重要
ソーシャルレンディングで投資先を選ぶ際は、分散投資を意識することが重要です。
これは、個別の投資案件を分散投資すれば良いというわけではありません。
さらに広い視野をもって、投資できる金額以外の本業、副業からの収入源を含めたトータルでの利益で考えるべきなのです。
投資全体で見たときの位置づけ
保有資産の中に、株式投資やFXといったリスク商品が多い場合、ソーシャルレンディング投資をすることによって、リスク過多にならないよう調整することが必要です。
例えば、ソーシャルレンディング投資の割合が少ない為、これから増加を
考えているとします。しかし、現状は株式投資を手持ち資金の大半で
行っている状態であった場合どうでしょうか。
すでにリスクは多めに取っており、ソーシャルレンディング投資を
増やすにはこちらの株式投資の分量を調整する必要があります。
逆に、現金など安全資産が多い場合は今後のリスク許容度が高いと言えます。
リスク許容度が高いという事は、これまでお伝えしてきた個別案件やソーシャルレンディング運営事業者の選び方に関して、多少の不安材料があったとしても、他の方よりもリスクを取れる割合は多くなります。
さて、リスク商品が多めというのは一定の基準で判断できるものでしょうか。
これは、自分が今後、投資可能な時間によっても左右されます。
社会人になりたての20代の方と本業を引退間近の50代の方ではリスクを取れる
許容量は異なります。
投資可能年月が今後、長いほど後に挽回できるチャンスも多いため、
リスク商品を多めに組み込む事が可能と言えます。
収益源として見た際の分散
分散は、投資資金だけに限った話ではありません。
ご自身の収入全体で考えていく必要があります。
例えば、投資以外で収入が大きい方であれば、それだけリスクを取ることができます。なぜならば、リスク商品によって損失が出た場合でも追加資金を
投入する事ができます。しかし、投資以外の収入が少ない方は損失を出しても
追加投資ができない為、元本が目減りしてしまいます。
いわば、投資以外の収入というかたまりと投資商品に分散できていることになります。
リスクが分散されている状態であれば積極的な投資が可能なのです。
もしも、本業とソーシャルレンディングの投資対象が似た業種である場合は注意が必要です。
前提知識があるため似た業種を選びがちとなりますが、何か業界全体に不祥事など起こった際にはどちらも連動してマイナス要因となります。
共倒れを防ぐため、可能な限り、業種を分ける意識が大切となります。
まとめ
ソーシャルレンディングの選び方を、「個別投資案件」「運営事業者」「借り手の事業」に分けて解説しました。
個別投資案件の利回りなど、一部だけに注目してソーシャルレンディングの商品を選んでしまうのでは、リスクを見落とす原因となります。
運営事業者、借り手の事業、さらには貸し手自身の資金状況も考えた上で、投資の判断をしていく必要があるのです。
完璧を求めすぎることは良くありませんが、ひとつでも多くチェックできる項目を増やしておくと、ソーシャルレンディングの選び方の質を高めることができますよ。
ソーシャルレンディングのリスクについても併せて確認しておくことをおすすめします。