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行政処分を受けた「トラストレンディング」とは
2019年3月に行政処分を受けたソーシャルレンディング事業者「トラストレンディング」の評判が気になる人は多いと思います。
トラストレンディングは2015年にサービスを開始して以降、最高14%の高利回り案件や不定期に開催されるキャンペーンやセミナーで人気を集め、順調に貸付資金総額を増やしてきました。
しかし、2018年12月、トラストレンディングを運営するエーアイトラスト株式会社に業務停止命令を含む行政処分が、2019年3月には金融商品取引業の登録取り消しを含む2度目の行政処分が下されたのです。
過去に行政処分を受けたソーシャルレンディング事業者は他にもあります。
しかし、「登録取り消し」という極めて重い処分はソーシャルレンディング史上初でした。
多くの投資家は「トラストレンディングって、そんなに危ない事業者だったの?評判は悪くなかったはず」と大きな衝撃を受けたのではないでしょうか。
今まで順調に資金を集めてきたトラストレンディング。
一体何があったのでしょうか?
過去の評判や行政処分の内容について詳しく解説していきましょう。
トラストレンディングの過去の評判
トラストレンディングの過去の評判は、決して悪いものではありませんでした。
過去のトラストレンディングの評判をまとめると、次のようなものが挙げられます。
- 高利回りの案件が多い(最高14%)
- 最低投資額が高い(最低10万円)
- 公共施設内に設置する基地局の設置工事など、公共性の高い事業への融資案件が多い
- 利回りは高いが担保付き案件も多い
- 運営会社の役員には元財務省や元国土交通省など行政に強いパイプを持つ人が多く、信頼性が高い
利回りの高さから「ハイリスク」を感じさせるものの、
- 担保付き案件があったこと
- 行政との強いコネクションを感じさせる役員の経歴
- 投資事業に公共性の高さを感じさせる内容
などから、事業者としての信頼性は高いと思う投資家が多かったと思います。
そんなトラストレンディングがなぜ、どのような行政処分を受けたのか詳しく見ていきましょう!
トラストレンディングの行政処分
公共性の高い事業へ投資できると評判だったトラストレンディングですが、行政処分の内容を見ると「公共性の高さ」を売りにしているところがそもそも問題だったようです。
2018年12月:1度目の行政処分
2018年12月14日(金)、トラストレンディングを運営するエーアイトラスト株式会社に、関東財務局より1ヶ月間の業務停止命令を含む行政処分が下されました。
処分の内容を要約すると、次のような内容です。
公共性が高いと記載していたファンドの表示内容に、虚偽の表示があったため、業務停止命令および業務改善命令を受けた
以下、虚偽の表示があったファンドと虚偽の内容を簡単にまとめました。
- 「債権担保付ローンファンド(139号~146号、155号~158号)」
- 当初の募集内容:
原発事故被災地の水資源の安全向上を目的として実施される除染事業であり、非常に公益性の高い内容である”などの記載があり、官公庁のかかわりがあるようなスキームを表示していた
- 財務局の指摘と実態:
記載されている官公庁等が関与して行う除染事業は存在しなかった
- 「動産担保付ローンファンド(163号、165号~168号、170号~174号)」
- 当初の募集内容:
提携先の相手方企業は、2020年東京オリンピックのJOCゴールドパートナーとなっている大手企業である”などの記載があり、大手企業との業務提携を感じさせる表示をしていた
- 財務局の指摘と実態:
実際には当該大手企業との業務提携などの予定は存在しなかった
▼処分内容▼
「エーアイトラスト株式会社に対する行政処分について」(関東財務局)
あれだけ公共性の高さを売りにしていたのに、実は全くの虚偽だったというのは衝撃ですよね。
2019年3月:2度目の行政処分
次は、2度目の行政処分内容を見てみましょう。
1度目の行政処分を受けて業務を停止していたトラストレンディングですが、2019年3月8日(金)に関東財務局から2度目の行政処分が下されました。
処分の内容を要約すると、2018年2月の処分(公共性が高いと記載していたファンドの表示内容に、虚偽の表示があった)に加えて、
- 他のファンドでも虚偽の表示や誤解を生む表示があった(以下、追加で指摘があったファンド)
- 「債権担保付ローンファンド」および「Trust Lendingセレクトファンド」(105号~111号、113号~138号)
- 「Trust Lendingセレクトファンド(147号~154号)」
- 「燃料卸売事業者ローンファンド(193号~200号、203号、207号~210号)」
さらに、
- 資金の不正流用があった(少なくとも約15億8000万円が、当時の取締役山本幸雄の支配法人に流出していた)
ことがわかり、金融商品取引業の登録取り消しおよび業務改善命令という重い処分が下されることになったというわけです。
なんと、虚偽の表示に加えて多額の資金不正流用が発覚したのです!
公共性が高い事業のファンドと偽りの内容で募集をして多額の貸付金を集めただけでなく、取締役が15億8000万円もの資金を不正に流用していました。
この処分を受け、トラストレンディングを運営するエーアイトラスト株式会社は山本幸雄氏を取締役から解任したこと、今後の新規会員募集や新規ファンド募集を停止することを発表しました。
▼エーアイトラスト株式会社の発表▼
エーアイトラスト株式会社の発表を見ると、同社はあくまで山本氏に騙されたという被害者的な立場を取っています。
しかし、そもそもこんな悪質な詐欺を起こす人物をなぜ取締役にしていたのか疑問が残りますし、同社の管理態勢自体がずさんであったことは事実です。
同社の今後の対応や事件の概要について引き続き確認し、今後の業界や事業者選びについて深く考えることが大切です。
トラストレンディングの処分後の評判は?
サービス停止に至ったトラストレンディングですが、現在の評判はどうなっているのでしょうか?
投資家サイドから見た現在の評判をまとめてみました。
- 以前は中央官庁OBが多い経営陣をアピールしていた。(現在エーアイトラスト株式会社のHPから経営陣の名前は社長以外すべて削除されている)しかし、そのときも山本幸雄氏の名前は掲載されていなかった
⇒怪しい人物だと知っていて、意図的に隠していたのではないか
- 山本幸雄氏が取締役に就任したのは2018年10月だが、虚偽の表示があったファンドは2018年10月以前に募集があった
⇒取締役就任前から同社にかかわりがあったのではないか。公表されていた経営陣の情報にも虚偽があったのではないか
- 中央官庁出身者が多いこと、貸付実行後のモニタリング等の万全も態勢とアピールしていたが、実際は十分なモニタリングを行っていなかった
⇒同社が語っていたことはすべて嘘だったのか。信用できない
多くの投資家が抱く思いと同じく、筆者もこの事件には何かきな臭いものを感じていますし、事業者自体信用できません。
事件の時系列を見ていると、資金不正流用をした山本幸雄という中心人物が取締役に就任したのは2018年10月ですが、それよりももっと前からファンドの虚偽募集などがありました。
事業者の運営自体に問題があったことは明らかです。
「エーアイトラスト株式会社は被害者ではなく、山本幸雄氏のグルで元々壮大な詐欺事件を起こすつもりだったのではないか」と考える投資家もいるようですが、そう思う気持ちもわかります。
いずれにしても、エーアイトラスト株式会社の今までの管理態勢や行政処分後の対応に同情できる点は見当たらず、投資家の貸付金が無事返ってくるかどうか不安が大きく残ります。
今後この事件はどうなるのか、投資家の貸付金は返ってくるのか。
ソーシャルレンディング業界をゆるがす大規模な詐欺事件であるだけに、同社の対応や事件の今後について引き続き注視していかなければいけませんね。
まとめ
トラストレンディングの過去から現在の評判や、行政処分の内容について詳しくお伝えしてきました。
今回トラストレンディングが起こした
- 資金の不正流用
- 虚偽のファンド募集
といった悪質な詐欺事件は、ソーシャルレンディング事業者選びの重要性を改めて考えるきっかけになったのではないでしょうか。
この事件で被害を受けた投資家も、受けていない投資家も、トラストレンディングの今後を注視するとともに、より事業者選びについて深く考えなおすことが大切です!