高利回りで、1万円からでも投資ができるソーシャルレンディングは、いま注目を集めており、今後も人気の上昇が見込まれています。
借り手側は、銀行から融資が受けられなくとも、ソーシャルレンディングによって事業を展開することができます。
その半面で、ソーシャルレンディングの制度的な性質上において、投資家(貸し手側)に対して貸し倒れ(デフォルト)というリスクの可能性もあることが指摘されています。
高い利益ばかりに目がいってしまいがちですが、リスクを回避するという視点を持ち、よくリスクについて考えることが健全な投資には必要です。
世界のソーシャルレンディング市場は、今後も成長が大きく続くとみられています。
小規模企業などの小口融資や、学資ローンなどの教育分野にどう進出していくかが、ソーシャルレンディングのビジネスの方向性として課題があります。
日本においても、同様なことが言えますが、リスクの局面から考えれば、まずは、貸し倒れ(デフォルト)のリスクについてよく知ることから始めるべきです。
目次
ソーシャルレンディングは高利回りの反面大きな損失の可能性がある
ソーシャルレンディングにおいて「貸し倒れ」(デフォルト)のリスクは、投資家に大きく降りかかってきます。
貸し倒れのリスクは会社の信用につながる
借り手に利息支払いの遅延や延滞が起こり、ソーシャルレンディング事業者による債権の回収が難しい状態になると、債権回収会社に債権額の数パーセントを支払って売却すると、貸し倒れの状態になってしまいます。
このような状態に陥らないように、投資家はリスクヘッジすることが求められます。
債権回収会社に債権がわたってしまうことで、元本割れとなるからです。
仲介するソーシャルレンディングの事業者にとって、貸し倒れのリスクは信用の有無に関わりますが、金銭的な被害はほとんどありません。
投資家から資金を募ることで事業が成り立っているため、信用の有無がソーシャルレンディング会社にとっては重要な課題になります。
「事業者リスク」として債権回収能力を確認すべき
この遅延や延滞から債権の回収は、ソーシャルレンディング事業者の業務の範囲です。
そのため、自分が信頼できるソーシャルレンディング事業者を見つけ出すことが一番のリスクヘッジになります。
これが「事業者リスク」と呼ばれるもので、この事業者リスクを回避するように考える必要があります。
貸し倒れや延滞が起こることとは別に、資金の借り入れ理由となる「事業の悪化」がどれだけ進んでいるかを把握していないと、最悪の場合は担保分だけしか元本を回収できないことになりかねません。
そのため、ソーシャルレンディング会社が借り手のモニタリングをしている場合もあります。
SBIソーシャルレンディングの貸し倒れ防止事例
SBIソーシャルレンディングは、貸し倒れが発生しそうな案件について、素早く回収に動いています。
ただし、その場合は投資家の側からすると事業の回復を待ち、しっかりとした利回りを実現することはできなくなるわけです。
そして、素早く回収に動くことは賢明な方策ではあるのですが、投資家に対して報告がないと、延滞の状況がわからないことも事実です。
遅延発生の際に一括回収して損失を抑止した事例
具体的な実例として、SBIソーシャルレンディングにおけるSBISL不動産バイヤーズローンファンド16号から22号の7つのファンドのうち、一部の借り手により利息の支払いに遅延が起こったことがあります。
その案件では、債権の回収などの対処がなされています。
この7つのファンドは、募集時期2017年9月から2018年4月ごろの期間にそれぞれ時期を別にして開始しています。
期間はすべて約12ヶ月で、利回りが6.5パーセントとなっています。
これらの案件において遅延が発生した際、SBIソーシャルレンディングは遅延している借り手に対して、利息の支払いが滞った段階で貸付債権の一括回収に踏み切りました。
利息の支払いが遅延した段階で全ての債権回収に動き担保から債権を回収するため、貸し倒れが起こらない可能性を高くできるわけです。
そして、SBIソーシャルレンディングは借り手との交渉も早く済ませ、担保の競売に向けて動くなど、素早い回収に向けた取り組みを見せました。
さらに、競売結果の金額と売却による回収金が届く日程の予測までしっかりと報告しているところがSBIソーシャルレンディングの信用性にもつながっているのです。
投資家にとっても、企業の運営としても、健全な活動方針であると言えます。
ただ、債権の最大の回収を図ることに尽力している方針であることは確かですが、投資案件としてはストップしてしまいます。
遅延した案件で元本返済を実現している
SBIソーシャルレンディングでは、SBISL不動産バイヤーズローンファンド17、18号の2案件において債権を回収することにより元本の返済を実現し、「損失なし」という遅延の対処として理想的な結果となっています。
利息の支払いの遅延の発生の際に、素早く債権の回収に動いたSBIソーシャルレンディングの対応は健全です。
回収状況を逐次報告している点でも、情報を一般公開しているという点で客観的で公正な対処をしていることが分ります。
また、SBIソーシャルレンディングでは、この事例のようにファンドの設定において健全化の改善策が取られており、現時点において遅延の発生をほとんど起こしていません。
この健全化の改善策では、担保の審査・評価における厳格化と、借り手のモニタリングの強化などを実施しています。
ソーシャルレンディングでは貸し倒れに対してどう動くのかがポイント
ファンドの延滞・遅延に対して、ソーシャルレンディング事業者の回収においては、次の点が重要なポイントです。
- 対処の早さ(利息の支払いの遅延で回収をスタートしている)
- 対応の公開性(段階的なもの、具体的な行動の範囲の公開)
- 最大限に迅速に回収に努めている姿勢(利息の支払いの遅延で債権の一括回収に動く)
SBIソーシャルレンディングは、このような健全性も重視しています。
投資の際にリスクの回避を最大限に考えるときには、このような点で回収情報や運用実績を良く見ていくことが必要です。
投資の前にファンドをよく確認する
リスクの回避の策としては、担保がどのようなものかについて知ることも重要です。
ソーシャルレンディングの制度的な性質上において、借り手の側の情報については匿名化されています。
そのため、事業の運営状況については、あきらかになりません。
投資家の立場でわかることは、利息支払いの遅延や延滞の部分と担保や保証の部分です。
貸し倒れ・延滞などの実例からのデフォルト回避の方策を解説
例えば、不動産担保の場合、具体的にその物件がどこに所在しているかについてはわかりません。
現在は、借り手の側の情報の匿名性を取り除き、借り手の側が具体的にどんな事業なのか、または担保はどういうものなのかについて、明確にしようとする金融庁の動きがあります。
当面において、現状のままで匿名化されたままでしょう。
【2019年3月20日更新】
担保がどうなっているのか把握する
担保には、不動産において
- 抵当権
- 根抵当権
- 質権
などがあります。
また、不動産以外の担保には、
- 売掛債権
- 株式
があります。
そして、抵当権には、
- 第一抵当権
- 第二抵当権
などがあります。
第一抵当権は、担保となる不動産の売却において、第一番目に債権の回収が可能な権利です。
第二抵当権は、第一抵当権の債権者が回収した後に、第二番目に債権の回収を行うことができるという権利です。
シニアローン、メザニンローンとは
ソーシャルレンディングのファンド情報に表記される時には、シニアローンや、メザニンローンと表記されていることもあります。
シニアローンの場合には、抵当権が優先的なものであることになります。
メザニンローンの場合には、第二抵当権以下のものであることになります。
ファンドによっては、シニアローンとメザニンローンの組み合わせでできているものなどもあります。
質権の担保設定の仕組みとは
担保において、質権とは、質権の対象物を占有したり、返済が滞ることで、売却することができます。
ソーシャルレンディングの場合には、ソーシャルレンディング事業者と借り手の間で仲介的な役割をする貸付事業者が借り手から担保が抵当権として含まれている「抵当権付き貸付債権」を持っており、この「抵当権付き貸付債権」に対して、ソーシャルレンディング事業者が質権を設定していることがあります。
この質権がソーシャルレンディングのファンド情報に掲載されていることが現時点では多いです。
いずれにせよ、これらの担保の条件を見て、リスクヘッジに配慮して、ファンドの選択をすることになります。
担保で重要な評価額について確認する
担保には、もう一点の重要な要素があります。
それは、評価額です。一般的には、社会情勢の変化に配慮して担保設定を行うことが標準となっており、貸付金額の120%の評価額が望ましいことになっています。
顧客生涯価値と言う意味で使用されているLTV(Life Time Value)という指標を使うことがあり、担保評価額が100%とすると貸付金額は、80%が望ましいことになります。
この基準値で考えることが、常識的なことになります。
もちろん、この担保評価額がどれくらいなのかについて、知ることができる範囲で、知っておくことが望ましいです。
ラッキーバンクは、昨年3月にこの担保の評価において、行政処分が関東財務局より出ています。その後にラッキーバンクでは、改善がなされています。
保証付き案件とは
この担保の他には、保証がついているファンドがあります。
保証については、各事業者のホームページや約款などで確認することをおすすめします。
一般的に連帯保証となりますが、保証する側が多くの保証を行っている場合、多くの貸し倒れが起こったときにどこまで保証されるかがわらないことになります。
保証には、
- 親会社の保証付き案件
- 代表者連帯保証付きの案件
- 第三者の保証付き案件
などがあります。
ソーシャルレンディング事業者には、「第二種金融商品取引業」の資格が必要です。
経営者サイドには、業務を適切に遂行するために必要となるコンプライアンス及びリスク管理に関する十分な知識と経験を有することが条件になっています。
海外案件でのソーシャルレンディングにおけるリスク
ソーシャルレンディングにおいては、海外の案件や事業の特殊性などの貸し出しの対象となる事業の性質などから、リスクが生じる可能性に対しても配慮して、事前にどのようなリスクの可能性があるのか知っておくことが必要です。
海外では、為替の変動や政治経済の情勢の変化で事業が停滞してしまったり、中止のおそれまでも考えられます。
不動産担保があっても、地価の暴落などが日本以上に可能性の高い地域も考えられます。
海外においては、不動産担保の評価額が適正かと言うことについても、日本国内以上に懸念されるところがあります。
また、海外の国と日本との制度的な違いにより、問題が生じる可能性も配慮しておくことになります。
このような不安定性の要素を払しょくするだけの根拠は、当該のファンド情報などから入手するしかありません。
ただ、類似案件の運用実績などから投資することもひとつの方法です。
ここでは、あくまでリスクヘッジについて言及しています。
海外の案件では、発展途上国での社会的インパクト投資と呼ばれるようなマイクロファイナンスもあります。
このようなものも、社会の情勢によっては不安定要素が発生するかもしれません。
しかし、発展途上国の飛躍的な成長が追い風となるかもしれません。
リスクの把握しておくことが必要です。
ソーシャルレンディングで過去に貸し倒れがない会社
ソーシャルレンディングの事業者の中には、今までに貸し倒れがないところもあります。
それは、次の大手4社です。
SBIソーシャルレンディングは、過去に個人向けローンファンドの時代に貸し倒れがありましたが、事業性ローンファンドに切り替えてからは一度もありません。
ただし、遅延に関しては大手4社のいずれにおいても発生しています。
まとめ
ソーシャルレンディングの貸し倒れとその他のリスクについて解説しました。
今まで見てきたようにリスクには、
- カントリーリスク
- 事業者リスク
- ファンドリスク
などがあります。
担保や保証から、事業者におけるファンド設定基準や回収方針、海外案件における当該国の情勢などまでが、ファクターとして複雑に絡み合ってくることもあります。
投資家としてリスク回避を最大化するのか、利回りを優先するのかということに対して、どうバランスを取るのかについてよく考えていくことが必要です。
今まで見てきたリスクを鑑みると、長期の案件との比較して、短期案件に安全性の高さがあると考えられます。
また、分散型の投資方法も安全性を高めることができるでしょう。
ソーシャルレンディングにおいて、投資家は銀行の融資のように直接的に貸し付けをしている側面があります。
この点から、貸し倒れ率を見てみると、
- 住宅ローン:0.2パーセントから0.4パーセント
- 銀行の法人向け融資:2.0パーセントから3.0パーセント
- 消費者金融:5.0パーセントから10.0パーセント
ほどが一般的だと言われています。
借り手側からすると銀行融資が受けられないことを理由としてソーシャルレンディングでの借り入れを選択することが多いため、ソーシャルレンディング事業者の審査の厳格化が必要になってきます。
このような全体像のなかで、知りうる範囲でさまざまな観点からよく確認して、ファンドの案件に投資することが必要です。