訴訟を起こされたガイアファンディング
大規模な遅延を発生させているガイアファンディングが、ついに運営元であるmaneo(マネオ)に訴訟を起こされました。
manaoといえばソーシャルレンディング最大手の事業者で、プラットフォーム貸し出し事業により多くの事業者(営業者)の運営元になっています。
そんなmaneoの傘下であったガイアファンディングと、ガイアファンディングの代表であるケルビン・チウ氏がmaneoから訴えられた内容は「貸付金全額の返還」で、請求額は約22億円です。
訴訟の口頭弁論は2019年5月に予定されているため、まだどうなるかわかりません。
しかし、この訴訟で貸付金額が返済されたら、ガイアファンディングの遅延状況も少しは前進するかもしれません。
ただ、気になるのがそもそもガイアファンディングの遅延状況はどうなっているのかという点でしょう。
遅延の状況やガイアファンディング社の概要などを改めてまとめました。
ガイアファンディングとは
ガイアファンディングの遅延状況をお伝えする前に、まずどのような事業者なのかを説明しましょう。
ガイアファンディングとは、maneo(マネオ)のプラットフォームを利用してソーシャルレンディング事業を行っていた事業者のひとつです。
いわゆる、「maneoファミリー」です。
ガイアファンディングの案件の特徴としては、次の3点を挙げることができます。
- アメリカの不動産投資案件がメイン
- ほぼすべての案件に担保と為替ヘッジが付いている
- 平均9パーセント前後と比較的高い利回り
ソーシャルレンディングで不動産投資案件といえば、国内のものがほとんどです。
そのため、
- アメリカの不動産投資ができる ⇒ 分散投資の幅が広がる
- 担保や為替ヘッジ付き ⇒ 気になるリスクにも対応
という点に、多くのソーシャルレンディング投資家が魅力を感じていたことでしょう。
その結果、2015年に同社がサービスを開始してからわずか数年で、ローン総額約93億円もの資金を集めることに成功したのです。
こうして順調に資金を集めていたガイアファンディングでしたが、2018年9月に2億円超の遅延が発生しました。
以後、次々に遅延が発覚し、遅延総額は約42億円にまで膨らみました。
そして、2018年12月には今後の新規営業・募集活動を停止し、2019年3月にmaneo(マネオ)が訴訟を起こしたことが発表されたのです。
ガイアファンディングの遅延概要
訴訟を起こされたガイアファンディングですが、そもそもなぜ遅延が発生したのでしょうか?
今までは順調に返済することができていたのに、2018年9月以降バタバタと数多くのファンドで返済が滞った理由はなぜなのでしょうか?
ガイアファンディングの遅延の経緯、そして遅延の理由などを詳しく解説していきましょう。
遅延の経緯
まず、ガイアファンディングの遅延に至るまでのヒストリーを整理してみましょう。
- 2015年10月:ガイアファンディングがサービスを開始
- 2016年6月:ユーザー数1000人、ローン総額10億円突破
- 2017年12月:ローン総額50億円突破
- 2018年9月:複数のテキサススターローンファンドで遅延発生(約2.7億円)。遅延理由はガイア社より「ハリケーンハービーの影響」と説明あり
- 2018年11月:maneoのガイアFセレクトファンド(1.1億円)で遅延発生。遅延理由はmaneo社より「開発取得許可の遅れ」などと説明あり
- 2018年11月22日:3周年記念ローンファンド11号~13を除く全ファンド138本(約42億円)の遅延発表。大規模な遅延理由として「関連会社から元本・利息ともに支払いがなく、その理由もはっきりしないがプロジェクトは進行中」とmaneo社より説明あり
- 2018年12月:ガイアファンディングによる今後の新規営業・募集停止が発表される
- 2019年3月:maneo社がガイア社と代表のケルビン・チウ氏を提訴したと発表あり
遅延発覚から約半年で訴訟にまで発展し急展開を見せていますが、2019年4月現在、遅延状況は改善されていません。
遅延の理由
ほぼ全件のファンドが遅延になった理由について、maneo(マネオ)は当初、次のような説明をしていました。
2018年11月時点の説明
- ガイア社の関連会社から利息の支払いがない
- ガイア社は最終貸付先までに3社の関連会社を経由するスキームを取っており、そもそもどの会社で利息の遅延が滞留しているのかわからないので確認中
- プロジェクト自体は進行している
出典:「【延滞発生に関するご報告】 2018年11月19日運用終了予定案件および全ファンドの利息」
つまり、「利息の支払いがなくて遅延が起きたけど、関連会社が複数関わっていてどこで遅延しているのかはっきりしないので調査します」という内容です。
理由がはっきりしないってどうなんでしょうか?
投資家にとってはただ調査を待つしかなく、辛い説明ですよね。
そこから調査を重ねたmaneo(マネオ)は、2018年12月に改めて遅延の理由を述べています。
2018年12月時点の説明
- 利息の支払方法について、ガイア社とmaneoの間で認識の食い違いがあった(以下2点)
- ガイア社は今まで、ほぼすべての案件の利息支払いを米国関連会社の米国事業の収益から毎月行ってきたが、資金繰りが悪化して支払えなくなった
- ∟最終貸付先からの利息支払いは毎月ではなくプロジェクト完了後に行われる
- すべてのプロジェクトに実態があることが確認できており、各プロジェクトは進行中
- maneo(マネオ)としては、資金の早期回収措置として最終貸付先と協議のうえ担保不動産の売却を進めたい(ただmaneoは売却の権利を持っていないので、協議が必要)
出典:「ガイアファンディングの延滞案件に関する経過報告と今後の対応について」
「今まで、順調に利息の支払いがあったのは関連会社の別事業収益があったからで、別事業の資金繰りが悪化したからもう支払えない」というガイア社の主張に対し、maneo(マネオ)は「そんな利息の支払方法聞いてないよ!」と言っています。
ガイア社とmaneoの連携がいかに取れていないのか、maneoがガイア社の事業実態をどれだけ把握していなかったのかがよくわかる説明となっています。
投資家からしたら「もうそんなこと知らない、早く資金返して」という感じではないでしょうか。
ガイアファンディングの遅延は、そもそも利息の支払方法がおかしいことが一番の問題です。
しかし、こうした事業実態を把握していなかったmaneoにも管理上の責任がありますよね。
maneo(マネオ)ファミリーは多くの遅延を起こしている
maneoファミリーは、ガイアファンディング以外にも数多くの事業者で遅延を発生させており、本体のmaneoと合わせた遅延総額は約300億円にもなります。
maneoとしては、汚名返上のために資金回収を急ぎたいところですが、担保不動産の売却権利を持っているわけではないので時間もかかります。
そこで、強硬手段として今回訴訟を起こすことで投資家の信頼回復をはかったのではないかと考えられます。
まとめ
訴訟を起こされたガイアファンディングの遅延状況や経緯を振り返ってきました。
ポイントをまとめると、
- ガイアファンディングの遅延総額は約42億円
- 遅延の理由は、利息の支払方法に問題があったこと
→ガイア社は米国の別事業による収益を投資家への利息支払いに充てていた
→プロジェクトは進行中で、完了するまで最終貸付先から利息の支払いがない
- maneoは利息の支払方法などの実態を把握していなかった
- 遅延発覚(2018年9月)後もmaneoとガイア社の協議継続中で、返済状況に進展なし
- 2019年3月にmaneo(マネオ)が訴訟を起こすも、初回弁論は19年5月。投資家への返済には時間がかかりそう
改めて振り返ると、maneoとガイアファンディングの連携の悪さがよくわかりました。
maneoは他のmaneoファミリーでも大規模な遅延を発生させていますので、こうなるとmaneoのプラットフォームの貸し出し事業そのものに対する懸念が強くなっていくばかりです。
ガイアファンディングを含め、今後もmaneoファミリーの遅延状況を注視し、ソーシャルレンディング事業者のありかたについて考えることが大切です!