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遅延が止まらないキャッシュフローファイナンス
2018年に発生したキャッシュフローファイナンスの遅延が止まりそうにありません!
2019年4月4日(木)には、公式サイトで新たな遅延発生のお知らせがあり、
- 遅延総額:7億2293万7031円
まで膨れ上がっています。
キャッシュフローファイナンスは、ソーシャルレンディング最大手の会社であるmaneo(マネオ)のプラットフォームを利用してサービスを展開するmaneoファミリーの事業者です。
不動産に特化した案件からコインランドリーなど独自の案件まで取り扱っていること
- 利回りが比較的高いこと
- から、2017年に事業を開始後、順調に資金を集めていました。
しかし、2018年10月に約2億4000万円の遅延が発生し、それ以降状況は改善するどころか悪化しています。
では、なぜこのような事態に陥ってしまったのでしょうか?
キャッシュフローファイナンスの遅延状況と、今後について考えていきましょう。
2018年10月から2019年4月までのキャッシュフローファイナンスの遅延状況
2018年10月にキャッシュフローファイナンスの遅延が発生してから、今までの状況をまとめました。
2018年10月:テクノロジーファンド(複数号)
※一部担保(株式質権設定)、保証(第三者保証)あり
2018年10月:ECOファンド(複数号)
※一部担保(株式質権設定)、保証(第三者保証)あり
2018年11月:体験型エンターテインメント施設ファンド(複数号)
※一部担保(株式質権設定)あり
2018年12月:すべての募集中案件がキャンセル
以後、新規案件の募集停止中
2018年11月:飲食店の設備賃貸事業向けファンド(複数号)
出典:「延滞発生に関するご連絡(V社)」
※一部担保(株式質権設定)あり
2019年1月:「【期失ローンについて】(事業者AH社)」
- 東京都葛飾区 不動産ローンファンド(複数号)(一部担保(株式質権設定)、保証(第三者保証)あり)
- 千葉県我孫子市 不動産ローンファンド(複数号)(※一部担保(株式質権設定)あり)
- 《燃費改善》テクノロジーファンド(複数号)(※一部担保(株式質権設定)あり)
- 《インバウンド支援》テクノロジーファンド(複数号)(※一部担保(株式質権設定)あり)
2019年2月:「延滞発生に関するご連絡(事業者AH社)」
- 《感染予防技術向け》テクノロジーファンド (複数号)(※一部担保(株式質権設定)あり)
- 【事業者AH社向け】コインランドリー設備への投資(複数号)(※一部担保(株式質権設定)、保証(第三者保証)あり)
2019年3月:「延滞発生に関するご連絡(事業者AH社)」あり
- 《燃費改善》テクノロジーファンド(複数号)(※一部担保(株式質権設定)あり)
- 《感染予防技術向け》テクノロジーファンド (複数号)(※一部担保(株式質権設定)あり)
- 《インバウンド支援》テクノロジーファンド(複数号)(※一部担保(株式質権設定)あり)
- 《静岡・三島市》設備賃貸事業向けファンド(※担保、保証なし)
2019年4月:「延滞発生に関するご連絡(事業者AH社)」あり
- 《インバウンド支援》テクノロジーファンド(複数号)(※一部担保(株式質権設定)あり)
- 《東京・環七沿線》設備賃貸事業向けファンド(複数号)(※担保、保証なし)
- 《障害者就労支援》テクノロジーファンド(10号)(※一部担保(株式質権設定)あり)
延滞発生理由
2018年10月に遅延が発生してからというもの、立て続けに複数の案件・ファンドで遅延が発生しています。
ただ、遅延発生の理由が遅延発生時期により異なります。
2018年10月から2018年11月に発生した案件の遅延理由は、おもに
販売代理店からの施工代金の入金遅れや借り手企業の支払い賃料が延滞した状況などが要因
とされていました。
しかし、2019年1月以降に発生した案件のお知らせでは、
2018年12月に親元のmaneoと協議のうえ、新規案件の募集を停止したこと
が遅延の理由に挙げられています。
2018年度の遅延理由に明確な説明がなくわかりにくいのも問題ですが、2019年以降の遅延理由に「新規募集の停止」があるのも気になるところです。
これから詳しく説明していきますね。
キャッシュフローファイナンスの新規案件の募集停止
2018年10月にキャッシュフローファイナンスで遅延が発生した後、2018年12月にはすべての案件がキャンセルされ、以降キャッシュフローファイナンスでは新規案件の募集が停止されました。
そして、2019年以降に発生した遅延理由に、この「新規案件の募集停止」が挙げられています。
詳しくは、公式サイト上のお知らせにて報告されているので見てみましょう。
新規案件の募集停止
▼キャッシュフローファイナンスとmaneoのお知らせ文抜粋▼
延滞の理由ならびに今後の見通しについて、次のとおりご説明申し上げます。
【経過】
Cash Flow Finance(CFF社)はmaneoマーケット社にファンドの募集委託をいたしております。ご案内のとおり、maneoマーケット社は、2018年7月13日に関東財務局より業務改善命令を受けました。
これを踏まえ、maneoマーケット社は、業務運営態勢や内部管理態勢の見直しを行うとともに、営業者の選定・管理のための社内規定の策定に取り組んで参りました。この度、上記社内規定を策定し運用を開始いたしました。
maneoマーケット社は、営業者選定基準の骨子のうち、
『投資家保護の視点をもって、適切なリスク分析能力、内部のチェック・牽制体制等を構築していること』に関し、CFF社の貸付先が同社の子会社であることを踏まえた態勢強化についてCFF社と協議しました。
この間の協議及び対応として、maneoマーケット社とCFF社とは、
本件協議を踏まえた対応が完了するまでの間は新規のファンド募集を一時的に休止することに合意し、当該合意に基づき借換ファンドの募集を見合わせたため、本件の元金の延滞が発生しました。
今後、maneoマーケット社とCFF社は、投資家の皆様への償還・分配の早期実現に向けて協力して対応していくことで合致しております。
わかりやすく言えば、キャッシュフローファイナンスの運営元であるmaneo(マネオ)が2018年7月に行政処分を受け、maneoは各maneoファミリーの管理と選定を徹底して態勢強化をしていかなければいけなくなった(つまり締め付けを強化)
↓
maneoはキャッシュフローファイナンスの貸付先が同社の子会社であることを理由に同社の新規ファンドの募集を停止した
↓
新規ファンドの募集停止に伴い、資金の返済のためのリファイナンス(借り換えファンドの募集)もできなくなった
※リファイナンスとは、円滑な資金返済のために別のファンドを立てて、資金を再調達すること
↓
2018年の遅延に対するリファイナンスができなくなり、2019年以降続々と遅延が発生
という流れです。
maneoとしては、行政処分を受けた手前、各事業者への管理態勢を徹底する姿勢を見せなければいけません。
しかし、そうして管理を厳しくして締め付けを強化した結果、キャッシュフローファイナンスを含む多くのmaneoファミリーで遅延が発生することになってしまったのです。
▼maneoファミリーの遅延についてはこちらの記事をご覧ください▼
担保・保証に頼らざるを得ない状況
遅延発生の原因として、借り手企業であるキャッシュフローファイナンスの子会社の経営力に問題があったことは確かでしょう。
しかし、元々maneoが各ファミリーの営業や管理態勢について厳しく徹底していれば、こうした事態は起きていなかったとも言えますし、運営元のmaneoにも責任の一端があるのではないでしょうか。
いずれにせよ、新規募集ができない以上、早期の資金回収を目指すには設定されている担保や保証に頼らざるを得ない厳しい状況です。
担保や保証の設定状況についても見ていきましょう。
気になるキャッシュフローファイナンスの遅延案件の保全性
キャッシュフローファイナンスの遅延案件・ファンドを見ていると、担保や保証の設定が弱く、保全性が低いということに気付きます。
ソーシャルレンディングでは担保や保証の設定がない案件・ファンドもあるため、「担保や保証付きファンドがあるなら、まだ資金回収の希望が持てるのでは?」と思うかもしれません。
しかし、担保や保証はただ付いていれば良い、というものではなく、中身が重要なのです。
キャッシュフローファイナンスでは、ほとんどのファンドに
- 担保→「株式質権設定」
- 保証→「第三者保証」
が設定されています。
株式質権設定
「株式質権設定」とは、借り手企業株の株式を換金できる権利です。
遅延中案件のほとんどは事業者AH社(キャッシュフローファイナンスの子会社)のものですが、遅延を多く発生させている企業の株式にどれほどの資産価値があるでしょうか?
第三者保証
「第三者保証」とは、借り手企業の代わりに資金の返済する義務を第三者が負うことです。
遅延案件の第三者保証は「借り手企業AHの財務・不動産コンサルティングを担当するAL社」が負うことになっていますが、財務状況や健全性もわからない匿名の会社の第三者保証なんてあてになりませんよね。
キャッシュフローファイナンスの担保・保証の価値は高くない
保全性が高い案件とは、「流通性の高い都市部の不動産担保」が設定されていたり、LCレンディングのファンドのように「親会社(上場企業)の保障付き」だったり、「万一の際に資産価値や保証力が期待できるかどうか」が重要なのです。
キャッシュフローファイナンスの担保や保証に期待できる価値はほとんどなく、保全性の低さが目につきます。
新規募集ができないうえに保全性が低いとなると、資金回収の可能性がかなり低くなるということです。
キャッシュフローファイナンスの今後
キャッシュフローファイナンスの遅延は今後どうなるのでしょうか?
これはあくまで筆者の個人的な予想ですが、遅延状況の改善は非常に難しいと思います。
つまり、元本割れは避けられないでしょう。
何故かというと、先にお伝えした
- 新規案件の募集停止→リファイナンスできない
- 担保や保証が弱い→保全性が低い
という点に加えて、
- キャッシュフローファイナンスという企業自体の財務状況に不安がある
からです。
▼2017年9月期の財務状況▼
貸借対照表(B/S)
・2017年9月期のキャッシュフローファイナンスの貸借対照表
損益計算書(P/L)
・2017年9月期のキャッシュフローファイナンスの損益計算書
これらの財務情報を見ると、約3,200万円も債務超過しています。
2017年9月期以外の決算が公開されていない
これだけ見ても企業体力がないことがわかりますが、さらに気になるのは2017年9月時点の財務情報しか公開されていない点です。
まともな事業者なら、たとえ遅延が発生しても財務情報の公開を続けているはずですし、財務状況が良ければなおさら公開するほうが有利です。
しかし、現実には1期分しか公開されていません(しかもその1期分が債務超過)。
今後の事業継続を諦めているのか、財務状況がさらに悪化していて公開できないのかわかりませんが、このような対応を見るとどうしても将来性を期待することはできません。
まとめ
キャッシュフローファイナンスの遅延状況から今後の展望までお伝えしてきました。
改めて内容をまとめると、
- 2019年4月時点で遅延総額は約7.2億円
- 遅延の理由はさまざまだが、2019年1月以降の大きな遅延理由は新規案件の募集停止にある
- キャッシュフローファイナンスの遅延案件は保全性が低く、財政状況も悪いため、元本割れになる可能性が高い
という点がポイントになってくると思います。
キャッシュフローファイナンスの遅延状況を見ていると、財務状況や保全性の高さは事業者選びで重要なポイントになるということがわかります。
繰り返しますが、担保や保証はあれば良いというものではなく中身が大切ですし、企業体力を示す財務状況の確認は必要不可欠です。
キャッシュフローファイナンスが今後どうなるかはまだわかりません。
ただ、今回の遅延状況をふまえて、改めてソーシャルレンディングの事業者選びについて考えてみてみることをおすすめします。