世の中の投資には、株式や為替(FX)などさまざまな種類がありますが、ソーシャルレンディングは比較的新しい投資です。
そのため、まだあまり詳しくない人も多いのではないでしょうか?
今回は、他の投資と比較したソーシャルレンディングのメリットやデメリットをはじめ、実際のリターンやコストなどをお伝えします。
目次
投資には4つの市場がある
ソーシャルレンディングと他の投資を比較していくにあたり、ソーシャルレンディングの仕組みと他の投資の仕組みを理解しておきましょう。
ソーシャルレンディングのほか、投資には主に4つの市場があると言われています。
ソーシャルレンディングとは
ソーシャルレンディングとは、「お金を借りたい人」と「お金を貸したい人」をインターネットを通じて結びつける仲介サービスのことを意味します。
そして、「お金を貸した人」は運営会社(仲介業者)経由で借り手から利息を受け取ることができます。
また、お金の貸付期間終了と同時に貸し付けていた元本がそのまま返済されます。
しかし、一度貸し付けると貸付期間終了までその元本を取り戻す術はありません。
インターネットでお金を貸したい人を募っているため、クラウドファンディングの1種とされています。
①債券市場
債券市場には、ソーシャルレンディング同様、お金を借りたい人とお金を貸したい人が存在します。
「いくらお金を借ります/貸します」といった情報や「何パーセントの利息を支払います/受け取ります」といった情報が書かれているもの(有価証券)、延いてはその契約そのものを「債券」と言い、「お金を借してください」と言っているのが国であれば「国債」、企業であれば「社債」と表現します。
お金を貸した人は利息を受け取る権利があり、将来的には貸した金額がそのまま返ってきます。
何もしなくても貸した金額が返ってくるタイミングのことを「満期」と表現します。
しかし、満期まで待たなくても十分に利息を受け取ったと思うのであれば、途中で売却して貸していたお金を返してもらうことができます。
つまり、借金を「売買」できるのが債券市場であり、ここがソーシャルレンディングとの大きな違いです。
なお、債券市場(特に社債)とソーシャルレンディングの違いの詳細については後述します。
②株式市場
株式市場において、私たち投資家は事業資金を得たい企業が発行した「株式」を購入することにより「株主」になります。
株主は、株式の保有数に応じた配当金を受け取ったり、その企業の商品割引券やお米などが送られてくるといった株主優待の特典を受けることができます。
債券市場やソーシャルレンディングとは異なり、株式を購入したときの金額を返してくれるわけではありません。
そのため、心から応援できる企業や成長性・将来性をしっかりと見極めて、より慎重に銘柄(投資先企業)を考える必要があります。
また、購入した株式は売却することもできます。
その企業が購入時よりも成長していたり、景気が良かったりという理由で株価が値上がりしていれば、売却することで儲けることができます。
逆に、不祥事が起こったときや景気全体が落ち込んでいるタイミングで売却してしまうと損をする可能性があります。
③商品市場
商品市場は、コモディティ市場と呼ばれることもあります。
ソーシャルレンディングや株式市場のような金融商品ではなく、金やプラチナ、大豆、小麦、原油といった「モノ」の売買によって儲けようとする投資が商品市場です。
取引次第では、実際に手で触れられる状態にすることも可能ですが、一般的には「いま、あなたの金の口座には250グラムの金があります」といったように、実物の金を目にすることも手にすることもないまま売買取引を行い、口座内の金のグラム数を増減させることになります。
インターネットバンキングで取引する際に現金を見ることがないのと近いイメージです。
④為替市場
仮に、昨日の為替が「1ドル=100円」で、今日の為替が「1ドル=105円」だったとしましょう。
昨日のうちに100円を持って銀行へ行き1ドルに交換してもらい、今日その1ドルを持って銀行に行き、105円に交換してもらえば5円得するといったように、各国の通貨を売買(交換)する市場です(実際に売買するときには所定の手数料が発生します)。
実際の通貨の売買だけにとどまらず、外貨建ての商品(外貨預金、外国投信、外貨建て保険など)を保有するのであれば、ドル円がいくらなのかといった為替相場は気にしておくべきでしょう。
ソーシャルレンディングにおいても、貸し付ける相手が海外の企業であれば、為替リスクを考慮しておく必要があります。
- 誰が為替リスクを負うのか
- 為替ヘッジはあるのか
など事前に確認しておきましょう。
なお、より詳しくソーシャルレンディングの仕組みや基本を押さえておきたい方はこちらの記事をチェックしてください。
ソーシャルレンディングのメリット・デメリット
ソーシャルレンディングは、株式投資や外国為替(FX)といった他の投資と比較した際にどのような違いがあるのか、メリットとデメリットを確認しておきましょう。
ソーシャルレンディングのメリット
ソーシャルレンディングへの投資は、他の投資と比較した際に精神的にも収益的にも安定した状態で挑むことができるというメリットがあります。
株式市場・商品市場・為替市場で投資を行うと、投資先の銘柄・商品・通貨の値動きが気になってしまい、値上がりするたびに喜び、値下がりするたびに不安になるということを繰り返してしまいがちになります。
一喜一憂すること自体は悪いことではないかもしれませんが、その感情が値動きの確認を終えても継続してしまうようであれば、エネルギーを消耗しやすくなりますし、仕事もはかどらなくなる可能性があります。
一方で、ソーシャルレンディングでは、最初にしっかりとした案件を選ぶことを怠らなければ、安定的に収益を積み上げることができるので、一喜一憂することもなくて済むのです。
なお、ソーシャルレンディングのメリットはこちらにて深く解説しています。
ソーシャルレンディングのデメリット
債券市場・株式市場・商品市場・為替市場であれば、場合により損失の覚悟は要るものの、いずれも途中での売却が可能です。
例えば、株式投資をしていて投資先の企業に不祥事が発生したとわかれば、すぐに売却して現金化することができます。
しかし、ソーシャルレンディングは一度お金を貸してしまうと期日が到来するまで途中での換金ができないというデメリットがあります。
運営会社から「投資先の状況が良くない」とか「返済が遅れている」といった報告があったとしても、運営会社が回収に向けて努力してくれるのを願うだけで、私たち投資家はソーシャルレンディング市場から逃げることはできないのです。
より深くソーシャルレンディングのデメリットを把握しておきたい方は、こちらを確認するようにしてください。
社債とソーシャルレンディングの違い
債券市場もソーシャルレンディングも、「お金を借りたい人」と「お金を貸したい人」を結びつけるものです。
では、その違いは一体どこにあるのかを、「企業目線」と「投資家目線」で確認してみましょう。
企業目線:ソーシャルレンディングは資金調達しやすい
まず、企業目線では「資金調達のしやすさ」があるといえるでしょう。
社債の発行には、
- 投資のプロなど限られた人を対象とする「私募」と呼ばれる方法
- 誰でも購入できるようにするための「公募」と呼ばれる方法
の2種類があります。
実際に社債を公募するためには、「有価証券届出書」を提出しなければならず、非常に手間がかかります。
有価証券届出書には次のようなことが書かれています。
- 基本的な情報:社債の総額や利率、償還期限、償還方法など
- 社債の引受人の情報:引受金額や引受の条件など
- 関係会社の状況:各社の資本金や議決決所有割合など
- 従業員の状況:セグメントごとの従業員数や年齢・勤続年数・給与の平均など
- 事業の状況:経営方針や課題など
- 設備投資等の概要・設備状況:不動産の土地面積や延床面積など
- 役員の状況:各人の略歴等
- 経理の状況:連結財務諸表、中間連結財務諸表、財務諸表、中間財務諸表、監査証明など
他にも色々書かれていることはありますが、上に挙げただけでもなかなかの労力を必要とすることがおわかりいただけるのではないかと思います。
ましてや、上場していない企業やまだ実績の少ないベンチャー企業であれば、社債発行を易々と引き受けてくれる金融機関もかなり少ないでしょう。
そのため、「すぐにでも社債を発行して資金を調達したい」と思っている未上場の中小企業にとって、社債の発行を実現させることは現実問題として非常に難しいのです。
しかし、ソーシャルレンディングであれば、過去の実績等よりも返済計画の方が重要視されるため、ベンチャー企業や中小企業にとっては資金調達をするハードルがグッと下がることになります。
投資家目線:ソーシャルレンディングは安全な割りに良いリターンを獲得しやすい
一方、投資家からすれば、「銀行の預金よりも利率は高いけれど、物足りない」と感じるのが社債といえるでしょう。
ソフトバンク債の利率が高めだと話題ではありますが、2019年4月15日(月)から申し込みを受け付ける「ソフトバンクグループ株式会社 第55回無担保社債」の利率は、年1.30パーセントから年1.90パーセント(税引前)です。
他の有名どころの社債であれば0.5パーセント(税引前)でも良い方でしょう。
それに引き換え、ソーシャルレンディングでは3.0パーセント以上の案件が多く、中には10.0パーセント以上の利回りを見込めるという案件もあります。
そのため、ソーシャルレンディングは「少し割高になっても良いから手間をかけずに資金を調達したい」と思っている企業と「極力安全に少しでも多くのリターンを得たい」と考えている人が集まる場所なのです。
ソーシャルレンディングの実績
いくら10.0パーセント以上の利回りが見込めたとしても、机上の空論となっては意味がありません。
ソーシャルレンディングにおける実績を確認しておきましょう。
今回は、「SBIソーシャルレンディング」で取り扱っている次の4シリーズで、2019年4月10日(水)時点で既に運用が終了している252個の案件を確認していきます。
- オーダーメード型ローンファンド
- 不動産担保ローン事業者ファンド
- カンボジア技能実習生支援ローンファンド
- 個人向け無担保ローンファンド
デフォルト(貸し倒れ)について
デフォルト(貸し倒れ)とは、本来であれば返済されるはずのお金がきちんと返済されなかったことを意味します。
返済額が100万円だったとすると、そのうち1円すら返済されていない場合であっても、「デフォルト」と表現しますし、100万円中99万円返済されていても「デフォルト」と表現されます。
運用が終了した252個の案件のうち、デフォルトを起こしたのは15個で、借り手の社数・人数にして27です。
この15個の貸付総額は1,482,990,000円で、そのうち1,371,939,353円が返済され、残りの111,050,647円は投資家に返済されませんでした。
しかし、貸付総額や返済総額で考えれば、92.5パーセントは回収できているので、比較的優秀だと判断できるでしょう。
貸付金利
次に、252個のうちデフォルトを起こした案件を除いた237個の案件における貸付金利を確認してみましょう。
この貸付金利が、いわば投資家から見たときのメリットになる部分です。
237個の案件のうち、
- 最も貸付金利が低いものは5.07パーセント
- 最も貸付金利が高いのは14.0パーセント
- 平均の貸付金利は6.75パーセント
でした。
なお、貸付金利が10パーセント以上だった案件は、237個中7個でした。
管理手数料
ソーシャルレンディングでは、金利ばかりを気にするわけにもいきません。
投資を行うからには、しっかりとコストも把握しておく必要があります。
ソーシャルレンディングでは「管理手数料」が大きなコストになります。
貸付金利と同じように、237個の管理手数料を調べてみました。
管理手数料の中で、
- 最も低いものは1パーセント
- 最も高いものは4パーセント
- 平均は1.93パーセント
でした。
投資家の利益
貸付金利と管理手数料について解説しましたが、投資家の利益(儲け)は次のように計算することになります。
儲け=貸付金利(5.07%~14.0%)-管理手数料(1%~4%)
この儲けについても調査してみました。
- 最も少ないものでは2.87パーセント
- 最も多いものでは12.5パーセント
- 平均では4.82%パーセント
という結果となりました。
最も儲けの大きいものと小さいものでは、9.63パーセントもの開きがありました。
それよりも、儲けることができる案件に投資し、デフォルトがなく無事に金利と元本の返済があったのであれば、SBI証券が取り扱う案件の中では良いものを選んだと考えられます。
実際の入金額の計算
儲けの平均は4.82パーセントとお伝えしましたが、実際に入金されるのは「儲けから源泉徴収税額を差し引いた金額」になります。
源泉徴収税額は「儲け×20.42%」で計算することができます。
では、実際に計算例を出してみましょう。
計算条件
- 貸したお金:5,000,000円(500万円)
- 貸付金利:7%
- 管理手数料:2%
計算方法
- 儲け=5,000,000円×(7%-2%)=250,000円
- 源泉徴収税額=250,000円×20.42%=51,050円
- 入金額=250,000円-51,050円=198,950円
一例ではありますが、上記のように計算して入金されることになります。
なお、本来であればソーシャルレンディングにおける源泉徴収税額は「儲け×20%」で計算されます。
2037年12月31日までの間に生ずる所得(儲け)については、復興特別所得税といって「税率×102.1%」が上乗せされる仕組みになっています。
まとめ
ソーシャルレンディングに関して、他の投資との違いとメリット・デメリットについてお伝えしました。
ソーシャルレンディングは比較的新しい投資手法で、日本市場ではまだ認知度が低めです。
また、2018年ごろからソーシャルレンディング会社が遅滞を起こしたり、第二種金融商品取引業免許を剥奪されるケースが目立ち始めています。
ソーシャルレンディングでの投資を考えている方は、いままでの実績をもとに事業者を選定したり、案件を精査していくことが大切です。