投資にはリスクがつきものですが、ギャンブラーのように無駄なリスクまで取りたがる投資家はいません。
誰しも、リターンはそのままでリスクを下げたいと思っています。
リスクを下げる方法として最も基礎的なことの一つが「分散投資」です。
この記事では分散投資とは何か、具体的にはどのようなポートフォリオを組んだら良いのかについて解説していきます。
目次
分散投資とは
分散投資とは、2つ以上の投資先に分けて投資をすることです。
低リスクに資産運用をする方法の一つで、簡単なので初心者から上級者まですべての投資家におすすめできる方法です。
では、なぜ分散投資をするとリスクが低くなるのか?
手元に100万円の資金がある場合を例に解説していきましょう。
投資先は企業Aの株式、企業Bの株式、企業Cの株式……と、たくさんある中から選べるとします。
まずは、分散投資ではなく、100万円全額をA株に投資した場合を考えてみましょう。
もし企業Aの業績が悪くなって株価が半減したら、資産は50万円に減ってしまいます。
倒産して投資したお金がまったく返ってこないことになったら、100万円は0円になってしまいます。
次に、A株とB株に50万円ずつ分散投資をした場合を考えましょう。
企業Aの業績が悪くなって株価が半減しても、50万円から25万円に減るだけです。
B株の株価が変わらなければ50万円のままなので、合計で75万円です。
また、企業Aが倒産して50万円が0円になったとしても、B株の株価が変わらなければ50万円は残ります。
もしB株の株価が上がっていれば、A株による損失の埋め合わせもできるかもしれません。
投資をすれば投資先の業績などに連動して資産の価値が変動しますが、分散投資すれば個別の銘柄の価格変動リスクが薄まります。
この例では、2社の株式への分散投資を例にしましたが、3社、4社、5社……と分散させる数を増やすほど、個別の銘柄の価格変動リスクが薄まります。
分かりやすさのため2社の分散で解説しましたが、一般的に分散投資と言うと、5銘柄以上の投資を指すことが多いです。
集中投資とは
分散投資の対義語となるのが、「集中投資」です。
集中投資とは少数の限られた銘柄に投資をすることで、一般的には主に1つから3つくらいの銘柄に絞ることを言います。
低リスクな分散投資に対し、個別の銘柄の価格変動リスクが資産全体に大きく影響する集中投資は、リスクが高い投資方法です。
しかし、稀に1年で10倍ほど値上がりするお宝株式があり、そのような銘柄に集中投資できれば1年で資産を10倍に増やせるため、一攫千金狙いの人が好む投資方法です。
ただし、このようなお宝銘柄を普通の個人投資家が見つけるのは至難の業です。
良い銘柄が見つからない可能性や、有望だと思って投資した銘柄が暴落するリスクもあるため、集中投資は基本的にはおすすめできません。
分散投資のポイント
ここまで、分散投資について簡単に「投資先を複数に分けること」と解説しました。
より詳しく解説すると、次の3つを分散させることができます。
- 商品
- 国・地域
- タイミング
これらの3つのポイントを分散した方が、より低リスクな運用ができます。
すべて実践するのが難しいという方は、一つでも良いのでこれから説明するポイントを踏まえて、分散させていくと良いでしょう。
ポイント①:投資する「商品」の種類を分散させる
投資商品には、株式、債券、外貨、不動産、金などさまざまな商品があります。
どの商品に投資しても良いのですが、組み合わせてあらゆる商品に分散投資するのがおすすめです。
例えば、株式と債券に半分ずつといった投資のやり方です。
商品を分散させるべき理由は、商品ごとにリスクの大小が異なるからです。
よく「株式」と「債券」を組み合わせるようにアドバイスされるのは、株式がハイリスク・ハイリターン、債券がローリスク・ローリターンだからなのです。
リスクの高い商品と低い商品を組み合わせることで、リスクを中和してマイルドにすることができます。
株式と債券といった組み合わせだけでなく、「不動産」や「ソーシャルレンディング」など、さまざまな商品を選ぶことができます。
最近はさまざまな投資商品があり、何を組み合わせようか迷ってしまうかもしれません。
例えば、どのように組み合わせたら良いのかについては、後ほど詳しく解説していきます。
ポイント②:投資する「国」「地域」を分散させる
日本に住んでいる人でも、日本だけでなく海外にも投資することができます。
国や地域も分散した方がリスクが下がるため、これから投資を始める人や、投資先が日本に偏っている人は、海外の商品も検討してみましょう。
というのも、国によってリスクの大小が違うので、さまざまな国に投資することで低リスクなポートフォリオを組めるからです。
日本は地震や津波などの災害が起きると経済が減速する傾向があるため日本の株価は下がりますが、海外の株式には直接影響しません。
個別の国のリスクを一手に引き受けないためにも、日本だけでなく海外にも投資しておくと良いです。
他国のリスクとしては、欧州諸国なら英国の合意なきEU離脱問題が、アメリカなら米中貿易摩擦のような国際問題が挙げられます。
新興国の場合、その国の政情が不安定になるリスクが考えられるでしょう。
どの国も多かれ少なかれリスクを抱えているため、さまざまな国に少しずつ分散投資することで、どれかのリスクが発現しても全体には大きく影響しないポートフォリオを作ることができます。
海外への投資といっても、難しいことはありません。
プロに運用を任せられる投資信託なら、投資の経験が浅い人でも海外投資を始めることができます。
先進国、新興国、全世界などの単語や具体的な国名が名前に含まれている投資信託を購入すれば、海外に投資することができます。
投資信託なら日本円で投資ができるので、外貨を買うなどの手間もかかりません。
投資信託だと手数料が気になるという方は、海外の株式やETF(後で説明します)を購入してみると良いでしょう。
最近では、日本のインターネット証券会社を通じて海外の商品に投資できるようになってきており、手数料も下がってきています。
海外投資も意外と身近になってきているため、検討してみると良いでしょう。
ポイント③:投資する「タイミング」を分散させる
商品、国・地域の他に、タイミングを分散させることでも低リスクの運用ができます。
株式のように時々刻々と価格が変動する商品を、最高値で買ってしまうリスクを下げるためにはタイミングの分散が重要です。
価格変動する商品は、安く買って高く売りたいものですよね。
しかし、未来はわからない以上、そのような理想的な運用をすることはラッキー以外ではほぼ不可能です。
そこで、最悪の事態である「最高値でたくさん買ってしまう」ことを避けましょう。
それには、「毎月1万円分を買い付けする」といった定期・定額の買い付けルールを設けると良いです。
このような買い方を「ドルコスト平均法」と呼びます。
ドルコスト平均法だと、一定の決まった金額を投資に使っていくため、安いときはたくさん買って、高いときは少なく買うことができます。
したがって、最高値でたくさん買うことを避けられるのです。
ドルコスト平均法という簡単なルールで、タイミングの分散をすることができます。誰にでもできるので、ぜひ試してみてください。
自力で分散投資する方法
ここからは、具体的にどのように運用したら良いのかについて解説していきます。
自力で分散投資をするためには、ポートフォリオを考えて組んだり、リバランスを行ったりする手間がかかります。
面倒だと感じる方は、次の項目の「プロに分散投資を任せる商品」をご覧ください。
ですが、自力でやれば手数料を削減できたり、プロに任せる商品では投資できない高利回りの商品を購入できたりします。
実際、投資になれている人のほとんどは自力で分散投資をしています。
メリットはとても大きいため、自力で分散投資をやってみたいという方には、ぜひチャレンジしてもらいたいです。
ポートフォリオ例
まずは、どのような商品に分散したら良いのかについて、例を示していきましょう。
「ポートフォリオ」とは「投資する商品の組み合わせ」のことです。
投資家が「自分のポートフォリオは~」と紹介するときにもよく使われます。
基本的には、ローリスク・ローリターンの商品やミドルリスク・ミドルリターンの商品でポートフォリオのコアを作り、手堅く運用するのがおすすめです。
その上で、トッピングとしてハイリスク・ハイリターンの商品も組み込み、利益を追求するとバランスが良いでしょう。
例えば、次の円グラフのように分散するのはいかがでしょうか?
投資先 | 割合 |
---|---|
海外債券 | 12.5% |
外貨預金 | 12.5% |
ETF | 12.5% |
J-REIT | 12.5% |
国内株式 | 12.5% |
海外株式 | 12.5% |
ソーシャルレンディング | 12.5% |
金 | 12.5% |
ローリスク・ローリターンの商品としては、海外債券、外貨預金を組み込みました。
国内債券を入れても良いのですが、マイナス金利で運用環境が悪く、利回りが非常に低いため、わざわざ国内債券に投資する意味が薄いと考え、例では外しています。
ミドルリスク・ミドルリターンの商品としては、ETF(全世界株式)、J-REIT(不動産投資信託)を組み込みました。
ETFはプロが投資家の代わりに運用する商品で、世界中の株式に投資することもやってくれます。
個人で世界中に投資するのは難しいため、ETFの力を借りて先進国・新興国の株式を幅広く取り込んでいきます。
J-REITは日本の不動産投資信託です。
不動産投資はミドルリスク・ミドルリターンの性質がありますが、必要な資金が大きいため、小口で投資できるJ-REITを入れました。
ハイリスク・ハイリターンの商品としては、国内外の株式やソーシャルレンディングを組み込みました。
株式はETFで組み込んでいますが、個別に高い利回りの株式を選んで、さらに投資することで利益も狙えるポートフォリオです。
ソーシャルレンディングはインターネット上で融資するサービスで、ここで紹介した商品の中で最も利回りが高く5パーセントから10パーセントの利回りが狙えます。
ハイリターンな商品なので、ソーシャルレンディングを組み込むとポートフォリオの利回りが上がります。
定期的にリバランスする
例では8つの商品に分散して投資しましたが、お好みでもっと多くの商品に投資しても構いませんし、少なくても構いません。
ですが、定期的にバランスを見直してあげましょう。
例では8つの商品に12.5パーセントずつ投資をしましたが、時間が経つにつれて価格が変動し、バランスが崩れてきます。
例えば、国内株式が30パーセントくらいに増えて、海外債券が5パーセントくらいに縮小するといった具合です。
これは債券が悪いのではなく、ハイリスク・ハイリターンの投資が成功すれば株式の割合が高くなることは当然です。
この場合、株式に投資しすぎている状態なので、株式を少し売って割合の少ない債券に振り向けるなどの調整をした方が良いです。
これがリバランスです。
リバランスをする前は、ハイリスクの商品が多く、ローリスクの商品が少ない状態でした。
これでは分散投資の効果が低く、ポートフォリオ全体もハイリスクに傾いてしまいます。
リバランスをすることで、ポートフォリオ全体を中程度のリスクに抑えることができるのです。
頻繁なリバランスは売買手数料がかさむのでおすすめできませんが、1年に1回くらいはリバランスを行いましょう。
まとまった資金が必要
簡単に8つの商品に分散させる例を出しましたが、実はまとまった資金が必要です。
あらゆる商品に自力で分散投資しようとするなら、500万円前後の資金があることが前提になるはずです。
というのも、商品を1単位買うのに必要なお金が高額なケースもあるからです。
国内の株式は、10万円から100万円ほどのお金がかかるため、株式以外にも分散させたポートフォリオを組もうとすると、大きなお金がかかります。
1万円くらいから投資を始めたい方には、自力でなくプロに任せられる商品を活用するのがおすすめです。
次の項目で詳しく解説していきます。
プロに分散投資を任せる商品
自力で分散投資をするには大きなお金がかかるため、1万円といった少額で始めたい方には、「投資信託」や「ETF」、「ロボアドバイザー」のような商品がおすすめです。
なぜ少額で分散投資ができるのか、その仕組みについて商品ごとに解説していきましょう。
投資信託
投資信託は、大勢の投資家が資金を運用会社に預け、運用会社が代わりに資産運用する商品です。
投資家は手数料などを支払いますが、利益を受け取ることができます。
投資信託を運用する会社には、莫大な資金が預けられます。
大量の資金があるため、さまざまな投資先に分散投資して運用することになります。
投資信託は分散投資が基本設計だと言われるのは、このような理由のためです。
投資信託は、インターネット証券会社なら100円から始めることができます。
100円しか投資しなくても他の投資家の資金と合わせて運用されるため、分散投資ができているのです。
少額で投資を始めてみたい方には、投資信託がおすすめです。
ETF(上場投資信託)
ETFは上場投資信託という名前で、投資信託の仲間です。
運用会社が投資家の代わりに運用してくれることや、分散投資が基本設計なのも同じです。
ETFは投資信託よりも手数料などのコストが低い傾向にあるため、投資信託よりも利回りが高い特徴があります。
証券取引所に売買注文を出すため、難しく感じられるかもしれませんが、投資信託などで投資に慣れてきたら、ETFにもチャレンジしてみると良いでしょう。
ETFは3万円ほどから始めることができます。
投資信託に比べると始めるハードルは高いかもしれませんが、3万円で分散投資ができるため、自力で投資するのが面倒に感じる人にもおすすめです。
ロボアドバイザー
ロボアドバイザーは、投資信託やETFよりもさらに投資家の手間を省けるサービスです。
自動で商品選びや積み立て投資、リバランスを行ってくれるのです。
ロボアドバイザーは複数のETFを組み合わせて運用しているため、一つのETFに投資するよりも広く分散することができます。
商品選びにも手間がかからず、投資家にアンケートを行ってリスク許容度を診断し、投資家に合った商品を選んでくれます。
ロボアドバイザーは投資家の手間が極限まで省かれているため、手数料が割高な傾向があります。
ですが、忙しくて投資に時間をかけられない人でも分散投資を始められるおすすめのサービスです。
ロボアドバイザーは、最低申込額が10万円で、その後は毎月1万円の自動積立を行うサービスが多いです。
ドルコスト平均法での定期買い付けもできるため、ぜひ活用してみてください。
まとめ
分散投資と具体的なポートフォリオ例について解説してきました。
低リスクの運用するポイントについて、ご理解いただけたでしょうか?
一つの銘柄に固執するのではなく、商品や国・地域、タイミングを分散することで低リスクの資産運用ができます。
ぜひ試してみてください。