投資商品を選ぶとき、重要視したいのが「利回り」です。
ただ、利回りについてきちんと理解できていますか?
例えば、「表面利回り」と「実質利回り」の違いについて、理解できているでしょうか?
この記事では、「利回り」の意味や、混同しやすい「利率」との違いからわかりやすく解説していきます。
そして、利回りとリスクの関係や、それを踏まえたおすすめの投資商品についても紹介。
商品選びの参考にしていただければ幸いです。
投資の「利回り」とは?
利回りとは「投資した金額に対していくらのリターンが得られるか」を「パーセント」で表したものです。
利回りの高い投資なら、少ない金額で多くのリターンを稼げるこということです。
これが利回りの基本的な考え方ですが、利回りには「表面利回り」と「実質利回り」の2種類があります。
さらに、利回りに似たような用語に「利率」があります。
これは3つの要因について詳しく解説していきましょう。
表面利回り
「表面利回り」は、費用を含めない利回りのことです。
次の式で計算できます。
- 表面利回り(%)=収益÷投資元本÷投資年数×100(%)
利益が出ると税金の支払いが必要ですし、投資商品の売買には手数料がかかります。
ですが、表面利回りはこれらの支払いを考慮しないことが特徴です。
そのため、表面利回りにおける収益は、実際に投資家がもらえる利益よりも多いです。
表面利回りは実際の利回りよりも高く計算されるので、費用がまだわからないときの試算などに使用します。
実質利回り
「実質利回り」は、費用を含めた利回りのことです。
次の式で計算できます。
- 実質利回り(%)=(収益-費用)÷投資元本÷投資年数×100(%)
表面利回りの計算式と比べると、収益から費用が除かれていることがわかります。
費用とは、税金や手数料の支払いです。
収益から費用を引いたものが投資家の利益になるので、投資家にとっての利回りは実質利回りの方が正しいです。
「利率」との違い
「利回り」と、それによく似た用語の「利率」について解説します。
利回りの計算で使った収益とは、「投資の利益すべて」のことです。
投資の利益の出し方は2つあります。
一つは商品自体の価格が上がる値上がり益(キャピタルゲイン)で、もう一つは商品を保有しているだけでもらえる分配金(インカムゲイン)です。
「値上がり益」と「分配金」を合わせた収益で計算したものが「利回り」です。
次の式で計算できます。
- 利回り(%)=(値上がり益+分配金)÷投資元本÷投資年数×100(%)
一方、「利率」の計算では「分配金」だけを考慮します。
「値上がり益」を含めないため、「分配金利回り」と呼ばれることもあります。
利率は次の式で計算されます。
- 利率(%)=分配金÷投資元本÷投資年数×100(%)
利回りとリスクの関係
投資するとお金を増やす期待ができますが、一方でお金が減るリスクもあります。
預金以外の投資方法では、「元本割れ」のリスクがあるのです。
利回りとリスクは比例の関係にあり、利回りが高いほどリスクも高く、利回りが低いほどリスクも低いのです。
利回りが高い投資商品の方が優れているように感じられますが、実はお金が減るリスクも高いため、むやみに利回りだけを追求しないことが大切です。
利回り4%が目安
後でお伝えしますが、投資にはさまざまな種類があり、利回りは商品によって異なります。
平均化すると、4パーセントほどです。
実際に投資してみて、4パーセントの利回りになるなら「平均並みだな」と考えてください。
リスクと利回りの関係を思い出すと、4パーセントより高い利回りを求めるなら平均より大きなリスクを取ることになります。
反対に、平均より低リスクを求めるなら、4パーセントより低い利回りになるでしょう。
投資の種類と平均的な利回りランキング
それでは、具体的な投資方法とその利回りを紹介していきましょう。
おおむね、利回りが低いものから順番に掲載しています。
つまり、「ローリスク・ローリターン」の投資から始まり、徐々に「ハイリスク・ハイリターン」の投資の順番になっています。
No. | 投資方法 | 平均的な利回り | リスク |
---|---|---|---|
1 | 預金 | 0.02% | なし |
2 | 国債 | 1%弱 | 国の破綻(ほぼない) |
3 | 外貨預金 | 0.02%~2% | 金利変動 |
4 | 投資信託 | 1%~3% | 銘柄の破綻 |
5 | ETF(上場投資信託) | 3%~5% | 銘柄の破綻 |
6 | 不動産投資 | 5%前後 | 空室 |
7 | REIT(不動産投資信託) | 4%~6% | 銘柄の破綻 |
8 | 株式投資 | 5%~7% | 株価の暴落 |
9 | ソーシャルレンディング | 5%~10% | 貸し倒れ |
10 | FX | -5%~20% | 相場の暴落 |
11 | 仮想通貨 | トレーダーによる | 相場の暴落 |
投資方法①:預金
銀行にお金を預けておくと、利息がもらえますよね。
預金は、銀行に預けておくだけの最も簡単な投資方法です。
ほとんどの人が無意識に経験している投資でしょう。
「利息」が預金におけるリターンです。
預金の利回りは、高金利な定期預金でも最大0.02パーセントほどと低いです。
その代わり、元本保証でノーリスクな投資となっています。
預金がおすすめなのは、怖くて投資に手を出せない人です。
投資は元本が保証されないのでお金が減ってしまうリスクもあり、1円でも損失を許せないと考える人は、預金するしかないでしょう。
また、すでに2億円、3億円と十分な資産を持っている人にもおすすめです。
資産が潤沢なら、それ以上増やす必要がないからです。
逆に、資産に物足りなさを感じている人は、別の投資で増やした方が良いと考えられます。
投資方法②:国債
国債とは国が発行している債券のことで、投資家は国にお金を貸し見返りとして利息をもらうことができます。
満期が来たら、元本が戻ってきます。
国債の利回りは、1パーセント弱と低めです。
日本はマイナス金利のため、国債の利回りも低い状態が続いています。
国債で高い利回りを狙うなら、海外への投資が必要です。
国債はリスクも低い商品です。
日本のような先進国なら国の破綻などはほとんど考えられないからです。
国債は、「銀行預金よりは高金利が良いけど、安全に運用したい」と考えている人におすすめです。
マイナス金利状態からいつ抜け出せるか不明なため、今後も低利回りが続くと考えられますが、リスクは低い投資方法です。
投資に怖いイメージがある方は、まずは安全性の高い国債から始めてみてはいかがでしょうか?
投資方法③:外貨預金
外貨預金とは、米ドル、ユーロ、豪ドルなどで預金をすることです。
日本は低金利ですが、外貨預金なら高金利なことが多く、預金でもお金を増やすことができます。
外貨預金の利回りは次のものが目安です。
- 米ドル:1%から2%
- ユーロ:0.02%前後
- 豪ドル:1%前後
ただし、金利は変動が激しいので、最新情報を調べてから投資するか考えましょう。
外貨預金は平均的なリスクのある商品で、金利変動リスクがあります。
例えば、「1ドルが100円」のときに100万円分の米ドルを買ったら、1万ドルの外貨預金ができます。
預金している間に為替が変動して「1ドルが90円」になってしまったら、外貨預金の1万ドルは90万円に相当します。
つまり、この例では為替変動によって100万円が90万円に減り10万円ぶんの損失が発生しています。
ただし、為替が逆に動けば100万円以上にお金を増やすことができます。
為替リスクによって得をすることもあれば、損をすることもあることを覚えておきましょう。
外貨預金がおすすめなのは、銀行で投資をしたい人です。
株式投資などは証券会社に口座が無いとできませんが、外貨預金なら銀行でできるため、証券口座を持っていない人も今すぐ始められます。
投資方法④:投資信託
投資信託は、資産運用を投資のプロにお任せできる商品です。
「株式」や「債券」といったおおまかな投資先は自分で決める必要がありますが、具体的な銘柄選びは投資のプロに任せることができます。
投資信託の利回りは1パーセントから3パーセントほどです。
プロに任せる運用のため、手数料を支払う必要があり、リターンはあまり高くありません。
投資信託は平均的なリスク・リターンの商品です。
運用会社が幅広い銘柄に分散投資するため、リスクも分散するからです。
少数の銘柄に絞る「集中投資」では、一つの銘柄の破綻リスクが高くなりますが、「分散投資」することで破綻リスクを抑えられるのです。
投資信託は、投資初心者におすすめの商品です。
運用のプロに任せられるため、投資の知識がない初心者でも気軽に始めることができます。
投資方法⑤:ETF(上場投資信託)
ETF(イーティーエフ)は「上場投資信託」のことで、投資信託の仲間です。
投資信託と異なるのは証券取引所で売買する点で、注文方法が若干難しいです。
ETFの利回りは3パーセントから5パーセント程度で、平均的な利回りの商品です。
投資信託よりも経費が抑えられているため、少し利回りが高くなっています。
ETFはリスクも平均的な商品です。
投資信託と同様、「分散投資」するため、リスクを低く抑えられる投資方法です。
ETFも投資初心者におすすめの商品ですが、注文方法が少し難しいです。
まずは投資信託を試してみて、もっとやってみたいと思ったら挑戦してみると良いでしょう。
投資方法⑥:不動産投資
不動産投資は、マンションやアパートなどを買って部屋を他人に貸し出し、入居者から賃料をもらう投資方法です。
不動産投資の利回りは、5パーセントほどが平均です。
不動産投資はリスクも平均程度です。
ただし、空室ができて狙った家賃収入が得られないといったリスクがあり、立地や築年数に依存します。
不動産投資がおすすめなのは、退職を視野に入れている人です。
物件を買うには数千万円から数億円単位のお金が必要ですが、良い場所に構えられれば、サラリーマンの月収と同じか上回る家賃収入を得られます。
投資方法⑦:REIT(不動産投資信託)
REIT(リート)は「不動産投資信託」のことで、投資信託の仲間です。
証券取引所で売買するのでETFに似ており、投資先を不動産に限定したETFとイメージしておくと良いでしょう。
REITの利回りは4パーセントから6パーセントほどです。
平均よりも少し高い利回りを狙うことができます。
REITのリスクは平均的なので、「ミドルリスク・ミドルリターン」、あるいは「ミドルリスク・ハイリターン」と言われています。
リスクに見合ったリターンか、それ以上のリターンを得られるお得な投資方法です。
REITがおすすめなのは、証券取引所の売買注文を出せる人です。
投資信託などから始めて投資に慣れてきたら、REITへの投資を始めてみてはいかがでしょうか?
投資方法⑧:株式投資
株式投資は、投資家が株式を買うことでお金を企業に出資する投資方法です。
企業はそのお金で事業を行って利益を出し、投資家に「配当」という形で利益の一部を還元します。
株式投資の利回りは、5パーセントから7パーセントほどが目安です。
企業によっては株主優待として自社製品やサービス券をくれることもあり、現物を含めればもう少し高利回りになります。
株式投資のリスクはそれなりに高いです。
有名な大企業でも突然に不祥事のニュースが出て、株価が暴落したり倒産したりするリスクがあるからです。
株式投資がおすすめなのは、投資の知識がある人です。
財務諸表を読むなどして、投資するべき企業か判断できる人に向いています。
投資方法⑨:ソーシャルレンディング
ソーシャルレンディングとは、「お金を借りたい企業(借り手)」と「お金を貸したい人(投資家)」をインターネット上(オンライン)で結びつける投資サービスです。
クラウドファンディングの一種であり、「貸付型クラウドファンディング」とも呼ばれます。
ソーシャルレンディングの利回りは、5パーセントから10パーセントほどと非常に高いです。
一方、ソーシャルレンディングのリスクはそこまで高くありません。
最近では案件を扱う業者が企業を厳しく審査しているからです。
2年から3年ほど前までは審査が緩く、失敗して投資家に元本を返せない案件もありましたが、最近では少なくなっています。
ソーシャルレンディングは初心者にもおすすめな投資方法です。
リスクはあまり高くないのに高い利回りを追求できるため、比較的効率良くお金を増やしやすい投資方法です。
投資方法⑩:FX
FXは、為替相場の値動きを利用して利益を上げる投資法です。
例えば、1ドルが100円のときに100ドルを1万円で買っておき、1ドルが110円に値上がりしたら100ドルを売って1万1,000円を手に入れるといった手法で利益を出す方法です。
FXの利回りは、トレードする人のスキルによって大きく異なります。
平均利回りはマイナス5パーセントほどで、一部のプロトレーダーだけが20パーセントものプラスを出すといった投資方法です。
FXはリスクも大きいです。
売買タイミングが難しく、初心者はプラスの利益を出すことさえ難しいです。
FXは投資の経験を積んだ上級者にのみおすすめします。
初心者にとっては難易度が高いため、他の投資方法で経験を積み知識を蓄えてから挑戦することをおすすめします。
投資方法⑪:仮想通貨
仮想通貨の取引は、FXと似た投資方法です。
円と仮想通貨、または仮想通貨同士の価格が時々刻々と動くため、その価格変動を利用して利益を生む投資方法です。
仮想通貨の利回りは、トレードのスキルによって異なります。
スキルがあって運が味方した人は2倍、3倍と資産を大きくできますが、資産が半減してしまう人も大勢います。
仮想通貨はFXよりもリスクが高い投資方法です。
相場の値動きが激しいため、一瞬で資産が半減するリスクもあるのです。
仮想通貨がおすすめなのは、FXで常勝できるレベルのトレーダーのみです。
難易度が高い投資法なので、初心者にはおすすめできません。
利回りの良い投資だけで生活することは可能?
利回りの良い(=高い)投資で多くの不労所得を得られるようになると、気になるのが「投資だけで生活できるのではないか?」という点ではないでしょうか?
そこで、この項目では利回りを仮定して、投資で生計を立てるために必要な元本を計算してみましょう。
サラリーマンの平均年収に近い400万円を、投資の「分配金」で稼ぐことを想定します。
すでに平均的な利回りは4パーセントほどであることを紹介しました。
「ソーシャルレンディング」など高利回りな投資ならもう少し良い利回りが狙えるので、4パーセントの場合と10パーセントの場合の2パターンで必要な元本を試算します。
利回り4パーセントの場合
実質利回りが4パーセントで、1年で400万円の不労所得を得る場合を考えましょう。
必要な元本は次の式で計算されます。
- 400万円÷4%=1億円
つまり、1億円を投資すれば、利回り4パーセントの場合でも年間400万円の不労所得が得られます。
まず1億円の資産を築くまでが大変ではありますが、多くの投資家が1億円を目標とするのは、不労所得で生計を立てられるか否かのボーダーラインだからなのです。
利回り10パーセントの場合
ソーシャルレンディングなど高い利回りの投資を行った場合、実質利回りは10パーセントほどが期待できます。
この利回りで年収400万円を実現するために必要な元本は、次の式で計算できます。
- 400万円÷10%=4,000万円
4,000万円を投資すれば、投資の不労所得で生活できそうであることがわかりました。
利回り4パーセントの場合は1億円も元本が必要だったのに対して、約半分まで必要資金が下がりました。
これらの計算例からもわかるとおり、投資で生活したいなら「利回りの高い投資」をする必要があるのです。
利回りの良い投資をしたい人におすすめ方法
先ほど解説したとおり、投資方法を選ぶときには利回りが判断材料の一つになります。
ですが、ただ利回りの良い投資を狙えば良いほど単純ではありません。
この項目では、「目的別」におすすめの投資方法を紹介します。
次の3つの目的に分けて紹介していくので、自分が当てはまる項目を集中的にチェックしてください。
それぞれの目的別におすすめの投資方法もお伝えしていきます。
- 不労所得で生活したい
- 老後の資産を形成したい
- とりあえず試してみたい
不労所得で生活したい場合
不労所得で生活したいなら、分配金利回りが高い商品に投資するのことがおすすめです。
少ない元本でも多くの分配金をもらうことができ、生活費に充てることができるからです。
例えば、「ソーシャルレンディング」や「REIT」、「株式投資」がおすすめです。
これらの商品は分配金利回りが高いため、少ない元手でも多くの分配金をもらうことができます。
分配金は定期的に振り込まれるので、まさに「不労所得」となり、投資で生計を立てて自由に暮らしたい投資家に人気です。
いきなり不労所得だけで生活することは難しそうだと考える方は、月に10万円ほどの不労所得を得る方法を考えてみてください。
老後の資産を形成したい場合
老後の資産形成が目的なら、退職時に大きな資産が築けるよう「長期投資」するようにしましょう。
今すぐもらえる分配金よりも、資産自体が値上がりする投資方法がおすすめです。
また、老後のために貯めた資産が減ってしまっては困るため、リスクが低めの商品に投資する方が良いでしょう。
老後の資産を形成におすすめなのが「投資信託」や「ETF」です。
これらの商品はさまざまな消費に幅広く分散して投資をするため、破綻などの損失を被るリスクが低いからです。
投資先の経済成長とともにゆっくり資産が増えていくと期待できるので、長期の投資に向いています。
とりあえず試してみたい場合
投資の目的は決まっていないものの、とりあえず投資を試してみたいなら「投資信託」や「外貨預金」がおすすめです。
少額で始めることができるため、お試しにぴったりです。
「投資信託」は、インターネット証券会社なら100円から始めることができます。
「外貨預金」は、どんな外貨を選ぶかによって最低額が異なりますが、100円相当や1円相当といった少額から始めることができます。
この程度の金額であれば、投資のリスクを怖がったりせずに試してみることができるでしょう。
少額投資についてはこちらで詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
まとめ
投資における「利回り」の意味、リスクの関係性、そしておすすめの投資商品について解説しました。
少ない元手で大きく増やすには、高い利回りを狙った投資が必要です。
一方で、利回りが高いということはリスクも高いということです。
利回りだけを見て投資商品を選ぶのではなく、紹介したような難易度も参考にしてくださいね。
なお、できるだけリスクを抑えて良い利回りを得たい方は、今回紹介した投資方法のうち「ソーシャルレンディング」がおすすめです。
こちらで詳しく解説しているので、一度目を通してみると良いでしょう。