「投資にかかる税金っていくらくらい?節税する方法はあるの?」
これから投資をはじめる方、あるいは投資をはじめて利益を手にした方の多くは、このような疑問が出てくるのではないでしょうか?
すべての投資には「所得税」と「住民税」という税金がかかります。
そのため課税体系を理解せずに投資をはじめると、「思ったよりも実利が少なかった」なんてことになりかねません。
この記事では投資方法別の税金種類を詳しく解説するとともに、合法的に税金をかけない方法を3つ紹介します。
「投資をはじめたものの、税金のことは深く考えていなかった」という方や「税金を少しでも減らしたい」という方は、ぜひ参考にしてください。
目次
すべての投資には税金がかかる
冒頭でお話したとおり、投資をすれば必ず税金がかかります。
とはいえ、ただ投資をしているだけで税金がかかるわけではありません。
税金がかかるタイミングは、「投資で利益を得たとき」です。
では、くわしく解説しましょう。
かかるタイミング
投資で税金がかかるタイミングは、利益を得たときです。
株式投資でいえば、次3つの利益を受け取ったときに課税対象となります。
- 持っている株が値上がりし、売却によって利益を得たとき
- 持っている株の配当金を受け取ったとき
- 持っている株の株主優待を受け取ったとき(※)
※給与以外の所得(株主優待の価値も含めて)が20万円以下の会社員であれば、確定申告は不要
つまり、投資をして何らかの利益を得れば課税対象になるのです。
「知らなかった」では済まされませんので、必ず覚えておいてくださいね。
また、投資にかかる税金は利益の種類によって細かく課税方法や税率が異なります。
ご自身が選ぶ投資の種類や得る利益によって納税方法も異なるため、注意が必要ですよ。
投資別・税金の種類まとめ
投資の税金で重要なポイントは、投資の手法や利益の種類によって税金のかかり方が大きく異なるという点です。
まずは、下の表を確認してください。
投資の種類 |
利益の種類 | 所得の分類 | 課税方法 |
税率 |
|
株式投資 | 株の売却で利益が出たとき | 譲渡所得 | 申告分離課税 |
20.315% |
|
保有株より配当金を受け取ったとき | 配当所得
※課税方法は右記3つより選択する |
確定申告不要制度 | |||
申告分離課税 | |||||
総合課税 | 15%~55%の累進課税 | ||||
株主優待を受け取ったとき | 雑所得 | 総合課税 | 15%~55%の累進課税 | ||
債券投資 | ・債券の売却で利益が出たとき
・債券償還により利益が出たとき |
譲渡所得 | 申告分離課税 |
20.315% |
|
保有債券より利子を受け取ったとき |
利子所得 ※課税方法は右記2つより選択する |
確定申告不要制度 | |||
申告分離課税
|
|||||
投資信託
|
株式 投資信託
|
・投資信託の売却で利益が出たとき
・投資信託償還により利益が出たとき
|
譲渡所得 | 申告分離課税 | 20.315% |
保有投資信託より収益分配金を受け取ったとき | 配当所得
※課税方法は右記3つより選択する |
確定申告不要制度 | |||
申告分離課税
|
|||||
総合課税 | 15%~55%の累進課税 | ||||
公社債 投資信託 |
・投資信託の売却で利益が出たとき
・投資信託償還日により利益が出たとき
|
譲渡所得 | 申告分離課税 |
20.315% |
|
保有投資信託より収益分配金を受け取ったとき | 利子所得 | 確定申告不要制度 | |||
申告分離課税
|
|||||
FX | ・外貨の売却で利益が出たとき
・金利差調整分のスワップポイントを受け取ったとき※スワップポイントは会社によって経理処理が異なる |
雑所得 |
申告分離課税
|
20.315% |
|
仮想通貨 | ・仮想通貨の売却で利益が出たとき | 雑所得 | 総合課税 | 15%~55%の累進課税 | |
ロボ・アドバイザー (投資一任型) |
※ロボ・アドバイザーは利用するサービスにより運用商品、利益(所得の分類)が異なるため一概には言えない。
一般的には運用商品の売却(解約)によって利益が出ると申告分離課税で課税される |
申告分離課税 | 20.315% | ||
ソーシャルレンディング | 分配金を受け取ったとき | 雑所得 | 総合課税 | 15%~55%の累進課税 |
※日本国内での投資による課税体系を記載しています。
一口に「投資」といっても、税率が20.315パーセントだったり、累進課税で15パーセントから55パーセントと幅があったり、投資手法によって大きく異なることがわかりますね。
どのような投資をするのか、また投資でどのような利益を得たいのかによって注意すべきポイントは異なります。
自身が行う投資ではどのような税金がかかるのか、よく理解しておくことが大切ですよ。
各投資法の税金や課税方法ごとの違いについて、もう少しくわしく見ていきましょう。
課税方法
先ほど紹介した表でも記載のとおり、投資の種類や利益で課税方法は細かく分かれています。
課税方法ごとの特徴をまとめました。
確定申告不要制度(税率20.315%/確定申告不要)
源泉徴収だけで納税が完結。
配当控除や株式などの譲渡損失との損益通算はできない。
扶養控除や配偶者控除の判定に用いる所得金額に算出されない。
申告分離課税(税率20.315%/確定申告必要)
他の所得とは分離して税額を計算し、確定申告によって納税する。
配当控除は受けられないが、株式などの譲渡損失との損益通算ができる(※)。
(※)株式や投資信託などは、特定口座を利用すれば証券会社が源泉徴収で納税を代行してくれるので、確定申告不要にできる
総合課税(累進課税で15%~55%/確定申告必要)
給与や事業所得など他の所得と合算して税額を計算し、確定申告によって納税する。
配当控除を受けられるが、株式などの譲渡損失との損益通算はできない
課税方法によって、確定申告の有無や税率が異なることがわかりますよね。
それぞれの特徴をよく理解したうえで、自身に適した課税方法の投資を選ぶことが大切ですよ。
株式投資の場合
株式投資の税金で重要なポイントは、次の3点です。
- 利益の種類が多く、それぞれ課税方法が異なる
- 売却益と配当金は、特定口座の源泉徴収なし制度を利用すれば、確定申告不要
- 一般NISA口座やジュニアNISA口座を利用すれば一定額の非課税投資が可能
「確定申告や税率計算がややこしい」という方は、証券会社の源泉徴収なし特定口座の利用が便利でおすすめです。
また、一般NISA口座を開設すれば、年間投資額120万円までの株式投資が可能です。
ただし、証券会社によって株式の取扱い銘柄は異なります。
投資をはじめる際は、必ず取扱い銘柄をチェックして投資しやすい証券会社を選びましょう。
債券投資の場合
債券投資の税金で重要なポイントは、次の3点です。
- ・もともとローリスク・ローリターンなので利回り自体が低い(よって、税金を実感しにくい)
- 利益の種類にかかわらず税率は固定(20.315%)
- NISAなど非課税口座の対象外
債券投資は値動きが非常にゆるやかなので、そもそも利益自体が少ないことが特徴です。
債券は他の投資のリスクを抑えるための安全資産という位置づけで持ち、節税対策は利益率が高い投資を優先に考えることをおすすめします。
投資信託の場合
投資信託の税金で重要なポイントは、次の3点です。
- 利益の種類によって課税方法が異なる
- 売却益と分配金は、特定口座の源泉徴収なし制度を利用すれば、確定申告不要
- 一般NISA口座、つみたてNISA口座、ジュニアNISA口座、iDeCo口座を利用すれば、一定額の非課税投資ができる
課税体系は株式投資とほぼ同じで、特定口座を利用できる点も同じです。
- 売却益:申告分離課税
- 分配金:申告分離課税や総合課税から選択
また、投資信託は3つのNISA口座とiDeCoで対象商品になっているため、手軽に非課税投資しやすい環境がそろっていると言えるでしょう。
NISAやiDeCoについては後述しますが、非課税投資を希望する場合は投資信託がおすすめですよ。
FXの場合
FAの税金で重要なポイントは、次の2点です。
- 雑所得だが税率は固定(20.315%)
- NISAなど非課税口座は利用できない
FXの場合は「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」によって申告分離課税方式が適用され、税率も固定になっていることが特徴です。
ただし、「株式投資」や「投資信託」のように非課税口座を利用した投資はできないため、合法的に大きく節約するのは難しいといえます。
仮想通貨の場合
仮想通貨の税金で重要なポイントは、次の2点です。
- 総合課税方式で税率は15%~55%の累進課税
- NISAなど非課税口座は利用できない
仮想通貨の利益はFXと同様に雑所得に分類されますが、FXのような特例はありません。
そのため、利益が発生すれば他の所得と合算されて税率が計算されます。
給与所得など他の所得が少なめで、所得税率が10パーセント以下の方であれば申告分離課税より税率はお得になります。
ロボ・アドバイザーの場合
ロボ・アドバイザーの税金で重要なポイントは、次の3点です。
- 基本的に税率は固定(20.315%)
- 源泉徴収なしの特定口座を利用すれば確定申告不要
- NISAなど非課税口座は利用できない
ただし利用するロボ・アドバイザーサービスによって投資している商品や銘柄が異なるので、サービスすべての課税体系が同じであるとは限りません。
また投資対象に外国のETFなどが含まれている場合は現地と国内での課税が二重に発生するため、外国税額控除が必要になる点に注意しましょう。
ソーシャルレンディングの場合
ソーシャルレンディングの税金で重要なポイントは、次の3点です。
- 総合課税方式で税率は15%~55%の累進課税
- 投資で得た分配金からは所得税20.42%(住民税は引かれていない)が源泉徴収されている。そのため実際の個人の所得税率によっては確定申告で払いすぎた税金を取り戻す必要がある
- NISAなど非課税口座は利用できない
ソーシャルレンディングの税率は仮想通貨と同じで、累進課税という点が大きいな特徴です。
そのため他の所得と合算した所得税率が10パーセント以下なら、申告分離課税より税率はお得になります。
投資で合法的に税金をかけない3つの方法
これまでお伝えした内容の流れで、税金をお得にできる投資が何かわかってきた方もいるでしょう。
改めて合法的に税金をかけない方法をまとめると、次の3つの方法があります。
- NISAやつみたてNISAを利用する(株式投資、投資信託)
- iDeCoを利用する(投資信託)
- 総合課税方式で累進課税の投資をする(ソーシャルレンディング、仮想通貨)
それぞれ、わかりやすく解説していきましょう。
方法①:NISAやつみたてNISAを利用する
「NISA」や「つみたてNISA」、「ジュニアNISA」といった非課税口座を利用すれば、口座内での投資の利益を非課税にすることが可能です。
NISAとは
次いずれかのNISA口座を開設し、その口座内で投資して得た利益は、一定額非課税になる制度です。
NISA口座の種類 | 概要 | 投資対象商品 |
一般NISA(成人用) |
|
株式※、投資信託、ETF、REIT、ETN
※IPO、PO、外国株式も対象 【対象商品は多い】 |
つみたてNISA(成人用) |
|
一定の要件を満たす投資信託、ETF
【対象商品は限定されている】 |
ジュニアNISA(未成年用) |
|
株式、投資信託、ETF、REIT、ETN
※IPO、POも対象 【対象商品は多い】 |
※一般NISAとつみたてNISAはどちらか1口座を選択。ジュニアNISAは子ども名義口座
いずれのNISA口座も、口座内の投資に対する運用益にかかるはずの税金20.315パーセントがかかりません。
仮に投資で30万円の利益が出た場合、本来かかるはずの税金約6万円が非課税になるのは、これ以上ない節税対策です。
NISA口座によって非課税期間や対象商品が異なるため、自身の目的や投資スタイルにあわせて適切な口座を選ぶようにしましょう。
方法②:iDeCoを利用する
iDeCo(個人型確定拠出年金)を活用すれば、老後資金を作りながら投資の税金と個人の所得税・住民税の節税が可能になります。
iDeCoとは
iDeCoは老後資金の積み立てを目的とした私的年金制度で、次のような特徴があります。
- iDeCo口座内で特定の商品に積み立てた掛金が全額所得控除の対象になる
- iDeCo口座内での投資の運用益、定期預金の利子が非課税になる
- 加入後、原則60歳まで資金を引き出せない
- 対象商品は投資信託の他、定期預金や保険など元本確保型商品もある
- 投資可能額は国民年金の被保険者区分などに応じて、年額14.4万円~81.6万円まで
- 口座の開設・管理に手数料がかかる
iDeCoは所得控除の対象になるため、もっとも節税効果が高い投資と言えます。
しかし、その反面として60歳まで資金が引き出しできず、毎月口座の管理手数料がかかるというデメリットもあります
老後資金をためるのであればおすすめの投資ですが、教育資金の積み立てなどには使えないため留意しておきましょう。
方法③:総合課税方式の投資をする
所得が一定額以下であれば、総合課税方式での投資によって投資の税率を抑えることができます。
株式投資など、一般的な投資の利益にかかる税金は申告分離課税で、税率は20.315パーセント(=所得税15.315%+住民税5%)です。
しかし、総合課税方式の投資は、投資の利益にかかる税率は15パーセントから55パーセント(=所得税5%+住民税10%~所得税45%+住民税10%)です。
もし、個人の所得税率が5パーセント(課税所得が195万円以下の方)なら、投資にかかる税率は15パーセントです。
こうなると、20.315パーセントの申告分離課税方式よりお得ですよね。
しかも、1ヶ所から給与を受けている給与所得者の場合、投資の利益にかかる雑所得が年間20万円以下なら確定申告不要です(※住民税は申告必要)。
課税所得が195万円以下で所得税率が5パーセントという方の場合は、総合課税方式の投資をすることも一つの方法ですよ。
総合課税方式の投資には、「仮想通貨」と「ソーシャルレンディング」があります。
1.仮想通貨
仮想通貨とは、インターネット上での取引の対価に使用できる電子通貨で、他の通貨と同様に電子的な決済に利用できることが特徴です。
仮想通貨は歴史が浅いということもあって値動きが激しく、一般的に「ハイリスク・ハイリターン」の投資に分類されます。
思わぬリターンを得て所得額が大きく膨らんでしまえば、累進課税により高額な税金が課される可能性もあります。
そのため節税目的で投資をする際は、少額からはじめるようにしましょう。
2.ソーシャルレンディング
ソーシャルレンディングとは、インターネット上でお金を貸したい人と借りたい人を結び付けるマッチングサービスです。
お金を貸したい人は、サービスの運営事業者を通じて間接的に資金を融資し、融資に対する利息を受け取ることが可能です。
投資した資産の値上がりによって利益を得る手法ではなく、投資した資産の利息によって利益を得る手法なので、比較的安定的なリターンを得られることが特徴です。
ただし、ソーシャルレンディングは仮想通貨と同様、投資の歴史が浅くまだまだ発展途上の投資です。
ミドルリスクとはいえ元本を失う可能性もあるため、投資の際は慎重に、よく事業者を調べて行うようにしましょう。
なお、ソーシャルレンディングについてはこちらで詳しく解説しています。
まとめ
投資の税金は、投資の実質リターンを大きく左右する存在です。
そのため、投資を始める際は次の3つのポイントに気をつけ、リターンを少しでも大きくしてください。
- 投資方法や利益の種類によって課税方法は違う
- 投資の課税方法は大きくわけて3つ。
- 確定申告不要制度(税率20.315%/確定申告不要)
- 申告分離課税(税率20.315%/確定申告必要)→株式や投資信託は特定口座の利用で確定申告不要にできる
- 総合課税(累進課税で15%~55%/確定申告必要)
それぞれ税率や確定申告の有無、配当控除の適用などが変わってくるので要注意
- 合法的に節税する方法は3つ。
- NISA口座を利用する(株式投資/投資信託)
- iDeCoを利用する(投資信託)
- 総合課税方式の投資をする(仮想通貨/ソーシャルレンディング)
どんな投資を選ぶのかで、節税できる方法は異なります。
各投資法の税金体系についてしっかり理解したうえで、自身に合う投資を選ぶようにしてくださいね。