資産運用の重要性が叫ばれて久しい昨今、いざ投資方法を調べてみてもたくさんあり過ぎて、なかなか手を出せない方も多いことでしょう。
たくさんある投資の中でも、リスクがかなり小さい「元本保証型」の投資があります。
本記事では、元本保証型の投資が非効率であること、そしてリスクを小さく抑えたまま、資産を増やしていくための方法について解説します。
目次
元本保証とは
元本保証を理解するために、まずは「元本」について解説します。
元本は、平たく言えば「最初に投資する金額」のことです。
例えば、最初に20万円を投資したなら、この20万円が元本ということです。
そして、「元本保証」とは、投資をした際に、元本が保証されていることを指します。
すなわち、「いつ投資した金額を手元に戻したとしても、元本より低い金額になること(これを「元本割れ」と呼びます)はない」ということです。
したがって、投資をする上で元本割れを起こすリスクがまったくありません。
元本保証と元本確保
投資における元本保証を理解する上で、もう一つ理解しておかなければならない用語があります。
それが「元本確保」です。
一見、「元本保証」と何も違いがないように思えるかもしれませんが、実は大きく異なる性質を持ちます。
元本保証は、いつ投資金額を引き出しても元本割れするリスクはありません。
一方で、元本確保は投資対象が満期を迎えた時にのみ元本の返還がある形です。
そのため、満期を迎えていないまま投資金額を引き出した場合、元本割れをするリスクがあります。
元本保証型の投資方法
本記事では、元本保証の投資と元本確保の投資を合わせて「元本保証型投資」とし、投資方法の紹介をしていきます。
次の5つの方法について詳しく解説していきましょう。
- 定期預金
- 個人向け国債
- 社債
- 貯蓄型保険
- 公社債投資信託
投資方法①:定期預金
元本保証の唯一にして低リスク投資の王道、「定期預金」です。
定期預金は、普通預金よりも流動性の低い預金方法で、気軽にお金を引き出すことができない代わりに金利が高くなるというものです。
ただし、現在のような低金利時代においては金利の差も限定的で、雀の涙ほどの金利しかつきません。
2020年5月時点では、某メガバンクの普通預金の金利は0.001パーセントほどで、定期預金の金利は0.002パーセントほどです。
これは、例えば1,000万円を1年間定期預金で運用したとしても、200円の金利しか付かない計算です。
元本割れのリスクがないにせよ、少しでも運用益を多く出したい人にとっては、もはや意味のない方法だと言えます。
投資方法②:個人向け国債
政府が発行している個人向けの国債です。
こちらも、国(日本)が破綻しない限りはしっかり償還されるため、極めて保全性の高い投資方法です。
出典:財務省
個人向け国際も、金利は最低0.05パーセントとかなり低めです。
「最低」とあるため実際はこれよりも高いこともありますが、現状国が発行する3種類の国債(変動金利型10年満期、固定金利型5年満期、固定金利型3年満期)すべてにおいて、最低金利の0.05%となっています(2020年5月時点)。
つまり、1,000万円で国債を買ったとすると、1年で5,000円の金利が付く計算です。
定期預金よりはかなり良い方法だとは言えますが、差額は年間4,800円です。
これを投資対効果として充分と言えるでしょうか?
人によって意見は分かれるところですが、運用益と呼ぶには少々寂しいと言えるでしょう。
投資方法③:社債
社債は、国債の会社バージョンです。
国ではなく会社なので、倒産リスクというものが存在する分、国債よりも金利は高めのものが多いです。
ただし、これはケースバイケースで、金利が高めのところもあれば低めのところもあります。
なお、金利が高ければ良いというわけでもありません。
金利が高いということは、それだけ貸し手が付きにくいことを意味しています。
金利とリスクには、一定の相関関係があると考えて良いでしょう。
これは需要と供給の関係を考えるとわかってくるものです。
例えば、倒産の危険性がある会社の社債は、買い手がつく可能性が少ないことから、金利が高くなる場合がほとんどです。
投資方法④:貯蓄型保険
預金や国債・社債に比べて少しマイナーな方法かもしれませんが、貯蓄型の保険に加入する方法もあります。
解約返戻金や満期返戻金が、掛けた額と同額程度かそれより多く返ってくるようなタイプの保険のことを指す場合が多く、保険である性質からいざという時の保険としても活用することができます。
一見、一石二鳥でとても良い方法だと思うかもしれませんが、早期に解約した場合などは元本割れする場合が多く、また資金の流動性という観点では「いざという時」が保険適用の病気など以外だった場合において、半ば強制的に解約をして元本割れを起こすようなケースもゼロではありません。
将来的な不安を軽減するための投資としては、ある一定の効果があるかもしれませんが、手元資金を有効活用するための方法としては、保険は有効とは言いがたい側面があります。
投資方法⑤:公社債投資信託
公社債投資信託とは、国や自治体が発行する債権や会社が発行する社債(これをまとめて公社債といいます)への投資をまとめて行ってくれる商品(投資信託)を購入することです。
公社債は、先ほど説明した性質より、株などに比べて安全性が高いことが特徴ですから、公社債投資信託はリスクを少なく抑えて資産運用をしたい人に向いた商品です。
ただし、いくら資金を運用するとしても、その運用先が公社債に限られるため、投資対効果は極めて限定的になると言えます。
元本保証型投資の実態
ここまで、元本保証型の投資方法について紹介しました。
一般的に、リスクの低い投資方法として紹介され、元本保証や元本確保があることによって安心する方も多いと思います。
しかし、これらの投資方法にもデメリットがあることは確かです。
それらを深くお伝えしていきましょう。
実態①:低い利回り
元本保証型投資方法の紹介でも何度もお伝えしたように、元本保証型の投資は総じてとにかく利回りが低いです。
元本が安全であるという状態は、いわば「貯金(お金を貯めている)」状態とほぼ同じです。
それに日本は預金大国ですから、いくら預けたお金で利益を上げたとしても、その利益を享受する人間が多すぎて、どうしても利回りは非常に低いものになってしまいます。
多くの人がやっていることと同じ商売をしてもなかなか上手くいかないのと一緒で、世の中の大半の人と同じような投資をしても利益の享受は限定的です。
実態②:インフレリスク
元本保証型投資のデメリットとして、お金自体の価値が下がることによるリスク、いわゆる「インフレリスク」が強く働くことも考えおかなくてはなりません。
インフレリスクとは、物価上昇(=金銭価値の低下)によって、自分自身が所有している金融資産が相対的に目減りしてしまうことです。
例えば、100円のペンが物価上昇によって200円になった場合、元本保証型の投資しかしていないと、持っている資産が相対的に半分になったのと同じことになります。
こうしたリスクに対処するということも、投資を考える上では重要な視点です。
実態③:実際のところ元本保証は存在しない
ここまで元本保証型の投資について説明してきましたが、実は元本保証というものは存在しません。
先ほど、完全な元本保証は預金のみであることをお伝えしましたが、この金額は限定的なものです。
元本保証は1000万円までの預金のみ
「ペイオフ制度」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
この制度は、例えば金融機関が倒産した際に、預金保険機構というところが金融機関に代わって預金を一定額まで払い戻す制度のことなのです。
このペイオフ制度には、1,000万円という上限額があります。
つまり、1,000万円までなら元本保証をしてもらえるのですが、それを超える預金をしている場合は保証がされないため注意が必要です。
低リスクの投資をする際に考えておきたいこと
ここまで、元本保証型投資の投資対効果の低さがおわかり頂けたでしょう。
ここからは、元本保証型ではないけれど、比較的低リスクで始めることができる投資(本記事では「低リスク型投資」と呼びます)について考えていきましょう。
投資を考える上での観点はいくつもありますが、次の3点に絞って説明していきます。
- 手軽さ
- 分散投資とトータルリターン
- ドルコスト平均法
ポイント①:手軽さ
元本保証型投資を好む人の傾向に、「投資が怖い」というマインドがあります。
「投資についてよく知らないから、リスクを負って投資するなんてできない」と考えてしまう人が多いのです。
当たり前ですが、投資はやってみて初めてわかることもたくさんありますから、多少のリスクだったり手間というのは勉強代の一部だと思って、いろんなことにチャレンジしてもらいたいです。
ここで重要になるのが「手軽さ」です。
どれだけハイリターンを望める投資方法があったとしても、素人が手を出すと大損してしまう場合があるように、初心者には初心者なりのリスクの取り方があります。
リスクの低い投資方法にも、手軽なものがたくさんあります。
本記事後半で、その一例を紹介しています。
ポイント②:分散投資とトータルリターン
「分散投資」も「トータルリターン」も初めて聞く方にとっては、理解するには少々難しい概念かもしれません。
わかりやすく詳しく説明していきますね。
分散投資
「分散投資」とは、読んで字の如く、投資を分散させることを意味します。
例えば、金融資産のうち、投資に回すための資産を1,000万円持っていたとしましょう。
500万円を「投資信託」に回し、残り500万円を「個別株式」の購入をするといった手法は、分散投資の一つと言えます。
この分散投資がなぜ重要かというと、世の中の投資先の値動きというのは、一律に決まっているわけではないからです。
景気が良くなるとそのまま値が上がるものもあればその逆のものもあり、非常に複雑です。
これをわかりやすくしたものの一つが投資信託です。
ある程度どのようなものに投資するかは決まっていても(株式なのか債権なのかなどの方向性)、一つの投資先に全額掛けるようなことはまずありません。
したがって、投資信託自体が分散投資の一つの方法だと言うことができます。
分散投資をすることによって、それ自体がリスク軽減になり得ます。
一つの投資対象のみだとそれにかかるリスクの比重が大きくなるため、投資先を分散することによって、自らの保有資産の変動幅を抑制する効果を期待することができます。
トータルリターン
分散投資が理解できたら、さらに上の「トータルリターン」についても知っておきたいところです。
「トータルリターン」も読んで字の如く、すべての投資結果の合計を意味します。
特に初心者の場合によく見られる傾向ですが、分散投資によって各投資先の値動きに変動が生じ始めると、その値動きに一喜一憂してしまうものです。
「ある投資先の値が上がったから買い増ししよう」とか「値が下がったから早めに損切りしよう」と考えてしまうものですが、これでは時間がいくらあっても足りません。
基本的に、投資初歩の段階で気にするのは「トータルリターン」に絞ると良いでしょう。
トータルで見てそれほど大きな変化が出ていないようであれば、分散投資がある程度うまく機能していると判断することができます。
ポイント③:ドルコスト平均法
ここまでは、「投資先」を分散させることについて見てきました。
この他に重要な視点となるのが、「投資するタイミング」を分散させることです。
言葉で説明するよりも、ケーススタディの方が理解がしやすい内容のため、次の事例で説明しましょう。
1株1万円の株式を、100万円を払って100株を一括で購入したとします。
そして、半年後1株5,000円まで下がってしまったとします。
そのまた半年後、1株11,000円まで上昇したとします。
箇条書きにすると次のように変化したということです。
- 100万円で1株1万円の株式を100株購入
- 評価額:1株1万円 100株保有→100万円
- 半年後、1株5,000円に下落
- 評価額:1株5,000円 100株保有→50万円
- さらに半年後、1株11,000円まで上昇
- 評価額:1株11,000円 100株保有→110万円
この場合、投資による利益は10万円です。
年利10パーセントなので、これでも十分素晴らしい成績と言えますが、投資するタイミングを分散させた次のケースを考えてみましょう。
- 50万円で1株1万円の株式を50株購入
- 評価額:1株1万円 50株保有→50万円
- 残り50万円は預金で保有
- 5ヶ月後、1株5,000円に下落したタイミングで、残りの50万円を使って株式を100株購入
- 評価額①:1株5,000円 50株保有→25万円
- 評価額②:1株5,000円 100株保有→50万円
- 評価額合計 = 評価額① + 評価額② = 75万円
- さらに5ヶ月後、1株11,000円まで上昇
- 評価額①:1株11,000円 50株保有→55万円
- 評価額②:1株11,000円 100株保有→110万円
- 評価額合計 = 評価額① + 評価額②=165万円
少しわかりにくいかもしれませんが、投資による利益が65万円、年利は65パーセントに上昇しています。
実際にはここまで値動きの激しい事例は滅多にありませんが、今回はわかりやすさを優先し、このようなケースを仮定しました。
このように、投資するタイミングを分散させる手法を「ドルコスト平均法」と呼びます。
具体的には、常に一定の金額を、時間を分散して定期的に投資する方法のことです。
この手法を採用することにより、値上がり時は買い入れる量が自動的に下がるため、値下がりに対するリスクヘッジになっており、値下がり時は安い価格で大量に買い入れるチャンスと見ることが可能になります。
低リスクで資産を増やすための方法
では、実際に「手軽」に「ドルコスト平均法」を用いた「分散投資」ができる投資方法を紹介しましょう。
次の4つの方法について、それぞれ詳しく解説していきます。
- iDeCo(個人型確定拠出年金)
- 積立投資信託
- ロボアドバイザー
- ソーシャルレンディング
方法①:iDeCo(個人型確定拠出年金)
個人型確定拠出年金、通称iDeCo(イデコ)は、国が奨励している投資方法の一つで、とても手厚い税制優遇が受けられる投資方法です。
確定拠出年金なので、毎月決まった金額を投資します。
さらに、投資した金額が全額所得控除になるため、働いている方は年末調整、そうでない方は、確定申告によって所得税の優遇を受けることができます。
基本的に投資先は自分自身で選び、途中で変更も増えるため、ある程度自分のリスク許容度に応じた自由な投資が可能です。
方法②:積立投資信託
積立投資信託は基本的にはiDeCoと同じようなものですが、iDeCoには毎月の掛け金に上限があったり、一定の年齢に達したりするなど、条件を満たさない限りは、お金を引き出すことができません。
このあたりの自由度が欲しい方によっては、積立投資信託の方が良い選択肢になる可能性があります。
iDeCoほどではありませんが、積立投資信託も国によって推奨されている投資方法の一つで、「NISA」や「つみたてNISA」などの国の制度によって、所得税が優遇されます。
方法③:ロボアドバイザー
ロボアドバイザーは、iDeCoや積立投資信託よりも広い範囲で投資を任せることができる投資方法です。
一般的には、最初に投資に関するスタンスやリスク許容度などに関する質問に回答していき、その回答をもとに、投資に特化したAI(人工知能)が投資先を自動で決定し、投資をしていくような流れです。
税制優遇などは現時点でありませんが、人間の気持ちに左右されない投資をすることができます。
定額積立の設定をすることも可能なので、安定して資産を増やしていくのに適した投資方法の一つと言えます。
方法④:ソーシャルレンディング
ソーシャルレンディングについては、上の3つの方法とは大きく異なる考え方によるもので、簡単に言えば公社債よりも範囲の広い貸付を意味します。
公社債は、貸し手が自分自身だけで、基本的に1対1の資金融通となりますが、ソーシャルレンディングでは複数の借り手と複数の貸し手の資金融通が可能です。
例えば、成長性のある企業は、まだ成長していない時点においては金融機関で資金を借りることができるほどの信用を得ていない場合があります。
こうした企業に資金を貸し、その企業が成長することによってリターンを得るという構造です。
厳密に言えば、ソーシャルレンディングは「投資」ではなく「資金融通」のため、借入をした企業が債務不履行に陥らない限りは元本は返って来ます。
ソーシャルレンディングについてより深く知りたいという方は、こちらで詳しく解説しています。
まとめ
元本保証型投資の例と非効率な点、そして比較的低いリスクで投資をするための方法を解説しました。
最初は、投資でリスクを取るというのは勇気の要ることですし、実際に投資してみた後で、評価額がマイナスになったりすると、耐えられなくなってしまったりするものです。
しかし、投資というのは、根本的に我々が普段行っている「消費」という行為以上に経済を回すには重要な概念です。
投資をきっかけに、経済ニュースが急に自分ごとのように感じるようになった方も、きっと多くいらっしゃることでしょう。
本記事をきっかけに、「投資について、もう少し詳しく学んでみよう」と思って頂けたなら幸いです。