資産運用デビューするきっかけの一つとして多いのが、退職金でまとまったお金をもらったケースです。
この記事をご覧の方も同じような状況かもしれませんね。
しかし、「投資に失敗したらどうしよう」という漠然とした不安もあるのではないでしょうか?
この記事では、退職金を運用するメリットはもちろん、リスクについても徹底的に解説していきます。
どうすればリスクを抑えて投資できるのか、おすすめの商品は何かについても解説していきますので、ぜひ役に立ててくださいね。
目次
退職金を運用するメリット
1,000万円から2,000万円といったまとまった収入が一度に手に入るのが、退職金です。
退職金をもらったから資産運用デビューをするという方も多いです。
まずは、運用するとどのようなメリットがあるのかからお伝えしていきましょう。
メリット①:働かなくてもお金を増やせる
資産運用をすると、お金がお金を生んでくれる状態を作れるので、働かなくてもお金を増やすことができます。
「お金がお金を生んでくれる状態」について掘り下げて解説していきましょう。
資産運用とは、投資家の余っているお金を企業などに出資し、事業をするのに使ってもらうことです。
見返りとして利益の一部が投資家に還元されたり、企業の価値が上がることによって還元されたりして、利益になります。
すなわち、投資家は汗水流して働かなくて良く、企業の社長や社員が頑張った成果の一部を受け取ることができます。
言い換えると、投資家の「お金に働いてもらっている状態」です。
したがって、お金がお金を生んでくれるのが資産運用と言えます。
現役世代のうちは働かなければお金は得られなかった人も、退職金を運用すればお金を増やせる可能性があります。
まとまった資金があれば利益も大きくなりやすいので、退職金をもらったら資産運用デビューするのが一つの流れになっているのです。
メリット②:年金代わりの収入を得られる
資産運用とは「お金がお金を生む仕組み」なので、年金代わりの収入をもらえるとも言い換えられます。
働かなくても、年金と運用の利益をもらって悠々自適に生活できるなんて憧れますよね。
また、2019年に金融庁が発表したレポートでは、老後にゆとりある生活をするためには、「年金のほかに毎月5万円ほどの資金があると良い」とされています。
夫婦2人で95歳まで生きる場合を想定して5万円なので、5万円より多く必要な人や、少なくても良い人がいるのは確かです。
しかし、年金の他に収入源があると、老後の生活でもストレスが溜まりにくいこともまた確かだと思います。
退職金を運用して年金の他に収入源を作っておけば、暮らしが楽になるでしょう。
毎月5万円の不労所得を得るシミュレーション
金融庁のレポートで、老後にゆたかな暮らしを送るのに必要とされる毎月5万円の収入を、資産運用で手に入れる場合をシミュレーションしてみましょう。
「毎月5万円」ということは、毎年60万円の収入が必要ということになります。
1年間で60万円の不労所得を得るには、どのように投資をしたら良いのでしょうか?
例えば、退職金のうち1,200万円を資産運用に回したと仮定しましょう。
利回り5パーセントの場合、1,200万円に5パーセントをかけて60万円の収入が得られます。
5パーセントの利回りであれば、一般的によく知られた「株式投資」や「不動産投資」で実現できます。
「年間60万円の不労所得」と言うと難しそうですが、退職金のようなまとまった資金があれば、決して無理のない範囲の投資で手に入れられる金額です。
もっと資金が少ない場合は、利回りの高い投資をする必要があります。
600万円しか投資に回せない場合、毎月5万円の収入を得るには10パーセントの利回りが必要となります。
資産運用を始める前の注意点
お金にお金を生んでもらえるメリットがある資産運用ですが、始める前に理解しておきたい注意点があります。
資産運用全般に関する基礎知識を4つ解説していくので、しっかりとチェックしてください。
注意点①:元本割れするリスクがある
投資は「元本割れするリスク」があります。
例えば、100万円投資した場合でも、110万円に増える可能性があると同時に、90万円に減る可能性もあります。
元本が保証されている預金とは異なる商品なので、注意しましょう。
1円でも元本を減らしたくないのであれば、預金するしかありません。
ただし、預金だと金利がほとんどゼロなので、お金は増えません。
注意点②:リスクとリターンは比例する
投資には元本割れのリスクがあることを解説しましたが、「リスク」と「リターン」は比例の関係にあります。
つまり、高いリターンを求めるなら、それ相応のリスクの高い投資をする必要があります。
リスクを低く抑えたいなら、リターンの低い投資で我慢するしかありません。
この後に紹介するおすすめの資産運用方法では、具体的な投資方法とともにそれぞれの平均的なリターン(利回り)も解説しています。
利回りが低い方がリスクが低く、利回りが高い方はリスクも高いのだということを理解した上で読み進めてください。
注意点③:短期で儲けることは難しい
投資は長い時間をかけて資産を成長させるものなので、すぐにお金が増えるものではありません。
筆者はFP(ファイナンシャルプランナー)なので、ときどき「1年で資産を2倍に増やしたい」といった目標を相談されるのですが、これは無謀です。
1年間で100パーセントの利回りを取らなければならず、非常に「ハイリスク」な投資方法をせざるを得ないのです。
投資というより、もはやギャンブルです。
雑誌やネットでもてはやされる凄腕デイトレーダーであれば、確かに1年で資産を2倍に増やせているかもしれません。
ですが、それは運と実力が味方した結果なので、誰にでも再現できるものではありません。
長期的な運用とは、言い換えれば20年かけて2倍か3倍くらいに増やす程度です。
時間はかかりますが、これだけ増やせれば十分です。
これくらいのゆっくりしたペースで運用していくことを念頭に、投資をしていきましょう。
注意点④:投資先を分散させる
低リスクの運用を行うには、投資先を分散させることが重要です。
一つの投資先に全財産を投資した場合、その投資先が破綻したら全財産を失うことになってしまうかもしれません。
集中投資とはそれだけ危険なことなのです。
一方、複数の投資先に分散して投資すれば、そのうち一つの投資先が破綻しても運用資産全体が被るダメージは少なくて済みます。
低リスクの運用をするためにも、投資先は分散させた方が良いでしょう。
退職金の運用の注意点
先ほどは、資産運用全般に言える注意点を解説しました。
ここからは、退職金の運用ならではの注意点を解説していきましょう。
退職金をもらった後は、労働しない人がほとんどだと思います。
最後にもらえる仕事の報酬なので、給料がもらえる現役世代とは異なる注意点があるのです。
注意点①:現金を残しておく
運用する場合も運用しない場合も、退職金は老後の暮らしを支える大切なお金です。
年金だけで生活できない場合、退職金からお金を取り崩して使っていくことになります。
そのため、退職金をすべて投資に回すことはおすすめできません。
一部は現金で預金しておき、必要なときに引き出せるようにしておきましょう。
また、投資には元本割れのリスクがあるので、余剰資金だけを運用するようにしましょう。
生活費として残しておきたい金額は預金しておき、最悪ゼロになっても生活に影響しない金額で投資していきましょう。
注意点②:低リスクの方法で運用をする
退職金を投資したところまでは良かったものの、運用に失敗してお金が減ってしまったら悲劇ですよね。
退職した人はもう働かないと思いますので、収入は年金しかない人が多いでしょう。
現役世代と違って給料からの補填ができないため、退職金の運用では減らさない「守りの運用」が向いています。
投資には「低リスク」から「高リスク」までさまざまな方法があります。
退職金の運用では元本割れのリスクを取りすぎない方が無難なので、低リスクな運用方法を中心にすると良いでしょう。
高リスクな投資方法にも挑戦したい場合、少額に制限するなどしてリスクをコントロールしてください。
退職金の運用におすすめの投資方法
退職金のうち、余剰資金を運用するのにおすすめの投資方法を解説していきましょう。
次の7つの投資方法について、メリットやデメリット、どんな人に向いているのか紹介していくので、比較してみてください。
No. | 投資方法 | メリット | デメリット | 平均的利回り | おすすめの人 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 退職金専用の定期預金 | 元本保証 | 高利回りは3ヶ月のみ | 0.1%~1% | 退職金が入った直後の人 |
2 | 国債 | 低リスク | 低利回り | 1%弱 | 低リスクの運用をしたい人 |
3 | 投資信託 | プロが運用 | 手数料がかかる | 1%~3% | 大きな額を運用したくない人 |
4 | ETF(上場投資信託) | 投資信託より手数料が低い | 売買の方法が難しい | 3%~5% | 投資信託に精通した人 |
5 | 不動産投資 | 安定した不労所得が得られる | 必要資金が大きい | 5%前後 | 会社員 |
6 | 株式投資 | 収入が複数ある | 銘柄分析が難しい | 5%前後 | 株主優待にメリットがある人 |
7 | ソーシャルレンディング | 利回り高い | リスクが高め | 5%~10% | 利回りを上げたい人 |
おすすめ①:退職金専用の定期預金
退職金を預金で運用するなら、一般的な定期預金ではなく、退職金専用の定期預金がおすすめです。
通常の定期預金だと、金利は最高でも0.02パーセントほどですが、退職金専用の定期預金なら0.1パーセントから1パーセントの金利が狙えるからです。
預金は投資と異なり、1,000万円までの元本とその利息が保証されます。
投資だと元本割れのリスクがありますが、預金だとお金が減るリスクがないことがメリットです。
デメリットは、退職金専用の定期預金で高金利なのは3ヶ月ほどで、その後は普通の定期預金と同じくらいの利回りに下がってしまうことです。
高金利なのは預けてから3ヶ月だけ、というわけです。
「保全性が高い運用」で「高金利」という2つのメリットは3ヶ月限定なので、退職金専用の定期預金は、退職金をもらった直後の人におすすめの運用方法です。
その後は別の方法で運用し、不労所得を稼ぐとが良いでしょう。
退職金専用の定期預金は、300万円から500万円を最低申込額に設定している銀行が多いです。
おすすめ②:国債
国債は国にお金を貸し、あらかじめ決まった満期になったら元本が返ってくる運用方法です。
満期までの間、あらかじめ決まった利息が得られます。
国債も元本割れのリスクがゼロではありませんが、投資の中では非常に低リスクに運用できるメリットがあります。
投資先が国なので、日本などの先進国の国債であれば、ほとんどの場合は予定どおりに運用されるからです。
デメリットは、利回りの低さです。
マイナス金利という悪い環境もあって、2020年現在の利回りは1パーセント弱が目安です。
まずは退職金専用の定期預金で運用し、その期間が終わった後に低リスクの投資がしたい人には国債がおすすめです。
利益は少なくても、元本割れのリスクを可能な限り減らしたい人におすすめの商品です。
1万円ほどから始められますよ。
おすすめ③:投資信託
投資信託は、大勢の投資家のお金をまとめて投資会社に所属するプロが運用する商品です。
プロが運用してくれるため、初心者で投資に関する知識が少ない人でも始めやすいことがメリットです。
デメリットとしては、プロに任せるため手数料がかかることです。
投資信託の手数料の一つである「信託報酬」は、投資信託を保有している間はずっとプロに支払うものです。
似たような投資信託があったら、信託報酬の安さでも比較してみると良いでしょう。
投資信託の平均利回りは1パーセントから3パーセントほどです。
100円から始められるため、いきなり退職金をまとめて投資するのが怖いという方が最初に始めるのにおすすめです。
おすすめ④:ETF(上場投資信託)
ETFは日本語で「上場投資信託」という商品で、投資信託の仲間です。
プロに運用を任せられることや、信託報酬を支払うことも同じです。
ETFのメリットは、信託報酬などのコストが投資信託よりも安く抑えられていることです。
そのため、利回りはやや高く3パーセントから5パーセントほどを期待することができます。
一方で、投資信託よりも売買の方法が難しいデメリットがあります。
証券取引所に上場している商品のため、日中の取引所が開いている時間帯に注文を出さなければなりません。
投資信託よりもコストが安いものの、難しいのがETFです。
投資信託などで投資に慣れてきた人は、ETFの取引も問題なくできるはずなので、慣れてきたらETFを始めてみると良いでしょう。
なお、ETFは5万円前後の資金から始めることができます。
商品によって1単位の価格が異なりますが、20万円ほどあればかなり選択肢が広がります。
資金の面からも、投資信託よりはハードルが高めです。
おすすめ⑤:不動産投資
不動産投資は、不動産を買って賃貸住宅にして、入居者から家賃をもらう投資方法です。
利回りは5パーセント前後が目安です。
不動産投資のメリットは、収入が安定しやすいことです。
入居者が頻繁に入れ替わることはあまりないため、一度入居者が決まれば、数年間は決まった収入が毎月入って来ます。
一方、不動産投資のデメリットは必要資金が膨大なことです。
物件を買って始めるので、数千万円から数億円といったお金がかかります。
ほとんどの投資家は不動産投資ローンを組んで始めていますが、ローンを組むこと自体に覚悟がいる投資だと言えます。
資金のことを考えるとハードルが高い投資ではありますが、安定した収益が魅力の運用方法です。
サラリーマンなど安定した職業の方はローンの審査にも通りやすいため、検討してみてください。
おすすめ⑥:株式投資
株式投資は、企業にお金を出資して企業の利益の一部を配当金としてもらう投資方法です。
株価が値上がりすれば、安く買った株式を高く売ることでも利益を出せます。
利回りは5パーセント前後が目安です。
株式投資のメリットは、配当金や売却益だけでなく、株主優待も期待できることです。
株主優待の制度を導入している企業の株式を買うと自社製品や割引券などをもらえるため、節約ができます。
現金に換算するとかなりお得な優待もあり、優待目当てで投資する人も大勢います。
デメリットは、銘柄分析が難しいことです。
長きにわたって投資し続けられる将来有望な企業を選んで投資することは簡単なことではありません。
投資や企業の財務などの知識も必要になるため、最初は難しいかもしれません。
株式は株主優待をもらえるメリットが大きい投資なので、優待で欲しい銘柄があれば挑戦してみると良いでしょう。
必要な資金は銘柄によって異なりますが、最低でも5万円は欲しいところです。
100万円ほど資金があれば、多くの銘柄から選べるでしょう。
おすすめ⑦:ソーシャルレンディング
ソーシャルレンディングは、企業がインターネット上で資金調達をする仕組みです。
投資家は企業の事業計画や予定の利息の資料を見て、投資先を選びます。
クラウドファンディングの一種で、「融資型クラウドファンディング」と呼ばれることもあります。
ソーシャルレンディングのメリットは、利回りの高さです。
5パーセントから10パーセントの利回りを狙えるため、少ない資金でも多くの不労所得を手にすることができます。
一方、デメリットは利回りが高いぶんリスクも高いことです。
リスクとリターンは比例するとお伝えしたとおり、ソーシャルレンディングはリスクが高めです。
新しいサービスなので玉石混合で、予定通りに運用できる優良な案件と破綻してボロボロになる案件の両極端が存在するのです。
とはいえ、このデメリットは優良なソーシャルレンディング業者を選べば恐れるほどのリスクにはなりません。
実績のあるソーシャルレンディング業者で投資をしましょう。
ソーシャルレンディングは1万円から始めることができます。
リスクが高いので、退職金の中でも余剰資金の一部を使って投資すると良いでしょう。
特に、預金や国債を中心に運用しており、利回りの低い投資をしている人が利回りを上げるのにおすすめです。
なお、ソーシャルレンディングは先ほどお伝えしたように比較的新しい投資方法です。
こちらでかなり詳しく解説しているので、一度目を通しておきましょう。
まとめ
退職金の運用について、必要性やおすすめの投資商品について解説してきました。
退職金の運用は、現役世代の投資と違って失敗したら補填できずやり直しがききません。
限りある資産を上手に運用して増やせるよう、低リスクの投資を心がけると良いでしょう。
こちらでは、リスク・リターン別に資産運用の方法を詳しく解説しています。
失敗したくないという慎重な方は、チェックしておきましょう。