いままで投資をしたことがない人に、投資をおすすめするサイトや記事が増えてきて、「長期投資だから結果が出やすい」などと説明されていることが多いです。
しかし、そもそも「長期投資が何か」がわからなければ、どうして結果が出やすいのかわからないですよね。
確かに、初心者にとっては長期投資の方が易しく、短期投資は難しいです。
この記事では、なぜ長期投資の方が簡単で初心者におすすめできるのか、論理的に解説していきます。
また、長期投資のメリット・デメリット、おすすめの商品についても解説しました。
長期投資と短期投資
長期投資と短期投資は、一つの商品に投資している期間が長いか短いかが異なります。
- 長期投資:1年以上の投資
- 短期投資:1日から数ヶ月の1年未満の投資
と考えると良いでしょう。
さらに、期間が異なるため、長期投資と短期投資では利益の出し方が異なります。
例えば、業績の良い企業の株価は基本的には右肩上がりです。
しかし、毎日刻刻と株価は動いているので、日ごとに見れば細かな上下の値動きを繰り返しています。
つまり、有望な株式でも短い期間の上下を繰り返しながら、長い目で見れば右肩上がりに成長していくものです。
長期と短期の2種類の値動きがあることがおわかりいただけるでしょうか?
長期投資では、長い目で見たときの右肩上がりによって利益を得ます。
短期投資では、短い期間の価格の上下を利用し、安く買って高く売ることで利益を得ます。
投資家の目的によって、どちらの利益の出し方が合っているのかは異なります。
それぞれの利益の出し方を説明し、どのような人に向いているのか整理していきましょう。
一般的には、
- 長期投資:初心者向け
- 短期投資:上級者向け
とされています。
長期投資は初心者向け
長期投資は一つの商品を数年間保有し、じわじわと利益を得る方法です。
「安く買って高く売る」ことで得られる値上がり益と、配当金や分配金などの不労所得の両方を狙うことができます。
値上がり益と不労所得の合計は、年率1パーセントから5パーセントほどが平均的な利回りです。
後で解説する「短期投資」と異なり、1年で2倍、3倍に資産を増やすことは、ほとんど不可能だと思ってください。
ですが、投資に時間をかけられるため、企業の成長とともに資産も値上がりしていくと考えられます。
そのため、少しずつではありますが安定した増やし方を期待できる投資方法です。
長期投資の場合、将来有望な企業に投資をすることができれば、あとは放っておくだけで値上がりしますし、配当金や分配金を受け取れます。
短期投資と異なり、投資の経験が浅くトレードスキルがない人でも始めやすい投資方法です。
そのため、「初心者はまず長期投資から」と言われるのです。
短期投資は上級者向け
短期投資は、短い期間での株価などの上下のゆらぎを利用し「安く買って高く売る」ことで値上がり益を得る投資方法です。
短い期間で手放すため、基本的には配当金や分配金をもらう権利を得ずに売買することになり、不労所得は得られません。
短期投資のメリットは、上手く売買できれば1年で資産を2倍以上に増やすことができる点です。
しかし、これは非常に難しく、実践できている人はほんの一握りです。
ほとんどの短期投資家はマイナスの利回りで、投資に失敗しています。
なぜ短期投資が難しいのかというと、短期の価格の上下は、企業の成長などの実態をともなわないゆらぎだからです。
その投資商品を買いたい人・売りたい人のバランスで価格が決まるため、参加する投資家の「心理」を読まなければ、安く買って高く売ることなどできません。
したがって、短期投資の経験がないと成功しにくく、投資の上級者にしかおすすめできないのです。
長期投資が向いている人
長期投資は難易度が低く、初心者を始めとしたさまざまな人におすすめすることができます。
特にどんな目的での運用に向いているのか、3つの目的を例に解説していきましょう。
老後に向けて資産形成したい人
現在サラリーマンなどの現役世代で、老後に向けた資産形成をしたい人には、長期投資がおすすめです。
退職まで数年、数十年と時間があるため、慌てて短期的にお金を増やさなくても長期でじっくり安定的に増やしていけば良いからです。
また、本業のある方が資産形成をする場合、資産がほとんどない状態から始めても投資でお金を貯めることができます。
毎月1万円でも、20年間積み立てれば400万円以上になります(利回り5パーセントの場合)。
元手は240万円ですが、2倍近くに増やすことができるのです。
退職まで30年、40年ともっと時間がある人は、より大きな資産を形成できるでしょう。
コツコツ投資をすれば大きな結果になるのが、長期投資です。
負担にならない金額からで良いので、毎月の積立投資をして老後に向けた資産形成をすると良いでしょう。
不労所得で収入を増やしたい人
不労所得を得たい人にも、長期投資がおすすめです。
投資の不労所得と言えば、
- 株式投資の配当金
- 国債の利息
- ソーシャルレンディングの分配金
などですが、これらを受け取るためには長期投資が前提となります。
国債やソーシャルレンディングは満期が決まっているため、それまで保有することが基本原則です。
また、株式投資は「〇月〇日に保有している人に配当金を出す」と銘柄ごとに決まっているため、この日に保有している必要があるのです。
この日を権利付き最終日と呼びます。
株式の場合、短期投資でも配当を受け取ることは可能です。
権利付き最終日に株式を買い、翌日の権利落ち日に売却するのです。
これは1日しか株式を保有しない短期投資ですが、権利付き最終日に株式を持っているため、配当を受け取ることができます。
ただし、権利付き最終日に株価は高くなり、翌日の権利落ち日に株価は大きく下がる傾向があります。
配当をもらうより値下がりによる損の方が大きくなる可能性が高いため、短期投資で配当を狙う方法はおすすめできません。
長期投資ならこの値動きは無視できるため、配当を狙うなら長期投資がおすすめです。
まとめると、投資で不労所得を得るには長期投資が前提です。
一度保有した銘柄は、業績の悪化などがなければ永続的に配当を出してくれると考えられます。
長期投資で得られる配当金や分配金は、一生もらえる不労所得なのです。
忙しくて投資に手間をかけられない人
忙しくて投資に手間をかけられない人は、放置していても問題が少ない長期投資が向いています。
短期投資は数日のスパンで売買注文を出すため、会社員などの本業が忙しい人には不向きです。
忙しい人は、自動で積み立て投資ができるサービスを使うと手間を節約できます。
あらかじめ選んだ銘柄を定期的に買い付けしてくれるサービスで、投資信託や株式などで使えます。
長期投資のメリット
長期投資を始める前に、メリットとデメリットも整理しておきましょう。
まずは、代表的な3つのメリットを解説していきます。
メリット①:短期の下振れに翻弄されない
先ほどお伝えしたように、長期投資は長い目で見たときに株価などが上がっていれば良いので、短期のゆらぎを無視することができます。
長期投資を始めたばかりの人は毎日の株価などの値動きが気になってしまうものですが、短期の値動きは企業の業績と無関係なことが多いため、気にする必要はほとんどありません。
短期の値動きによるストレスを気にしなくて良いのは、投資家のメンタルに優しいです。
値動きの大きい銘柄だと、毎日のように1パーセント以上の値動きがあることもあります。
これは、短期のトレーダーが買いと売りでバチバチ戦っているからです。
長期的には無視できる動きがほとんどなので、長期投資家はゆったり構えて投資ができます。
メリット②:配当金・分配金で投資額の元を取れる
投資歴が長い投資家は、よく「ボーナスタイムに突入した」と言うことがあります。
これは配当金や分配金で元を取ったため、それ以降の配当金などはノーリスクで得られる不労所得だということです。
具体的に解説していきましょう。
例えば、配当金利回りが5パーセントの株式を100万円分買ったとします。
すると、1年で5万円の配当金を受け取ることができます。
そのまま20年間、配当金の金額が変わらなかった場合、5万円の不労所得を20年間得られます。
この時点で合計100万円の配当金をもらうことができました。
「投資元本の100万円を配当金で回収できた」というわけです。
その後も5万円の配当金をもらい続けた場合、元本は回収し終わっているため、何もないところから毎年5万円が湧いている計算になります。
元を取った後も不労所得を得られるのは、長期投資の大きなメリットです。
メリット③:売買手数料が少なくて済む
売買手数料は、投資商品を購入したり売却したりするときに支払う手数料です。
長期投資では、一度購入した銘柄を数年、数十年と保有するため、売買手数料は少なくて済みます。
一方、短期投資だと数日以内に売買を繰り返すため、売買手数料がかさんでしまいます。
長期投資に比べると、投資家が負担するコストが多いのです。
つまり、長期投資だと無駄なコストを節約できるメリットがあるのです。
長期投資のデメリット
長期投資のメリットをお伝えしましたが、反対にデメリットもあります。
代表的なデメリットを3つ紹介していきましょう。
デメリット①:高齢者だと元を取ることが難しい
メリットで「配当金・分配金で投資額の元を取れる」と解説しましたが、高齢者の場合は何十年も運用できるとは限らないため、長期投資で元を取れない可能性もあります。
人生100年時代なので60代・70代の方は今から長期投資を始めれば元を取れるかもしれませんが、80代・90代になると元を取れるかはわかりません。
株式や国債などを子孫に相続し、子孫の不労所得にしてあげるといった目的があるなら長期投資はおすすめできます。
ただし、自分一人で元を取ることは難しいでしょう。
デメリット②:一攫千金は期待できない
長期投資で一攫千金を狙うことは非常に難しいです。
ユニクロのファーストリテイリングやZOZOのように成長する企業を創業初期のタイミングで発掘できれば一攫千金も可能ですが、それにはかなりの銘柄分析力が必要です。
一攫千金を狙うなら、短期投資の方がおすすめです。
それでも非常に難しいですが、長期投資で一攫千金を目指すよりは難易度は低いです。
デメリット③:将来の予想を立てるのが難しい
長期投資は、投資先の事業が数十年にわたって上手く行くことを期待して投資するものです。
しかし、10年先、20年先、またそれ以上先のことは誰にも予想できません。
したがって、現在の業績や将来性を評価して株式を買っても、10年後には落ち目になって株価が下落していくといったことも考えられます。
下落が続けば元本割れしてしまい、投資に失敗したような状態になることもあり得ます。
長期投資におすすめの投資方法
長期投資について学んだところで、具体的にどのような商品があるのか紹介していきましょう。
この項目では6つの商品を紹介します。
おすすめ①:国債
国債とは、国にお金を貸して利息を受け取る投資方法です。
国への投資となるため、先進国であれば財政破綻するリスクは極めて低く、元本割れしにくいことが特徴です。
国債への投資は利回り1パーセント以下と低いのですが、そのぶん低リスクの運用ができます。
長期投資は長い間信頼できる銘柄に投資することが重要なので、破綻のリスクが低い国債はうってつけです。
おすすめ②:投資信託
投資信託は、大勢の投資家のお金をまとめて投資会社に在籍するプロが運用する商品です。
投資のプロが銘柄選びや実際の運用を行ってくれるため、投資家にとって手間がかからず簡単に始められます。
投資信託は100円以上と少額から始めることができ、自動積立の設定もできます。
しかも、分散投資が基本設計なので低リスクな運用ができます。
長期投資にぴったりの商品なのです。
分散投資とは、さまざまな銘柄に少しずつ投資をすることです。
投資会社に大勢の投資家のお金が集まるので、プロの手によってあらゆる銘柄に分散投資されます。
分散投資すると、ある一つの銘柄で暴落などが起きても、資産全体でのダメージは少なくできます。
なお、投資信託はプロに任せる手数料などのため、利回りは控えめで1パーセントから3パーセントほどです。
ただし、分散投資ができている投資信託は長い目で見ても信頼できると考えられ、長期投資に向いた商品です。
おすすめ③:ETF(上場投資信託)
ETFは投資信託の一種ですが、株式と同じで証券取引所で売買します。
商品の内容は投資信託と同じでプロに運用を任せられる商品なので、同じ理由で長期投資に向いています。
ただし、証券取引所に注文を出して購入するため、投資初心者には少し難しく感じられるかもしれません。
それでも、ETFは投資信託よりも手数料が抑えられている傾向があり、利回りは1パーセントから5パーセントと投資信託より高いため投資するメリットは大きいです。
投資信託から始めて慣れてきたら、ETFも始めてみると良いでしょう。
おすすめ④:ロボアドバイザー
ロボアドバイザーは、投資を自動で行ってくれるサービスです。
投資家のリスク許容度をアンケートで診断し、自動でたくさんの種類のETFなどに投資してくれます。
主にETFに投資する商品なので、投資信託と同様に分散投資で低リスクの運用ができます。
自動で積み立てもしてくれるため、長期投資に向いているサービスです。
ただし、ロボアドバイザーは手数料が高いため、利回りは1パーセントから3パーセントほどです。
自力でETFに投資ができるレベルの人は、あえてロボアドバイザーを使わず自分でETFを買い付けた方が良いかもしれません。
おすすめ⑤:株式投資
株式投資は投資家が企業に出資し、企業は利益の一部を配当金として投資家に還元する投資方法です。
配当金の他に「株主優待」で商品や割引券をもらえることもあり、人気がある投資方法です。
投資家が個別の会社の将来性を見極めなければならないため、株式投資は初心者にとっては難易度が高い投資方法です。
しかし、利回りは3パーセントから5パーセントほどと高めで、株主優待ももらえることもあるため、財務諸表やIR情報がわかる人にはチャレンジしていただきたい投資方法です。
おすすめ⑥:ソーシャルレンディング
ソーシャルレンディングは、インターネット上でお金を借りたい企業とお金を貸したい投資家を結びつけるサービスです。
投資家から直接融資をつのるイメージです。
ソーシャルレンディングを利用する企業は、銀行の融資を断られたり、融資額が少なくてお金が足りず事業ができなかったりする企業です。
そのため、貸し倒れのリスクはありますが、利回りは5パーセントから10パーセントほどと高い投資方法です。
ソーシャルレンディングは、案件を扱う業者によって成功率が大きく異なります。
過去に貸し倒れしたことが少ない業者を選べば、元本割れのリスクは下げられます。
まだ比較的新しい投資方法なので、初めて聞いたという方もいるかもしれませんね。
こちらで詳しく解説しているので、一度目を通した方が良いでしょう。
まとめ
長期投資についてメリット・デメリットやおすすめの商品を解説しました。
企業や経済の成長とともに資産を増やせるため、長期投資は投資初心者に向いている投資方法です。
配当金や分配金で不労所得をもらうことができ、老後など先を見据えた将来の資産形成にも有効です。
これから投資を始める人は、じっくりと資産を育てる気持ちで投資をしてはいかがでしょうか?