海外案件を専門に取り扱うソーシャルレンディング会社「クラウドクレジット」の杉山智行社長が、2019年4月に『さらば銀行。第三の金融が変えるお金の未来』という本を出版しました。
ソーシャルレンディング会社の社長が本を出版すること自体は過去にも例がありましたが、ソーシャルレンディング業界にさまざまな問題がうごめいているいま本を出版したことには、杉山社長のどのような狙いがあるのでしょうか?
本の内容を6に分けてまとめてみました。
目次
①クラウドクレジット杉山社長の経歴
クラウドクレジット杉村社長の著書『さらば銀行。第三の金融が変えるお金の未来』は6章構成になっています。
第1章
第1章では、2018年12月にTV番組「ガイアの夜明け」にてクラウドクレジットが取り上げられたときの内容が中心になっています。
- ソーシャルレンディングというものがどういったものなのか
- クラウドクレジットがなぜこのような独自性のあるソーシャルレンディング事業に取り組んでいるのか
について、フィンテックの発展に絡めて総括的にまとめています。
第1章・第2章
第2章と第3章では、杉山智行社長のこれまでの経歴について触れています。
学生時代のことから、社会人になって証券会社と金融機関で勤務したときの内容が中心となっています。
杉山社長は元々は防衛大学志望でした。
しかし、高校3年のときに、もっと世の中を変える仕事をしたいと志を変え、東京大学法学部への進学を目指しました。
短期間の受験勉強で見事に結果を出し、東京大学に入学することに成功したのです。
しかし、東京大学に入り公認会計士を目指したものの、金融工学の世界に目覚め公認会計士への道を断念。
その後はアセットマネージャーを目指し、大学時代から金融機関でインターンシップを行っていました。
その結果、大学卒業後は大和証券SMBCに入社。
基本的な金融の知識や顧客とのやり取りを学んだあと、投資関係の業務に3年目につくことに成功しました。
しかし、そこでは思ったような成果を出せなかったようです。
そこでもっと投資の世界に専門的に関わることを考え、イギリスのリテール銀行であるロイズ銀行に転職しています。
ロイズ銀行では、将来的にヘッジファンドに移ろうという志向を持ち、銀行で再スタートを切りました。
しかし、結果的にリーマンショックをきっかけに日本支社が撤退することになり、杉山社長は自分の道をもう一度考え直すことを検討します。
そして、東日本大震災の影響もありながら、2013年1月にクラウドクレジットを立ち上げることを決意したのです。
このように、著書『さらば銀行。第三の金融が変えるお金の未来』を読めば杉山社長の人となりと、考え方などを詳しく知ることができます。
②海外案件の魅力
クラウドクレジットといえば、海外案件を専門的に取り扱っている唯一無二と言えるソーシャルレンディング会社です。
なぜクラウドクレジットは国内の案件ではなく、海外の案件を専門に取り扱っているのかも『さらば銀行。第三の金融が変えるお金の未来』では詳しく触れられています。
クラウドクレジットが初めて海外の案件を取り扱ったのは、南米ペルーの案件でした。
クラウドクレジットがなぜペルーという国に目をつけたのか?
その理由についても6つの要因を挙げて非常に詳しく書いています。
クラウドクレジットは、現在では20ヶ国以上の案件を取り扱っています。
そのどの国を選ぶ要因はきちんと決まっており、決してむやみやたらに選んでいるわけではないこともこの本を読めばわかります。
海外案件は、国内案件にはない高金利という魅力や、市場の開拓性、そして社会貢献ができるというさまざなメリットが、投資家とクラウドクレジットの双方に存在しています。
ただし、同時に為替リスクも存在しているため、投資家にとってはより慎重に案件を吟味しなければいけない対象でもあります。
そういった投資対象を見抜くために、視点を養う意味でも、クラウドクレジットは投資家にとっては意味のある会社だと言えます。
③クラウドクレジットにかける杉山社長の想い
また、『さらば銀行。第三の金融が変えるお金の未来』では、クラウドクレジットにかける杉山社長の想いも切に書かれています。
投資である以上、もちろん利益を出さなければなりませんが、杉山社長が自分の人生を賭してクラウドクレジットを通して実現したいと思っているのは、第三のお金の流れを作ることです。
個人間のお金のやり取り、金融機関に続き、フィンテックの発展によって国境を越えたお金のやりとり電子金融取引が容易になっています。
先進国では当たり前になっているのですが、発展途上国にはまだまだ資金を必要とする人間にお金が届かず、そのために産業が発展していない側面があります。
そこで、先進国の貧しい人も資金調達ができる環境を整えてあげたいというのが、杉山社長の想いだと言えるでしょう。
④クラウドクレジットに投資するときのコツ
また、『さらば銀行。第三の金融が変えるお金の未来』は当然ながら、クラウドクレジットの宣伝的な意味を持っています。
特に、クラウドクレジットに投資する際はどういった対策を取っていけば良いのかという悩みに対し、杉山社長は全案件に少しずつ投資することを推奨しています。
その要因としては2つあります。
要因1:いずれの案件に対しても自信を持っている
まず、クラウドクレジットでは、どの案件が特に優れており、どの案件がおすすめできないというものはないということです。
つまり、すべての案件をチェックしながら投資家に提供しているので、どれも自信を持っておすすめできる案件だということです。
要因2:分散投資でリスクを分散できる
もう1点は、細かく分散投資をすることで、リスクを分散できるという非常にわかりやすい理由です。
金融取引である以上、貸し倒れが発生するのは当たり前であり、それは織り込むべきであることです。
それでもクラウドクレジットに投資している人は、平均で6パーセント以上の利回りを得られているデータもあります。
分散投資をすることで、損失が起きても5パーセント以上の利回りを得ることができるという自信があるのです。
⑤ポンジスキームを行っていた会社
『さらば銀行。第三の金融が変えるお金の未来』の中には、投資家目線で非常に気になる記載がありました。
杉山社長が大変悔しい思いをしたと述べている中に、
「見かけだけの良い実績を作り、投資家から資金を集めていた会社があった。クラウドクレジットは貸し倒れが起きてもそのことをきちんと明らかにしていたので、投資家から見れば損失が起きてしまう会社という評判があった」
とのことです。
「しかし、見かけだけの良い成績を残していた会社は、結局ポンジスキームの上で資金調達と投資家への分配を行っていたので、結果的には営業停止状態に陥っている。こんな会社に評判で負けることになっていたのは本当に悔しかった」
と述べています。
つまり、杉山社長にはソーシャルレンディング業界内に、ポンジスキームで運営していた会社があったことがわかっていたのでしょう。
もちろん、それは簡単に公に言えることでありませんが、ソーシャルレンディング業界の中にそういった危険な取引が蔓延したということの証明だとも言えます。
⑥クラウドクレジットはリスクを隠さない会社
『さらば銀行。第三の金融が変えるお金の未来』を読んで感じたのは、クラウドクレジットは誠意のある会社だということです。
リスクを隠さずにきちんと、
- 損失がどれくらい発生しているのか
- この国の案件は危険性がある
など、他のソーシャルレンディング会社に比べると、かなり情報を詳細に公開していると言えます。
たとえ自分たちに不利になる情報状況だったとしても、それをまったく隠さなかったものは、杉山社長が単に利益目的でソーシャルレンディング事業をやっているのではなく、社会貢献という狙いを持っていたからだとも言えます。
まだ大きな利益が生まれているとは言えないクラウドクレジットですが、社員数が50名以上いるなど、投資を惜しまない会社だというのがよくわかってきます。
社長の人脈や経歴だけでさまざまな大きい会社からの資金調達に成功しているのではなく、そういった姿勢が評価されているからこそ、資金調達ができているとも言えます。