東証マザーズ上場企業である、ロードスターキャピタルが運営しているソーシャルレンディングサイト「オーナーズブック」。
不動産のプロ達が運営する会社であり、また上場企業というある信頼性もあってか、投資家から高い人気を得ている会社のひとつです。
金融庁からの情報開示匿名化解除の後に、オーナーズブックでも情報開示方針を発表したものの、具体的な情報開示内容がどうなるのか、そこまでは明らかにされていませんでした。
しかし、2019年5月30日(木)、投資家に対するメールが送られ、オーナーズブックがソーシャルレンディング案件の募集時に、どのような情報開示を行っていくのかが明らかにされたのです。
オーナーズブックからのメールの文章を見て、内容を確認してみましょう。
目次
オーナーズブックの新規案件で情報開示される内容
以前オーナーズブックの案件で公開されていた情報は、貸付条、そして担保不動産の大まかな位置といった情報でした。
オーナーズブックでは、過去一度も返済遅延や貸し倒れは発生していませんでしたが、担保となる不動産の正確な情報を確認することはできませんでした。
これまでも開示していた内容
- 貸付条件(貸付金額、金利、貸付予定日、貸付期間)
- 回収可能性に影響を与える情報(担保不動産の大まかな所在地・評価額・物件概要)
今後は、次の内容まで詳細に公開するとしています。
今後新たに開示する情報
- 借入人の財務状況又は財務情報の概要
- 借入人に債務超過、返済猶予を受けている等の事実があるか否か
今後新しく借入人に開示を促す内容
- 担保不動産の物件名、所在地
- 法人名
オーナーズブックの公開情報は、借入人の財務状況、債務超過といった状況に陥っているか否かという点になっています。
そして、借入人に開示を促す内容として、
- 借入人の法人名
- 担保不動産の物件名や詳細な情報
としています。
借入人の名義や担保不動産といった投資家が最も気になる情報に関しては、あくまで開示を促すだけであり、すべての案件で融資先の情報が公開されるわけではないようです。
ただ、借入先のリスクに関する財務状況などの情報は公開していくとしています。
過去の案件の情報開示
また、過去案件の情報追加の有無も記載してあります。
〇過去案件
- 過去に投資実行済みの案件につきましては、新たな開示はなし。
従来の投資案件に関してさかのぼって情報を公開することはないようです。
この点に関しては、他のソーシャルレンディング会社と変わりません。
オーナーズブックの情報開示の判断は妥当か?
2019年5月30日(木)のオーナーズブックの情報開始方針メールを見て、投資家としては融資先の名前が明らかにされない点はやや不満を感じるところでしょう。
不動産物件の担保物件の詳細についても、あくまでも情報開示を促すとなっています。
すべての案件で融資先の名前が公開されるわけではありません。
クラウドバンクは情報開示を詳細に行っていますが、同社でもクラウドバンク側で協力が得られた会社で公開するとしています。
全案件で詳細な情報が公開されているわけではありません。
LENDEX(レンデックス)も同様であり、なかなか全ての融資先が「会社名を出しても構わない」とはならないようです。
投資家視点では、せめて担保不動産の詳細は全案件での公開を願うところでしょう。
融資先の財務状況、そして融資先がロードスターキャピタルと資本や人間関係があるのかについても追加で公開を願いしたいところです。
投資家視点で言えば、今回の情報開示指定は65点。
融資先に情報開示を促し、法人名などが掲載されようになれば95点というところでしょう。
オーナーズブックの願いとは
2019年5月30日(木)にオーナーズブックから送付されてきたメールの中には、次のようなオーナーズブックの考えも記載してありました。
以下、引用。
貸付型案件において情報開示が限定的であった理由、並びに関係者の働きかけ
2014年頃、ソーシャルレンディング運営会社に対し、貸付先に関する匿名化・複数化の指導が始まりました。
匿名化・複数化の指導とは、貸付先を特定することができる情報を明示しないこと(匿名化)と、複数の借り手に対して資金を供給するスキームであること(複数化)を求めるものです。
この指導は法律に明文化されたものではなかったものの、実務上の運用として求められたため、関係者の間では一定の問題をはらむものとして認識され、当社や関係協会、関係団体は継続的に当局へ見直しの働きかけを行ってきました。
引用終わり。
2014年の融資先の匿名化があり、そして匿名化によるさまざまな問題が2018年に表面化したことを受け、オーナーズブックでも金融庁に対して見直しを働きかけていたそうです。
ソーシャルレンディング業界の自主規制団体である第二種金融商品取引業協会では次のような「貸付型ファンドに関するQ&A」を発表しています。
こちらを投資前に確認しておき、ソーシャルレンディングに対しての知識をより深いものにしておくとリスク対策になるでしょう。
オーナーズブックの今後
オーナーズブックがこれから先どうなっていくのか、2019年5月30日(木)メールを見ながらその内容を確認しましょう。
以下、引用。
当社は第二種金融商品取引業協会のルールを歓迎し、先述した情報開示の実施に向け、本日以降、可及的速やかに以下の手続きを進めてまいります。
引用終わり。
2019年5月30日(木)に公開したオーナーズブックの方針は、同社の融資先に対して速やかに可能な範囲での情報開示を促していくとしています。
ひとつでも多くの案件で、融資先からの協力が得られ、法人名や担保物件の詳細が公開されることを願いましょう。
また、次の点を今後は重視したいとしています。
以下、引用。
-
借入人へのコミュニケーション
-
法定書面の条件変更等の改定手続き
→契約締結前交付書面への、借入人の財務状況又は財務情報の概要の追記
→同書面への、借入人に債務超過等の事実があるか否かの追記、等
引用終わり。
改定手続きは最初に挙げた情報開示内容の変更と同一です。
借入人とのコミュニケーションをどれほど図っていくのか、ロードスターキャピタルには徹底をお願いしたいところです。
maneoマーケットの場合、同社のシステムを利用していた
- クラウドリース
- グリーンインフラレンディング
- ガイアファンディング
などと協調姿勢が取れておらず、半年経っても投資家にほとんどお金を返済できていない状態です。
そのような問題が発生しないように、投資家から大量のお金を集めて貸し出すという自覚を持ち、ソーシャルレンディング業務の厳粛化を求めたいところです。
まとめ
最後に、2019年5月30日(木)にオーナーズブックから送付されてきたメールは、次の文章で締められています。
以下、引用。
この度、新ルールで投資判断に必要な情報を出すことが可能になったことは、ソーシャルレンディングサービスがより適正な競争環境に置かれ、各運営会社がそれぞれの強みを活かしながら切磋琢磨し正しく発展していく上で大変大きな一歩となると考えています。
引用終わり。
これは、まさしくソーシャルレンディング投資家が抱いている思いと同じところでしょう。
ソーシャルレンディング業界の評判が下がれば、オーナーズブックやSBIソーシャルレンディング、LENDEX(レンデックス)のように、健全な運営を続けていた会社の評判も、同時に下がってしまいます。
ソーシャルレンディング全体の悪評が広まれば、これらの会社の資金調達もうまくいかなくなり、最終的には日本のソーシャルレンディング業界自体の停滞に繋がります。
銀行からの融資だけではない、新しい資金調達の姿としてアメリカや中国ではソーシャルレンディング市場は数兆円規模に成長しています。
日本ではまだ1,500億円ほどの市場規模ですが、2017年までは順調な成長を続けていました。
しかし、ラッキーバンク、maneoマーケット、みんなのクレジットなどの問題ある企業の影響で、2018年後半から2019年はソーシャルレンディングが避けられている傾向にあることは否めません。
各ソーシャルレンディング会社の情報開示を受け、投資家としてはソーシャルレンディングの魅力をもう一度確認しましょう!
そして、その投資としての安全性が確かなものであることと魅力を再認識できるようになれば、日本のソーシャルレンディング市場も再成長していけそうです。
オーナーズブックについては、こちらで詳しく解説しています。