maneoマーケット(maneo)及びJCサービス(JC)、グリーンインフラレンディング(GIL)、エスクローファイナンスに対する民事訴訟が2019年6月現在行われています。
そこで、2019年4月に行われた第1回の裁判に対するmaneoやグリーンインフラレンディングの答弁書の閲覧に東京地方裁判所へ行ってきました。
以下に、第1回の裁判の内容を記載していきます。
- M:maneo
- J:JCサービス及びグリーンインフラレンディング
- 中:中久保正巳氏
の回答・答弁です。
目次
第1:事案の概要
(1)グリーンインフラレンディングやmaneo(マネオ)は、投資家から預かった資金を分別管理していない。また用途外のことに流用していた。
- M:否認
- J・中:否認
(2)原告はグリーンインフラレンディングやJCサービスの業務内容に対する証拠保全の申立を行い、実施をした。
- 事件番号
- GIL:東京地裁 平成31年(モ) 9937
- JC:東京地裁 平成31年(モ) 9787
- 平成31年1月29日
- M:不知
- J・中:認める
第2:原告はmaneo及びグリーンインフラレンディングに投資して虚偽の内容により損失を負った被害者の立場である
- M:投資家という点は認める。
- J・中:投資家のデータを見られないので原告が投資家であることを確認できない。
1.被告各社の概要
(1)被告maneoは第二種金融商品取引業事業者であり、投資家からの資金募集を行う立場であった。
- M:一部認める。
- J・中:認める。
(2)被告グリーンインフラレンディングはファンドを組成していた。
- M:認める。
- J:原告と我々の関係性が明らかでないので一部否認。
- 中:留保。
(3)被告JCサービスにはグリーンインフラレンディングが集めた資金が融資されていた。
- M:認める。
- J・中:グリーンインフラレンディングの融資先はJCサービスだけではない。
(4)被告エスクローはJCサービスへの融資を行う貸金業事業者である。
- M:貸金業や人事の範囲で認める。
- J・中:単に貸付していただけではない。審査も行っていた。
(5)被告中久保はJC及びGILの代表取締役。エスクローファイナンスの取締役にも就任。
- J・M:人事だけ認める。
- 中:グリーンインフラレンディングの代表取締役であり、エスクローと業務提携後に同社の取締役になった。
2.被告の役割分担
募集のスキームはグリーンインフラレンディングのウェブサイトにあるようにグリーンインフラレンディング主導のものであった。
- M:ファンド組成後の資金募集委託を受けたことを認める。
- J・中:認めない。
(1)被告グリーンインフラレンディング:匿名組合契約の契約者である。
- J・中・M:認める。
(2)被告maneo:ファンドの取得勧誘者である。
- J・中・M:認める。
(3)被告エスクロー:ファンド資金を資金需要者に貸し付ける窓口である。
- M:機能だけ認める。
- J・中:概ねあっているが、審査はきちんと行っていた。
(4)被告JCサービス:ファンド資金の需要者。
- M・J・中:認める。
(5)実際のファンド成立と審査の手順。
- J・中:認める。
- M:融資に際し審査をしていた。
第3:被告グリーンインフラレンディングの不法行為
1.被告グリーンインフラレンディングの加害詐欺行為
(1)被告グリーンインフラレンディングのファンド募集における表示の内容の確認。
- M・J・中:ウェブサイトに表示されていた内容は認める。
(2)ファンド募集時の表示が虚偽であった。
ア 以下の事実が判明した。
- グリーンインフラレンディングは太陽光やバイオマスで募集している。
- エスクロー経由でJCサービスに貸す。
- しかし、JCサービスは区分管理をしていなかった。
- JCサービスは出資対象事業者と経別の事業へ利用していた。
イ 証券取引所監視委員会は7月6日に被告maneoへ行政処分を勧告。関東財務局は業務改善命令を行った。第二種金融商品取引業協会からも同様の勧告があった。
ウ GILの募集は行政処分を受けてストップ。配当や返済もストップしている。
エ コンサルティングや業務委託契約に資金が使われたとの報道もある。
- M:処分を受けた事実は認める。その他は否認。
- J・中:処分は認める。その他は否認証券取引等監視委員会(SESC)の判断は事実にそぐわない完全な誤りである。返済も完全に停止はしていない。
2.原告が被告グリーンインフラレンディングに損害賠償請求権を有すること
(1)グリーンインフラレンディングは虚偽の表示を行った。JCサービスとグリーンインフラレンディングの代表は中久保であり、詐欺を知りながら募集を行った。
- J・中:中久保の事実だけ認める。
- M:人事は認める。中久保の内心は不知。
(2)虚偽表示であれば出資しない投資家が多かった。よってどの被告も責任がある。
- M・J・中:否認。
(3)したがって原告は損害賠償請求権を持つ。
- M・J・中:全面的に争う
3.原告の損害額
出資金の11億と10パーセントの弁護士費用である。
- J・中・M:争う。
第4:被告JCサービス被告エスクローはグリーンインフラレンディング共同不法行為を構成していた
1.被告JCと被告エスクローの責任原因
JCサービス、エスクロー、グリーンインフラレンディングは相互独立関係にない。共同して不法行為をしていたとみなされる
- J・中:争う。
- M:3社は独立していた。中久保がいるだけでは3社の独立性が保たれていなかったとは認めない。
2.被告グリーンインフラレンディング、被告JCサービス、被告エスクローの一体性
(1)組織的、人的一体性がある。
ア 被告グリーンインフラレンディングとJCサービスの一体性は両社とも中久保の会社である
- J・中:代表取締役であることは認める。その他は否認。
イ 被告エスクローの一体性。中久保が取締役。グリーンインフラレンディングのパンフレットに、エスクローがグリーンインフラレンディングとJCサービスの中継で貸付を行う会社であることが当初から記されている。
- J・中:取締役であることは認める。中継ぎではなく審査していた。その他は否認。JCサービス以外にもエスクローは融資していた。
- M:不知。
(2)ソーシャルレンディングの枠組みはJCサービスが作っている。
2016年6月30日の共同事業締結書で、JCサービスの子会社がソーシャルレンディング事業を行うと記している。つまりJCサービスが主導で設計している。
- J・中:maneoがJCサービスに提案した。
- M:グリーンインフラレンディングから提案を受けて募集業務を委託された。
(3)小括
JCサービス、グリーンインフラレンディング、エスクローは別個の法人格ではない。全て中久保の指揮の下で活動していた。
- J・中:争う。
- M:不知。
3.結論
JCサービス、エスクロー、グリーンインフラレンディングは虚偽の資金需要を作成し募集を行っていた。自らの利益のもとに共同不法行為をしていた。
- J・中:争う。
- M:不知。
第5:被告中久保の不法行為責任
中久保はグリーンインフラレンディングとJCサービスの代表取締役であり、責任を負う者とする。
- M:代表取締役であることだけ認める。
- J・中:争う。
第6:被告maneoも責任を負う
1.maneoのソーシャルレンディングにおける役割
被告maneoはグリーンインフラレンディングから業務委託で第二種金融商品取引業として勧誘を行っている。
- M:勧誘は認める。審査は実施していた。
- J・中:争う。
グリーンインフラレンディング、JCサービスの証拠保全で以下の事実が判明した。募集などのページはmaneoが制作。
- maneoは掲載に際して審査なく募集を行っていた。
- maneoは確認せずに自らの名前で募集を行っていた。
2.被告maneoの責任原因
(1)maneoが金融商品取引業法で負う責務。
真実を客観的資料で確認していない。金融商品取引業法38条9号違反。
- M:適用を受けることは認めるが、内容は否認責任は負わない。
(2)被告maneoによる責務が加重されるべき事情
1,100案件、200億円もこのずさんな体制で募集していた。
- M:募集は認めるが審査はしていた
(3)maneoによる責務の放棄
調査や体制整備を行わず放置していた。JCサービスとエスクロー、グリーンインフラレンディングの関係を知り、破綻の予見可能性があるのに調査しなかったのは未必の故意となる。
- M:エスクローがJCに支配されていた事実はない。エスクローの融資先はJCに限定されていない。
- J・中:争う。
(4)maneoが不法行為責任を負うこと
整合性調査を行えばすぐにわかったはず。漫然と丸投げで募集を行っていた。未必の故意で見逃していたので、共同不法行為とも取れる。
- M:争う
第7:結論
民法709条、719条の共同不法行為により、投資金額全額及びその10パーセントの弁護士費用の損害賠償を行うこと。及び遅延損害金の支払いを求める。
- M:争う
- J・中:争う
各被告の求釈明
maneoの求釈明
まず、どの案件に虚偽化があるのかを特定してほしい。maneoマーケットの監視責任義務や不法行為とされる理由が明らかではない。
中久保の求釈明
中久保は投資家の利益を考慮していた。成功の目途がない0からの案件ではなく、完成の目処のついた案件で募集を行っていた。
虚偽の表示がどこか不明。返済を3月と4月に行っており、明確な損失被害が発生していない。
maneoの提案であり、公平性を保つためにエスクローを中に入れた。個別の案件で虚偽表示を指摘してほしい。
まとめ
基本的には、maneo、JCサービスなどは投資家の訴えを全面的に否認しています。
ポイントは次の4点でしょう。
- 行政処分を受けた事実は認めるが、その処分の内容自体は事実誤認によるもの。
- エスクローとグリーンインフラレンディング、JCサービスは独立性を保っている。
- maneoは融資に際し厳正な審査を行っていた。
- エスクローはグリーンインフラレンディングから集めた資金をJCサービスに融資するだけの会社ではない。
投資家がmaneo他の言い分に対抗するには、
- 明確な虚偽表示案件の特定
- 返済が行われたことによる「損失がまだ発生しないという」主張への対抗
になるでしょう。
そして、唯一maneoとJCサービス他の言い分が異なるのは、案件の募集スキームの提案主体が、「maneoにあったというのがJCサービス他の主張」、「グリーンインフラレンディング側にあったというのがmaneoの主張」となっています。
今後の裁判も焦点もそこになってくるでしょう。
【2019年9月17日追記】
maneoが株式の約85%をNLHD社へ譲渡することが判明しました。
詳しくはこちらで解説しています。