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クラウドファンディングとは?
最近話題のクラウドファンディングですが、正直「種類が多くてよくわからない」「投資できると聞いたけどボランティアのイメージがある」という人も多いのではないでしょうか?
クラウドファンディングとは、インターネット上で不特定多数の人に寄付や投資という形で資金提供を呼び掛ける方法です。
資金提供を求める人にとっては新しいビジネスやプロジェクト創出のチャンスになり、資金提供をする人にとってはボランティアや投資の選択肢が広がる魅力があります。
今回は、さまざまな可能性を秘めているクラウドファンディングの種類やそれぞれの特徴、各サービスの代表的サイトなどをご紹介していきます。
クラウドファンディング5種類の特徴
クラウドファンディングの種類は5つで、ボランティア色の強い購入型から投資色の強い融資型まで、さまざまな特徴があります。
クラウドファンディングの種類
購入型 | さまざまなアイディアを持った個人や団体がビジネスや特定のプロジェクトを実施するため、インターネット上で資金提供を呼び掛ける仕組み。
金銭的なリターンはないが、プロジェクトに関わる商品やサービスを購入の対価として受け取れる。 |
寄付型 | 個人・団体が公的な事業や社会的な問題(被災地復興など)を解決するため、インターネット上で寄付を呼び掛ける仕組み。
街中にある寄付金箱への募金を、インターネットでできるようにしたもの。寄付なので、金銭的なリターンはない。 |
株式型
(投資型と言われることもある) |
ベンチャー企業などの非上場企業が株式を発行し、投資家にビジネスの資金提供を求める仕組み。投資家は非上場株式を取得し、将来上場したときのリターンを求めることができる。
エンジェル投資に似た仕組みで、投資先企業の種類によって投資家は税制上の優遇措置を受けられることもある。 将来のIPOやM&Aなどによるリターンを期待する投資なので、リスクは高い。 |
ファンド型(投資型と言われることもある) | 個人・団体がビジネスや特定のプロジェクトを実施するためにインターネット上で資金提供を呼びかける仕組み。
購入型と似ているが、ファンド型は分配金という金銭的なリターンがあるため、投資として分類される。 サービスや商品をリターンとする場合もあり、購入型や寄付型の側面を持ち合わせたプロジェクトもある。 |
融資型
(貸付型、ソーシャルレンディングと言われることもある) |
ビジネスやプロジェクト実施のために資金を借りたい個人・団体(中小企業が多い)と、資金を貸して利益を得たい個人投資家を特定のプラットフォーム上で結びつける仕組み。
個人投資家は直接資金を貸し付けるわけではなく、プラットフォームの運営事業者に資金を集め、運営事業者が個人や団体に融資をする。 融資に対するリターンは投資元本と利息になる。 |
上記のクラウドファンディング5種類を大きく分けると、次のように分類ができます。
- 投資タイプ:株式型、ファンド型、融資型
- ボランティアタイプ:購入型、寄付型
ただ、ファンド型のクラウドファンディングは半分寄付になっているものもあったり、リターンが金銭ではなく商品であったり、ある種のハイブリッド型とも言えます。
ハイブリッド型はファンド型だけではなく、購入型や寄付型のサイトでも多く存在します。
クラウドファンディングの分類は5つですが、実際の案件を見ていると寄付型や購入型、いろんな要素が混じりあっていることも多く、サイトも案件も多種多様にあるのでよく比較・検討して利用しましょう。
日本国内のクラウドファンディング市場
クラウドファンディングの種類はさまざまですが、国内のクラウドファンディング市場はどうなっているのか気になりますよね。
株式会社矢野経済研究所の調査(※)をもとに、国内のクラウドファンディング市場の概況を見てみましょう。
国内のクラウドファンディング市場規模
矢野経済研究所の調査によれば、2017年度の国内クラウドファンディング市場規模(新規プロジェクト支援額)は約1,700億円です。
そのうち90.2パーセントを占めるのが融資型(貸付型)であり、市場シェアを大きく独占する形になっています。
※データ出典:「2018年版 国内クラウドファンディングの市場動向」プレスリリースデータより。グラフは筆者が作成。
【各クラウドファンディングの構成比】
- 融資型:90.2パーセント
- 株式型:0.5パーセント
- 購入型:5.9パーセント
- 寄付型:0.4パーセント
- ファンド型:3パーセント
国内のクラウドファンディング事情
国内のクラウドファンディング市場では、2008年にサービスを開始した融資型が90.2パーセントのシェアを占めており、頭一つ抜けた実績を誇っています。
しかし、融資型は2017年から2018年にかけて投資家に大規模な損失を発生させるサイトの問題が多発し、2019年3月には2つのサイト運営事業者が登録取り消しの行政処分を受けました。
その後、すぐ金融庁から発表されたのは「ソーシャルレンディングへの投資にあたってご注意ください」という異例の注意喚起です。
融資型はクラウドファンディングで圧倒的シェアを占める一方、複数の事業者が入り乱れて次々と営業を開始した結果、金融庁が注意喚起を起こすほどのトラブルが多発してしまったのです。
今、融資型の業界は過渡期にあり、今後の動向に注目が集まっています。
融資型で投資をしようと思っている人は、市場規模だけでなくこうした業界の動向にも注視し、事業者選びは慎重にしてください。
一方、融資型に次いでシェアの高い購入型、ファンド型や寄付型も有名人のプロジェクトが実施されたり、テレビなどのメディアで取り上げられたり、融資型に次ぐ盛り上がりと成長を見せています。
株式型は国内でのサービス開始がもっとも遅くまだ実績は出ていませんが、着実に資金を集めており、今後の発展に注目が集まっています。
クラウドファンディング市場はまだ発展途上で、大きな可能性もある一方で大きなリスクもあるサービスです。
サイトや事業者選びは慎重に行い、資金提供は自己責任のもと行うようにしてください。
国内の代表的なクラウドファンディングサイト
クラウドファンディングの種類別に、国内の代表的なクラウドファンディングサイトをご紹介していきます。
寄付型「LIFULLソーシャルファンディング寄付」
「LIFULLソーシャルファンディング寄付」は、元々英国から上陸した「Just Giving」の日本版、「JustGiving Japan(ジャストギビングジャパン※のちに名称をジャパンギビングに変更)」として2010年にスタートした寄付型クラウドファンディングサイトです。
2019年1月に名称を「LIFULLソーシャルファンディング」に変更し、同時にサイトをリニューアルして再スタートを切りました。
ソーシャルレンディングという名称がついていますが、LIFULLソーシャルファンディングが目指しているのは寄付型のマッチングサイトであり、寄付という根本の仕組みは変わっていません。
2019年1月までの案件掲載は約1万2000件、累計21億円の資金調達実績があり、昔も今も寄付型クラウドファンディングサイト市場の牽引役として注目されています。
購入型「Readyfor(レディフォー)」
Readyforは2011年に国内でスタートした、購入型クラウドファンディングサイトです。
「誰もがやりたいことを実現できる世の中をつくる」をミッションにかかげ、購入型、寄付型の魅力的なプロジェクトを実施してきました。
※寄付型については、後に専用サイト「ReadyforCharity(レディフォーチャリティ)」が立ち上がっています。
Readyforはプロジェクトの多彩さが大きな魅力で、有名人主催の大きなプロジェクトが掲載されることもあれば、NPO法人の社会支援事業から被災地支援、一個人の開業資金集めなどの小さなプロジェクトまで、さまざまな案件を選ぶ楽しさがあります。
最近では、ネット証券業界大手のマネックス証券株式会社と業務提携したことが発表され、大きな話題になりました。
今後も購入型クラウドファンディングのリーディングカンパニーとして、業界を盛り上げていってくれるでしょう。
融資型「クラウドバンク」
クラウドバンクは2013年にソーシャルレンディングサービスをスタートしたサイトで、日本クラウド証券株式会社が運営しています。
2019年4月には成立ローン総額500億円を超え、福岡地区限定ですがテレビCMの放映も始まりました。
クラウドバンクの魅力は、サイトの使いやすさと案件種類の豊富さ、融資元本の回収率100パーセントという実績にあります。
過去に2度の行政処分を受けているものの悪質性のある内容ではなく、行政処分後に体制を立て直して見事な復活を遂げている点、投資家に安定的な利益を継続して還元している点は評価すべきポイントでしょう。
先ほどお伝えしたように、2017年から2018年まで、ソーシャルレンディング業界はさまざまな企業の不祥事やトラブルが相次ぎ、業界全体が大きく変わらなければいけない時期にきています。
クラウドバンクはこの変革期をどう乗り越えていくのか、期待できるサイトの一つと言えるでしょう。
株式型「FUNDINNO(ファンディーノ)」
FUNDINNO(ファンディーノ)は、日本でスタートして間もない株式型クラウドファンディングにおいて、急成長を見せているサイトです。
FUNDINNO(ファンディーノ)がスタートしたのは2017年のため、取り扱う非公開株式における実績はまだありません。
しかし、実績がまだないにも関わらず2019年6月現在の累計成立額は20億円超、登録ユーザー数は1万6000人超と、順調に資金をあつめることに成功しています。
株式型クラウドファンディングはエンジェル投資の一種であり、投資する企業によっては優遇税制があるため、若い成長企業を応援しつつ、節税できるのが魅力です。
しかしそれ以上に、FUNDINNO(ファンディーノ)が急成長できた理由は、サイトの使い勝手と魅力的なプロジェクトを提案する企業の多さにあるのではないでしょうか。
ただ、FUNDINNO(ファンディーノ)は投資家登録のハードルが高く、1年以上の投資経験や金融資産300万円以上などの条件を設けています。
投資を考えている人は、ある程度の投資経験が求められるということを覚えておいてください。
ファンド型「セキュリテ」
出典:セキュリテ
セキュリテは、ミュージックセキュリティーズ株式会社が運営するファンド型クラウドファンディングサイトで、寄付型や購入型の色が強いプロジェクトも多く取り扱う多彩なラインナップが特徴です。
ファンド型の魅力は金銭だけでなく物やサービスがリターンとして受けられることにありますが、セキュリテでも地方の農家支援による特産物のリターンなど、さまざまプロジェクトが用意されています。
ファンド型はクラウドファンディングの分類上「投資」という位置づけですが、セキュリテのサイトを見ると購入型サイト「Readyfor」と似ている点に気付きます。
実際、投資として考えるよりは多彩なリターンを楽しむという趣旨のサイトになっているので、投資と購入型、寄付型のハイブリッドとして利用するのがおすすめです。
まとめ
クラウドファンディングの種類や特徴、市場規模、代表的なサイトなどをご紹介してきました。
改めて重要なポイントをまとめると、次のとおりです。
クラウドファンディングは5種類(購入型/寄付型/融資型/株式型/ファンド型)あるが、ハイブリッドタイプのサイトやプロジェクトも多い
- 投資色が強いのは融資型、株式型、ファンド型だが、ファンド型は寄付型のような側面がある
- ボランティア色が強いのは寄付型と購入型だが、購入型は金銭以外のリターンがある
- クラウドファンディング市場規模で見ると融資型が全体の9割を占めているが、融資型は事業者のトラブルや不祥事もあり、変革が求められている
- クラウドファンディングは同じ類型でもサイトやプロジェクトによってさまざまな特色があるので、自分の目的にあわせて信頼できるサイトを選ぶことが大切
クラウドファンディングは支援する立場なのか、支援を求める立場なのかによってもサイトに求めるものは変わってきます。
クラウドファンディングで何をしたいのかを明確にしてから、適切なサイトを選んでください。