maneo(マネオ)、SBIソーシャルレンディングに続き、国内のソーシャルレンディングサイトの中で第3位の規模を誇っているCrowdBank(クラウドバンク)。
累計募集金額は600億円に達する勢いであり、maneo、SBIソーシャルレンディングに追いつく可能性を持っています。
クラウドバンクは、日本クラウド証券という第一種金融商品取引業者が運営をしています。
そして、その日本クラウド証券の親会社として、クラウドバンク株式会社が存在しています。
そのクラウドバンク株式会社が、2019年6月末にグループの連結決算を発表しました。その内容を確認しながら、クラウドバンクの現在の状況を見ていきましょう。
クラウドバンク株式会社は増収増益
Crowd Bank(クラウドバンク)の2018年4月1日から2019年3月31日の期間における決算は次のとおりです。
前期である第4期と比較すると、第5期は営業収益が前期11億9400万円に対し、24億600万円と2倍以上の伸びを見せています。
そして、経常利益の金額も8億0,800万円から、11億4,700万円と約1.5倍になっています。
自己資本比率が6.49パーセントから8.91パーセントに伸びるなど、利益が伸びるだけではなく、同時に自己資本率自己資本比率を高めることに成功しています。
キャッシュフローの金額も、21億8,400万円から44億7,600万と約2倍になっています。
利益が増えたことでキャッシュフローが増加。
そして自己資本比率の割合も高まるなど、会社としての体力の面での増強に成功していることがわかります。
経営基盤が前期に比べると、かなり強固なものになっていると言えるでしょう。
クラウドバンク関連企業の中でのソーシャルレンディングの位置づけ
クラウドバンク株式会社及び日本クラウド証券は、ソーシャルレンディング関係以外の事業にも取り組んでいます。
この決算報告書の中では、ソーシャルレンディングと並びコンサルティング事業も取り組んでいるとしています。
以下、引用。
当該業務改善と並行して、融資型クラウドファンディング事業におけるファンドの募集の取扱いは順調に拡大しており、当期21,855百万円の募集の取扱いを行っております。これらの結果、当連結会計年度の連結営業収益は2,406,083千円となりました。
一方、販売費一般管理費は、営業拡大に伴い、保険料、人件費、広告宣伝費が増加するなどを背景として前期より221,591千円増加し、613,849千円となりました。
この結果、連結経常利益は1,147,565千円となり、当期純利益は524,656千円となりました。
引用終わり。
この報告を見る限り、融資型クラウドファンディング、つまりソーシャルレンディングは第5期だけで218億円の金額を集めることに成功しています。
その結果、売上に大きく貢献し、連結営業収益は約2倍以上になりました。
その反面、販売費や一般管理費も2億円以上増加しています。
その結果、連結経常利益は売上の伸びと比較するとやや緩やかな伸びになっています。
以下、引用。
営業収益
ア 受入手数料主に投資コンサルティング事業による業務報酬により、586,426千円となりました
イ 金融収益金融収益は匿名組合受取利息、営業者融資手数料などにより1,004,376千円となりました。
ウ 権利譲渡益今期、投資・コンサルティング事業における発電事業権利譲渡からの収益が815,280千円となりました。
引用終わり。
販売費・一般管理費販売費・一般管理費は、クラウドファンディング事業及び営業拡大にともない保険料、人件費、広告宣伝費が増加するなど、613,849千円となりました。
前期から221,591千円の増加です。
コンサルティング事業の収益は5億8,600万円、ソーシャルレンディングに関する金融収益は10億437万円となっています。
コンサルティング事業の収益と比較すると、ソーシャルレンディング関係の事業による収益は2倍近くであり、ソーシャルレンディングはクラウドバンク株式会社の中でのメイン事業と言える位置づけになっています。
貸借対照表(B/S)の内容を確認する
Crowd Bank(クラウドバンク)の貸借対照表もチェックしておきましょう。
気になるのは負債の部に記された預り金の金額です。
前期は預り金の金額が85億1,400万円だったのに対し、今期は139億5,100万円になっています。
1.5倍以上にも、預かり金額が増加していることが分かってきます。
また、長期借入金として2億円があったものが、第5期では0円になっています。
そして、純資産でチェックしたい点が利益剰余金です。
利益剰余金は、会社の営業を始めてから累計の黒字・赤字を示した数字です。
クラウドバンクは第1期から第3期までは赤字決算が続いており、第4期でようやく単期で黒字に転換したという状態でした。
そのため、前期の利益剰余金は8,480万円の赤字だったのです。
しかし、今期(第5期)クラウドバンク株式会社が大幅な黒字化を達成したことで、4億2,900万円の利益剰余金となっています。
クラウドバンクにとっては利益剰余金が黒字に達したことは、大きな転換といえるのではないでしょうか。
損益計算書(P/L)の内容を確認する
こちらは、Crowd Bank(クラウドバンク)の連結損益計算書です。
先ほどお伝えしたように、金融収益の金額が大幅に増加しています。
コンサルティング事業による収益を上回る結果となっています。
営業費用は約2億円の増加、営業利益は約3億円の増加になっています。
販管費にかなりの資金を投資した結果、売上を大きく伸ばすことに成功したものの、利益は売上の増加ほど改善していないという結果です。
ただし、これは先行投資を行ったと考えるのであれば成功とも言えます。
クラウドバンクは、九州限定で今年2019年からテレビCMの放送を開始しています。
このような知名度・認知度の向上に努め、よりソーシャルレンディング及びクラウドバンクという会社を多くの投資家に知ってもらい、資金を集めていこうという方針が見えてきます。
会社の耐力があるからこそ、大幅に広告費をかけた宣伝活動ができるのでしょう。
今期待できる、ソーシャルレンディング会社のひとつだと言えます。
クラウドバンクが考えているリスク
一方、決算報告書の中では、Crowd Bank(クラウドバンク)がソーシャルレンディング事業に関して想定しているリスクについても記載されています。
その中の一部を抜粋して解説しましょう。
①事業環境に関するリスク
1.法的規制について
以下、引用。
当社完全子会社である日本クラウド証券は、金融商品取引法に基づき、第一種・第二種金融商品取引業の登録を行っており、金融商品取引法及び関係法令により規制を受けております。
また、当社は、日本証券業協会に加入しており、同協会の規則を遵守することが求められております。
同社は平成29年6月2日に関東財務局より業務改善命令を受けた結果、金融商品取引業務を適切に行うための業務管理態勢、経営管理態勢及び内部管理態勢の改善に取り組み、平成30年2月に当該業務改善を終了いたしましたが、今後も法令遵守体制が不十分と当局に判断される場合や、金融商品取引法及び関係法令の改正若しくは日本証券業協会の規則改正等によって規制強化等が行われた場合又はかかる法令・規則等に反した行為で行政上の処分を受けた場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。
また、融資型クラウドファンディング事業にあっては融資先の匿名化の要請が緩和されるなど、情報開示ルールの厳格化による管理態勢の強化など、新たな規制導入よる追加費用が生じる可能性があります。
引用終わり。
金融庁からの指導、及びその内容に対応するためのリスクが発生するとしています。
クラウドバンクは、過去に金融庁財務局から2度の行政処分を受けた経験があります。
そのため金融庁の指導内容によっては、何かしらの問題が発生するリスクをはらんでいます。
2.業界の動向について
以下、引用。
また、融資型クラウドファンディングについては、新規参入が増加していることから、個人投資家の獲得に関わる競争環境は激化しており、収益率の低下や顧客獲得コストの上昇などによる費用の増加によって、当社業績に影響を及ぼす可能性があります。
引用終わり。
ソーシャルレンディング会社各社の顧客獲得競争のコスト増によって、クラウドバンクの収益が悪化する可能性があるとしています。
②融資型クラウドファンディングに関するリスク
1.貸出債権に関するリスク
以下、引用。
当社グループでは、リスク管理を徹底し、良質な債権の確保を目指しており、今後も貸出債権のリスク管理には十分留意して参りますが、経済情勢並びに金融情勢の大幅な変化等により債務者等の状況が悪化した場合、その結果として不良債権が増加し、回収費用の増加及び財政状態の悪化につながる可能性があります。
また、金融機関が法改正への対応として、一斉に回収の強化や貸し渋りを行った場合、それらの金融機関からも借入れのある顧客の経営破綻等が増加することなどにより、貸倒が増加し、当社の業績及び財政状態の悪化につながる可能性があります。
引用終わり。
融資のあとに融資先から資金を回収できなかった場合、投資家の損失が発生するだけではなく、クラウドバンク自体の利益の損失にもつながります。
また、投資家の損失が多くなれば、投資家からの信用も失いクラウドバンクの営業利益が減少する可能性もあるとしています。
2.貸金業に関するその他のリスク
以下、引用。
当社グループは貸金業者を含んでおりますが、経済情勢及び金融情勢の大幅な変化によっては、銀行が融資を行いやすくなることで資金需要者が貸金業者ではなく銀行から融資を受けることが容易となり、貸金業者からの融資に頼る必要のある資金需要者が減少する可能性があります。
引用終わり。
銀行からの融資が活性化すると、金利の高いソーシャルレンディング事業者からお金を借りよるという事業者が減り、ソーシャルレンディング事業者の売上が減る可能性があるというリスクです。
③事業体制に関するリスク
1.人材の確保及び育成について
以下、引用。
当社グループの業務の遂行には、投資・コンサルティング業務及び貸金業務に関する豊富な知識及び経験を有する人材の確保及び育成が不可欠であります。当社では、人材採用と社内研修を行っておりますが、このような人材が十分に確保・育成できない場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
2.小規模組織であることについて
当社は、平成31年3月末現在の組織構成が取締役3名、監査役1名、従業員2名と小規模であること、完全子会社である日本クラウド証券の組織体制が取締役5名、監査役1名、従業員21名、クラウドバンク・インキュラボ及びクラウドバンク・フィナンシャルサービスの組織構成が各々取締役4名であることから、内部管理体制も規模に応じたものとなっております。
体制の不備・欠陥に対し、適切な是正を行えない場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
引用終わり。
ソーシャルレンディング会社の中では比較的大きなクラウドバンクですが、社員数は40名程度であり、一般的に見れば中小企業に該当します。
そのため、小規模組織であるがゆえのリスクが存在し、人材の流出により営業成績が悪化する可能性をはらんでいます。
投資家目線ではなかなか気づかない小さな組織ゆえのリスク、また銀行からの融資が活発化するというリスクをクラウドバンクでは認識しています。
ソーシャルレンディング投資家としてもそういった市況の変化を適宜監視しながら、ソーシャルレンディングだけではなく、他の投資手法に目を向けなくてはいけない時もあるのかもしれません。
まとめ
クラウドバンクは、第4期から第5期で売上の収益を約2倍に伸ばし、累計の利益剰余金が黒字転換しました。
まさに、第5期で大きな飛躍を見せたと言えます。
販管費への積極的な投資を行った結果、その結果も如実に表れています。
来期は売上に対して利益をどのようにとっていくかといったシステム作りが、課題になってくるでしょう。
会社としての体力も強化されており、投資家にとっては数あるソーシャルレンディングサイトの中でも比較的安心して投資できる会社のひとつだと言えます。
これからソーシャルレンディング投資を始めようという人は、まずクラウドバンクに口座を開設してみるのも良いかもしれません。
第一種金融商品取引業事業者だけに財務内容の公開も詳細なものがあります。
書面を読み込み、ここで取り上げた以上にご自身でより詳しく分析してみることもおもしろいかもしれません。
クラウドバンクの詳細についてはこちらです。