東証マザーズ上場企業である「ロードスターキャピタル」が運営しているソーシャルレンディングサイト「OwnersBook(オーナーズブック)」。
不動産のプロが運営しているソーシャルレンディングサイトであり、不動産案件を専門に扱っています。
投資家からの人気が高く、利回りは4パーセントから6パーセントほどとそれほど高くはないものの、募集が一度行われるとあっという間に投資上限までお金が集まってしまうほどです。
そのオーナーズブックで、2019年7月5日(金)に融資先の自己破産という事態が発生しました。
これは貸し倒れと等しい事態であり、投資家の資金が損失する可能性を含んでいます。
どうして自己破産が発生したのか、そしてどの程度の資金を回収できるのかについて確認してみましょう。
自己破産が発生した案件の概要
自己破産が発生した融資先は、OwnersBook(オーナーズブック)の公式サイトから確認することができます。
以下、引用。
以下の案件につきまして、貸付先である専門商社(介護)ARの連帯保証人のうちの一社の民事再生手続きの開始決定を原因として、専門商社(介護)AR、物件①を所有する不動産保有会社、及び連帯保証人の二社の計四社において代表取締役に就任している個人(※)が破産手続きの申立てを行い、その開始決定通知を受けたことが判明いたしましたので、お知らせいたします。
案件名称:江東区商業ビル第1号ファンド第1回
案件URL: https://www.ownersbook.jp/project-detail/index/1145/
※本件貸付に関し、貸付人と個人との間には連帯保証を含む債権債務関係は一切ございません。
個人の破産手続きが開始されたことにより、今後、貸付先や連帯保証人の活動に支障等が生じ、ひいては債務弁済に影響が出る可能性がございます。
ただし、本件貸付の担保として不動産に根抵当権を設定していること、及び本件破産手続きが本件担保不動産の価格に影響する程度は限定的と考えられることから、本件貸付の回収への影響は限定的と考えております。
今後、本件民事再生手続き及び本件破産手続き、並びに貸付先からの回収に関して進捗があり次第、ご報告申し上げるとともに、進捗がない場合でも経過をご報告申し上げます(次回報告予定日:2019年7月16日)。
なお、民事再生手続き及び破産手続きの状況に応じて報告日が前後する可能性があります。
また民事再生手続き及び破産手続きにおいて公に開示されていない情報についてはご報告ができない場合もあり得ますので、ご理解のほどお願い申し上げます。
当社は適切な情報開示に努めてまいる所存です。
大変恐縮ですが、直接お問い合わせをいただきましても、皆さまに公表している以上のご回答はできかねますこと、予めご了承のほどお願い申し上げます。
引用終わり。
融資先の会社の代表者である個人が破産手続きを発生したことにより、融資した資金の回収に問題が生じる可能性があるとしています。
当該案件については、オーナーズブックは次のような担保評価額と条件で貸し付けを行っています。
財務構造
OwnersBook評価額:1,260,000,000円
- シニアローン:銀行から68.2%(859,468,477円)
- メザニンローン:OwnersBookから6.3%(80,000,000円)
オーナーズブックが12億6,000万円と評価した担保をもとに、銀行はシニアローンとして約8億6千万円を融資しています。
また、オーナーズブックはメザニンローンとして、抵当権順位第3位で8,000万を融資しています。
この物件が融資の合計金額である9億6,400万円で売却されれば、投資家には満額返済されます。
当該案件の不動産担保はどの程度の価値あるか
この物件の概要から、担保不動産の価値を探ってみましょう。
建物状況
以下、引用。
1989年1月に建築された地下1階付6階建の商業ビル1棟となります(*2)。維持・管理の状態は良好です。
2貸付先1によれば、本件建物は建築確認は得ておりますが、検査済証はないのことです。
加えて、貸付先1によれば、①本件建物の駐車場は、現状の利用を前提とすると東京都駐車場条例に違反(いわゆる駐車場附置義務違反)している、②貸付先1から開示された建物調査報告書にて4階の事務所及び6階の住居に無窓の居室がある可能性が指摘されており、無窓の居室がある場合、換気・採光の点で建築基準法違反となる可能性がある、とのことです。
引用終わり。
交通・接近条件
以下、引用。
東京都江東区亀戸に位置しており、JR総武線(各駅停車)及び東武鉄道亀戸線へのアクセスが至便な立地です。
引用終わり。
具体的な融資先の名称や住所は公開されていません。
ただ、JR総武線亀戸駅付近の物件だということはわかります。
また、物件面積がどの程度なのかも記載されていません。
情報では6階建てのRC造物件であり、築30年物件ですが法定耐用年数の期間内です。
建物の価値もまだ40パーセントほどは残っていることが推測できます。
ただし、物件概要にもあるように一部建築基準法に違反しています。
建築基準法違反物件は、場合により融資がつきにくくなることがあります。
そうなると、売却時の評価額が低くなってしまいます。
収益面
以下、引用。
賃貸借の状況
本建物は地下1階及び1階が店舗、2階から5階が事務所、そして6階が住居の用途にそれぞれ供されております。2019年2月28日現在、6階の住居1室が空室となっている他はすべて賃貸に供されており、1棟全体としての稼働率は98.8%となります。
現行月額賃料(共益費込)の坪単価は、店舗部分については12,200円程度、事務所部分については9,700円程度、住居部分については10,000円程度となっております。
外部専門家により査定された新規月額賃料(共益費込)の坪単価は現行月額賃料(共益費込)の坪単価と同程度となっております。
引用終わり。
稼働率は98.8パーセントと収益物件としての運用は大変好調であり、収益還元法で評価すればかなりの高値がつく物件だと想像できます。
ただし、物件を調達する資金で評価する原価法では、その評価額はどうしても低くなってしまいます。
オーナーズブックが、どちらの評価で価格を判定したのかで、売却価格が変わってくる可能性があります。
場合によっては、建物を壊し更地にして売った方が良いというとこもあるでしょう。
土地の価格
では、JR亀戸駅周辺の公示地価も確認してみましょう。
物件の住所は、JR亀戸駅および東武亀戸線へのアクセスが容易と記載されているため、両駅の間である亀戸5丁目もしくは亀戸7丁目付近の物件だと推測できます。
この付近の坪単価は150万円から200万円ほどです。
坪単価200万円の場合に土地価格だけで推測してみると、オーナーズブックの評価査定額が12億6,000万円ですから、630坪と非常に広大な敷地を持つ築30年ビルということになります。
もしくは、JR亀戸駅に近い場所では坪単価300万円から400万円といった場所もあります。
査定額が坪単価400万円だったと仮定しても、敷地は300坪ほどなくてはなりません。
それほど大きな敷地面積を持つ物件の数は、JR亀戸駅付近では限られるでしょう。
坪単価がさほど高くないことを考えると、この物件に対する12億6,000万円という評価額は、土地だけではなく建物の収益性込みだと考えられそうです。
収益力はかなり高い物件だと思われますが、その点を評価して購入してくれる会社事業者が現れないことには10億円ほどでの売却は、厳しい状況にあるでしょう。
まとめ
2019年7月5日(金)に発生したOwnersBook(オーナーズブック)の融資先が自己破産した案件は、情報公開量がとても少ないです。
物件の面積や詳細な住所などが記載されていないため、あくまでも推測です。
しかし、300坪から400坪ほどの土地を持つテナントビルというと、亀戸駅周辺にはそれほど多くありません。
建物込みの評価額が、12億6,000万円だったことが予測されます。
不動産のプロ集団であるロードスターキャピタルの査定が、果たして正確であったのか?
当該案件のさばき方次第で、オーナーズブックの信用度が大きく上下しそうです。
評価額どおりで売却することができれば、オーナーズブックの信頼性はより高まります。
一方で、もし評価額を大幅に下回る価格で売却された場合は、オーナーズブックに対する投資家の視点がまた変わってくることでしょう。
何にせよ、事の顛末に注目したいところです。