2017年から2018年にかけて、数々のソーシャルレンディング会社が金融庁から処分を受けました。
行政処分を受けたソーシャルレンディング会社にはどのような問題があり、そしてなぜ金融庁から処分を受ける事態に陥ったのでしょうか?
ソーシャルレンディング会社以外の行政処分を受けた会社には、どのような内容の不具合があったのかを比較して、ソーシャルレンディングの安全性を確認してみたいと思います。
目次
金融庁が行政処分を発表したソーシャルレンディング会社とは
まず、2017年から2018年にかけ、金融庁が行政処分を行ったソーシャルレンディング会社を紹介していきましょう。
①maneo(マネオ)
出典:maneo
ソーシャルレンディング業界最大手であるmaneo(マネオ)は、2018年7月に金融庁から行政処分を受けました。
maneoは自社のシステムを色々なソーシャルレンディング会社に利用してもらうことによって、「maneoファミリー」と呼ばれる一大ソーシャルレンディング会社群を形成していました。
その中の一社である「グリーンインフラレンディング」では、太陽光発電やバイオマス発電の秘訣開発のために資金を募集していました。
しかし、その内容の提示とは異なり、投資家から集めた資金が政治家への献金に利用されていたとされています。
このような募集内容の虚偽があったことや管理責任を問われて、maneoは行政処分を受けています。
2019年3月29日(金)には社長の責任問題に発展し、瀧本社長が退任に追い込まれる自体になりました。
②ラッキーバンク
出典:ラッキーバンク
2018年2月に行政処分を受けたのが、ラッキーバンクです。
ラッキーバンクは、
- 融資先の大半が身内の運営する企業であること
- 投資家に担保として提示していた不動産の担保評価が適切な手段を経て評価されたものではなかったこと
などが、行政処分の理由になっています。
そして、ついに2019年には、投資家から訴訟を受けて第二種金融商品取引業免許を剥奪される事態に陥っています。
③日本クラウド証券
日本クラウド証券は、2015年と2017年に行政処分を受けています。
2015年の行政処分は資金管理が適切に行われていなかったこと、2017年の行政処分は募集特典などの表示について、虚偽があったことが問題視されています。
今回挙げられている中では、比較的軽微な行政処分といえます。
④エーアイトラスト
出典:トラストレンディング
「トラストレンディング」を運営しているエーアイトラストでは、官公庁の開発をソーシャルレンディングの募集内容としていました。
しかし、その内容がまったくの虚偽であり、官公庁の事業開発自体が存在しなかったのです。
同社では、それをよく確認せずに投資家から資金を募集したことが問題視されました。
エーアイトラストも、2019年には第二種金融商品取引業免許を剥奪されており、投資家に対して大きな被害を発生させています。
ソーシャルレンディング以外の行政処分を受けた会社
それでは、ソーシャルレンディング会社以外で行政処分を受けた第二種金融商品会社の行政処分理由について解説していきましょう。
①FIPパートナーズ
すでに、第二種金融商品取引業免許を2017年に剥奪され、事業停止状態に陥っているFIPパートナーズという会社があります。
FIPパートナーズでは韓国投資ファンドと銘打って、関連会社である韓国の企業の投資案件を募っていました。
しかし、この韓国企業への投資案件は担保実態がほとんどなく、FIPパートナーズ自体も韓国企業の監視をほとんど行っていない状態であったのです。
実際の被害者はほとんどいなかったとされていますが、投資してはあまりにも杜撰な監視体制、運用体制であったため、金融庁からは第二種金融商品取引業免許を剥奪されています。
被害者が出る前に実態が明らかになったぶんだけ幸いですが、maneo(マネオ)やみんなのクレジットとほぼ同じように、杜撰な運用体制であったのです。
やもすれば、投資詐欺の可能性もあった投資案件でした。
②おひさまエネルギーファンド
おひさまエネルギーファンドという会社は、グリーンインフラレンディングと同じように太陽光発電装置への投資案件を主に投資家から投資を募っている会社です。
こちらの会社が行政処分を受けた理由としては、前社長単独で資金管理業務が行われている状況が継続し、他の社員や取締役がその内容をチェックできる体制になってなかったことです。
分別管理規定を設けていたにもかかわらず、実際には分別管理がされていなかったことが金融庁に問題視されました。
さらには、前社長が出資金の一部が入金されている口座から数百万円のお金を引き出し、自分の住宅の購入費用や生活費に消費していたことも問題視されています。
その結果、前社長は退任に追い込まれ、おひさまエネルギーファンドは3ヶ月間の金融商品取引扱いを禁止されました。
こちらも、みんなのクレジットに近い事態だと言えます。
③スルガ銀行
出典:スルガ銀行
2018年最も大きな問題になった金融関連の話題といえば、スルガ銀行のシェアハウス融資の問題かもしれません。
スルガ銀行は、融資残高を増やすために適切な業務運営を確保するための法令の遵守や顧客への保護姿勢を打ち出していなかったことが金融庁から問題視されました。
融資を無理に通すために、投資家の個人情報や口座残高を改ざんした書類を作っていました。
また、場合によってはデート商法とも取られるような融資勧誘を行っていたことや、内部でのパワハラなどさまざまな問題が金融庁から問題視されています。
業務改善は徐々には行われていますが、抜本的な対策は実施されていません。
他の銀行に吸収の上で救済されるとの報道もありますが、地銀ナンバーワンとも言われたスルガ銀行が一気に揺らぐような事態に陥っているのです。
投資家が注意をするべきポイント
このように、行政処分を受けた会社を比較してみると、ソーシャルレンディングもソーシャルレンディング以外の第二種金融商品取引業免許を剥奪された会社も、そう大きな差はありません。
問題になることが多いのは、投資家から融資を募る目的と違った用途で投資家の資金が流用されていた点。
そして、その分別管理がきちんと行われておらず、一部の人間、主に経営者が自由にその資金を使えるようになっている状態になっていたことが挙げられます。
ソーシャルレンディングに関しては、今後融資先の匿名化が解除されていくため、融資先の不透明性についての問題はそれほど気にする必要はなくなるかもしれません。
しかし、会社の中の監視や管理、資金の分別管理や運用体制についてはその会社がどの程度責任を持って取り組んでいるかで大きく変わってきます。
みんなのクレジットやおひさまエネルギーファンド、グリーンインフラレンディングのように、集めたお金を自由に使い、会社をなくしてしまうという事態も考えられるのです。
投資を行う場合には、まずその会社の中の資金の運用や管理体制をきちんとチェックしておく必要があるでしょう。
もちろん、大きな会社だから無条件に安心できるわけではありませんが、監査に大手監査法人などを入れている会社の方が、トラブルが発生する可能性は低くなります。
まだ新しい会社ほど社内の監視体制が整っていないことが多いので、会社としての運営実績が長期間に及ぶ会社を選んだ方が安心して投資できるのは間違いありません。
こういった投資家の目に触れにくい部分のリスク管理について、どのような体制でチェック行っているのかを、電話やメールで投資前に確認しておきたいところです。