2020年1月、クラウドアンサー編集部は、融資型クラウドファンディング「CAMPFIRE Owners」(キャンプファイヤーオーナーズ)を運営する株式会社CAMPFIRE SOCIAL CAPITALへ取材を実施しました。
「購入型クラウドファンディング」で有名な「CAMPFIRE」が融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)を始めたことに驚いた投資家の方は少なくないでしょう。
そこで、投資家のみなさんが気になることや、どんな想いを持って運営しているのかについて伺ってきました!
目次
CAMPFIRE Ownersを運営する株式会社CAMPFIRE SOCIAL CAPITAL
まずは、「CAMPFIRE Owners」(キャンプファイヤーオーナーズ)を運営する株式会社CAMPFIRE SOCIAL CAPITALの概要を紹介しておきましょう。
社名 | 株式会社CAMPFIRE SOCIAL CAPITAL |
設立 | 2015年12月1日 |
資本金 | 6,500万円 |
代表者 | 加藤義隆 |
登録/加入協会 | 第二種金融商品取引業者関東財務局長(金商)第2973号 一般社団法人第二種金融商品取引業協会【加入】 |
所在地 | 〒150-0002東京都渋谷区渋谷2丁目22番3号渋谷東口ビル5階 |
それでは、早速インタビューの内容をお伝えしていきましょう!
なお、取材にご協力いただいたのは、次の3名です。
- 株式会社CAMPFIRE SOCIAL CAPITAL 代表取締役 加藤 義隆 様(左)
- 株式会社CAMPFIRE SOCIAL CAPITAL 取締役 荒木 隆義 様(右)
- 株式会社CAMPFIRE 取締役 中田雅人 様(中央)
なお、ご回答頂いた方がわかるように( )で示しています(敬称略)。
CAMPFIRE Ownersについて
「クラウドファンディングといえばCAMPFIRE」というくらい知名度の高いCAMPFIRE。
融資型クラウドファンディングのサービスを始めたことに驚かれた方もいたことでしょう。
まずは、CAMPFIRE Ownersの立ち上げや業界のことについて聞いてみました。
既に知名度のある「CAMPFIRE」が融資型クラウドファンディングへの進出を検討した理由について教えてください。
(荒木)3年近く前から「進出します」とお伝えしていたのですが、 当時から融資型クラウドファンディング、いわゆるソーシャルレンディングで当社が実現したいことは変わっていません。
CAMPFIREのミッションとして「資金集めの民主化」というものがあります。
誰もが挑戦出来るよう、インターネットを活用して資金調達をサポートする、というものです。
「資金集めの民主化」に向けて融資型で出来ることが多々あると考えています。
また、ビジネスとしても購入型との親和性や融資型のマーケットサイズの大きさに可能性を感じています。
「購入型クラウドファンディング」と「融資型クラウドファンディング」の大きな違いはどういった点だとお考えですか?
(荒木)支援者や資金需要者にとって一番大きいのはリターンの違いです。
購入型のリターンが「モノ」なのに対して、融資型のリターンは「金利」になります。
プロジェクトの性質によってリターンは決めていくものですが、一般的には、「モノ」よりも「金利」のリターンの方が、調達可能額が大きくなる傾向にあります。
また、プロジェクトによっては「モノ」でのリターンの設計が難しい場合があり、「金利」の方が適しているということもあります。
CAMPFIRE側の違いの一つには審査基準があります。
融資型の場合、プロジェクト・オーナー(資金需要者)は元本+αの金利を支払わなければなりません。
そのため、金融的な目線での審査が必要になります。
勿論、購入型でも一定の審査はありますが、融資型は金融商品 取引法などの法規制上で投資家保護が定められており、投資家に過度なリスクを負わせないよう十分な審査が求められています。
(加藤)このように購入型と融資型では違いはあるのですが、プロジェクトを立ち上げて挑戦をしていくという人が「資金調達をする」という点では一致しています。
購入型や融資型などの選択肢があり、その時その時で使い勝手の良い方法を選んで頂きたいと考えています。
CAMPFIREはプロジェクトを応援していく「プラットフォーム」であり、そのための武器を揃えているという感覚です。
投資家目線では「購入型」と「融資型」のクラウドファンディングのどちらにメリットがあるとお考えですか?
(荒木)投資家は、CAMPFIREのプラットフォームを通じて企業やプロジェクトを応援できます。
その際のお礼として投資家が何を求めるのか次第かと思います。
例えば贔屓の日本酒の蔵元があって、プレミアムな日本酒をリターンとしたい場合は購入型が良いという話になります。
一方で、プレミアムな日本酒は既に手にした、日本酒は飲まなくてよいが蔵元やそこで働く人達を応援したいパターンなどの場合、投資家は「金利」でのリターンを望む可能性が高くなります。
(加藤)投資家は応援と引き換えにリターンを得ていきますが、様々な形のリターンがあるというのもCAMPFIREの特徴になっていると思います。
CAMPFIRE Ownersの案件について
CAMPFIRE Ownersは、2019年9月に第1号案件として4件同時にファンドの募集を行った後、海外のマイクロファイナンス機関へ融資するファンド、飲食店支援ファンドとこれまで6件のファンドを成立させ、6案件すべてが運用のフェーズに入っています。
実際に案件を出してみてどのように感じているのか、そして今後はどのような案件が登場する予定なのか、投資家が気になることについて聞いてみました!
利回りは3%~5%ほどで設定されていますが、これくらいのレンジが適正だとお考えでしょうか?
(荒木)当面のファンド利回りは3~10%程度になるかと思いますが、あくまでも資金需要者と投資家のマッチングの上で決定されると考えています。
第1号案件(2019年9月)の4つのファンドは全て満額成立したことを踏まえれば、結果的には需給がマッチする適正な利回りだったと言えると思います。
一方で 、もっと資金集め を順調に進めることができたのではないかと思っています。
今後は投資家メリットをもう少し打ち出した商品設計や、 情報発信の仕方をもっと工夫していく 必要があると感じています。
募集してみて良い面もわかれば改善すべき点も見えた感じでしょうか?
(加藤) そうですね。
私達は各プロジェクトに対し、慎重なリスク・リターン分析をした上での利回り設定を行っていますが、うまく投資家の皆様に伝えられていない部分がありました。
こうした反省を踏まえ、事業者情報や事業環境、担保・保証など投資家判断を支えるファンド情報の充実やリスク情報の充実に取り組んでいます。
また、投資家がこれらの情報をスムーズに整理・理解できるような伝え方の工夫に力を入れているところです。
こうした改善が進めば、例えば1~3%という比較的低利回りのファンドでも、リスク選好にマッチした投資家のニーズに合致し、よりたくさんの方に支援していただけるのではないか と想定しています。
投資家の方を増やしていくためにマーケティングや会員募集はどのように行う予定なのですか?
(中田)投資家の獲得は「ファンドの募集→投資家拡大→ファンドの募集」のサイクルを繰り返すことが重要であり、投資家に選ばれるような魅力的なファンドを出し続けることが基本になります。
これに加えてオウンドメディアの充実や投資家向けセミナーの開催などをしながら、CAMPFIRE Ownersと投資家の距離を縮めていくことも重要だと考えています。
(荒木)「自分には投資なんて関係ない。銀行にとりあえず預けておけば良い」という人にも選択肢が広がるような世界をCAMPFIREが作っていかなければならないと思っており、彼らに振り向いてもらえるようなアプロ―チについて模索しています。
投資家保護の取り組みについてもう少しお伺いしたいです。
(加藤)借手に対する十分な審査、分別管理の徹底や堅確な業務体制は金融機関として当然の責務になります。
また、投資家には偏った情報で判断して頂かないよう、リスクとリターンの関係を正確に伝えていく努力が不可欠だと考えています。
(荒木)投資家への情報開示の際、利回りの説明の仕方や担保・保証の説明の仕方ひとつで投資家の捉え方が大きく異なる場合があります。
高利回りには高いリスクがあること、担保・保証があっても100%のリスクオフになってない場合もあることなどについて、投資家保護の観点から「必要情報を如何に正しく伝えていくのか」について細心の注意を払っていきたいと考えています。
(加藤)良質なファンドの提供、堅確な事務体制、投資家への情報開示やコミュ二ケーションの充実などの取組で投資家を適切に保護していけば、資産運用プラットフォームとしての信頼性が向上し、投資家獲得に繋がっていくものと期待しています。
事業をスタートさせてから、投資家から意見や要望などがあれば教えてください。
(荒木)先にも申しましたように、投資商品としての「リスク・リターン」の点については幾つか声を頂きました。
私達が伝えきれなかった部分があると感じています。
一方で、第1号案件の4ファンドは、NPOや債務超過企業などのファンドだったのですが、従来の金融機関では対応が難しい案件に挑戦したことに対する評価を頂きました。
また、「借手企業が目指す事業の社会的意義に共感できた」、「投資するならば利回りは重要だが、その上で気に入った事業を応援できるならなおよい」との声もありました。
既存のソーシャルレンディングサイトと差別化を図ったポイントがあれば教えてください。
(荒木)共感を生み、投資という応援に変えていくことを私達は目指しています。
誰かに共感をしてもらえるようなファンドをつくり続ける。
それが他社との差別化でありCAMPFIREの強みになると思っています。
(加藤)業界他社が積極的に取り組んでいる太陽光ファンドの扱いには社内で議論になりました。
太陽光事業自体が問題ではないのですが、純粋投資商品の色彩が強くなると共感を得るためのストーリーが弱くなり、我々がターゲットにしている投資家が得られにくいという議論がありました。
一例ですが「太陽光発電を梃子に分散自立型の地域経済圏を目指す、スマートシティを構築していく」などのストーリーがあって、投資家の共感ポイントを生み出せれば、CAMPFIRE Ownersが取り組む意味が見出せると思っています。
CAMPFIRE Ownersは、共感を生み、投資という応援に変えていく「プラットフォーム」を目指しています。
共感を大切にして様々なファンドを提供していきたいと思います。
CAMPFIREで培ったノウハウはどういった点で融資型クラウドファンディングに活かせるとお考えですか?
(荒木)購入型は支援者を集めるにあたって共感を生み出すことが非常に重要でした。
共感をコアにし、共感を拡げていくということは、融資型クラウドファンディングであるCAMPFIRE Ownersにおいても重要な要素になると考えています。
また、共感に支えられているプロジェクトは、なかなか頓挫しにくいということを購入型で経験してきました。
プロジェクト・オーナーにとって応援してくれる人の期待に応えるというのは大きな励みになります。
その他、購入型では支援者がプロジェクトに積極的に参加できるような商品も展開してきました。
プロジェクトへの参画感があるファンドは、設計、運営のコストが大きいですが、他社との違いを打ち出していけると考えています。
共感を大切にする、プロジェクトへの参画感を醸成する、といったファンドの特徴は差別化に繋がると思っています。
CAMPFIRE Ownersにおける融資先について
ソーシャルレンディングに投資するにあたって気になることは、その融資先の情報が一つでしょう。
CAMPFIRE Ownersでは、融資するにあたってどういった審査を実施しているのでしょうか?
融資先の選定は難しいのでしょうか?どういった調査や審査を行っていますか?
(中田)いまのところ、一般的な銀行の貸出審査と同じ程度の厳しさをもった審査を行っていると思っています。
平たく言えば、かなり丁寧な審査を実施しているということです。
(荒木)具体的には、借手候補から財務資料や事業計画、リスクの所在等をご提出頂き、インタビュー等を交えながらじっくりと分析を行い、ファンドとしてのフィージビリティ(実現性)を調査しています。
(中田)ただ、既存金融機関と同じような審査をおこなっているだけでは、既存金融機関との競争には勝てませんし、そもそも、CAMPFIREの存在意義がありません。
従来の金融サービスでは届かなかった層に金融サービスを提供してくことが当社のミッションですから、審査コストの低減は大きなチャレンジだと考えています。
(加藤)融資先選定についていうと、CAMPFIREが融資先を選定して投資商品に仕立てていくということではなく、挑戦者であるプロジェクト・オーナーの資金需要をどう解決するかという観点で取り組んでいます。
資金需要者と投資家のマッチングサービスですのでどちらを優遇するという話ではないのですが、話の起点があくまでも資金需要者から始まるということがサービスの特徴です。
因みに、第1号案件では、債務超過企業やNPO等を扱いましたが、今まで銀行借入が容易でなかった人たちに対しても我々はサービスを提供してくというメッセージを出したかったというのはあります。
目標の募集金額は貴社が設定されているのでしょうか?
(荒木)募集金額もそうですが、調達額、金利、期間、スキームなどについては、資金需要者であるプロジェクト・オーナーのニーズをまず踏まえ、投資家への訴求力や投資環境、当社のプラットフォームに集まる投資家の方のニーズを踏まえつつ、オーダーメイド型でファンドを組成しています。
(加藤)初めから投資家受けを狙ったファンドを組成するのではなく、資金需要者の問題を解決しようとする中で、投資家に選択して頂けるファンドを組成する、このイメージです。
CAMPFIRE Ownersの今後
2019年にサービスを開始したばかりのCAMPFIRE Owners。
これからますます大きくなっていくと想像できますが、どのようなことを目標に動いているのでしょうか?
目標(案件数、融資総額、投資家数など)があればお伺いしたいです。
(加藤)残高ベースでいえば、早期に100億円は達したいと思っています。
アジアは引き続き資金需要が旺盛である一方、投資家も海外の高利回り商品を求めているところがあるため、アジアの資金需要に対応したファンドはこれかも増えていくと思います。
(中田)こうした投資家ニーズにこたえるべく、2019年12月から2020年1月にかけてカンボジア農業ファンドの募集を行いました。
第1号案件では、国内の小規模事業者を対象としてどちらかといえば低利回りのファンドでしたが、今回は対極にあるファンドを打ち出し、第1号は支援額1,085万円、投資家数54名の実績となりました。
現在も第2 号ファンドとして、2020年2月20日から同年3月18日まで募集を取り扱っています(※2020年3月6日時点)。
(加藤)アジア向けファンドは、日本の潤沢な資金でアジアの成長を支援するという意味で、CAMPFIREとしても積極的に展開したいと考えています。
ファンドサイズは徐々に数千万円~億円単位のファンドになっていくことを期待しています。
一方、挑戦者をサポートするという観点からすれば、数百万前後の資金需要にも対応した小口のファイナンス案件も重要になります。
小口のファイナンス案件を事業として成立させるには、申込・審査・ファンド組成・実行・回収の一連の流れを効率化させていく必要があり、この辺りの効率化には徹底的にこだわっていきたいと考えています。
(荒木)今後色々な展開を考えている一方で、まずはCAMPFIRE Ownersを使ってもらわないと始まりません。
その点で投資家の方に「利回りとリスクのバランスが魅力的だ」「事業に共感した。投資で応援したい」と思って頂けるような魅力のある商品を出していくことは不可欠だと思っています。
投資家の方に向けて伝えたい想いなどがあればお願いします!
(中田)これまでも述べてきた通り、CAMPFIRE Ownersは、共感を生み、投資という応援に変えていく「プラットフォーム」でありたいと考えています。
リターンとリスクのバランスだけではなく、その投資の結果得られる「(共感した)課題の解決」や「事業への参画感」にも、投資家の皆様には着目して頂きたいと思います。
(荒木)今までは、銀行を中心とした金融機関主導の投資商品や資金調達の方法が多かったと思います。
クラウドファンディングを利用することによって、資金需要者と投資家がダイレクトに結ばれ、中間コストを省くことが可能となり、従来出来なかった資金調達や資産運用ができるようになります。
私たちがやりたいことは、既存の金融機関が提供できなかった資金マッチングです。
資金需要者も投資家もクラウドファンディングの効用をまだ十分に享受できていないと感じています。CAMPFIRE Ownersを展開していく中で、資金需要者と投資家の双方のメリットを打ち出していければと考えています。
また、CAMPFIREが展開してきた購入型クラウドファンディングは、資金調達に成功した人が、次は支援する側として誰かを応援する事例がみられています。
「応援され、応援する。応援して、応援される」こうした応援の資金循環はクラウドファンディングならではのことだと思っています。融資型においても応援と資金の循環を形成していきたいと思っています。
(荒木)商業銀行や投資銀行、証券会社のビジネスモデルはここ数十年以上、基本的には変わっていません。
しかし、インターネットの登場によって、今後は全く違うかたちになる可能性が高いと思っています。
資金需要者と投資家をマッチングさせていく。
これは、昔からあるビジネスモデルだと思います。そこにインターネットのテクノロジーを使って、より良いものをつくっていくことがCAMPFIREの使命だと思っています。
CAMPFIREは、私達のような金融機関出身者だけではなく、エンジニア、マーケーター、デザイナーなど非金融人材が多く所属しています。
金融×非金融で化学反応を起こしながらクラウドファンディングを進化させて、従来、資金が届かなかった人に資金を届け、投資家の皆様にも新しい運用の可能性を提示していきたいと思います。
まとめ
融資型クラウドファンディング「CAMPFIRE Owners」(キャンプファイヤーオーナーズ)を運営する株式会社CAMPFIRE SOCIAL CAPITALにインタビューを実施させていただいた際の内容をお伝えしました。
クラウドアンサー編集部としては、取材を通して「共感」ということばが大変印象に残りました。
他の融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)に比べて社会的意義の大きい案件を取り扱い、世の中をより良くしていきたいという想いが3名のお話を伺っていて強く感じたところです。
利回りは勿論、投資を通じて社会貢献したいと興味を持っている方にはとてもおすすめの会社です。
また、 投資家の方に「リスク・リターンが合っていない」ととらえられた部分も あるようですが、投資家ニーズに応えようとしていることや投資家保護も強く重視していることがインタビューを通してわかりました。
今後は、リスクとリターンのバランスが魅力的で、社会課題の解決という点でも共感しやすい案件が多く登場するのではないかと予想されます。
その他、海外の大型案件も実施していきたいとのことで、投資家の方としては楽しみな方も多いのではないかと思います。
今後のCAMPFIRE Ownersの動向からは目が離せません。
今回の取材記事をお読みいただき、少しでもCAMPFIRE Ownersに興味を持ったという方は、ぜひ口座開設をしてみてください。
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