「ソーシャルレンディング」という投資手法はいつ生まれたのでしょうか?
その歴史を知ることで、ソーシャルレンディングをより深く理解することができます。
目次
海外におけるソーシャルレンディングの登場
ソーシャルレンディングは、2005年にイギリスのZopaという金融会社で生まれたと言われています。
そして、2006年にはアメリカのProsper社など、ソーシャルレンディングサービスを行う会社が続々と誕生し、徐々に世界へと広まっていきました。
その当時は、現在の「融資型」だけではなく「マーケット型」「オークション型」と呼ばれる形式のソーシャルレンディングサイトも多くありました。
その意味では、現在よりもバラエティに富んだ案件が多かったのです。
その中で、徐々に形式が「融資型」のソーシャルレンディングが中心となっていきました。
マーケットの需要に応えるという意味では、融資型が借りる側にも貸す側も都合が良かったからでしょう。
日本におけるソーシャルレンディング会社の登場
2005年に海外で誕生したソーシャルレンディング。
その年、インターネットの発展により普及が進み、短い期間で日本にも伝わってきました。
では、日本のソーシャルレンディング会社はいつ誕生したのでしょうか?
その歴史を振り返ってみましょう。
2008年に「maneo(マネオ)」が誕生
日本で一番最初にソーシャルレンディングサイトを起ち上げたは、現在でも日本国内の累計募集金額第1位を誇る「maneoマーケット」です。
maneoマーケットがソーシャルレンディングサイトを起ち上げたのは2008年です。
当時は、「企業向け」融資よりも「個人向け」融資の方が案件が多く見られました。
また、安定して案件が供給されるようになったのは2011年頃からです。
2008年に「AQUSH」が誕生
2019年11月末現在サービスは運用されていませんが、2009年に創業したソーシャルレンディング会社に「AQUSH」がありました。
AQUSHは個人間融資専門のソーシャルレンディングサイトです。
他社での法人向け融資案件の増加、AQUSH案件の貸し倒れの発生などの問題を受け、2019年11月末現在では、案件の供給も投資家からの需要もなくなり営業停止状態になっています。
2011年に「SBIソーシャルレンディング」が誕生
2011年のmaneoに次いでソーシャルレンディングサイトを開設したのは、大手金融グループSBIグループに属する「SBIソーシャルレンディング」です。
SBIソーシャルレンディングは、2011年の創業とサイト開設前からソーシャルレンディングに関心を持っていました。
その準備に時間を掛けたため、2011年の創業となったのです。
maneoがサービスを開始した時点で、SBIグループもソーシャルレンディングに着目していたということでしょう。
2019年11月末現在、maneoが案件募集時停止状態に陥ってることもあり、SBIソーシャルレンディングは国内のソーシャルレンディング会社の中でもトップを走る企業に成長しています。
初期の頃のmaneo(マネオ)の案件概要
出典:maneo(マネオ)
初期のソーシャルレンディング黎明期において、maneo(マネオ)の扱う案件は、次のような特徴が多く見られました。
特徴①:個人事業向け融資
飲食店の開業、運営費用など個人事業主への融資です。
融資先の詳細な情報公開や、ビジネスプランに関するインタビューなども積極的に行われていました。
しかし、保証や担保がないものが多かったのです。
特徴②:法人の事業向け融資
飲食店や医療施設を展開する法人への融資です。
個人間融資とそれほど内容は変わりませんが、代表者連帯保証付き案件が多くありました。
また、飲食店の場合は金利収入以外にサービス券などが提供されていたものもあります。
初期の頃のSBIソーシャルレンディングの案件概要
初期のSBIソーシャルレンディングのソーシャルレンディング案件では、以下のようなものが多くありました。
特徴①:個人向け事業資金の融資
maneoと同じく、個人事業主への開業資金・事業資金の融資案件がSBIソーシャルレンディングでも多く見られました。
少なくない件数のデフォルトが発生したため、2019年11月現在では個人間向け事業資金の融資は行われていません。
特徴②:つなぎ融資
借り換えのための、つなぎ融資が必要な事業者に対しての融資案件も提供されていました。
短期間の融資になるため、金利が比較的高めでありリスクも小さいということで人気があったようです。
特徴③:ビジネス事業資金融資
法人向けの事業資金融資です。
これは、今ある案件と大きく変わるものではありません。
また、担保も設定されているため、比較的安定して運用されています。
ソーシャルレンディングが日本国内にすぐに広まらなかった理由
2008年のmaneoのサイト創設から2011年のSBIソーシャルレンディングまでは3年間の時間がかかりました。
また、2013年頃まで後続のソーシャルレンディング会社は現れませんでした。
では、なぜ日本ではソーシャルレンディングの普及まで長い時間を要することになったのでしょうか?
理由①:個人間融資案件が多かったから
最も大きな理由は、ソーシャルレンディングにおいて法人への融資が少なく、個人間融資案件が多かったからです。
個人融資案件は法人向けの融資よりも金額が小さいので、投資家はまとまった利益を得ることができないのです。
法人向け融資の場合、数千万円や1億円などまとまった金額の案件の組成が多いです。
しかし、個人向け融資の場合は1案件100万円から1,000万円といった小規模が中心です。
大金を動かしたい個人投資家にとっては、投資対象として適当なものではないため、注目が集まらなかったのです。
理由②:貸し倒れが多かったから
個人に融資するリスクは、法人向け融資のリスクよりも大きいです。
法人に対する融資と比べて、担保や保証が薄く用意できても換金性の高い担保が少ない状況でした。
さらに、回収をしようとしても、最悪の場合は個人が姿をくらましてしまい、回収が難しくなるリスクがあります。
もちろん、保証を設定した案件もありました。
しかし、その保証がうまく作用しきちんと投資家に対し満足な金額の返済ができていたのかを振り返ると、「NO」という状況だったのです。
個人事業主にとっては、ソーシャルレンディングで資金調達できるメリットは大きいものです。
しかし、投資家側にとってのリスクが大きかったことが、普及しなかった理由の一つなのです。
理由③:案件の安定供給がなかったから
ソーシャルレンディング案件自体、安定的に供給が行われていませんでした。
当時は、maneoもSBIソーシャルレンディングも会社規模が小さく営業人員も少なかったため、定期的に資金を必要とする事業者を見つけるまでに時間を要したのです。
SBIソーシャルレンディングで案件の供給が定期的に行われるようになったのは「玄海インベストメントアドバイザー株式会社」との提携後です。
同社との提携で、太陽光や不動産の開発案件の供給が生まれたのです。
個人融資の場合、一度案件の募集を行ってもその人が二度も三度も継続的に資金調達を行う可能性は低いです。
一方で、不動産事業などを展開している会社であれば、定期的な資金調達が必要となるため、ソーシャルレンディング案件の安定した供給先になってくれるのです。
ソーシャルレンディング案件の供給体制が整うまでに時間がかかったので、日本でのソーシャルレンディング普及には時間がかかりました。
まとめ
2008年のmaneoの営業開始、そして2011年のSBIソーシャルレンディングの営業開始と、この時期は「ソーシャルレンディング」はまだまだ知る人ぞ知る投資手法であり、国内で取り扱う会社も非常に少ないものでした。
そして、個人間向け融資が中心であり貸す側のリスクが高かったため、投資家のメリットが小さい投資手法という認識だったのです。
それでも、この2社が徐々に案件の募集や投資家数を伸ばしていたことによって、ソーシャルレンディングが徐々に投資手法の一つとして、日本でも認知されていくようになったのです。
クラウドアンサー編集部では、ソーシャルレンディングの変遷について独自の見解で分析しています。
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